私がOM-Dを使う理由。- My Style, My Olympus -
Vol.02:女性の輝きや儚さを捉えたい〜山本春花さん
モデル・自分の両方と向き合いながら
2015年12月25日 14:08
新進気鋭の作家が毎月登場する「私がOM-Dを使う理由。」。個性豊かな写真家から、作品の背景を語っていただきます。また、その作家ならではのOM-Dの使いこなしやインプレッションについても聞いてみました。
今回登場するのは、暖かさの中に透明感が同居した女性ポートレート「乙女グラフィー」シリーズが話題の、山本春花さんです。(編集部)
※作品はRAWデータから現像処理しています。
現在、どのような写真関連の仕事をされていますか?
フリーランスでカメラ雑誌や書籍の撮影を中心に活動していますが、新聞記事やWebのインタビュー、洋服ブランドのルック、ライブ写真などなど、ジャンルを絞らず幅広く撮影しています。また、趣味の写真を楽しむ「snap!」の企画・編集・執筆にも携わっています。
写真を撮るようになったきっかけは?
大学卒業後、旅行代理店で3年間OLをやっていたのですが、初めてのボーナスでミラーレスカメラを購入して、それからどんどんのめりこんでいきました。
当時はブログが流行っていたので、色んな方のブログを参考にしながら毎日撮影していました。ほとんど休みが取れない上に出勤の日は大体終電で帰っていたため、深夜に家でも撮れるテーブルフォトが中心でしたね。
影響を受けた写真家、写真集、メディアは?
志賀理江子さんとソフィ・カルです。わたしの作風とはかけ離れているのですが、写真が持つ虚構と現実についての捉え方はお二人から相当な影響を受けています。また、自分の個人的な体験を暴露することによって、作品を見ている人に追体験させる手法に本当に痺れました。
その影響は自分の作品のどんなところに現れていると思いますか?
作品の見た目にはほとんど影響してないのですが、写真は必ずしもリアルな関係性をそのまま写すわけではない、という考え方を持つようになりました。それは写真について考えるときのわたしの哲学を大きく変え、すごく感覚的な話なんですが、写真に嘘が含まれることに疑問を持たなくなりましたし、嘘を積極的に取り入れようと考えるようになりました。
例えば「乙女グラフィー」を始める前は、ポートレートって、モデルとどれだけ仲がよいかで写真の良さが決まるものだと思っていたんです。だから、まずモデルと仲良くなることから始めようとしていたんですよね。でも今では物凄く吹っ切れていて、「乙女グラフィー」では全員を初対面の日に撮影しています。
また、展示の際は挨拶文やキャプションまでを一つの作品として考えるようにしています。言葉に導かれることによって、同じ写真でも180度見方が変わるからです。現実を写したはずの写真が、言葉を付加することによって虚構になる場合がある。その驚きを皆さんに体験してもらいたいので、展示に飾る言葉にも写真と同じくらい時間をかけるようになりました。
「乙女グラフィー」シリーズのコンセプトは?
「乙女グラフィー」とは、2014年4月からブログで連載しているポートレートシリーズで、雑誌や広告などで活躍する若い女性をモデルにしています。一見すると明るい写真が多いのですが、実は「老い」に対するコンプレックスの解消をテーマに制作しています。25歳のときにふと鏡を見たときに、今までなかった自分の顔の小じわや背中のたるみを発見して、急に老いに対する恐怖心が芽生え始めたんです。その恐怖の原因を解明するために、過去の自分とも重なる若い女の子に向き合い、撮り続けています。
女性モデルと向き合った際、どのようなことを心がけていますか?
撮影中は友達のような感覚でいることを大事にしていて、一緒に本気で遊びながら、素に近い動きのある一瞬を撮れるよう心がけています。その動きの中にある、若い女性だけが持つ一瞬の輝きや儚さのようなものも一緒に捉えられればと思っています。
モデルさんの持つパワーはやはり凄くて、どういう状況でも自分の一番美しい顔をしてくれるんです。でも、決めきったところを撮らされないように工夫して奮闘して……とモデルさんとの戦いでもあります(笑)
今回使った機材の印象は?
今回の撮影では、ボディはOM-D E-M5 Mark IIを使い、レンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROと、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8PROを使用しました。
OM-D E-M5 Mark IIは、やはりタッチシャッターとバリアングル液晶モニターを搭載している点が嬉しかったですね。動きのある撮影が多いのですが、この2つの機能を使用することにより、直感的な撮影をすることができました。
また、ポートレート撮影では、機材や小物などで荷物が重くなりがちですし、ロケでは撮影場所を探して長時間歩くこともしょっちゅうです。なので、レンズも含めて小型・軽量なのはそれだけでアドバンテージになると感じました。
ブログやInstagramでの情報発信について。
わたしは写真を学んだり誰かのアシスタントについたり、という経験がありません。なので、人より技術もなければ仕事に繋がる人間関係もないので、セルフプロデュースは大切だと思っていました。
まず撮った作品はできるだけ多くの人に見てもらわないと何にもならないと思い、SNSやブログを使い始めました。投稿する写真にもこだわっていて、スマホで撮った日常風景はほとんどなく、フィルムカメラで撮影したものをデジタル化して載せています。作品の発表の場、表現の場として考えていますね。
若いモデルさんはみんなSNSを使いこなすのが得意で、撮影が終わるとすぐに撮影した写真を投稿してくれるんです。そうやって、自分一人でやるより何倍ものスピードで写真が拡散していく。実際にそこからお仕事に繋がったり、出会ったモデルさんと親しい仲になったりと、得たものは多いです。無断転載などのデメリットもあるのは承知しているし、最初はなかなか苦労しましたが、続けていて良かったと思っています。
また、展示を開催した際にも、来場者とフォロワーの人数の比較などが参考になりましたね。実際に展示に来てくださる方がどんな人なのか、ZINEを通販で買ってくれる方が何人いるのか、などがわかり、自分の立ち位置の指標にもなると思います。
写真以外に興味あることは?
映画を見ることに一番はまっています。70〜80年代の映画が好きで、「STARWARS」には特に没頭しています。家もグッズだらけです……。あとハリソン・フォードつながりで「ブレードランナー」も。まだCGの技術がない時代の映像なのに、とにかくどのカットにおいても映像がきれいで。フィルムカメラで「ブレードランナー」の世界観を再現してみたいですね。
今後取り組みたいシリーズやテーマは?
今まで取り組んできたテーマがちょっと暗いんですよね。写真をはじめた当初の作品は、OL時代の職場の仲間のポートレートでした。「職場への未練を断ち切る」と思いが強かったんです。次に取り組んだテーマは「突然の失恋から立ち直る」で、そして今は「老いの恐怖からの解放」、というように内面を反映させた作品ばかりだったんです。
なので来年はテーマを練るというより、少し肩の力を抜いて、自分が素直にいいと思うものを直感的に撮っていきたいです。もう少し被写体をグラフィック的に捉えても面白いかなと思っています。
また、「乙女グラフィー」もずっとやっていきたいですね。さらに自分の年齢が上がって40代、50代になったときにも続けていれば、このシリーズはまた違った意味を持ってくると思うんです。
写真展の開催や写真集の発売など、告知があればぜひ!
先日、雑誌などで活躍するモデル・荒井愛花さんのポートレート作品の展示をしました。その時の写真をまとめたZINEを12月31日まで限定販売しているので、ぜひブログなどチェックしてみてください。また、「乙女グラフィー」は月に1回必ず更新しているので、こちらもよろしければご覧になってください!
発売中のデジタルカメラマガジン2016年1月号にも、「私がOM-Dを使う理由。」が掲載されています。山本春花さんによる撮影テクニックも。ぜひごらんください!