特別企画

光害を抑えてクリアな星空の色を再現…マルミ光機「StarScape for M100」

※デジタルカメラマガジン2021年11月号より再構成

光害は、人工光が過剰に夜空に漏れ出すことによって生じる。肉眼では実感しにくいが、カメラを通して夜空を撮影すると、不自然な色かぶりとして写り込む。レタッチである程度修正できるが、撮影環境などによりレタッチの難易度が大きく変わるため、画像処理の経験が求められる。その点、光害カットフィルターを使うと、撮影時にある程度光害を抑止できるため、レタッチを苦手とする人や比較明合成などでたくさん静止画を扱う場合に特におすすめだ。

マルミ光機のStarScapeは、他社の光害カットフィルターと比べても減光率が低く、夜空が暗い場所で撮影することが多い人にも扱いやすい。フィルターに起因する極端な色かぶりも発生しにくい点もポイントだ。また、夜露がついても、拭き取り跡が残りにくいなど、扱いやすさにも配慮されている。なお、StarScapeは通常のねじ込み式フィルターと同社の角形フィルターシステムM100に組み合わせるタイプがあり、ここでは後者を紹介する。

マルミ光機 StarScape for M100。実勢価格は1万8,000円前後

StarScape for M100は、マグネットホルダーM100(別売)に取り付けて使用することを前提に設計されている。マグネットホルダーは磁力で角型フィルターを取り付けられる独自のシステム。ホルダーに取り付けることで、角型グラデーションNDフィルターと併用できる。角型フィルターを使用しない場合は、M100ホルダーを外してStarScape単独で使用できる。

山中湖畔で撮影。フィルターなしの写真ではおよそ30km離れたところにある富士宮市、富士市方面の光害が発生して、地平線付近がぼんやりとオレンジ色に染まっているが、StarScapeを使用することで、スッキリとした空の印象に仕上げることができた。

StarScape for M100の効果
左がStarScape for M100<なし>、右がStarScape for M100<あり>
ソニー α7 Ⅲ/ラオワ 15mm F2 Zero-D/15mm/マニュアル露出(F2、15秒)/ISO 2500/WB:蛍光灯

POINT 1:カラーバランスを崩さずに光害の影響だけを抑制できる

StarScape for M100を使用すると、フィルターなしの写真に比べると青みが強調される。これを見て、色温度を低く設定すれば光害部分も青く目立たなくさせられるのでは? と思うかもしれないが、そうすると全体のカラーバランスが崩れてしまう。地上風景を自然な色合いで表現しつつ、光害を抑制したいときには、StarScape for M100が必須となる。

色温度で青みを加えて光害を抑え込もうとすると、地上風景までかなり青みがかってしまう。その点、StarScape for M100を使用した中央の写真は、地上の色かぶりは最小限にとどまっている。

StarScape for M100<なし>
StarScape for M100<あり>
StarScape for M100<なし>WB:電球

POINT 2:角形フィルターと併用できる拡張性の高いシステム

StarScape for M100は、同社の角型フィルターシステムであるマグネットホルダーM100と組み合わせて使用する。マグネットホルダーには角型フィルターも同時に装着可能だ。

例えば、展望台から夜景と星空をセットで撮影する場合、遠くの光害を抑えつつ、手前の明るい街明かりをハーフNDフィルターを併用して減光するといった使い方ができる。

角型フィルターは前面に、StarScape for M100はホルダーとアダプターの間に挿入する。

今回使用したマグネットホルダーM100用の角型フィルターは、SOFT GNDのND4だ。

マグネットホルダーM100と角型フィルターはマグネット式なので簡単に装着できる。

実際に角型フィルターを星景写真へ応用する際には、空の明るさは変えずに街灯りの明度だけを抑えたいので、上記の写真とはフィルターを上下逆向きに、すなわちND部分を下にしてセットする。

このようにStarScape for M100とSOFT GND(ND4)を併用したことで、光害を抑制しつつ、街明かりの白飛びも抑えられた。

StarScape for M100+SOFT GND(ND4)

制作協力:マルミ光機株式会社

北山輝泰

日本大学芸術学部写真学科在学中、授業で天体望遠鏡を使った撮影を行なったことがきっかけで、天体写真への興味関心が強まる。卒業後、福島県鮫川村に移住し、天文台で星空のインストラクターをしながら、本格的に天体写真と星景写真を撮り始める。その後、星空の魅力を多くの人に伝えたいという想いから、天体望遠鏡メーカー「株式会社ビクセン」に入社する。2017年に星景写真家として独立。天文雑誌「星ナビ」のライターをつとめながら、世界各地で星空の撮影を行なっている。