新製品レビュー
カシオEXILIM EX-FR100
あのフリースタイルカメラがスマホ常時接続に進化
Reported by 小山安博(2015/12/17 07:00)
カシオ計算機の「EXILIM EX-FR100」は、カメラ部とディスプレイ部が分離する独自のスタイルを実現したコンパクトデジタルカメラだ。カメラ部が分離することで、自由なスタイルでの撮影が可能で、今までにない独特な写真が撮影できる。
16mmの広角レンズを搭載したフリースタイルカメラ
EX-FR100は、2014年9月に発売された「EX-FR10」の上位モデルとして登場した「フリースタイルカメラ」の2代目だ。円形の目玉のようなカメラ部と、ディスプレイを備えた「コントローラー」という2つが分離するスタイルは従来通り。
カメラとコントローラーは、ヒンジユニットと呼ばれる1枚のプレートで接続する。特に端子があるわけでなく、カメラとコントローラーは無線で接続しているため、コントローラーと合体させても、離しても使用感は変わらない。
ヒンジユニットで接続したままの状態だと、ディスプレイとカメラが同じ方向を向くため、自撮りに適した「自分撮りスタイル」になる。ヒンジを中心にカメラがコントローラー背面に折りたたまれる「カメラスタイル」では、本体を横にして通常のカメラのように撮影できる。両者を接続しなければ、カメラを自由な位置に動かして、コントローラーを見ながら撮影する「ウェアラブルスタイル」として撮影できる。
撮影は、コントローラー、カメラの双方にシャッターボタンがあり、それを押せばシャッターが切れる。どちらも「半押し」という概念はないようで、シャッターを押すとAFが動作してそのままシャッターが切れる。コントローラーはタッチパネル式で、画面にタッチすると、その部分にピントを合わせつつシャッターを切る、ということも可能。
この「半押しがない」ことは、カメラとしては少し違和感があるが、「スマートフォン的」とも言えるし、コントローラーで画面タッチで撮影するとまさにスマートフォンライク。カシオとしてもそうした使い方を想定しているのだろう。
カメラとしては、35mm判換算で16mm相当という単焦点の超広角レンズを採用。一般的なスマートフォンに比べてもかなり広角のため、迫力のある撮影が楽しめる。コントローラーで画面を確認せずカメラ単体で撮影しても被写体を捉えやすいのは、この超広角レンズ採用のメリットだろう。
画像処理エンジンはEXILIMエンジンHS Ver.3で、撮影間隔約0.4秒、30コマ/秒・30枚までの連写、240fpsのハイスピードムービーといった高速動作を可能にしており、3軸対応の手ブレ補正機能も備えている。
カメラとコントローラーははBluetooth接続だが、あらかじめペアリングされているので、初期設定は特に必要ない。カメラとコントローラーの電源ボタンをそれぞれ押して両方を起動させれば、すぐにカメラとコントローラーが接続され、画面が表示されるので、普通のカメラの感覚で使い始められる。
ライブビュー画面表示の遅れはあまりなく、使用していて大きな違和感はない。画面自体解像度が低く、表示される画像も粗いため、転送するデータが少ないからだろう。細かなピントチェックまでは難しいが、構図の確認には十分だ。
操作は画面のタッチ操作で行う。自撮りスタイル(縦持ち)の場合には画面上部、カメラスタイル(横持ち)の場合は左側に操作アイコンが並び、タッチ操作で項目を選択する。操作アイコンはしばらくするとフェードアウトして「□」のアイコンに変わる。狭い画面を有効利用するためだろう。□アイコンをタッチすると、再び操作アイコンが現れる。
カメラとコントローラーで使う限り、自分撮りスタイル、カメラスタイルのいずれも操作に違和感はない。画面の転送も速いので操作がもたつくことはない。タッチパネルは普通のスマートフォンと同じ静電容量式で、指先で操作できるが、スマートフォンのような感覚で操作すると、反応速度の点で少し戸惑う。前述の通り、画面タッチでAFが動作し、設定によってはそのままシャッターを切ることもできる。
画像再生時は、左右のフリックで画像送りができ、画面中央のタッチかピンチアウトで2倍まで再生できる。滑らかな動作とはいかないが、まあ、ブレや構図の確認ぐらいだったら十分だろう。
一般的なデジタルカメラとしてみると、広角単焦点のコンパクトデジカメだ。撮像素子は有効画素数1,020万画素の1/2.3型裏面照射型CMOSセンサーで、「高級コンパクトデジカメ」や「高倍率ズーム機」といった流行りのスペックではない。それでも、単焦点の広角レンズ搭載で、スマートフォン的に気軽に撮れるカメラとして楽しめる。
防塵・防滴・耐衝撃といったタフネス性能もFR10から継続。多少スペックが異なるようだが、アウトドアでも安心して使える性能を備えている。オプションで水深20mまで利用できる防水ハウジングも用意されているし、さまざまなシーンに対応できる。
レンズの広角化を除くと、FR10との違いは撮像素子やディスプレイの大型化・高性能化といった程度。撮像素子は記録画素数が減っているが、スマートフォンに転送するなどの使い方を考えると、画素数はそれほど大きくない方が扱いやすいとも言える。
全体的に、カメラとしての違いはFR10とは多くはない。ただ、16mm相当の超広角レンズはえがたい特徴だ。この点がとにかく大きなメリットで、使っていて楽しい。後述するインターバル撮影でも、広角のため写る範囲が広く、撮影の幅が広がるのはいい点だ。
しかし、やはりその真価はウェアラブルスタイルにあるだろう。
カメラをウェアラブルする
カメラとコントローラーがBluetooth接続なので、両者を切り離せる、というのがEX-FR100の最大の特徴だ。ヒンジユニットを曲げておけばカメラは自立するので、テーブルにカメラ部を置いて離れたところからコントローラー部を使い、写る映像を確認しながら撮影できる。カメラを手に持って、上から、下から、さまざまな角度から写真を撮ることができる。それも、タイムラグのほとんどない画面を見ながら撮影できて、自由度が高い。
ヒンジユニットは、コントローラーとの接続だけでなく、同じ規格のさまざまなオプションも用意されている。頭や腕に巻くバンドを使えば、両手が空いた状態でカメラを固定できる。三脚アダプターを使えば三脚に設置することもできるし、専用一脚も用意されている。この一脚、手元にコントローラーを装着するアダプターもあるため、一脚で高い所や細いすき間、離れた場所にカメラを近づけながら、手元で映像を確認して写真を撮れる。
こうしたオプションをより効果的にするのが、「インターバル撮影」機能だ。最初に設定しておけば、設定に従って一定間隔で自動撮影してくれる機能で、特に頭にカメラを装着してハイキングをする、自転車のマウントに装着して走行する、といった状態で、カメラに触れなくても撮影し続けてくれるため、手間もかからない。
一定間隔ごとに撮影するスタンダードモードに加え、最適な状況を判断して撮影を行う「インテリジェント」、ハイキングに適した条件で撮影するという「ハイキング」、自転車に適した「サイクリング」、レジャーや旅に適した「レジャー」という5つのモードが用意されている。基本は静止画だが、自動的に動画撮影も行われるというところが便利。
正直なところ、それぞれのモードの違いは詳細には検証できなかったが、いずれもあらかじめ設定された間隔で撮影を行うが、スタンダード以外は間隔通りに撮影されないこともあり、「プレミアムオートPRO」機能でのシーン認識などを活用して撮影しているかもしれない。ベストシーンを確実に撮影できるわけではないが、かといって長時間、むやみに撮影されたくない、という場合には有効。短時間であれば、定期的に撮影するスタンダードモードを使うと良さそうだ。
インターバル撮影中はコントローラー側の画面がオフになるが、手動の撮影も可能。インターバル撮影自体は中断するが、コントローラーのモニターを見ながら撮影することもできる。移動中、手が離せないときはインターバルで、休憩したら普通に撮影する、といった使い分けも可能。
使い方としては、GoProのようなアクションカム的な使い方ができる上に、単に動画を「撮りっぱなし」ではない点が面白い。意外なベストショットが撮られることもあるし、カメラを意識しない自然な表情を収められる場合もある。カメラ部にはモニターがないため、バッテリー駆動時間も長い。公称の撮影枚数は285枚(カメラのみ)だが、数時間は平気で撮影を続けてくれる。それほど頻繁に撮るわけではないため、枚数もそんなに多くはならない。このあたりはあくまで補助として考えて使うと良さそうだ。
スマートフォンと常に繋がるカメラ
スマートフォンとの連携機能も搭載する。カメラとスマートフォンはBluetoothと無線LANを組み合わせた接続方法で、まずはスマートフォンとBluetoothでのペアリングを行う。専用アプリ「EXILIM Connect」が用意されており、iOS、Androidで利用できる。一番のポイントは、Bluetooth Smartを使う、という点だ。
Bluetooth Smartは、通信速度を低速に抑えるなど、消費電力を削減することで常時接続を目指したBluetooth規格で、時計とスマートフォンをBluetoothで接続する、といった用途が想定されて開発されたもの。このBluetooth Smartによって、スマートフォンとカメラを常時接続する、というのがポイントだ。
ペアリング設定自体は難しくなく、画面の指示に従えばいい。Bluetooth Smart対応のAndroidスマートフォンであれば接続後、自動的に無線LAN設定も行われる。iPhoneの場合は無線LAN用の接続プロファイルのインストール画面になるが、これも難しくはないだろう。
いったん、Bluetoothでペアリングが行われると、あとは常時接続状態になるので、いつでもスマートフォンからカメラをコントロールできるようになる。カメラのコントロールや画像の転送は無線LANを使うため、EXILIM Connectを起動して「カメラ内の画像を見る」「リモートで撮影する」を選ぶと、カメラ側の無線LANが起動し、それを検出したスマートフォンがその無線LANに接続するという流れになる。
接続自体は待っているだけで行われるが、約30秒ほど接続時間がかかるので、ちょっと長い。しかし、カメラがたとえ離れた場所にあっても、ポケットの中に入れたままでも、スマートフォンからカメラにアクセスして撮影したり撮影画像を見たりできる、というのは大きなメリットだ。
接続したあとは、撮影や記録画像の再生が可能。撮影時は、無線LAN接続らしく多少のタイムラグはあるものの、ライブビューとして十分使えるレベル。シャッターだけでなくモード切替、セルフタイマー、電子ズーム、動画撮影といった機能が利用できる。モードを切り替えれば、インターバル撮影なども利用可能だ。
撮影したあとに、撮影画像を自動でスマートフォンに転送するかどうか、転送画像のサイズをフル解像度にするか、3M相当にするか、といった設定もできる。転送自体はそれなりに高速だが、撮影ごとに転送すると連続した撮影ができないので、このあたりは使い方に応じて設定するといいだろう。
Bluetoothで常時接続するメリットを生かしたのが「オートトランスファー」機能。これは、撮影終了後に画像をスマートフォンに自動転送する機能で、いちいち手動で転送作業をしなくても、カメラに画像を送ってくれる。
動作としては、撮影後、カメラがスリープモードに入った段階で転送が開始される。撮影する度に転送するのではなく、カメラを使っていない状態の時に転送する、という考え方のようだ。そのため、撮影の邪魔にはならない。このあたりは、ほかのオートトランスファー対応EXILIMと動作は同じだ。
こうした機能を活用するための鍵となるのは、「カメラの電源を切らない」という点だ。基本的にEX-FR100は、スリープモードを活用して、電源をオフにしないで使うのが前提となっている。電源をオフにするとBluetooth接続が切れてしまうからで、撮影が終わったらそのままカメラは放置するのが基本。Bluetooth Smartは低消費電力なので、バッテリーへのインパクトが少なく、1日程度であれば気にしなくても良さそうだ。
充電はスマートフォンと同じmicroUSBケーブルから行え、ポータブルバッテリーも使えるので、いざとなったらスマートフォンと同様に充電しながら使ってもいい。充電しながら撮影できるのも嬉しいところである。
使い方を見つける楽しさ
EX-FR100は単体でも利用できるが、スマートフォンと連携させた方が便利に使える。とはいえ、スマートフォンがないと使えないのではなく、きちんとディスプレイを備えたコントロール部も用意されているので、使い分けができるのは便利だ。
カメラとしては、ソニーのレンズスタイルカメラのQXシリーズにも近い使い心地だが、単焦点ではあるものの、インターバル撮影やタフネス性能、そして何よりペアリング操作不要のコントローラーで手軽に撮影できる点は大きな優位点だ。
画質に関しては、いたって普通のコンパクトデジカメという印象。とにかく広角という点は大きなメリットだし、カメラ単体でノーファインダーで適当に撮影しても被写体を収めやすいので、機動性も高い。普段からクリップなどでバッグにでも取り付けておけば、スマートフォンよりも手軽に撮影できるかもしれない。
また、精度はともかく、インターバル撮影も面白い。公式サイトにはキャンプのシーンが例示されていたが、普通の飲み会でも、どこか適当な場所に置いておけば、面白いシーンを撮っておいてくれるかもしれない。単純に「カメラ」として考えるよりも、各機能の応用で楽しみの可能性が広がる1台だ。