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写真が本来持っている底力を引き出すテクノロジー…キヤノン「Neural network Image Processing Tool」(その1)

写真家5名が実証レポート 高画質化の結果は?

さらなる高画質を求める人に向けて開発されたキヤノンの「Neural network Image Processing Tool」。ジャンルの異なる5人のプロ写真家がその効果を検証した。

※本企画は『デジタルカメラマガジン2023年7月号』の内容を抜粋・再構成したものです。

風景——館野二朗

茶畑の葉の1枚1枚が分離して圧倒的な解像力の高さとノイズレス

このツールは、写真のピクセルレベルでの解析と補正を行い、写真の品質を向上させる。茶畑から富士山を撮った写真に適用したが、適用後の写真は茶葉1つ1つの輪郭が浮き上がり、質感や立体感も増している。富士山も残雪のある場所とない場所のコントラストがつき、くっきりと見えるようになった。

ノイズや色収差などもバランス良く補正するので、単にシャープネスを上げたモノではなく、高画素機や1つランクが上のレンズを使ったかのような仕上がりになる。カメラの性能を最大限に引き出せる画期的な技術だと感じた。

EOS R5/RF24-105mm F4 L IS USM/76mm/マニュアル露出(F14、1/10秒)/ISO 100/WB:太陽光/Neural network Image Processing Tool:ON
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鉄道——長根広和

遠景の描写力が向上…ノイズがなくクリアな風景に

田植え直後の水田に雲が映るのどかな風景。RF15-35mm F2.8 L IS USMで撮影したので描写力にも満足はしていた。しかし今回ツールを使ってその結果に愕然とした。

はるか遠くの山々や風力発電の風車は、多少にじんで見えるのはあたりまえだと思っていたが、等倍表示で見たときに「ウソだろ!」と衝撃を受けた。写真が一皮むけたようなイメージで、手前の木の解像感や田んぼの水面のリアリティーなども、ものすごく向上している。空にあったノイズがなくなり、さらに雲のディテールまで細かく描写されていた。

この違いを一度体感してしまうと、もう使わずにはいられない。

EOS R7/RF15-35mm F2.8 L IS USM/22mm(35.2mm相当)/マニュアル露出(F11、1/1,000秒)/ISO 800/WB:太陽光/Neural network Image Processing Tool:ON
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飛行機——チャーリィ古庄

機体のディテールがはっきりして飛行機の存在感が際立つ

日没後の成田空港に向かうボーイング787型機。機体がしっかり止まるように高感度で撮影したため尾翼の鶴丸のディテールがまあまあ出ていたのが、ツールを使うと低感度で撮影したようなクリアな描写に。信じられないほどのクオリティーだ。

EOS R3/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/35mm/マニュアル露出(F4.5、1/500秒)/ISO 32000/WB:オート/Neural network Image Processing Tool:ON
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仙台空港に着陸する機体を画面いっぱいに撮影した。もともとクリアに撮れて満足していたはずだが、ツールを使うとぼけていたコクピットのワイパーやボディの色の境目など細かなディテールが復活。ポスターサイズで見てほしくなるくらい画質が上がった。

EOS R7/RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM/500mm(800mm相当)/シャッター優先AE(F10、1/1,250秒、±0EV)/ISO 800/WB:オート/Neural network Image Processing Tool:ON
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夜景——岡嶋和幸

高感度撮影とは思えないクリアで鮮明な画像に仕上がる

ISO感度は低めなのでノイズ感はほとんど変わらないが、デジタルレンズオプティマイザなどの機能が効果的に作用。ディテールの再現や点光源の描写など不自然さが改善され、解像感が向上している。

EOS R8/RF24-70mm F2.8 L IS USM/35mm/絞り優先AE(F5.6、1/8秒、−2.0EV)/ISO 400/WB:オート/Neural network Image Processing Tool:ON
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超高感度で撮影した写真では、ノイズによるざらつきがなくなってすっきり見えるだけでなく、甘くなったディテールもうまく再現。グラデーションを保持しながらバランス良くノイズが低減されているため立体的で、ノイズによりがたついた直線などもシャープに描かれている。超高感度とは思えないほどクリアかつ鮮明に仕上がっている。

EOS R8/RF24-70mm F2.8 L IS USM/24mm/絞り優先AE(F8、1/25秒、−0.7EV)/ISO 12800/WB:オート/Neural network Image Processing Tool:ON
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星景——八木千賀子

消えかけていた星が輝き、夜空が美しく滑らかに

星空風景でこのツールを使ったがどの写真でも作品全体の雰囲気が一変した。今までのノイズ処理では消えてしまっていた星は鮮明になり、地表の建物の屋根の骨組みは不鮮明だったのだが、低ISO感度で撮ったような写りになっている。

EOS R5/RF14-35mm F4 L IS USM/14mm/マニュアル露出(F4、30秒)/ISO 4000/WB:太陽光/Neural network Image Processing Tool:ON
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この写真の場合、処理前よりも枝先が鮮明に浮かび上がっている。空は滑らかさを増し、夜空から光害のある領域までの美しいグラデーションとなった。技術の進歩によりノイズを心配せずに撮影できるので写真表現の幅がさらに広がる。今後も使用したいと感じた。

EOS R5/RF24-70mm F2.8 L IS USM/24mm/絞り優先AE(F2.8、30秒、+0.3EV)/ISO 1600/WB:太陽光/Neural network Image Processing Tool:ON
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Neural network Image Processing Toolの使い方

①有料プランに加入する

このツールを使うには有料のプランに加入する必要がある(1カ月の無料期間あり)。キヤノンIDが必要になるので持っていない人は登録しておこう。

②DPPの拡張機能から起動する

DPPの起動後、「拡張機能」の「ダウンロード/更新」でソフトをダウンロードしてインストールする。インストール後はRAWファイルを選択後、ツールを起動を選ぶ。

③効果のパラメーターを選ぶ

ツールを開き「設定を開く」を押すと下の画面になる。ノイズリダクションとレンズオプティマイザはスライダーを右に動かすと効果を強め、左に動かすと弱められるデフォルトは「0」になっている。

◆対応カメラはEOS-1D X Mark III以降

劇的な効果を生むツールだが、使えるカメラが限定されている。EFマウント機はEOS-1DX Mark IIIのみ、RFマウント機も初期のEOS RやEOS RPは対応していない。使う場合は手持ちのカメラを確認しておこう。

対応カメラ(2023年6月10日時点)

EOS-1D X Mark III/EOS R3/EOS R5/EOS R6 Mark II/EOS R6/EOS R7/EOS R8/EOS R10/EOS R50/EOS R5 C

◆レンズオプティマイザは RFレンズのみに対応

解像感が大幅にアップするレンズオプティマイザはRFレンズのみでEFレンズには対応していない。RFレンズも一部のレンズは未対応なので気を付けたい。未対応のレンズはDPPのレンズオプティマイザが適用される。

◆外部GPU搭載のパソコンでないとツールは起動できない

このツールを使うにはNVIDIA GeForceやAMD Radeonなどの外付けGPUが必須となっている。Intel Iris XのようなCPU内蔵GPUでは起動しないので、購入前に自分のパソコンスペックを確認しておこう。

Windows 10以降のみ対応/月間(31日)プラン:550円/年間(365日)プラン:5,500円

※プランの詳細や使用条件はこちらをご覧ください

使用機材:ASUS Zenbook Pro 14 Duo OLED UX8402VV
協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

デジカメ Watch編集部