特別企画

ソニーα9で連写テスト! UHS-II vs UHS-Iの結果は?

レキサーのYouTubeチャンネルより 独自の設計思想が見えてきた

ソニーα9

ソニーのミラーレスカメラ「α9」が、予定通り5月26日に発売された。ブラックアウトフリーでかつ約20コマ/秒の連写性能を誇る新たな高速連写モデルの登場に、プロのフォトグラファーからも期待の声が聞かれる昨今だ。

ここで改めてα9の連写に関するスペックを抜粋してみると、

連続撮影速度
最高約20コマ/秒(電子シャッター時)

連続撮影可能枚数
RAW241枚、RAW+JPEG 222枚(ともに圧縮RAW)

といったところ。電子シャッターとはいえ、これをAF追従、ボディ内手ブレ補正ありで実現するあたりすごい。

記録メディアはSD系がSDXC/SDHC/SDメモリカード、メモリースティック系が(以下略)。SD系はスロット1がUHS-II対応、スロット2がUHS-Iに対応している。

さて、連写といえば黙っていないのがレキサーのYouTubeチャンネルだ。これまで様々な連写に強いカメラの書き込みテストを動画で公開、興味深いデータを示してきた(宣伝が趣旨なんだけど結果的にね)。

そのレキサーのYouTubeページで、早速α9のテスト動画が上がっていたので紹介しよう。

UHS-II VS UHS-I。当然の結果とはいえこの差は一体……

テスト内容は、レキサーのUHS-II対応SDXCメモリカード「2000x SDXC UHS-II 64GB」と、他社UHS-I対応カードで連写するもの。もちろん最高約20コマ/秒となる連写Hiモードでのテストだ。

記録ファイル形式は圧縮RAWで、ファイルサイズは約24MB。両カードともUHS-II対応のスロット1を使用している。

計測がおもむろにスタートしたぞ。

両カードともあっという間に100コマをクリア。さすが20コマ/秒、速い速い。今までのカメラとは別次元だ。

そしてブラックアウトフリーのインパクト。このテストでは電子シャッターの動作に合わせて枠線を点滅表示させているが、それがないと動画を記録しているかのよう。点滅表示は設定で消せます。

連写に伴いモニター左にある縦線が伸びていることにお気づきだろうか。「連写残量表示」という機能で、説明書によると速度が低下することなく撮影できる残り枚数を表すもの。要するに、α9本体に搭載されたバッファメモリの残量を示しているらしい。

おっと、ここで両カードともバッファを使い切ったようで、速度が低下。連写をやめ、書き込み終了まで計測を続ける。

わずかに他社カードの方が若干速くバッファを使い切ったようだが、その差はほぼないに等しい。記録コマ数はレキサーUHS-IIの方が多く243コマ。他社UHS-Iは235コマと少ないものの、UHS-IIとUHS-Iというのにそれほど差がない。

そして始まるレキサーUHS-IIへの書き込み。連写残量表示がぐんぐん復活し、バッファがクリアされていく。

バッファフルから15秒が経過した。レキサーUHS-IIの連写残量がより大きく回復しているのがわかる。書き込み速度の差が効いているようだ。

そして約23秒で、レキサーUHS-IIは連写残量表示が元に戻る。バッファはクリアされるも、その後もカードへの書き込みが続いており、計測も続く。他社UHS-Iはまだバッファが解放されていないな。

30秒が経過。他社UHS-Iは、いまだ連写残量表示が回復せず。

そうこうしているうちに、レキサーUHS-II側のLEDが消灯。243コマすべての書き込みが完了したようだ。他社UHS-Iはまだバッファがクリアされていない状態。うーん。

両カードの連写を終了してから(バッファがいっぱいになってから)約1分が経過。他社UHS-Iはバッファがクリアされたものの、いまだ書き込みの途上にある。ああイライラ。

連写終了から約1分12秒で、ようやく他社UHS-Iの書き込みが終了した。およそ30秒近い差がついたことになる。

この結果を見る限り、α9で連写するならやはりUHS-IIを使った方が有利であることが判明した。α9ユーザーはぜひUHS-IIを使おう。はい終わり……としたいのだが、もう少し考証してみよう。

興味深いのはUHS-IIとUHS-Iで、バッファを使い切るまでの時間がほぼ同じだったこと。記録したコマ数もそう大きくは変わらなかった。そしてバッファを使い切ってから大きな差がついている。

これは何を意味するのかというと、α9はとにかくまずバッファに記録し、あとからカードに書き込む性格のカメラなのでは? ということ。そのため、バッファを使い切るまではカード性能による差異が少なく、バッファを使い切ってから如実に差が出ている。

連写に強い他社カメラ製品の上位モデル(フラッグシップモデルなど)はどうかというと、連写中はバッファを使いつつも、カードへの書き込みをなるべく並行して行う設計だ。我々もデジタルカメラのバッファとは一時的なもので、あくまでもカードへの書き込みを補助するものと認識している。カードの性能によってバッファフルでの記録枚数が異なり、上位モデルではXQDやCFast 2.0といった高速カードのサポートに積極的なのも、それを裏付けている。

いずれにしてもα9の場合、撮影後のカード書き込み中は画像確認やメニュー操作が行えず、例えば撮影設定を変えたくてもカード書き込み中はメニューがいじれない。そういうカメラということもあり、書き込み終了までが速いUHS-IIを選ぶ価値は十二分にある。

ちょっと待てよ……

で、ここでふと思ったのは、圧縮RAW=約24MBを243コマも記録するバッファサイズとはいかなる容量なのか? ということ。計算するとα9には、約4.5GBものバッファメモリが搭載されていると推測できる。え? 約4.5GB?

以前、X-T2の推定バッファサイズを掲載したことがあり、それは約810MBだった(約9MBのJPEG FINEをバッファフルまで90コマ撮影)。片や約810MB、片や約4.5GB。X-T2とα9ではカメラのクラスが違うとはいえ、推定約4.5GBというバッファサイズが、いかに大容量かわかろうものだ。

あくまで推測の域を出ていないものの、α9にはおそらくデジタルカメラとしては破格の大容量バッファメモリが搭載され、「連写した画像はとにかくバッファに貯め込み〜、書き込みはその後〜」という設計思想が垣間見られるのだ。バッファサイズは公表されていないので、ソニーに問い合わせないように。

バッファフルからが勝負! α9ならUHS-II一択でしょ

この動画ではもう1つ検証が加えられている。先ほどのレキサーUHS-IIと他社UHS-Iに加え、他社UHS-II×1、レキサーUHS-I×1の計4枚での計測がそれだ。新たに追加されたUHS-IIは、スペックからしてソニー純正の「SF-G」とみられる。こちらの結果も最初の検証を裏付ける内容で、UHS-IIが有利な結果に。

繰り返しになるが、α9でバッファサイズを超えた連写をする場合、その後の書き込みはUHS-IIが断然有利だ。書き込み中は画像確認やメニュー操作ができないだけに、そしてあまりにも連写が速くて撮り過ぎてしまいがちなことから、ユーザーおよびユーザー予備軍の皆さんは肝に銘じていてほしいな。

制作協力:マイクロン株式会社

本誌:折本幸治