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Nextorageの“純正”CFexpressカードリーダー「NX-SB1SE」の実力を見る

高速CFexpress & カードリーダーはどのようにワークフローを効率化するのか

Nextorageの純正カードリーダー「NX-SB1SE」

2022年12月に「世界最速」のCFexpressを発売したことで話題のNextorage株式会社。すでに多くのプロや写真愛好家のあいだで好評を得ているようです。実際に、Nextorage製品で初めてのCFexpressを体験したという人も多いのではないでしょうか?

しかし、ここで問題となるのがカードリーダーです。カードリーダーがないとCFexpressからデータをPCに保存できないのは当然ですけど、いろいろな種類のカードリーダーが出回っている状況。どれにすればよいのか悩んでしまいます。しかもどれも結構お高い。

といったところで、以前からアナウンスのあったNextorageの純正カードリーダーが、ついに製品化されるという一報が舞い込んできました。

今回は普段の仕事撮影や作品撮りを通して、実際にCFexpressを使った撮影からバックアップまでのフローを再現。Nextorageの純正カードリーダー「NX-SB1SE」の実際の使い心地を試してみることにしました。

CFexpress Type B「NX-B1PRO」でスナップ撮影

まずは撮影からになりますが、今回は東京都内を歩いて巡り、スナップ撮影を行いました。

使用したカメラは「FUJIFILM X-H2」で、これにNextorageのCFexpress「NX-B1PRO 330GB」をいれて臨みました。

FUJIFILM X-H2
NextorageのCFexpress Type B「NX-B1PRO」

「スナップ撮影でそんなに枚数を撮るのか?」と不思議に思われるかもしれませんが、筆者の場合、眼についたものはとにかく何でも撮るようにしていますし、ちょと気になる被写体に出会ったときには、引いたり寄ったりアングルを変えたりしながら複数枚を撮るため、気づいてみれば大量の画像がメモリーカードに収まっているのが常のこと。

さらに、多くの場合は露出ブラケットを使用して明るさの違う写真を3~5枚撮っています。昨今ではカメラのAF性能が格段に向上したおかげで、シャッターチャンスをモノにする機会が増えたことも、撮影枚数増大の要因になっています。

もとよりメモリーカードのスピードと容量は悩みどころでしたので、CFexpressを採用するデジタルカメラが増えつつある今の状況は、筆者にとって喜ばしい限りなのです。

純正カードリーダー「NX-SB1SE」が登場

撮影時の悩みはCFexpressを使うことでほとんど解消され、残った問題がPCへのデータ取り込み。しかし、「それもこれで解決されるに違いない!」という期待を高めてくれるのが、7月4日発売の純正カードリーダー「NX-SB1SE」です。

外形寸法は59.2×80.6×13.2mm。CFexpressカードリーダーとしてはコンパクトな部類になると思います。

内部に組み込まれた大型のヒートシンクにより、データ転送時のサーマルスロットリング(温度が上昇しすぎた際に自動的に性能を抑えて過熱を防ぐ機能)を抑制する設計。しかもヒートシンクには放熱性が高いブラックアルマイト処理を施すという念の入れようです。

USB 3.2 Gen 2×2に対応するのも特徴です。USB 3.2 Gen 2×2とは、現行の多くのPCで採用されているUSB 3.2 Gen 2(10Gbps、1,250MB/秒)の転送速度を2倍にした20Gbps(2,500MB/秒)の規格です。

「NX-SB1SE」のUSB Type-Cコネクタには、「USB 20GBbps」のテキストが記載されています。

CFexpressの理論上の最大転送速度が2,000MB/秒。そして「NX-B1PRO」の最大転送速度が1,950MB/秒ですので、純正カードリーダー「NX-SB1SE」なら、「NX-B1PRO」の高速性能を活かせるわけです。

ベンチマークソフトで転送速度を計測

計測に使用したPCは、マウスコンピューターの「DAIV FX-A5G50」です。この製品は、標準構成でUSB 3.2 Gen 2×2のUSB Type-Cコネクタを装備していますので、今回の製品のベンチマークテストには好適です。

マウスコンピューター「DAIV FX-A5G50」。主な仕様はAMD Ryzen 5 7600、GeForce RTX 3050、メモリー16GB、M.2 SSD 500GB(NVMe Gen4×4)。標準構成でUSB 3.2 Gen 2×2対応のUSB Type-Cコネクタを備えている
CrystalDiskMarkでの計測結果

「CrystalDiskMark」でのベンチマーク結果は、読み出し(Read)が約1,809MB/秒、書き込み(Write)が約1,702MB/秒。おおむねパッケージの表記に近い転送速度が出ています。CFexpress Type Bで世界最速を謳う「NX-B1PRO」のベンチマーク結果として申し分がなく、さすが純正のCFexpressカードリーダーといった結果になりました。

高速で安定したデータ転送を実感

この日、3時間ほどの撮影した画像の枚数は、RAW+JPEGで1,764枚、データサイズは合計で51.8GBでした。

「NX-B1PRO 330GB」に記録されているこれらの画像データを、「NX-SB1SE」を使って「DAIV FX-A5G50」に取り込むのに要した時間は約49.5秒。数字だけではいまひとつピンとこないかもしれませんが、51.8GBの画像データを1分とかからず取り込むというのは、常に1GB/秒以上でデータが転送されているということ。見ていてその速さを確実に実感できるスピードです。

同じ画像データを、筆者所有のカードリーダーを使って自宅のPCに転送したときに要した時間は約2分58秒でしたので、約49.5秒というのがいかに速い数字であるかが分かると思います。自宅でのデータ転送に時間がかかったのは、筆者所有のカードリーダーがUSB 3.2 Gen 2(×1)までしか対応していないことと、途中でサーマルスロットリングが発生したためだと考えられます。

旧来のSDメモリーカードがメインの場合、1回のデータ取り込みで10分やそれ以上かかってしまうことはザラでした。遠方への主張撮影や海外撮影などでは、へとへとに疲れて宿でデータをバックアップしている最中に寝落ちしてしまい、どこまでデータを保存したか分からなくなってしまうこともあります。今回のような高速で取り込める時代になったのはありがたいことです。

また、「NX-SB1SE」はPCと接続した際に、認識が速く、かつ安定しているのも魅力でした。カードリーダーによっては認識までに数分の時間を要したり、ひどいときには認識そのものができなかったり、転送中に接続が切れてしまうなんてことも経験していますの、これは意外にとても重要なことだったりします。

まとめ

対応するデジタルカメラの種類も増えてきたことで、「いよいよCFexpressを導入するか」と検討している人も多いかと思います。

しかし、新しいタイプのメモリーカードを導入するには、新しいタイプのカードリーダーが当然必要になります。低品質なカードリーダーは満足に性能を発揮してくれないことがあるばかりか、データバックアップ中に事故にあうリスクを、どうしても心配せずにおれません。

ところが、メモリーカードメーカーの純正カードリーダーなら、信頼性の高さからくる安心感はもとより、デジタルデバイスにはつきものの相性問題という点でも安心です。

「NX-SB1SE」の価格は税込7,990円。普及前のカードリーダーとしては、思っていたより低価格です。遠出の撮影ではカードリーダー自体の紛失や故障を考える必要がありますが、これなら複数を用意することもそれほど難しくありません。CFexpressがますます身近になっていることを感じます。気兼ねなく大量の写真を撮ることができそうです。

制作協力:Nextorage株式会社

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。