特別企画

いま「CFexpress」を選ぶ理由

高速&大容量のメモリーカード SDXC UHS-IIと比較してみた

サンディスク エクストリーム プロ CFexpress Type B カード(512GB)

一部ブランドのデジタルカメラに搭載されはじめた新しいメモリーカード「CFexpress」。2017年に最初の規格策定がおこなわれたメモリーカードだが、ここにきて対応製品が増えてきており、製品ジャンルによってはSDカードに代わり、主役を張れる可能性も多いに出てきた。

その最大の特長は「大容量化」と「高速化」の2点だ。

さらなる高速性能を求めて

CFexpressは、一世を風靡したメモリーカード「コンパクトフラッシュ(CF)」の正統後継とも言えるメディアだ。CFexpressの仕様は、CFの策定団体であるCompactFlash Association(CFA)で策定された。また、同様の速度を持つ規格でPCIeインターフェースのXQDも策定された。

CFexpressの登場以前、次世代のCFを模索するCFAは、SATA-IIインターフェースのCFastを策定。通信速度は最大600MB/秒となり、CFの167MB/秒(CF 6.0)から大きく速度を向上させた。

その後、2つの規格を統合する形で策定されたのがCFexpressになる。最初の仕様が公開されたのは2017年4月のことだった。その最大の特長は、PCのSSDなどで採用される通信プロトコルNVMeに対応したことだ。これにより、SATAインターフェースを採用するCFast、PCIe Gen2インターフェースを採用するXQDから一気に通信速度を上げてきたのだ。現行のCFexpress 2.0において、インタフェースにPCIe Gen.3×2、通信プロトコルにNVMe 1.3を採用することで、通信速度は実に最大16Gbps(2GB/s)を実現。CF 6.0比では10倍以上、CFast比でも3倍以上という高速性能を備えた。

CFexpressは、SDカードの24×32×2.1mmより少し大きいCFexpress Type Bからスタートした。外形寸法は29.6×38.5×3.8mmで、XQDに等しい。

CFexpress(左)とSDカード(右)のサイズ比較。

さらに、CFexpress 2.0の仕様では、新たにType AとType Cという2つのデザインも規定された。Type Aは20×28×2.8mmとコンパクトなサイズ。PCIe Gen.3×1、NVMe 1.3の採用で転送速度は8Gbps(1GB/s)。Type Cはさらに大型で54.4×74.1×6.2mm。PCIe Gen.3×4、NVMe 1.3によって32Gbps(4GB/s)を実現している。

現在、コンシューマー向けカメラ用途で出回っているCFexpressはほぼType Bになる。ソニーのα7S IIIのみ、Type Aを採用しているのが興味深い。

ちなみにライバルとなるSDカードは、当初は12.5MB/秒からスタート。順次スピードを上げながら、インタフェースもUHS-I、UHS-II、UHS-IIIと高速化してきた。速度はUHS-IIIで最大624MB/秒を実現。それでもCFexpressとの差は歴然としている。

新しく策定されたSD ExpressではPCIeとNVMeを採用しており、PCIe Gen.3×1で985MB/秒、PCIe Gen.3×2で1,970MB/秒へと達する見込みだ。規格上とはいえ、PCIe Gen.4×2による3,940MB/秒の転送速度にも対応している。ただし具体的な製品化の話はまだ聞かない。

こうして、CFから現代的な速度性能に進化したCFexpress。現時点では規格先行で商品化されていない次世代SDカードに比べて、CFexpressはすでに2GB/秒に近い速度の製品が登場している。容量もすでに一部メーカーから2TBの製品まで発表された。

例えばサンディスクでは「サンディスク エクストリーム プロ CFexpress Type B カード」で64GB、128GB、256GB、512GBの4種類を用意。512GBは最大読取り1700MB/秒、最大書込み1400MB/秒を実現している。今まさに速度と容量が必要な人にとっては、ベストな選択肢となる(対応カメラを所有していることが条件だが)。

サンディスク エクストリーム プロ CFexpress Type B カードのラインナップ

ちなみに、現時点でCFexpressに対応したカメラは以下の通り。一部XQDからのアップデート対応はあるが、基本的にラインナップ中、上〜中位の製品になる。汎用性を考えてか、SDカードとのデュアルスロットを採用している製品も目立つ。

キヤノン:EOS-1D X Mark III、EOS R5
ソニー:α7S III
ニコン:D6、D5、D850、D500、Z 7II、Z 6II、Z 7、Z 6
パナソニック:LUMIX S1R、LUMIX S1、
※CFexpress Type Aを採用するα7S III以外はCFexpress Type B。

高速連写&高速転送をサポート

実際にCFexpressを使うと、これまでにない高速書込み・読取りが可能になる。それにどういうメリットがあるのだろうか。

メリット1:メモリーカードへの記録速度が向上

撮影時、デジタルカメラはまずバッファメモリに画像を保存し、それを順次メモリーカードに書き込んでいく。バッファメモリからメモリーカードへの記録が遅いと、バッファメモリがフルになったときに待ち時間が生じてしまう。メモリーカードへの記録速度(書込み速度)が高速であれば、この待ち時間を短縮できるわけだ。

カメラと高速メモリーカードの組み合わせによっては、最高解像度&最速連写でも待ち時間が事実上発生しないケースも見られる。

このメリットは連写を多用する撮影ジャンルのフォトグラファー、例えばスポーツ、モータースポーツ、航空機、鉄道、ポートレート、ファミリースナップなどで威力を発揮するだろう。また、これまで連写を必要としなかったジャンルにおいても、気兼ねなく連写できることで新たな表現や撮り方が生まれる可能性も大いにある。

メリット2:PCへの記録時間が短縮

もう1つのメリットはPCへの取り込み速度(メモリーカードから見ると読出し速度)の高速化だ。一般的に、撮影した画像データはいったんPCのSSDなりHDDに保存されるだろう。このときの速度が大幅に高速化することで、現在生じている時間が短縮できる。高解像度で大量のデータを撮るフォトグラファーほど恩恵が大きくなるだろう。

ただし現状、CFexpressの恩恵を最大限に受けるには、それなりの環境が必要になる。

というのも、一般的にメモリーカード内の画像をPCに取り込む場合、PCにカードリーダーを接続しておこなうだろう。USBも高速化しているものの、20GbpsのUSB3.2 Gen 2x2はまだ一般的ではない。CFexpress→PCへのデータ移動は当面USBがボトルネックになり、それほどCFexpressは高速なのだといえる。

主なUSBデータ転送規格と最大転送速度
USB2.0480Mbps
USB3.05Gbps
USB3.1 Gen15Gbps
USB3.1 Gen210Gbps
USB3.220Gbps

今回はUSB 3.1 Gen2に対応した「サンディスク エクストリーム プロ CFexpress カードリーダー」のベンチマークをとってみた。

実測でも高速性能を証明

計測対象として用意したのは、512GBの「サンディスク エクストリーム プロ CFexpress Type B カード」だ。

Nikon Z 6IIでの実測

転送速度が高速なメモリーカードの性能が最も発揮されるのは、デジタルカメラで連写した時だ。連写された画像データはバッファメモリーに蓄積され、そこから順次メモリーカードに書込みがおこなわれる。一般的に、バッファメモリーへの書込みに対し、メモリーカードへの書込みの方が遅い。バッファが一杯になって書込みが遅れると連写が止まる……というのがよくあるケースだ。

テストに使ったカメラは、CFexpressとSDカードのデュアルスロットを備えたミラーレスカメラ「Nikon Z 6II」。有効画素数は2,450万画素。連写速度は約14コマ/秒・最大124コマ。この仕様はCFexpressカードでロスレス圧縮RAW(L)時/12bit時とされている。

CFexpressとSDカードのデュアルスロットを採用するNikon Z 6II

実際に連写をしてみよう。CFexpressと前述のCFexpressと「サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-IIカード 128GB」 および「サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-Iカード 256GB」を使って連写速度を比較してみる。設定はRAW+JPEG Fine(25.8MB+8.3MB)なので、公式速度より連続撮影枚数は減少する。

連写を開始してからカウント、バッファメモリがフルになり、約14コマ/秒での書込みが不可能になるまでの時間が以下だ。

Nikon Z 6IIで連写→連写速度が低下するまでの時間
製品名計測結果
サンディスク エクストリーム プロ CFexpress Type B カード(512GB) 13.26秒
サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-IIカード (128GB) 9.00秒
サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-Iカード (256GB) 6.98秒

カメラのバッファメモリは同じなので、バッファメモリ→メモリーカードへの書込みで差がつくことになる。

その後、カメラの書込みランプが消灯してバッファが回復するまでを計測してみた。こちらもやはりCFexpressの方が高速だった。

Nikon Z 6IIで連写→連写が止まる→書込みランプ消灯までの時間
製品名計測結果
サンディスク エクストリーム プロ CFexpress Type B カード(512GB) 8.59秒
サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-IIカード (128GB) 11.18秒
サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-Iカード (256GB) 25.13秒

以上を記録した動画がこちらだ。

連写が長時間継続するだけでなく、バッファの回復も速い。回復後、すぐさま高速連写ができる点も、CFexpressのメリットだろう。

撮影可能枚数は減るが、約9秒のバッファ回復を待たず、すぐに再び高速連写できるので、連写後の撮影不能状態を最小限に抑えられる。

CFexpressなら100枚以上の連写が可能なので、通常の利用であれば大きな問題にならないだろう。

これだけの枚数を連写したとしてもPCに高速転送できるので、撮影画像の確認も手間取らない点も強みだ。

ディスク速度を計測

次に念のため、ディスク速度を「CrystalDiskMark 7.0.0」で計測してみた。

PCへの接続方法としては、先述した「サンディスク エクストリーム プロ CFexpress カードリーダー」を用いている。

CFexpress Type B用のカードリーダー「サンディスク エクストリーム プロ CFexpress カードリーダー」。USB Type-CでPCと接続する。

1GiBで5回計測した結果は以下の通り。

CFexpress
サンディスク エクストリーム プロ CFexpress Type B カード 512GB

比較対象として、「サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-IIカード 128GB」と「サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-Iカード 256GB」も用意。「サンディスク イメージメイト プロ USB-Cマルチカード リーダー/ライター」を使い、同じPCのThunderbolt 3ポートに接続してCrystalDiskMark 7.0.0でテストした。

SDXC UHS-II
サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-IIカード 128GB

SDXC UHS-I
サンディスク エクストリーム プロ SDXC UHS-Iカード 256GB

基本的に画像や動画は連続アクセスになるため、シーケンシャルアクセスの数字が重要視される。その点で、CFexpressはシーケンシャルライトのマルチキューが6.35Gbps程度と高速。SDXC UHS-Iカードが805Mbps程度、UHS-IIでも1.74Gbps程度なので、UHS-II比でも4倍弱、UHS-I比にいたっては8倍弱と圧倒的に高速だ。

◇   ◇   ◇

CFexpressは現状、高速データ転送と容量のバランスに優れたメモリーカードだ。UHS-II SDカードも確かに速いが、いまのところ民生用として市場に出回っているUHS-II SDカードは256GBまでしかない。高速かつそれ以上の大容量であることを鑑みると、CFexpressの優位性が際立つ。

画素数が増え、いまだ連写性能が向上しつつあるデジタルカメラ。動画対応も高度に求められ、今後も記録速度に関するニーズは止まることはないだろう。

そのため、CFexpressを採用したデジタルカメラは今後も順当に出てくると思われる。当面はハイエンドからミドルクラスが中心になるだろうが、採用カメラがさらに増えることを期待したい。

長らくSDカード一辺倒だったメモリーカードが、ここにきて変わりつつある。プロ・アマを問わずフォトグラファーなら、今後はCFexpressの存在を意識していただくのも悪くないだろう。

提供:サンディスク

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。