キヤノンEOS Kiss X6iの「ハイブリッドCMOS AF」を動画で紹介

Reported by 本誌:折本幸治

 6月22日、「EOS Kiss X6i」がキヤノンから発売された。定番ともいえるエントリークラスの大ヒットシリーズ、EOS Kissシリーズの最新モデルで、今回は一眼レフカメラ初となる、撮像素子面での位相差検出AFに対応。その名も「ハイブリッドCMOS AF」をひっさげての登場だ。

 ここでは、ハイブリッドCMOS AFの実力を動画を交えながら紹介したい。その他の詳細なスペックや関連記事については、「キヤノンEOS Kiss X6i関連記事リンク集」をご覧いただければと思う。


ハイブリッドCMOS AFとは

 ハイブリッドCMOS AFとは、撮像素子に位相差検出AF用の画素を搭載することで、位相差AFセンサーが動作しないライブビューや動画記録時にも位相差AFを可能にしたAFシステムだ。

EOS Kiss X6iに搭載されたAPS-Cサイズ相当の有効1,800万画素CMOSセンサー。画素数こそEOS Kiss X5と同じだが、位相差検出AF用の画素が埋め込まれている

 これまでのEOS DIGITALにおけるライブビュー時のAFといえば、位相差AFセンサーを使う「クイックAF」と、撮像素子面で行なうコントラストAFによる「ライブAF」を使い分けることができた。

 本来、EOS DIGITALはライブビューを前提として出発したシステムではないので、ライブAFはノンレフレックス(ミラーレス)勢のコンティニュアスAFに比べて遅い。一方クイックAFは位相差AFセンサーのため、合焦速度は光学ファインダー使用時と原理的には同じ。ライブAFより高速だ。ただし、ミラーアップとミラーダウンを伴うため、ライブビューが瞬間的にブラックアウトする欠点がある。

 EOS Kiss X6iから搭載されたハイブリッドCMOS AFは、撮像素子に埋め込まれた位相差検出AF画素がおおよその測距を高速に行ない、その後コントラストAFが合焦まで持って行くというもの。コントラストAFのみで測距するより合焦地点を前後するオーバーランが少なく、効率的な測距が可能になる。

 同時に、ライブビューでAIフォーカスとAIサーボが使えるようになったのもポイントだろう。ライブビューでの顔認識も可能で、顔認識+追尾優先AFといった、コンパクトデジカメで一般的なAFモードも使えるようになった。

 ハイブリッドCMOS AFのもうひとつの大きな効能は、動画記録時に「動画サーボAF」が可能になったことだ。被写体にピントを合わせ続けるAFモードで、これもコンパクトデジカメやノンレフレックス機なら、当たり前の機能になる。これが搭載されたことで、ようやくムービーカメラのような使い勝手で、子どもやペットの動画を気軽に記録できるようになったわけだ。

「動画サーボAF」が使用可能になった。動画記録中に被写体を追い続ける

 ハイブリッドCMOS AFにまつわる機能は、EOS Kiss X6i STMレンズキットに含まれる「EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM」(単体では7万1,400円)や、「EF 40mm F2.8 STM」(2万4,150円)との組み合わせが有効。他のEFレンズおよびEF-Sレンズでも機能しないことはないが、製品名に「STM」(Stepping Moterの略)がつくこれらのレンズなら、スムーズな動作と静音性が得られるという。


静止画撮影でチェック

 実際にEOS Kiss X6i+EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STMで、ほぼ最短距離の被写体にピント合わせしてみた。AFモードはライブ1点を使用している。EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STMは試作機のため、実写の掲載は見送ることにした。

 確かに、いままでのEOS DIGITALのライブAFとは一線を画する速度とスムーズさだ。


 次に、ハイブリッドCMOS AF非搭載のEOS Kiss X5で試してみた。レンズはDCモーターのEF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS IIを使用している。

 合焦までの速度が遅く、動作に無駄も見られる。特に、最後の追い込みが遅い。追い込みについては、ハイブリッドCMOS AFの性能もあるが、STMレンズによるステッピングモーターのスムーズな動作も寄与しているのだろう。


 念のため、EOS Kiss X5にSTMレンズ(EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM)を装着して試してみたのが下の動画だ。

 EOS Kiss X6iには敵わないものの、若干スムーズな動作になっているのがわかる。


 いずれも焦点距離50mm近辺での実験だが、もちろん広角端の18mmでもハイブリッドCMOS AFとSTMレンズの組み合わせは有効だった。ただし、今回の条件では現行のノンレフレックス機に比べて著しく高速というわけではない。ライブビューへの適性を強化したことで、ようやく同じ土俵にのった、という印象だ。

動画撮影でチェック

 今度は、EF 40mm F2.8 STMを使って動画サーボAFを試してみた。

 まずはEOS Kiss X6iで動画サーボAFをONにした場合。手前の木の幹から、奥の茂みにフォーカスが切り替わっている。ごく自然なフォーカス送りで、反応は速い。


 次のサンプルは、カメラに向かって前身してくる被写体を動画サーボAFで追ったもの。完全に追いきれず、若干のもたつきは見られるものの、AFが追随しているのはわかる。

 今度は動画サーボAFをOFFにしてみた。当然ながら、最初に合わせた距離からフォーカスは変化しなかった。

 最後は、EOS Kiss X5で撮影。レンズはEF 40mm F2.8 STMを使用している。動画サーボAFがないので、被写体を追うことはない。

 パンケーキスタイルのEF 40mm F2.8 STMは、その見た目からスナップ用途のレンズと見られがちだろう。しかしSTMレンズだけに、動画で使っても威力を発揮することがわかった。EOS Kiss X6iとの組み合わせもかわいらしく、価格も安い。ハイブリッドCMOS AFを最大限に活用できるので、EOS Kiss X6iと一緒に購入したいレンズだと感じた。
EOS Kiss X6iにEF 40mm F2.8 STMを装着。いままでのEOS DIGITALになかったレンズだ

EOS Kiss X5との比較(おまけ)

 今回、EOS Kiss X5と同時に使ったことで、前回のレポートで気づかなかった、EOS Kiss X6iとの外観上の違いを発見した。

 具体的には、EOS Kiss X5のシャッターボタン近辺にあった、DISPボタンが削減されていること。 このボタンは背面モニターの消灯に使っていたのだが、EOS Kiss X6iからはアイセンサーがファインダー上に搭載されたので、必要なくなったのだろう。

上がEOS Kiss X5、下がEOS Kiss X6i。DISPボタンがなくなり、その場所にISOボタンが置かれた

 EOS Kiss X6iでは、ファインダーに目を近づけるとアイセンサーが働き、液晶モニターが自動的に消灯するようになった。目を離すと点灯する。

 またEOS Kiss X6iでは、電源レバーを使って動画モードに移行するようになった。そのため、撮影モードダイヤルから動画モードが消えている。

左からEOS Kiss X6i、EOS Kiss X5

 グリップもEOS Kiss X6iの方が若干シャープな造形になったようだ。グリップの好みには個人差があるので断定できないが、個人的には握りやすくなったと感じた。

 シャッター音もEOS Kiss X5と異なる。これまでは甲高い金属音がEOS Kissデジタルの特徴だった。EOS Kiss X6iでは少しおとなしい印象となっている。ただし、締まりがないわけではなく、タイトな印象の音。

 ちなみにキヤノンマーケティングジャパンによると、EOS Kiss X6iのシャッターは、ストロボを使用しない場合は電子先幕・メカ後幕制御だそうだ。ストロボ使用時のみ先幕・後幕ともメカシャッターとなる。

 今回はEF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STMが試作機のため、実写の掲載は控えた。写真家による作例は後日、改めて掲載したい。





本誌:折本幸治

2012/6/25 00:00