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星空写真家がチョイスした“夏の星空風景撮影”に最適なレンズ

周辺部の解像力が高いRF15-35mm F2.8 L IS USMがおすすめ!

RF15-35mm F2.8 L IS USM
●SPECIFICATION
対応マウント:キヤノンRFマウント
レンズ構成:12群16枚
絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)
最小絞り:F22
最短撮影距離:0.28m
最大撮影倍率:約0.21倍(35mm時)
フィルター径:φ82mm
外形寸法:約φ88.5×126.8mm
質量:約840g

6月~9月にかけて、東、もしくは南の空に直立する夏の天の川を見ることができる。空を切り分けるような星の流れはとてもドラマチック。地上の風景と一緒にはっきりと写し取るのはむずかしいと思われがちだが、最適な機材を使うことにより、そのハードルは下がる。星空写真家が愛用しているレンズを紹介する。

※本企画は『デジタルカメラマガジン2023年7月号』より転載・加筆したものです。


レンズ前面にねじ込み式の円形フィルターが装着できることも、リアに装着することがはばかられる多湿な夏の撮影ではうれしい

F2.8通しの広角ズームである本レンズは、星空と風景を絡める撮影に最適。一般的にF4以下の明るいレンズが望ましいとされる星空の撮影において、F2.8は必要十分。単焦点の広角レンズにはさらに明るいレンズもあるが、ズームレンズならではのフレーミングの自由度は、地上の風景と天体をバランス良く収めるのに抜群の力を発揮する。15mmで天の川を広く撮るのも良し、35mmで天の川の濃い部分だけを狙うも良し、20〜28mmで風景とのバランスを思案するのも良し。

地上の風景をいかに印象的に絡められるかが重要になる星空風景で、地上の被写体のテクスチャーを表現でき、RAW現像時にシャドウ部を持ち上げても破綻しない描写力を持ち合わせている。コントロールリングなどカメラとの連携ができることも純正レンズならでは。暗闇で感覚的・直感的に操作できるのはありがたい。

EOS R6 Mark IIに装着

星空風景の撮影に適している理由

①開放F2.8でも非点収差が少ない

星はなるべく「点」で写ることが望ましい。そのため、サジタルコマフレアの発生は抑えたい。光源が尖ってしまうと星の形が美しくない。本レンズは高い光学性能により、非点収差が抑え込まれている。

画面端に配置したアルタイルもきれいな円で描写される

②地上の風景を描き出す解像力

星が流れないギリギリの露光時間で撮影するため、地上の風景は真っ暗になる。それでもしっかり解像してくれるので、RAW現像ソフトでシャドウ部を持ち上げても細部が破綻することなくディテールが現れる。

白い花の中のディテールがはっきり見えてくる

③ズームレンズによる自由度の高さ
星景写真の撮影では、地上の風景と天体をバランス良く配置するのに苦労する場合が多い。撮影ポジションが限られているロケーションでは、ズームレンズの自由度の高さが抜群の威力を発揮する。

神仙沼湿原は木道があり撮影ポジションが限られる

星を1個ずつはっきりと描き写真に説得力を生み出す【天の川】

風のない神仙沼湿原では、天の川の淡い光が水面に映り込んだシーンも狙いやすい。空の星だけではなく、映り込んでいる星もしっかりと解像して表現したいと考えている。

極めて低いポジションから天の川と水面の映り込みを狙った。ミツガシワの葉のディテールを残すため、地上の景色にピントを合わせた写真と深度合成した。

空一面の小さな星の1つ1つ、水面の星まで繊細に写し取ってくれた。その繊細な描写が写真全体として見たときに、空の下に広がる風景の説得力、満天の星空が持つある種の優しさを表現してくれる
【星空と地上をPhotoshopで深度合成】
星空:20mm/マニュアル露出(F3.5、44秒)/ISO 10000/WB:2,750K/赤道儀
地上:20mm/マニュアル露出(F3.5、44秒)/ISO 2500/WB:2,750K

地上のディテールが場所の情報を伝える【天の川】

初夏のニセコアンヌプリ山頂からは、天の川と羊蹄山、山麓の街々の夜景がぜいたくに同時に楽しめる。遠くの風景や星空に心を奪われてしまいがちだが、せっかく夜間に苦労して登った山頂の足元の質感も残したい。

この写真では地上景の別撮りをしていないにもかかわらず、地表の質感を十分に捉えることができている。「今、ここでしか見られない風景」の、「今(天体)」と「ここ(山頂)」を表現するのに、本レンズの優れた解像度に助けられた。

遠い街明かりを受けた草木の穏やかな陰影、ひんやりと自然の厳しさを伝える足元の小石など、山頂の暗闇の中でもそれぞれのテクスチャーがしっかりと残されている
15mm/マニュアル露出(F2.8、12秒)/ISO 3200/WB:2,970K/25枚をPhotoshopでスタック処理

星座の撮影範囲をズームレンズで調整【北斗七星】

神仙沼湿原は木道以外の場所への立ち入りが禁止されている。6月に横たわる北斗七星が撮影できるこのポイントは、三脚を設置できるスペースが限られるため、ズームレンズのフレーミングの自由度が大いに役に立つ。

この写真では低空に位置する北斗七星と、水面への映り込みを狙った。鏡のようにはっきりと映し出された星空、天地を線対称で表現するために二分割構図に。雲と風がない短い時間にうまく撮影できた。レンズ交換をしていたらチャンスを逃したことだろう。

24mm/マニュアル露出(F3.2、13秒)/ISO 6400/WB:2,700K/12枚をPhotoshopでスタック処理

周辺の星の輝きもしっかりと見せる【北極星】

タイマーレリーズを使い連続撮影した画像をPhotoshop上で比較明合成をして星の日周運動を表現した。

北極星を中心にした円運動を撮影する場合、歪曲の大きいレンズでは円がゆがんでしまうことが多い。本レンズを使用すれば、北極星をフレームの中にうまく配置でき、真円に近いきれいな円運動を撮影することが可能だ。また、周辺に至るまで星の輝きがしっかりと記録することができる。

24mm/マニュアル露出(F3.2、14秒)/ISO 3200/WB:2,750K/168枚をPhotoshopで比較明合成

協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

石塚貴洋

北海道岩内町在住。2018年に初めて神仙沼で天の川の撮影をして以来、神仙沼を中心に北海道の星景写真の撮影を続ける。地域の魅力の発信と貴重な自然環境の保全のため、神仙沼レストハウスで毎年グループ展を開催。販売などの収益を環境保全のために寄付している。