特別企画

APO-LANTHAR(アポランター)の実力を3つのシーンで検証

ニコンZマウントに最適化された名玉で撮る自然風景、ポートレート、スナップ

コシナ APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical Z-mount
主な仕様
レンズ構成:9群11枚
絞り羽根枚数:12枚(F2、F2.8、F5.6、F16で円形絞り)
最小絞り:F16
最短撮影距離:0.35m
最大撮影倍率:0.15倍
フィルター径:φ52mm
外形寸法(最大径×全長):約67.6×70.4mm
質量:約360g

発売予定日・価格
発売予定日:2022年6月23日
希望小売価格:13万2,000円(税込)

フォクトレンダー史上最高性能と謳われるAPO-LANTHAR(アポランター)。その準広角レンズとして発売された「APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical」のニコンZマウントモデルがいよいよ登場する。画質や操作性において同マウントに最適化されたこのレンズの実力を、自然風景、ポートレート、スナップの3つのシーンで探っていく。

※本企画はデジタルカメラマガジン2022年7月号より転載・加筆したものです。

金属製の質感とクラシカルなデザイン

手のひらに収まるほどコンパクトで持ち運びがしやすく、約360gの軽さは長時間の使用も苦にならない。フォーカスリングも適度なトルクで扱いやすい。黒を基調とした高級感あふれる金属製の質感はZマウントのボディと相性が良い。

電子接点を備えてZマウントに適合

マウント部分に電子接点を搭載し、レンズとボディ間の電気通信を実現。F値やレンズ名、焦点距離などのExif情報を記録できるほか、3軸のボディ内手ブレ補正、フォーカスピーキングや拡大ボタンを使ったピント合わせが可能だ。

Q. APO-LANTHAR(アポランター)はなぜ高性能の称号なの?

A. 周辺部に至るまで驚くほど解像力が高いから

特筆すべきこのレンズの魅力は、コンパクトな設計からは想像できないほど素晴らしい解像感ではないだろうか。画像中央部はもちろんのこと、周辺部の解像力も驚くほど高く、現場でカメラの背面モニターを拡大するだけで惚れ惚れするほどのシャープさが得られていることを実感できる。ニコンZマウントに最適化されていることも大きいだろう。アポクロマート設計の特徴である色収差の出にくさや、偶数絞りの美しい光条など、このレンズが写し出す風景写真はどれも満足のいく仕上がりだ。(佐々木和一朗)

ニコン Z 7/35mm/マニュアル露出(F10、1/6秒)/ISO 64/WB:オート
拡大しても非常にシャープな写り。解像感と同時に透き通るような透明感も表現されている
開放F2とF4のMTF曲線。開放F値にもかかわらず、画像中心部(0mm)から周辺部(20mm)までグラフの落ち込みが少なく、高コントラストでシャープな画質を維持していることを示している

Q. F値によって絞りの形状が変わるメリットは何?

A. 表現に合わせて正円と多角形のボケを使い分けられること

このレンズはF値によって絞りの形が変わる。F2、F2.8、F5.6、F16で正円に、それ以外のF値で多角形になる。正円は玉ボケが丸く写るため、柔らかい雰囲気を演出できる。主題を際立たせる前ボケとの相性が良い。一方、多角形は力強い雰囲気になり、ボケを印象的に見せたい場面で有効に使える。下の馬の写真は正円で撮影し、前景の菜の花を前ボケに利用することで早朝の柔らかい空気感を表現した。(佐々木和一朗)

正円(F2.8)
多角形(F4)
ニコン Z 7/35mm/マニュアル露出(F2、1/1,000秒)/ISO 100/WB:オート

Q. ポートレートにおけるAPO-LANTHAR(アポランター)のメリットは?

A. パープルフリンジが皆無でボケも滑らかなこと

ポートレート撮影をしてみて、まずはピント面の繊細な表現力に驚かされた。開放F値であるF2からまつげや髪の毛の1本1本を極めてシャープに表現し、背景は滑らかで素直なボケが得られる。それによって写真に立体感が生まれる。また、アポクロマート設計を採用しているため、輝度のある部分に現れやすいパープルフリンジを抑え、クリアで抜けの良い印象だ。人物の透明感をそのまま引き出せている。また手前に配置した前ボケもくせがなく、自然に人物の表情へと視線誘導される。(コムロミホ)

ニコン Z 6II/35mm/絞り優先AE(F2、1/320秒、+1.0EV)/ISO 100/WB:晴天
ピント面のまつげや髪の毛の繊細さとボケの美しさを両立している。ボケはくせがなく素直な印象だ

Q. マニュアルフォーカスだとピント合わせが難しいの?

A. フォーカスピーキングが使えて操作がしやすい

スナップでもF2の開放で撮影を行った。シャープなピント面と滑らかなボケを生かすことで、主題が明確にできる。そのためには引き立てたい部分にしっかりとピントを合わせる必要があるが、合焦した部分に色を付けて知らせてくれる「フォーカスピーキング」を使用することで簡単にピント合わせができる。また、ファンクションボタンに「拡大画面との切り替え」機能を登録しておくと撮影中に被写体を拡大して確認できるので、さらに精度を上げられる。(コムロミホ)

ニコン Z 6II/35mm/絞り優先AE(F2、1/800秒、+0.7EV)/ISO 100/WB:晴天
ニコン Z 6II/35mm/絞り優先AE(F2、1/500秒、+0.7EV)/ISO 100/WB:晴天
ピーキング表示色を赤/黄/青/白から選択可能。シーンによって色を選ぶことでピント合わせが楽になる

モデル:山本珠緒(オスカープロモーション)
制作協力:株式会社コシナ

コムロミホ 佐々木和一朗