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Rotolight AEOS 2/NEO 3 レビュー:フルカラー演出によるシネマティック・フォトグラフィーに挑戦!

Rotolight社の個性的なLEDライト「AEOS 2」「NEO 3」をCYK Studios(サイクスタジオ)のクリエーター達がレビュー!

河合大呉  Daigo Kawai
https://www.instagram.com/ringmasters/

1980年、静岡県生まれ。Weber State University音楽科卒業。映像・音楽制作会社「Ringmasters LLC」、白ホリスタジオ・MAスタジオ「CYK Studios」代表。13歳より作曲活動を始め、ロサンゼルスにて映像系作曲活動を行った後、スクウェア・エニックス・アメリカ、ソニー・コンピュータエンタテインメント・ジャパン(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)を経て2011年にRingmasters LLCを設立。

指揮者、オーケストレーター、プロデューサー、ディレクター、サウンドデザイナー、スタジオコンサルタント、写真家、スタジオ運営と多岐にわたりサービスを提供している。何でも知りたがるオタク気質、トライリンガル、クラシック音楽の経験を活かし、国内外のクライアントに対し映像・音楽制作を行っている。2021年にいきなりスタジオカメラマンもやろうと始めた新参者で、クリエイティブポートレートの撮影を主に活動。愛機はLUMIX G9 ProとLUMIX BGH1。

久米チアゴ  Thiago Kume
https://www.instagram.com/cybertk_/

1993年ブラジル生まれ。日本育ちの日系3世。プロモーションビデオ、ミュージックビデオ、YouTube用カバー動画などをベースとした映像の演出を手がけ、インターナショナルと日本のミックスなレンジでの活動が特徴。

2014年にフリーランスに転身。UVERworld「DIS is TEKI」の映像ディレクション&編集を担当した。

2019年に『354合同会社』を設立。新たにUVERworld Making It Drive制作の他にYoutube Channel『宮迫ですッ!』のエンディングを制作、さらにYoutuberとしてもその卓越したセンスで『Chickensan』(登録者数50万人)をプロデュース。中でも『ビリー・アイリッシュ「バッド・ガイ」|チキンさん【鳴いてみた】びっくりチキンカバー』は世界的に大きな反響を受け現在2400万回再生に届く勢いである。Ringmasters/CYK StudiosではDPとして活動している。愛機はBlackMagic Design PCC6k、EOS 5D Mark IV。


ダイゴ: デジカメ Watchをご覧の読者さん、ようこそ! CYK Studios(サイクスタジオ)の河合です。今回レビューするのはRotolightのフルカラーLEDライトのAEOS 2とNEO 3。定常光も瞬間光もどっちも出来る優れものなのだ。

チアゴ: YouTuberの久米です! シネマティックな写真撮るの楽しみです!

ダイゴ: (DPじゃなくてYouTuberの肩書き推しなのか……)
※編集部注:DP = Director of Photography(撮影監督)



Rotolight AEOS 2/NEO 3とは

AEOS 2

パワフルな定常光撮影とハイスピードシンクロが可能なRGBWWフラッシュ撮影の両方を提供しクリエイティブに多様性をもたらす。バッテリー駆動も可能なため、ロケーションを移動しながらも美しい柔らかな光での撮影が容易だ。

NEO 3

コンパクトなボディに他に類を見ないパワーを備えたポケットサイズのオンカメラLEDライト。AEOS 2と同様に定常光撮影とハイスピードシンクロが可能なRGBWWフラッシュ撮影の双方に対応する。

いずれのライトも操作部にはタッチスクリーンディスプレイを備えており、直感的に扱えて素早いセットアップが可能だ。TLCI 99もの優れた演色性を実現しており、さらには最先端のRGBWWテクノロジーにより、あらゆる色調(色温度/色相・彩度・輝度)を自在にコントールすることができる。

Rotolightとは

Rotolightは、映画および写真業界向けの革新的なLEDライトを設計・製造する英国の企業です。世界初のシネマティック照明効果「CineSFX」や、世界初の電子ディフューザー機能「SmartSoft」など、数多くの特許技術を開発し、世界中で50を超える特許、意匠、商標を所有しています。定常光とハイスピードシンクロフラッシュの利点をオールインワンで実現した世界初のLEDライトから、クラス最高の明るさを誇る2×1ソフトライトまで、RotolightのLEDライトは、世界中のイメージメーカーのワークフローを効率化しています。

Rotolight - Dirigent


チアゴ: えぇー! このライトめっちゃいい!!

ダイゴ: なにがいい?

チアゴ: めっちゃいい!! ロゴとか……あと小さい!

ダイゴ: (苦笑)そうですか……今回は「シネマティック」がキーワード。映画の1シーンを切り抜いたような……そんな表現を念頭に置いて撮影をするんだぜ?

チアゴ: ねんとーにおく……? ダイゴさんの言ってる言葉いつも難しい……

ダイゴ: そんな難しい語彙でもなんでもないんだが?

チアゴ: え、「ごい」!? 「ごい」ってなに?

ダイゴ: ねえさっさと始めよ?


瞬間光での撮影 [AEOS 2+NEO 3]

撮影:河合大呉
スタジオ用ストロボとして使用でも十分な光量
LUMIX G9 PRO/LEICA DG VARIO-SUMMILUX 25-50mm/F1.7 ASPH./25mm/1/60秒/ISO 800

チアゴ: (テザリングの画面みながら)おぉ! 照明めっちゃいい感じ! ウォーレン(当日お手伝いいただいたもう1人のDP)に感謝しないと!

ダイゴ: 意図した色を出してくれる。てか照明の設定は自分です。

チアゴ: 手伝ってくれてるウォーレンに感謝しないと!

ダイゴ: ……ウォーレンありがとう! でもレタッチゼロでここまで表現できるのまじ最高すぎるな。


モデルの正面からの瞬間光には小さいNEO 3を使用。ストロボ使用時には最大1万700lux(3フィート/約1mで)と小さい躯体からは想像できない出力が可能。

使用時に気づいたのだが、NEO 3には映像系ペリフェラルでは必須のソニーNP-Fバッテリーが使用できるのだが、7,500mAh以下のものを使用すると、瞬間的な出力に耐えられないので注意が必要だ(最初は弊社にあった5,600mAhのバッテリーを使用、1回発光した後に、バッテリーが切れてしまった。満充電した同容量のバッテリーを再度使用したが同様だった)。


アクセサリーも充実しており、バーンドアやグリッドの設置が可能。バーンドアを使って壁バンの光の漏れ(ブリーディング)をコントロール。

後方からの車のヘッドライトからくるようなリムライトを表現したかったため、瞬間光であれば最大1万7,500LUX(3フィート/約1mの距離にて)とLEDライトでは高出力のAEOS 2を使用。


テスト撮影時の写真(1)。AEOS 2を1灯(左)をモデルの真後ろにおいた時の使用と、2灯(右)を左右に置いた際のリムライトの表現の違いがはっきりわかる。

また、シャッタースピードは最大同調速度1/8,000秒と、スタジオ用ストロボだと無駄に高性能でお値段高そうな数字である。アスリートの撮影で、刹那な瞬間を完璧に捉えられる数字だ。


テスト撮影の際の写真(2)。モデリングライトは見たそのままの色が写真に表現されるのも素晴らしい。

モデリングライト使用時の出力も調整可能で、現場での使用感は抜群だ。

<撮影データ>使用フィルターはブラックミスト 1/4 +⅛

車のヘッドライトのようなヘアライトまたはリムライトを表現したかったため、後方からAEOS 2の青色に設定してフラッシュを発光。

前方には強すぎないNEOS 3を使用し、赤色でも露出しすぎないよう抑えめの設定で被写体を照らした。


瞬間光+定常光の撮影(コンポジット) [AEOS 2+NEO 3]

撮影:河合大呉
LUMIX G9 PRO/LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm/F1.7 ASPH./10mm/1/100秒/F2.8/ISO 200
<撮影データ>メインの被写体
<撮影データ>背景

ダイゴ: 多重露光みたいなのやりたかったんよね、ちょっとポスターっぽいの。かなり発色鮮やかで、彩度が他のLED照明より高い気がする。

チアゴ: なんか色そのままで出るね!フラッシュも定常光もまったく同じ色じゃん?

ダイゴ: CCTだとTLCI 99なんだって。TLCIはEBU(European Broadcasting Union)が定めた、映像業界向けで映像に特化した演色評価指で、3CCDをカメラを基準にした規格だってさ。

チアゴ: ほえー、いい色! めちゃきれい!

ダイゴ: ねえ俺の話聞いて?


NEO 3にはRotolight純正のアルカスイスプレートが付いたボールヘッドをつけており、狭いところにも簡単に設置ができた。


5,600Kに設定したNEO 3を1mの距離で計測した結果。色温度の大きな相違もなく、TLCIも98と十分で、光量も確保できているのが数値で分かる。


定常光での撮影 [NEO 3]

撮影:久米チアゴ
<撮影データ>

ダイゴ: DPとしての本領発揮だな、フレーミングと画角命なやつ。やっぱこういう照明作るの得意だよね。

チアゴ: ハッカーをイメージしてみたんだよね。3灯仕込んでるし、スモークもめっちゃ炊いた!

ダイゴ: ハッカーはこんな画面使わんけどな。これは「よーし、そのまま…いい子だッ」とか演者に言わせたいやつな! いわゆる記号化ってやつだね。

チアゴ: え、うそ!

ダイゴ: え……うそ……?


撮影場所はスタジオのオフィス部分を使用。3灯を使用しており、バッテリー使用なので、上向きの天井バウンス用も適当な場所に置ける。


外での撮影がラクラク、その魅力を探る [NEO 3]

撮影:久米チアゴ
<撮影データ>

ダイゴ: 外での撮影のお手軽感がすごいよね、NEO 3って。このサイズはホント持ち運びが楽だよ。アシスタントがうれしいやつ。なんでフラッシュ炊かなかった?

チアゴ: 最初に画はブラマジ(Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K Pro)のモニターで確認してるから! フラッシュ焚くまで照明の強さ分かんないし。

ダイゴ: そういうやり方もあるのね、でもモデリングライトでの確認では足らない? 結構な出力もできるんだぜ、フラッシュ焚く時よりは出力低いけど(NEO 3の最大出力は定常光5,443lux、瞬間光1万700lux)。

チアゴ: わかんないからやらない。

ダイゴ: そういう取捨選択が無駄に上手なとこ好き。


NEO 3を2灯置いて撮影。暗闇の中でもかなりの光量を得ることができている。

奥の建物から漏れる光の色に合わせた色にするのも簡単に設定ができた。この撮影時には使わなかったが、RotolightのスマートフォンAppを使えば、スマートフォンで撮影したサンプルの色を瞬時にライトに反映できる便利な”Magic Eye”機能も搭載している。


NP-Fバッテリーを使用することにより、ロケでの手軽さが際立つ。


背景に色を入れるもの自由自在 [NEO 3]

撮影:河合大呉
<撮影データ>作品上
<撮影データ>作品下

ダイゴ: 背景にも結構色が広がるなおい。3灯でこの暗闇なら十分だね。

チアゴ: (NEO 3)ちっちゃいのにすごいね!

ダイゴ: 俺スタジオ写真と比べると、RGB照明使ったストリートフォトグラフィーって苦手かも。定常光だと映像と同じだけど、俺はガファーでもないから。照明当てる時動いてる人や物に対して、光が対象に影響する距離感がモニター越しとかだとわかりにくくてさぁ。

チアゴ: そんなの気にしちゃだめだよ、適当にやらないと!

ダイゴ: 気にしちゃうんだよなぁ。

チアゴ: 俺は気にしない。そんなのばっか気にしてたら疲れるし!

ダイゴ: (ぐぬぬ)


NEO 3はコンパクトに持ち運びが可能なため、場所を選ばない。


スローシャッターにしてモーションブラーをかけ、トラック後方部に照明を当てている。

まとめ

今回使用したAEOS 2/NEO 3の違いは何かというと、光の出力と本体サイズのみ。今回は主にRGBを使用した撮影となったが、タッチスクリーンからケルビン値(色温度)、RGBからの彩度などの変更、またジェルフィルターからの選択など、きめ細かい演出設定を容易になる点はとても好印象だった。

そしてサイズは違えども、どちらのライトにも剛性があり、ノブ回転時のスムースさやクリック感、タッチパネルのレスポンスの速さなど、触感部分の随所に高品質を感じ取れ、所有欲をくすぐるライトだと感じた。

今回は「写真」の表現ではなく、映像を切り取ったようなフルカラーでの撮影だったが、CCT(相関色温度)によるバイカラーでの表現は的確で、全体的に今まで使用したことのあるLEDライト(ARRIやAperture、Dedolightを含む)の中でもかなりの優等生だと思われる。オフカメラ・フラッシュ撮影で使用するElinchromのコマンダーとのペアリングも、電源を入れた瞬間に終わっており、こういう見えない所でストレスフリーなのは、数々の機材に悩まされてきた経験がある中でも最高におすすめポイントとなる。

日本ではクライアントワークは特に「写真」という質感で、ノイズレス、クリーンでぱきっとした画の成果物を求められる状況だが、ジェルフィルターなどを用意せず、ここまで高演出で手軽にLEDフラッシュが炊けるのであれば、ますます表現が広がり、制作者側に更に選択肢が増えていく可能性を感じた。シネマティックフォトグラフィーはまだ馴染みの薄い分野だが、新興LEDライトメーカーの増加により、プロの照明環境でも対応可能な照明が提供されることが不可欠だ。Rotolightはその要件を十分にクリアしている。

もうちょっとここに手が届くといいなという点も見受けられた。

Bowensのアームの取り付け方がすこぶる面倒

限られた時間内で撮影のためソフトボックスの使用は諦めてしまった。Bowensマウントをつけられるアームがアクセサリーとして存在している。時間に余裕がある時には問題ないだろうが、取り付け、取り外しに関しては使い勝手がよくデザインされてるとは思わない。

AEOS 2のヨークに取り付けるアクセサリー

AEOS 2には3rdパーティーアクセサリーを取り込む方法が現在あまりない。この出力であればスポットライトぽくも使用が可能だと思われる。スヌートなど照明部分前に装着できるものを増やしたり、バーンドアでもはめ方を改善し、更に簡単に取り付けられる方法があったら制作側としては嬉しい。現場で職人気質で柔軟性のない照明部のボスには怒られそうな点であると感じた。

写真撮影という制作カテゴリであれば、スタジオ内ならAEOS 2を使用し、持ち運び外で手軽に撮影するならNEO 3を使用するなど、棲み分け具合は十分だ。もちろん映像制作でも十分に対応できるスペックで、制作者向けだと十分に感じる取ることができた。ぜひ手に取ってその便利さ、重ねて手軽さを実感し、ぜひともシネマティック・フォトグラフィーに挑戦してほしい。

撮影スタジオ:CYK Studios(サイクスタジオ)
モデル:Hyperbeamcat
アシスタント:Warren Nathan

CYK Studios