オールドデジカメの凱旋:コニカミノルタα-7 DIGITAL(2004年)
この連載でこれまでに購入&レポートしたカメラは、ソニーサイバーショットDSC-R1、キヤノンPowerShot Pro1、オリンパスCAMEDIA C-5050 ZOOMの3台。すべてレンズ一体型だ。う〜ん、そろそろレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラを購入してレポートしたいゾ!! そんな感情の高まりを覚える吉森、四十代最後の秋である。
しかし、コレがなかなか難しい。レンズ一体型の場合、コンセプトの違いなどにより、いろんなスタイルのカメラが作られてきた。だから、数年経ってから見返した時に、単なる古さだけでなく、独自性や独特のテイストなどが感じられて、懐かしかったり楽しかったりするんだよネ。それと比べると、デジタル一眼レフカメラの場合は、製品コンセプトというか目指す方向性が大きくブレないので、旧製品を見返しても「あ〜、当時はこの程度の性能や仕様だったのかぁ」くらいの感想しか浮ばなかったりする。
もちろん、デジタル一眼レフカメラの中にも新しい試みや大きな転換を感じさせてくれる意欲作や名機は存在する。そういう機種なら今でも、発表や発売当時の盛り上がりを思い出したり、その機種に込められた「熱い想い」みたいなモノは感じられると思う。
はいっ、そんな機種をようやく発見&購入したヨ! その名は「コニカミノルタα-7 DIGITAL」。2004年11月に発売されたデジタル一眼レフカメラで、レンズ交換式として世界初の「ボディ内手ブレ補正機構」を搭載したことでも大きな話題となった。ちなみに、発売当時のボディ価格は20万円前後だったが、今回中古で購入したブツは、その約1/10の2万円弱。製品の状態もまずまずだし、元箱も含めて付属品も揃ってこの価格、なかなかのお買い得商品です。
あとは交換レンズ。そう、ボディだけ見つけても、交換レンズがなきゃ話になりませんから。そこで中古品5,250円の「AF DT ZOOM 18-70mm F3.5-5.6(D)」も購入。コレで決まりだね!!
購入したα-7 DIGITALとコニカミノルタブランドのAF DT ZOOM 18-70mm F3.5-5.6(D) |
さて、改めてα-7 DIGITALを紹介すると……レンズ交換式デジタル一眼レフカメラで初めてボディ内蔵CCDシフト方式手ブレ補正機構「Anti-Shake」を搭載したカメラであり、シャッター速度に換算して約2〜3段分の補正効果が得られる。また、細かいブレだけでなく、身体全体がゆっくり揺れる大きなブレにも対応する。
撮像素子には有効画素数約610万画素CCDが採用され、画像処理エンジンはα-7 DIGITAL専用に新開発された「SUPHEEDⅡ」。高感度域でもノイズの少ない画像処理が可能で、大容量画像の高速処理によってフィルム一眼レフカメラ並の操作感を実現。また、独自の画像処理技術「CxProcessⅢ」の採用によって、自然で印象的な色再現や階調再現などを追及したという。
この他にも、ナビゲーションディスプレイ機能を備える2.5型液晶モニター、直感的な操作が可能なダイヤル&レバー方式の各操作部、マグネシウム合金を採用した(前カバー、底面)高品位ボディ、高性能ファインダー、RAW+JPEG同時記録、高精度なAFを実現する中央クロス9エリア8ラインAFセンサーを搭載、といった特徴を持っている。
α-7 DIGITALが発売された2004年頃は、デジタル一眼レフカメラの低価格化が、大きな関心事になっていた時期である。2003年9月に発売されたキヤノンEOS Kiss Digitalは、ボディ価格が12万円前後という低価格で話題&ヒットにつながった。そして、α-7 DIGITALと同時期に発売されたペンタックス*ist DSは、ついに10万円を切る9万円台後半のボディ価格を実現し、さらに同年の12月には、標準ズームレンズとのセットで10万円前後のオリンパスE-300も発売される。
そんな時期に発売された20万円前後のα-7 DIGITALは、正直なところ「このタイミングでこの価格はアリなんだろうか?」と、少々疑問に感じたりした。撮像素子の画素数は、ist DSと同じ約610万画素で、E-300の約800万画素に負けてるし……。もちろん、デジタルカメラのグレードは、撮像素子の画素数だけで決まるワケじゃない。しかし、大きくて重くて値段も高いカメラなのに、撮像素子の画素数が少ないというのは、ちょっと納得できないヨッ!! という時代だったのだ。
でも、大きくて重くて値段も高いだけあって、α-7 DIGITALを手にして操作すると、*istDSやE-300とはひと味違う高品位な作りや、操作性の良さを実感できる。例えばファインダー。中古店で18-70mmを装着してファインダーを覗いた瞬間、「おっ、明るい! しかも、キレがある!!」と感じた。このあたりは、カメラのグレードの差が出やすい部分。まあ、店内照明も明るかったけど、装着レンズの開放F値が3.5-5.6にしては、予想以上に明るく感じられたんだよね。さすがは「ガラスペンタプリズム+スフェリカルアキュートマット」仕様のファインダーだぁ〜。
2003年、ミノルタとコニカが経営統合して「コニカミノルタ」に。その結果、ペンタ部のロゴは13文字に。ちなみに、カメラから2mも離れると、文字が小さくて読めません |
そして、ミノルタ時代のフィルム一眼レフの名機「α-7」の名前を継承するカメラだけあって、露出モードと露出補正の両ダイヤルをはじめ、各種の操作ダイヤルやレバーなどは、ホントα-7ソックリ! デジタルカメラ固有の機能に関する部分は別として、AFワイド/ローカル切り替えレバーや、AF/MFコントロールボタンなどの使い勝手の良さも、フィルム時代からのαユーザーにはウレシイ限りである。ちなみに、ボクもかつてはα-7とα-9のユーザーでありました。
一般的に、操作パーツが多いカメラは、パーツ間の間隔や配置が窮屈になって、ボディが保持しづらかったり、不用意に操作パーツに触れて設定が変わってしまったり……といった弊害が生じがちである。しかし、α-7 DIGITALボディは適度に大きく、そのあたりの心配は不要である。それにしても、このグリップ部と背面の指(親指)当ての部分のホールド感は最高にイイ! グリップ前後の2ダイヤル仕様も、エントリークラスのカメラとは違うミドルクラス以上の証だ。
α-7を踏襲した「1パーツ=1機能」が基本の操作体系。必然的に数は増えるが、形状や配置が巧みなので、いちど慣れてしまえばスムースに操作できる |
右手側の「露出モードダイヤル」の基部には「ドライブモードレバー」があり、左手側の「露出補正ダイヤル」の基部には「ストロボ調光補正レバー」がある。ちなみに、両ダイヤルにはロック機構があるが、両レバーにはロック機構はない |
露出モードダイヤルの横には「ホワイトバランスモードレバー」が配置されていて、オート(WB:オート)、プリセット、カスタム、色温度設定、の切り替えをおこなう。オートを除く各ホワイトバランスの設定・調整は、レバー中央の「ホワイトバランス設定ボタン」を押しておこなう。今回ボクは、オートと昼光を多用したが、その切り替えが「ホワイトバランスモードレバー」のワンタッチ操作なので非常に快適だった |
記録メディアはCF。背面側から見て、カードを裏にして挿入するあたりに、ちょっと古さを感じるかも…… | ガイドナンバー12(ISO100・m)の内蔵ストロボ。発光させたい時には手で持ち上げ、発光させない時は手で押し下げる手動方式 |
「ナビゲーションディスプレイ機能」って、何だかすごく特殊機能のような響きだけど、要は「撮影時の液晶モニター上の各種情報表示」のコトだよね。でも、表示切り替えボタンで「詳細画面」と「拡大画面」が切り替えられたり、カメラを縦位置に構えると画面が自動的に縦向きに変わる。そういうところが素晴らしいよ |
メニュー画面は、撮影、再生、カスタム、セットアップ、の各メニューごとにタブ分けされている。タブを選んで実行ボタン(十字キーの中央のボタン)を押すと、その中の項目がページ単位で表示される。ここでは、カラーモードを選択してみた |
背面の「ISOボタン」は、通常はISO感度の設定に使用する。だが、カスタムメニュー内の「ISOボタンの機能」を、ISO設定からゾーン切り替えに変更すると、高輝度域や低輝度域の階調を広げた撮影が行なえるようになる(「High」が高輝度側、「Low」が低輝度側) |
再生時の情報表示の切替(通常の情報表示と、ヒストグラムを含む詳細な表示)は、表示切替ボタンを操作するのではなく、十字ボタンの上下操作でおこなう。なお、十字ボタン下は、詳細表示から通常表示に戻す場合。通常の表示で下に操作すると、縦再生(画像が回転)になってしまう |
デジタルカメラの技術革新は日進月歩である。だから、新機能を搭載したハイスペックモデルも、発売から2〜3年も経つと、後発モデルと見比べて古さを感じたり見劣りするようになる。この連載でとり上げたモデルに至っては、6年〜9年前に発売されたのものだ。そりゃあ、物珍しさや懐かしさは感じても、実用面ではイロイロな不満な点や、見劣りする点も出てくるわな。
だけど、今回のα-7 DIGITALに関しては、実用面での不満があまり感じられなかった。前述のとおりファインダーの見え具合は良好だし、液晶モニターは2.5型と十分なサイズ。その液晶モニターの「ナビゲーションディスプレイ機能」はアイセンサーと連動しているので非常に使いやすいし。また、露出モードダイヤルの横に配置されている「ホワイトバランスモードレバー」などは、WBオートとプリセットWBがワンタッチで切り替えられる超便利な操作パーツ! そして、そのWBオートの精度も優秀で、ISO感度設定もスムースにおこなえる(ISOオートも便利)。約610万画素という有効画素数の少なさも、実用上で不満に感じるケースはまれだろう。
このように、α-7 DIGITALは、デジタル一眼レフに求められる重要な基礎(機能、仕様、操作性)がしっかりしたカメラである。だから、発売から約7年も経った今でも、快適に使うことができたのだと思う。
AF DT ZOOM 18-70mm F3.5-5.6(D)は、α-7 DIGITALの翌年に発売された「α-Sweet DIGITAL」のキットレンズとして登場。望遠端が「70mm」と長めなのはウレシイ! |
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した画像のみ、無劣化での回転処理を行なっています。
・カラーモード
3種類のカラーモードを搭載。sRGBの「ナチュラル」と「ナチュラル+」の差はそう大きくないので、どちらを選んでも良さそう。まあ、風景などは「ナチュラル+」の方がイイかも。あ、「Adobe RGB」ってココで選択するのね、このカメラの場合。
カラーモード:Adobe RGB / α-7 DIGITAL / AF DT ZOOM 18-70mm F3.5-5.6(D) / 約4.3MB / 3,008×2,000 / 1/40秒 / F11 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 70mm |
・感度
感度設定は1段ステップのISO100〜1600だが、カスタムメニューでISO3200まで拡張できる。ISO400まではまずまず良好だが、ISO800になると少し色ノイズが目立ってくる。ISO1600以上の色ノイズは、ちょっとキビシイなぁ〜。ちなみに、このカメラに搭載されている「ノイズリダクション」機能は、長時間露光時のノイズに対してのモノ。
・AF DT ZOOM 18-70mm F3.5-5.6(D)の歪曲収差
広角端(18mm)時だと、タル型の歪曲収差が少し目立つ。といっても、標準的なレベルだと思うけどネ。望遠端(70mm)は、歪曲収差がほとんど感じられない。
・RAW現像
ISO800で撮影した夕暮れの風景をRAWで撮影し、「SILKYPIX Developer Studio Pro 5」で現像してみる。「ファインカラーコントローラ」で水色の色相を選択し、彩度を少し上げて明度は下げて、夕暮れ空の印象的を高める。そして、「ノイズリダクション」と「シャープ(※ピュアディテール)」の値を少し高めて、メリハリのある描写に仕上げてみた。
・作例
2011/10/27 00:00