特別企画

あの「スタデラ」に限定モデルが登場!レトロな露出計でポートレート撮影を楽しもう

セコニック L-398A スタジオデラックスIII 70周年限定モデル

露出計やカラーメーターで知られる株式会社セコニック。撮影にまつわる業務を縁の下で支える企業として、業界内で知らない人はいないでしょう。

こちらの記事でも紹介したように、セコニックは2021年をもって会社設立70周年を迎えました。それを記念し、同社では「L-398AスタジオデラックスIII 70周年限定モデル」を発売。「スタデラ」の名で長く親しまれた露出計「スタジオデラックス」の現行モデルからボディカラーを変更、各種アクセサリーをセットにしたものです。

この特別な一台をフォトグラファーの大村祐里子さんに使っていただき、限定スタデラに関するインプレッションを綴っていただいたのが本記事になります。

(編集部)

「スタデラ」の魅力とは

スタジオデラックスは、長い歴史を持つ入射光式の露出計だ。1956年発売の「L-28A」以来、基本デザインを受け継ぎ生産され続けている。初心者からプロまで、幅広い層から支持を受けている製品だ。愛称・略称は「スタデラ」。

その最大の魅力は、道具としての機能美と、所有欲をしっかり満たしてくれるシンプルでクラシカルなデザインだ。その外観は、カメラ用品だと知らない人にも「カッコイイな」と思わせるパワーがある。

スタジオデラックスは、初代から「電池不要」で使えるのも大きな特徴だ。現行モデルのL-398Aも、受光素子としてアモルファス光センサーを採用しており、露出計を動作させるための電池は不要となっている。

初の“スタデラ” L-28A(1956年発売)
現行モデルのL-398A(2006年発売)

スタジオデラックスは指針式アナログメーターを採用しており、指針の触れ具合により露出を読むことが可能だ。指針が示した測定値にダイヤルリングを合わせると、シャッター速度と絞り値の各組み合わせがわかる仕組みになっている。

デジタル表示の露出計に比べて、数値を読み取るまでに一手間かかる。ただし、シャッター速度と絞りの関係性を知るためには、スタジオデラックスのようなアナログメーターが最適だ。

過去の記事で何度も書いているが、単体露出計を使う最大のメリットは、標準露出がわかることだけではなく、その場の「露出のバランス」を知れることである。

露出のバランスを考える際「何段の差があるか」を瞬時に判断できないといけない。その判断力は、スタジオデラックスのようなアナログメーターでシャッター速度と絞りの関係性を身体に染みつけることで磨かれる。

ストッパーボタンを押すことで指針が動き、現在の露出を示す。露出を判別しているのは光球の奥にある受光体。ストッパーボタンを離すと指針は固定される。その後、ダイヤルリングを回して指針と同じ目盛りにスケールマークを合わせることで、カメラに設定すべきシャッター速度と絞り値がわかる。

70周年限定モデルの特徴

「L-398A スタジオデラックス 70周年限定モデル」は全世界770台の限定販売。日本国内では2021年7⽉1⽇より、クラウドファンディングサイト「Makuake」で 70台限定特典付き先⾏販売の受付を開始し、その後に70台の一般販売予約、合計140台の限定販売となる。予約者に届くのは2021年10⽉以降の予定となる。

通常版との大きな違いは、ボディの色だ。限定モデルは本体にバーガンディカラーが採用されている。高級感ある深い色で、絶妙に「かわいい」と「かっこいい」を両立させたようなカラーリングだ。

ダイヤルリングや光球周りのリングはローズゴールドの特別色となっている。ダイヤルリングには[70th Anniversary]記念ロゴも刻まれている。

筆者は限定モデルをひと目見て「欲しい!」と思ってしまった。眺めるだけでもテンションが上がるようなデザインに仕上がっている。女性にも人気が出そうな色合いだ。

左が限定版、右が通常版。露出計としては斬新なカラー。
ダイヤルリングや光球周りのリングも特別色になっている。
背面。明るい環境で受光体の前に挿して使用するHIGHスライドが収納されている。Makuakeのみの特典として名前のレーザー刻印ができる。

限定モデルは、漆紙を使⽤した化粧箱に入れられている。箱は光沢感と重厚感があり、限定モデルをより美しく見せてくれる。70周年のロゴも金色で刻印されており、非常に華やかな印象だ。自分へのプレゼントにしたくなる。

漆塗りの紙箱が豪華。

さらに、特製レザーストラップ&レザーケースが付属する。

特製レザーストラップ&レザーケース

特製レザーストラップ&レザーケースは限定モデルに合わせたカラーリングで、実用性を踏まえたデザインになっており、こちらも楽しみな一品だ。

Makuakeのみでの予約特典として、裏銘板に70台の通し番号と名入れ、そして印伝製のカードケースが付属するという。70周年ロゴの入った印伝の名刺入れは、和を感じさせる雰囲気だ。手触りも柔らかで気持ちが良い。

Makuake予約での特典として70周年ロゴが入った名刺入れがついてくる(色の選択はできない)。

限定スタデラをポートレートで使う

発売前ではあるが、限定モデルの試作機でポートレートを撮影する機会に恵まれた。

屋内にてデジタルカメラを用いる撮影、屋外にてフィルムカメラを用いる撮影、それぞれで使ってみた。

デジタルで、屋内で

まずはデジタルカメラで、自然光を用いてモデルを撮影した。

大人っぽい女性モデルということで、1カット目は窓際で、モデルの顔の片側に影を出して陰影感のある一枚に仕上げたいと思った。目でモデルの顔の陰影感を確認しながら、左右の頬のあたりでそれぞれ露出を測ってみた。

ISO100、F2.0の設定のとき、左頬は1/60、右頬は1/30だったので、左右の頬で1段の露出差があるとわかった。逆を言うと、1段の露出差があると、このくらいの陰影感が出るということでもある。陰影感をわかりやすく出すためにモノクロ写真にした。

作品
EOS R5 / SP 85mm F/1.8 Di VC USD / マニュアル露出(1/60秒・F2.0) / ISO 100

大人っぽくかつ笑顔のかわいい人だったので、2カット目は順光を使い、顔が明るく見えるように撮影をした。ISO400、F2.0の設定のとき、両頬のシャッター速度は同じだった。つまり、両頬に同じ量の光が当たっていることになる。影はなく、フラットな印象だ。

作品
EOS R5 / SP 85mm F/1.8 Di VC USD / マニュアル露出(1/125秒・F2.0) / ISO 400

このように、露出に何段の差があるのだろう? と考えるとき、スタジオデラックスのようなアナログメーターは、実際にダイヤルリングの数値を見ながら確認できるので、間違いがなくて良い。1段、2段……の計算が苦手な方には特に、スタジオデラックスの使用をオススメする。

フィルムで、屋外で

今度は、フィルム中判カメラを用いて屋外でモデルを撮影した。

今回はMAMIYA C330という二眼レフを使用した。MAMIYA C330には露出計がついていない。MAMIYA C330に限らず、露出計のついていないフィルムカメラは多い。こういったカメラを使う場合、単体露出計は必須だ。

二眼レフカメラにしてレンズ交換式のMAMIYA C330。これにL-398AスタジオデラックスIII 70周年限定モデルを組み合わせて使ってみた。

限定モデルは、レトロな雰囲気のMAMIYA C330と一緒に持っていても違和感がない。クラシカルなフィルムカメラとの相性は抜群なのではないか。

また、コンパクトなので、片手にカメラ、片手に露出計、という使い方ができてありがたい。ストラップをつけていれば落とす心配もない。ワンオペ撮影だったが、サクサクと撮影ができた。

作品
MAMIYA C330 professional / MAMIYA-SEKOR 105mm F3.5 / マニュアル露出(1/500秒・F4) / KODAK PORTRA 400

まとめ

以上、「L-398AスタジオデラックスIII 70周年限定モデル」をご紹介してきた。スタジオデラックスは露出計ではあるが、それ以外にもプロダクトとしての魅力が溢れていると改めて実感した。

個人的には、限定モデルはバーガンディ&ローズゴールドのカラーリングがとても素敵で、一目みて気に入ってしまった。デジタルカメラの撮影でも、フィルムカメラの撮影でも、撮影がないときでも、そばに置いておきたい! と思った。

また、スタジオデラックスのようなアナログメーターは、ダイヤルリング上でシャッター速度と絞りの関係性をすぐに把握できるので、露出の1段、2段……という計算が苦手な初心者の方にとてもおすすめだ。

すでに露出計をお持ちの方はもちろんだが、まだ露出計を持っていない、という方は、限定モデルの発売をきっかけに、露出計デビューされてみてはいかがだろうか。特別感のある一台と共に楽しい露出計ライフを送っていただければと思う。

制作協力:株式会社セコニック
モデル:小野あかね

1983年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。有限会社ハーベストタイム所属。雑誌・書籍での執筆やアーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動。