Sony Tablet Sの「写真的機能」を試す

Reported by 小山安博

 ソニーから登場した「Sony Tablet Sシリーズ」は、同社による初のAndroid搭載タブレットで、大型の液晶や独自技術を盛り込んだ期待のタブレット端末だ。9.4型の大型タッチパネル液晶を搭載しており、タブレット市場で独走するiPad 2のライバルとなり得る製品だ。

ソニーのタブレット端末Sony Tablet S

 今回は、以前執筆した「iPadの“写真的機能”をチェックする」「iPad 2の写真関連機能をチェックする」の続編として、Sony Tablet Sの写真関連機能をチェックしてみたい。


美しい液晶で快適な画像閲覧

 Sony Tablet Sは、9月17日に発売された同シリーズの第1弾端末で、無線LAN内蔵モデルで記憶容量が16GBまたは32GBの2モデルが販売されている。今後3G内蔵モデルに加え、折りたたみ型のボディに2画面液晶を搭載した「Sony Tablet Pシリーズ」の発売も予定されている。

 筆者が購入したのは16GBモデルだ。OSは発表時はAndroid 3.1だったが、最初に起動するとすぐにAndroid 3.2へのバージョンアップが行なわれたので、現在はAndroid 3.2が搭載されている。

液晶は9.4型WXGAと高解像度

 Sony Tablet Sの液晶は9.4型WXGA(1,280×800ピクセル)で、iPad 2と比べて液晶サイズはわずかに小さく、解像度は高い。iPad 2の1,024×768のような4:3でもなく、液晶テレビのような16:9でもなく、16:10という解像度となっている。

製品名iPadiPad 2Sony Tablet S
外寸(mm)242.8×189.7×13.4241.2×185.7×8.8241.2×174.3×10.1〜20.6
質量(g)約680約601約598
画面サイズ9.7型9.7型9.4型
解像度1,024×7681,024×7681,280×800

 液晶の駆動方式はiPad 2と同じくIPS方式。パソコン用ディスプレイでは上位モデルの機種に採用されており、特に画像表示に適している方式だ。この方式だと視野角が広いのが特徴で、上下左右、どの方向から見ても画面の色がほとんど変わらない。発色の良さも定評がある方式だ。

横から見ても見やすく、視野角の広さが分かる。iPad 2と並べてみてもそれほど遜色はない

 Sony Tablet Sでも、視野角は広く、ほとんど真横から見ても画像が確認できる。色味の変化も少なく、画像の視認性は良好だ。輝度も十分高く、昼間の屋外でもそれなりに画像は見える。発色はやや控えめで、iPadのような派手さはないが、明るく解像度も高いため、写真の見栄えは悪くない。

発色は控えめだが、おおむね正確

 iPadと同様に、Sony Tablet Sでもカラープロファイルはサポートしていない。ブラウザでも同様なので、Android OS自体が非対応ということだろう。

 画像の表示は快適で、ダブルタッチやピンチイン・アウトによる拡大縮小も高速。ピントの確認や構図の確認用途では十分実用的だ。専用のフォトビューワーとは違い、キャリブレーションやカラープロファイルへの対応、RAWファイルの表示などといった点が不足しているため、完璧とは言いがたいが、画像閲覧においてはiPad 2とも十分に戦えるレベルだろう。


独特なデザイン

 Sony Tablet Sの特徴の1つは、その独特なボディデザインだ。全体的にはフラットなのだが、横から見ると雑誌を開いて折り返したようなアールのあるデザインで、画面を横にすると上部側が膨らんでいる。

側面から見ると、雑誌を折りたたんだような膨らみがある。iPad 2の薄さに比べるとけっこうな厚みがある

 このデザインだと、この膨らみを持つことで非常に良く手になじむ。端末を縦持ちにしたときに、この部分を持つとフィット感が高く、安定する。逆に薄型化して直線的なボディのiPad 2だとあまり安定感がなかったのだと気付くくらいだ。

 横持ちにした場合、重心が上部にかかるのだが、思ったよりもバランスはいい。内部で重量バランスをとっているような印象で、上部が膨らんでいるからといって重い、という感じではないようだ。

 本体サイズはほぼiPadクラスで、膨らみがある分、厚みがある。質量はiPad 2よりわずかに軽いが、iPadと比べるとだいぶ軽い。全体的にはプラスチッキーで、iPadほどの高級感はないが、かといって安っぽいだけのイメージではない。ただ、それであればもう一歩軽くても良かったかもしれない。

 丸みのあるボディのため、バッグへの収まりはあまりよくない。このあたりはiPadの方が収納しやすい。膨らみはあるが、フラットで出っ張りがないのは救いだ。


画像を表示する

 画像の表示には、標準で搭載された「ギャラリー」アプリを利用する。Android Market上には画像閲覧系の豊富なアプリがあり、これらをダウンロードして利用してもいいだろう。キャッシュを作成して高速に閲覧できる「QuickPic」などのアプリがおすすめだ。

標準の「ギャラリー」アプリ。ローカルの画像に加えて、Picasa Webアルバムの画像が同期できる

 標準の「ギャラリー」は、ソニー独自のカスタマイズが施されており、少しクセのある動きをする。最初に画像を表示すると写真全体を表示し、ダブルタッチすると16:10の画面全体を埋めるように画像が拡大する。画面全体を使って表示できるので見栄えはいいが、画像の一部が切れてしまう形。もう一度ダブルタッチすると画面全体表示になる。

フォルダを選択すると、その中のサムネイルが表示され、さらにタッチすると1枚表示になる

 さらに拡大したい場合は、画面上に指2本で触れたまま指を開くピンチアウト操作をする。これで等倍表示など、拡大してピントチェックなどが可能だ。QuickPicのような画像表示アプリでは一般的に、ダブルタッチで次々と拡大できるので、こうした動作に慣れていると最初は戸惑うかもしれない。また、画像に指を触れて左右に指を動かすフリック操作で前後の画像に移動できる。いずれにしても動作は高速で高解像度の画像でも引っかかりはない。

一度ダブルタッチすると、最下部の操作アイコンが表示されるエリア以外、上下の黒い帯を埋めるように画像が拡大されるさらに拡大したいときはピンチアウト操作を使う
画像にタッチすると、同じフォルダ内のサムネイルやメニューが表示されるメニューの左から2番目にある共有アイコンをタッチすると、画像を簡単に共有できる
一番右のアイコンからは、トリミングや画像の回転、位置情報があれば地図への表示も可能画像はフォルダ単位だけでなく、時間やタグなどでも分類できる

 画像の取り込みは、iPadとは異なり、パソコンとUSBケーブルで接続し、画像をコピー&ペーストなどで転送すればいい。専用のソフトなどは不要だ。逆にWindows Media Playerなどのソフトを使い、画像や動画、音楽などの転送も可能。このあたりは自由度が高い。

 もう一つの大きな特徴は、SDカードスロットを内蔵する点。iPadでは別売の「iPad Camera Connection Kit」を購入しなければSDカードを接続することができなかったが、Sony Tabletでは標準でSDカードを挿入してデータを吸い出せるようになっている。SDカードスロットは本体左側面の膨らんでいる場所に配置されており、カードを挿入した状態でもプラスチックカバーを閉じることができ、スマート。撮影中にカードが一杯になったらSony Tabletに挿入して取り込み作業をし始めたらそのままバッグに戻し、バックグラウンドで画像転送しつつ、別のカードで撮影する、といった使い方もできる。

側面にあるSDメモリーカードスロット。そのうえにあるマイクロUSB端子は、ホスト・クライアント対応で、カードリーダーの接続も可能(参考)iPad 2にCamera Connection Kitを接続したところ

 iPad Camera Connection Kitだと、本体下部にコネクターが大きく出っ張り、収納性も悪く、見た目もあまりよくない。そのままバッグにしまうと破損しそうな形状なので、Sony Tabletの方が安心感がある。

Sony Tablet Sだと、このままカードを押し込み、カバーを閉じることができる

 SDメモリーカードを挿入すると、自動的に「ファイル転送」アプリが起動し、SDカード内のデータと端末内のデータを相互にやり取りできる。画像転送用のアプリではないため、フォルダをたどって画像ファイルを見つける必要があるが、画像ファイル以外も自由に転送できるのがメリットだ。画像のサムネイル表示もされるので、全画像を一括で読み込んだり、一部の画像だけを選んで転送することも可能だ。なお、16GBモデルのSony Tabletの場合、ユーザーストレージは9GB程度のようだ。

付属の「ファイル転送」アプリ。画像に特化しているわけではない再生可能なファイルであれば画像のサムネイル表示も可能
カード挿入時に自動的にファイル転送アプリを立ち上げるかどうかや、読み込み後に画像を削除するかといった設定が可能ファイルの並び替えも可能

 画像は、任意のフォルダかファイル種類別に特定のフォルダに保存される。画像なら「pictures」フォルダなどといった具合だ。転送後は、ギャラリーや任意の画像表示・編集アプリなどで利用できるようになる。なお、転送中もほかの作業を行なうことが可能だ。

1つのフォルダに転送するか、自動で保存フォルダを振り分けるかを選択できる。ただ、この場合RAW画像はすべて「Others」フォルダに転送されたすでに取り込み済みのファイルがある場合、上書きするか、転送しないかといった選択も可能

 iPad Camera Connection Kitの場合、読み込み後に画像が自動的に日付イベントで分類されるが、Sony Tabletのファイル転送アプリは同じフォルダにひとまとめに保存する。必要なら自分で任意のフォルダに保存するようにするといいだろう。

 JPEG画像の表示に関しては前述の通り困ることはないが、問題はRAW画像の表示だ。Android 3.2は標準ではRAW画像に対応しておらず、サムネイル表示にも対応していないため、別途アプリを導入する必要がある。iPadの場合は標準でRAWの読み込みに対応。JPEG+RAWで撮影した場合、1まとめにして表示してくれるなど、画像表示の機能は優れている。この辺り、カメラメーカーでもあるソニーには頑張って欲しかったところだ。

(参考)iPad 2のCamera Connection KitでSDカード内の画像を表示したところ。JPEG+RAWの画像をひとまとめにしてくれる点は便利。ただ、並び替えができなかったり、対応する画像と動画しか表示できない、特にAVCHDが表示できない点はデメリットだろう

 試した限りでは、「Android Photo Backup」、「RawDroid Demo」、「RawVision」といったRAW対応アプリでRAW画像の閲覧が可能だった(JPEG画像も閲覧できる)。こうしたアプリを使うことで、RAW画像でも閲覧可能だが、やはり標準でRAW画像の閲覧くらいには対応しい。Android側だけでなく、ソニーはデジカメ部門もあるので、RAW画像対応のギャラリーアプリもあると良かったのだが。

 ただ、いずれにしてもJPEG画像を読み込み、表示するという点で、iPadと遜色のないパフォーマンスを備えている。特にSDメモリーカードリーダーを内蔵する点は便利で、いちいちConnection Kitを持ち歩く必要もなく、すぐに取り込みが可能なので使いやすい。ただし、SDXCメモリーカードに対応していないのは残念なところ。

 SDメモリーカード系以外のメディアの場合は、SDカードアダプタを使うか、USB接続のメモリカードリーダーを使うこともできる。Sony Tablet SにあるのはマイクロUSB端子なので、通常のリーダーの場合はケーブルの変換が必要となるが、リーダーを使うことでさまざまなカードの読み取りも可能だ。

 動画機能に関しては、AVCHD形式の動画は標準で非対応。AVCHD対応アプリも存在するが、試したところ、Sony Tablet Sではまともに再生できなかった。公式の対応フォーマットはH.263、H.264/AVC、MPEG-4、WMV、音声ファイルはAAC、mp3、WAV、WMA、WMA Pro、FLAC、MIDI、Ogg Vorbisをサポートしている。例えばH.264の場合はBaseline Profile・1920×1080・ビットレート18Mbpsまでの動画が再生可能のようだ。試してみると、プロファイル違いのMP4動画でもサムネイル・再生ができないものもあったり、iPadと同様に動画再生での確実性はあまり高くない。

 読み込み時間に関しては、Eye-Fi X2カードの3.1GBのJPEG・RAW画像を読み込んだところ、Sony Tablet SのSDカードリーダーでは9分30秒弱、iPad Camera Connection Kitでは6分程度だったので、明らかにiPadの方が早いようだ。


テレビに画像を表示

 画像表示に関しては、さらに面白い機能として、DLNA対応テレビなどにワイヤレスで画像を転送して表示する機能とスライドショー機能を備えている。手元にある東芝レグザ37Z9000だとうまくいかなかったが、本来であればLAN内のテレビに向けて画像を転送し、タブレット上で操作しながら大画面のテレビで画像を閲覧できる。

 スライドショー機能では、別売のクレードルに本体を置くと、自動でアプリが起動し、画像をスライドショー表示してくれるというもので、標準のギャラリーアプリに加え、ソニーの画像共有サービス「Life-X」と連携してオンラインの画像もスライドショーしてくれる「ネットフォトフレーム」アプリをダウンロードして利用できる。

 これまで見てきたように、Sony Tablet Sの写真的機能に関しては、「閲覧」に関してはほとんど問題がないレベルで、十分フォトビューワーとして利用できるレベルにある。

 動作は軽快で、大きな画像も快適に閲覧でき、完璧な色再現は難しいが、構図、ピントの確認には十分利用できる。何より標準でSDカードリーダーを備え、すぐに画像を読み込める点はポイントが高い。

 画像の編集に関しては、iPadほどではないにしろ、十分な数のアプリが存在しており、ある程度Sony Tablet S内で画像を編集し、それをアップロードするなどして共有することもできる。

 反面、iPadのようなカメラとの連携に関して配慮が足りない印象もあり、カメラメーカーでもあるソニーの製品としては、もう一頑張り欲しかったところ。特に画像の読み込み、カメラの画像ビューワーとしての機能、RAWやAVCHDの対応といった辺りは、大きな差別化の要因ともなるので、今後の機能強化を期待したい。



小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2011/9/29 00:00