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ポートレート撮影で検証!「SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports」のクリアな描写と軽快な撮り味

高速なAFに精緻な描写 取り回しの良さで多彩なシーンに対応【動画あり】

シグマからミラーレス専用ズームレンズ「SIGMA70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports」が発売となった。シグマは3つのプロダクトライン(Art/Sports/Contemporary)を提案しているが、このレンズは望遠レンズ系が揃うスポーティラインであるSportsラインに含まれている。

F2.8にしては小型軽量で扱いやすいサイズ感

レンズ構成は15群20枚(FLD6枚、SLD2枚、非球面レンズ3枚を含む)。AFLボタンは3カ所あり、さらにフォーカスリミッタースイッチ、OSスイッチ(モード1/2)、カスタムモードスイッチを搭載。防塵防滴構造で最前面には撥水防汚コーティングが施されている。

発売は12月7日(木)。ソニーE、またはLマウント用が選べる。直販価格は税込24万2,000円

このレンズの第一印象は「軽い!」だ。同社の一眼レフカメラ用「70-200mmF2.8 DG OS HSM|Sports」に比べて460gも軽量。1,335g(ソニーEマウント)なので、70-200mmで開放値F2.8のレンズとしてはかなり軽量な部類になる。また外形寸法もφ90.6mm×207.0mm(ソニーEマウント)と小さくまとまっている。

今回はこのレンズをソニーα1に装着して撮影してみた。カメラにバッテリーグリップを装着していないが、レンズとのバランスはとても良好で、取り回しの良さを感じる。

70-200mm F2.8クラスとして考えるとかなり小型で軽量。ミラーレスカメラにも合うサイズ感だ

主にスポーツを撮影するユーザーをターゲットにしていると思うが、機動性が良いというのはポートレートをはじめ、風景や鉄道など多くのジャンルでもうれしい限り。とにかく軽いので、楽に構えながらライトに撮影を行えた。またインナーズーム構成を採用しているので、レンズ全長が変化しない。手持ちでのバランスが安定しているのも使いやすさを感じた要因だ。

あまりお勧めできないが片手でも扱えるほど軽い

高速で信頼できるAF

AFはとても速い。大袈裟でなく実感できる速さだ。この高速AFは、デュアルHLA駆動なる機構の採用と、フォーカス群それぞれの移動量を半減させることを実現したフローティングフォーカス構成で成り立っている。

今回は乗り物などの高速で動く被写体で撮影していないが、そもそもスポーツにカテゴライズされているレンズなので、AFの追従精度と速度は十分に期待できる正確性だ。

下記カットのように髪の乱れが画となるようなシーンでも瞬時にフォーカスを合わせられるので、瞬間を狙う場面では本当に心強い。

α1/SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports/158mm/絞り優先(1/1,000秒、F2.8、+0.7EV/ISO 100

すっきりと優しいボケ

絞り開放のボケは全焦点距離共通して柔らかめな印象。嫌なクセも感じられず滑らかにボケてゆく。下記カットは149mmでの撮影、すっきりと優しいぼけでモデルを浮かびあがらせている。

α1/SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports/149mm/絞り優先(1/400秒、F2.8、+1.0EV/ISO 100
α1/SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports/200mm/絞り優先(1/3,200秒、F2.8、−0.7EV)/ISO 100

まさかの「絞りリング」を装備

寄りのカットではボケ過ぎを避けるために絞ることも多い。また寄りにかかわらず、絞りを操作して背景のボケ感をコントロールしたり、人物がボケによって妙に膨らんだような印象を避けるために、絞りを絞ることもある。

いずれにせよ絞りのコントロールは写真そのものに印象に大きな影響を与える重要な要素。それだけに絞りの決定は即座に行いたいものだ。

これまでのシグマのズームレンズはカメラ側での絞り操作となっていたが、本レンズはシグマのズームレンズとして初めて絞りリングを搭載した。

絞りリングを装備。節度あるクリック感にも好印象

絞りリングの位置も良い。カメラを構えた時にちょうど触れる、いい具合のポジションだ。絞りのクリックON/OFF切り替えスイッチも搭載されている。

ちょうど左手指に位置するため扱いやすい

動画撮影を考慮しての搭載と思われるが、静止画撮影でもこれがなかなか重要。カメラ側で操作となれば、右手にシャッターボタンも絞り操作も(シャッタースピード操作も)委ねることになる。しかし絞りリングがあれば絞りは左手で操作するので、右手の負担が軽くなり、操作によるシャッターチャンスを逃しにくくなるので、私としては大歓迎なのだ。

α1/SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports/105mm/絞り優先(1/250秒、F4)/+0.7/ISO250
α1/SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports/70mm/絞り優先(1/250秒、F4、+1.7EV/ISO 160

シグマらしい“クリアな”描写

描写については、他のシグマレンズにも通じるクリアでスッキリとした印象。解像感は、絞り開放から中央部・周辺ともしっかり解像しているが、繊細な印象。安心して絞り開放で撮影をスタートできる。ただしシャープ感は、やや強めのイメージがあるシグマの他のレンズ群に比べたらやや控えめに感じた。その点ではポートレートに優しい描写という印象だ。

α1/SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports/200mm/絞り優先(1/1250秒、F2.8、−1.3EV)/ISO 100

「200mm」ならではの圧縮効果

70-200mmは、望遠域としては非常に使用頻度の高い焦点域。モデルと一定の距離が必要な場面が多いポートレート撮影では中望遠系が大活躍なのだが、本レンズはどの焦点距離も気持ちよく使うことができるので、中望遠、さらに望遠による圧縮効果や大きなボケを活かした表現を、機動力を活かしたい撮影シーンで使いたくなる。

α1/SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports/90mm/絞り優先(1/640秒、F3.5、-1.0EV)/ISO 100
α1/SIGMA 70-200mmF2.8 DG DN OS|Sports/70mm/絞り優先(1/640秒、F7.1、±0.0EV)/ISO 100

なお手ブレ補正はワイド側で7.5段、テレ側で5.5段の効果を発揮。手ブレ補正アルゴリズムOS2を採用している。今回の撮影ではそこまでの手ブレ補正の恩恵を受けるシーンはなかったが、私の使用感では、数字以上に手ブレ補正が効いている印象で、ビタッと止まる感じだ。

総評

従来の一眼レフカメラ用「70-200mmF2.8 DG OS HSM|Sports」に比べて、大幅に軽量化され、とても取り回しが良くなった。

元々高い描写性を誇っていたレンズだが、さらに小型軽量化され、AFも速くなり、使いやすさが向上した。着脱式三脚座も本レンズに合わせて新たに開発された、小型・軽量化されたもの。機動性の高さが前面に押し出され、それはジャンルを問わず全ユーザーにとってはありがたい部分だ。

防塵防滴構造を採用した望遠レンズであるため、Sportsにカテゴライズされているが、描写はArtそのものと素直に思える実力。クリアで繊細な画を楽しめる。Eマウントの70-200mm F2.8はソニー純正しかなかったので、非常に使用頻度が高い焦点域だけに、選択肢が広がることには諸手を挙げて喜ぶユーザーも多いはずだ。

アップの撮影ではピントを丁寧に追い込むため、私はいつも三脚を使う。今回の撮影もそうしたが、それ以外は全て手持ちで撮影している。まったくと言って良いほど疲れずに撮影できた。カメラ装着時のレンズのバランスの良さと取り回しの良さが大きな要因だが、AFや手ブレ補正など撮影そのものの快適さも大きい。ジャンルを問わず、気軽に気持ちよく撮影できる1本と言えるだろう。

萩原さんがインプレッションを語る動画を作りました

萩原さんが撮影した作品のうち、このページで掲載しなかった作品や撮影の模様を収めた動画を用意しました。SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS|Sportsの魅力についても語っていただいています。(編集部)

モデル:ひかる(グルーヴィー・エアー)
ヘアメイク:山田佳奈

萩原和幸

(はぎわらかずゆき)1969年静岡出身。静岡大学人文学部法学科及び東京工芸大学写真技術科卒業。写真家・故今井友一氏師事後、独立。ポートレートを中心に、広告・雑誌等で活動中。(公社)日本写真家協会会員。静岡デザイン専門学校講師。