特別企画

キヤノンDPP 4.0で仕上げる紅葉風景

特定色のみ調整して狙い通りの色を目指す

 10月10日発売の書籍「キヤノン Digital Photo Professional 4 パーフェクトマニュアル」(インプレス刊)から、キヤノンのRAW現像ソフト「Digital Photo Professional 4」(DPP 4)を使った金子美智子さんによる紅葉風景の現像テクニックと作例を掲載します。(編集部)

調整前。EOS 5D Mark III / EF 24-105mm F4L IS USM / 絞り優先AE / F14 / 1/30秒 / +0.7EV / ISO400 / WB:くもり / 58mm
調整後

POINT

  • [デジタルレンズオプティマイザ]で少し眠い画像をすっきりさせる
  • [彩度]や[コントラスト]で写真にメリハリを出す
  • [色調整]で特定色のみ調整して狙い通りの色みにする

紅葉風景の華やかさを[色調整]で再現する

 紅葉は、標高の高い山からゆっくりと低い場所へと見頃が移っていく。樹々の種類によって色も異なるため、撮影時には色の組み合わせで画面を切り取って構成していくため、色みの調整は重要だ。

 私の場合、紅葉の撮影時はホワイトバランスに[太陽光]か[オート]をよく使うが、もちろん撮影時の状況によって設定は随時変えている。例えば、この写真の場合は[くもり]で撮影した。あまり日差しがない場合は[太陽光]だと若干青みがかかることが多いためだ。

少しくすんだ色みが、調整後はクリアになった。[色調整]で紅葉の色鮮やかさが再現され、印象的な色合いに調整できた

 DPP 4はRAW現像時にこのホワイトバランスの設定をさらに納得いくまで調整できる点でもとても便利だ。また、画像の色作りに大きく影響する[ピクチャースタイル]に関しては、[風景]を選んでいる。さらに[彩度]や[コントラスト]などの微調整で、本来の紅葉の華やかさを再現してみたい。

現像ステップ

STEP 01:[レーティング]で画像を絞り込む

 私の場合、写真選びには下記のように画面の切り替えと[レーティング]を併用している。

 まず[メイン画面]で構図や露出などを基準に選び、候補写真に[レーティング]で★マークを付ける。次にその候補写真を[クイックチェック画面]で100%の表示にしてピントをチェックしてさらに絞り込む。

 最後に選んだ画像を[セレクト編集画面]で開き、[ツールパレット]で画像調整を開始する。

[メイン画面]で画像を選び、[レーティング]の[★]を付けた。その[★]を付けた画像を選択し、[クイックチェック画面]で等倍でチェック。絞り込んだ画像をクリックした状態で[戻る]ボタンで[メイン画面]に戻り、そのまま[セレクト編集]ボタンを押す

STEP 02:[明るさ調整]には[ヒストグラム]を利用

 [セレクト編集画面]で[基本調整ツールパレット]を使って基本的な調整を行うが、[シャープネス]の項目はあとでコントロールするため、最初にチェックを外しておく。

 まずは[明るさ調整]のスライダーを左右に動かし、[ヒストグラムパレット]のヒストグラムがほぼ中央に山型に表示されるように調整。このとき[輝度のみ]で表示すると見やすい。

[基本調整ツールパレット]の[明るさ調整]で明るさを調整。この写真は[-0.17]が適正だった。調整は[ヒストグラムパレット]を参照しながら行う
調整前
調整後

STEP 03:[ホワイトバランス調整]で[太陽光]を選んでコントラストを出す

 撮影はすべてAdobe RGBで行っているため、[作業用色空間]も[Adobe RGB]に設定されていることを確認してから使う。

 次に、それぞれの色のメリハリを出すため、[ホワイトバランス調整]で色みを調整。撮影時は天気に合わせ[くもり]を選択していたが、コントラストを優先して[太陽光]を選択した。[ピクチャースタイル]は撮影時の[風景]のまま。

[設定ツールパレット]で[作業用色空間]が[Adobe RGB]になっていることを確認
[基本調整ツールパレット]の[ホワイトバランス調整]で[太陽光]に変更
調整前
調整後

STEP 04:[ガンマ調整]で輝度を自動調整する

 [ガンマ調整]にはワンタッチで輝度を自動調整してくれる[自動]ボタンがあるので、これを押す。さらにその下の[詳細設定]にある[コントラスト]と[色の濃さ]で微調整した。

[基本調整ツールパレット]の[ガンマ調整]で[自動]ボタンを押す。さらに[コントラスト]を[2.0]、[色の濃さ]を[-1.0]に設定

STEP 05:[デジタルレンズオプティマイザ]でシャープネスを強める

 [レンズ補正ツールパレット]を開き、色収差や周辺光量をチェック。このときツールパレット上部の[小窓]に気になる部分を表示すると、等倍や拡大にして効果がプレビューで確認きるので便利だ。

 よく見てみると、[シャープネス]を最初にオフにしていることもあり、全体的に少し写真がぼやっとして眠く感じる。紅葉の枝などをシャープにしたいので[デジタルレンズオプティマイザ]にチェックを入れる。

 前述の通り、この[デジタルレンズオプティマイザ]を使うときは、あらかじめ[シャープネス]のチェックを外しておくのを忘れずに。

[レンズ補正ツールパレット]の[周辺光量]にチェック。[デジタルレンズオプティマイザ]にもチェックを入れた。設定値はそれぞれ自動的に設定された値のまま
調整前
調整後

STEP 06:[色調整]で特定の色域を調整する

 [色調整]で特定の色域を調整する。DPP 4から搭載されたこの機能は、[色相][彩度]のほか、8色それぞれの[H](色相)、[S](彩度)、[L](輝度)の項目を調整できる。

 他の色に影響を与えず特定の色のみが調整できるので、紅葉の色調整に向いている。

[色調整ツールパレット]を開き、[色調整]の[彩度]を[112.0]と全体を少し鮮やかに調整。紅葉に影響する[レッド]の[S]を[0.5]、[オレンジ]の[H]を[2.0]、[イエロー]の[S]を[2.0]、[グリーン]の[H]を[-7.0]に設定して印象的な色合いに調整した
調整前
調整後

STEP 07:[ゴミ消し/コピースタンプツールパレット]でゴミ取り後に現像

 最後に画像を拡大し、[コピースタンプ]で画像のゴミ取りを行う。

 [シャープネス]は、最終的に掲載するサイズなど目的に合わせて調整する。設定は[レンズ調整ツールパレット]の[シャープネス]で[アンシャープマスク]を調整している。

 すべての画像調整が終了したら、[ファイル]メニューの[上書き保存]または[別名で保存]を選び、RAW画像のまま保存して調整内容も保存する。必要に応じて[変換して保存]を選び、JPEGまたはTIFFにてRAW現像が完了だ。

[ゴミ消し/コピースタンプツールパレット]で[ブラシ]を選び、ゴミのサイズに合わせて[半径]を調整しながらゴミを消して細部を仕上げる

イメージに合わせたホワイトバランスの調整と[色調整]で表現の幅が広がる

 キヤノンの純正ソフトであるDPP 4でRAW現像するうえで私が特に気に入っていることがある。それはRAW現像時にいろいろなホワイトバランスを試して画像の違いを見られること。自分のイメージに合ったホワイトバランスを選ぶことができるからだ。

 また、キヤノンの純正レンズで簡単に使える[デジタルレンズオプティマイザ]でレンズの収差補正を行い、画像をクリアに仕上げられる点もいい。

 そして、DPP 4から搭載された特定色域の調整機能は、他の色に影響を与えず、自分が思い描いている色に微調整できる。これにより、表現する幅が広がり、以前よりもDPPを使ってのレタッチ作業は楽しくなったと感じている。

 ◇           ◇

キヤノン Digital Photo Professional 4 パーフェクトマニュアルとは?

DPP 4のすべてがわかるマニュアル本。新機能はもちろんのこと、搭載されているすべての機能の効果と活用法を紹介。また、ステップアップを望む読者のために、人気写真家8人の現像テクニックを掲載。税別2,400円(電子版は税別1,850円)、B5変形判、256ページ。

金子美智子

(かねこ みちこ)宮城県仙台市生まれ。故秋山庄太郎氏に師事。フリーカメラマンとして全国各地の心を癒す四季折々の風景と鉄道のある風景を撮り続けている。

http://michiko-photo.com/