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日本最大のツルの越冬地、出水市で体験したニコン「Z8」
GANREF 注目製品レビュー ニコン Z8&超望遠レンズ【野鳥編】撮影セミナーレポート
2024年12月11日 07:00
弊社インプレスが運営する写真SNS「GANREF」で実施中の「注目製品レビュー ニコン Z8&超望遠レンズ【野鳥編】」。そのリアルイベントとして、野鳥撮影をテーマにした撮影セミナーが11月30日(土)と翌12月1日(日)に開催された。
9月に開催された「注目製品レビュー ニコン Z8&超望遠レンズ【飛行機編】」に続くもので、GANREFメンバーの8名が「Z8」や超望遠レンズを野鳥の撮影で体験。その使い勝手や性能をGANREF内のレビューで深掘りしてもらおうという企画だ。レポートはすでにGANREFで続々発信されている。
撮影地は日本最大のツルの越冬地
今回の講師は、野鳥や飛行機を専門に撮影している写真家の中野耕志さん。中野さんは以前にも飛行機撮影のセミナーをGANREFで行っている。
撮影地となったのは鹿児島県出水市。日本最大のツルの越冬地で、万単位のツルが飛来する場所として有名だ。
レビュアーにはZ8と希望するレンズやアクセサリーが1カ月貸し出され、セミナーにもそれらの機材を持ち込み実践となった。
Z8はフラッグシップモデルの「Z9」に近い性能を持ちながら、大幅に小型軽量化したモデル。鳥を含む被写体検出AFに対応しているほか、有効画素数が約4,571万と高画素でトリミングにも強い。発売は2023年5月。実勢価格は税込60万円前後となっている。
ポイントは“翼の形”
初日は出水駅に集合し、バスで出⽔市中央公⺠館に向かう。そこで関係者の挨拶やメンバーの自己紹介などに続き、中野さんによる座学が1時間30分ほど行われた。
中野さんはZ9登場のタイミングでミラーレスカメラに全面移行したとのこと。ただ、Z9が重いため2台持ちは難しいと思っていたところにZ8が登場。フラッグシップ機の性能をコンパクトに凝縮したモデルだと紹介した。
Z8は2月のファームウェアアップデートで鳥検出の専用モードが加わった。「最強の鳥撮影用カメラに仕上がった」と中野さん。
レンズについては被写体が小さく、近づけないために超望遠レンズが必要になるとのこと。おすすめのレンズとして600~800mmに対応できる4本を挙げた。「NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S」は中野さんも自前で使っているレンズになる。
群れの撮影は少し引いた画角での撮影が良いため、ボディ2台持ちの場合は1台に超望遠レンズ、もう1台に望遠ズームレンズで臨むのも手だそう。
今回はツルの撮影がメインになるが、画作りのポイントは「翼の形」で、これが重要とのこと。翼は上げているか下げているかのどちらかがよく見えるそうだ。ただし、意図してシャッターチャンスを狙うのは難しいので連写で数をかせぎ、その中から良いコマを選ぶ方法を勧めていた。
撮り方のコツとしては、鳥を追いかけるよりも先を読んで待ちの姿勢で臨むということ。鳥は風上に向かって飛び立ったり降りたりするため、背景、光線状態、風向きなどを考慮することが大切だそうだ。
そのほかAFエリアやクロップモード、iメニューの設定などについて説明があり、レビュアーもそれに合わせて各自設定を行った。
今回はニコンの双眼鏡も1人1台貸し出された。中野さんによると肉眼で見える範囲は限られるので、双眼鏡はぜひ使いたいアイテムとのこと。小さな個体や白変個体など、珍しい鳥を先に見つけておくのに役立つそうだ。
撮影に夢中だと鳥に近づきすぎてしまうので、野鳥に警戒させないように自制心を持って撮影してほしいとのこと。また、靴の消毒を行うなど鳥に感染症をうつさないための注意点についても説明があった。
まずはツル監視所で肩慣らし
一行は貸切バスに乗り込みツル観察センターへ。ここで野鳥観察の注意点などの映像を見てから最初の撮影地となるツル監視所に向かった。
撮影日にはすでに1万羽を超えるツルが飛来しており、ツル監視所の近くにも群れが見られた。レビュアーはさっそく超望遠レンズを構えて撮影に挑んだ。
中野さんはいきなり撮影を始めず、まずは双眼鏡やフィールドスコープで鳥の種類や性別などを確認。貸し出された双眼鏡でさっそくチェックするレビュアーの姿も見られた。
この場所は午後は順光やサイド光で美しく撮影でき、風下からこちらに向かって飛翔する姿を狙うのもポイント。「地上にいる個体も絵になるので、色々な撮り方ができる場所」(中野さん)。
撮影方法やカメラの設定は現場で中野さんがレクチャーしつつ撮影が進んだ。それ以外にも中野さんはレンズの持ち方や野鳥撮影に適した三脚の話などをし、レビュアーも興味深く聞き入っていた。
NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR Sを使っていたレビュアーは、「拡大すると羽毛までよく見えて驚いています」と話していた。
規定の貸出機材の「Z TELECONVERTER TC-1.4x」に加えて、現地では「Z TELECONVERTER TC-2.0x」も貸し出され、使用したレビュアーからは「Fマウントのテレコンバーターより画質劣化が少なく解像力がある」との声が聞かれた。
17時30分ごろにツル監視所での撮影を終了し、次の撮影場所であるツル観察センターに移動した。
ツル観察センターのそばで、夕陽をバックにしたツルの撮影に挑戦。天候にも恵まれ、レビュアーは澄んだ空気の中を飛ぶツルを追いかけていた。
2日目は朝日狙いで暗いうちから出発
続く2日目は朝日をバックにしたシーンを狙うため、6時にホテルを出発。日の出前の7時30分ごろからツル監視所(東干拓)で撮影を始めた。
この場所はかなり開けた場所で、遠くの山並みまで遮るものがない。ドラマチックなツルを収めるには絶好のロケーションとなっていた。
中野さんによると、編隊が綺麗なシルエットを選ぶのがコツとのこと。また、山並みの重なりや朝霧も意識して構図を作るようにレクチャーした。
山から太陽が少し出たくらいが1番のシャッターチャンスとのことで、完全に太陽が出てしまうと露出差が大きくなって撮りにくくなるそうだ。
中野さんによると太陽の方向を撮る場合、フレーミングや撮影をしない時にはカメラを太陽の方向から外しておくとカメラの保護になるとのことだ。
ツルを上から撮れるポイントへ
太陽が昇ってきたところでバスに乗り込み、最後の撮影地であるツル観察センターの屋上にある展望台へ。屋上から一帯を見渡すと、かなりの数のツルが周辺に舞い降りていた。
地上からだと見上げる形の撮影になるが、展望台からだと見下ろしたり横からのショットが狙えるのがポイントだそう。ここでも超望遠レンズをメインに各自がカメラを構えた。
中野さんからのアドバイスとしては、背景が山と空で変わったときに露出差が大きくなるので、AEを使わずマニュアル露出にすると撮りやすいとのことだ。
プリント&講評会
撮影を終えた一行は出⽔市中央公⺠館に戻り、講評会のに向けたセレクトとプリント作業に移った。
各自がセレクトした2枚をスタッフがA3ノビでプリント。それを掲げて撮影意図などをプレゼンし、中野さんの講評を受けた。
レビュアーの作品を見るといずれも美しく鳥をフレーミングしていて、さすがGANREFのGOLDランク以上の実力と唸る。一方で画作りは個性があり1羽を収めたものや複数を収めたものなど多彩。鳥の大きさも画面いっぱいのものから引きのものまで様々なのが印象に残った。
メンバーのうち、3名に作品についての話を聞いた。
ふらふらだんさーさん
超望遠レンズで野鳥を撮ってみたかったのと、フラッグシップに近いZ8がどんな感じか試してみたかったのが参加したきっかけです。
この作品はNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sで撮影しました。苦労しなくても鳥の目にピントが行くので良いショットが多かったですね。連写時もファインダーが見やすくてスムーズに撮れました。画面を見てすぐにレンズの解像度の高さも感じました。
legacy7010さん
子供の運動会で望遠レンズを使うので、撮影スキルを上げたくて参加しました。また野鳥の撮影となると周りに連れて行ってくれる人がいないのですが、今回はプロの先生に話が聞けるということで申し込みました。
800mmにテレコンを入れて撮ったものですが、離れていてもここまで大きく撮れるんだというのが実体験できました。AFが速くて顔のとところにピントが来ているのですが、今使っている機材よりも歩留まりがかなり良いと感じました。
あすらんママさん
前回の飛行機編に参加して超望遠レンズを初めて使ったところとても面白く、野鳥はまだ撮影したことが無いのですが新しい挑戦がしたくて参加を決めました。普段の撮影でも使えるテクニックもあり、凄く学べました。
親子の写真を選びました。自分の中では親子というのがリンクする部分が大きくて、かわいい中にも生きる強さのような物語に感動しました。ストレスなく鳥を追えましたし、レンズの写りも綺麗ですね。今はZ6 IIを使っていますが、Z8はオールマイティに感じて欲しくなりました。