新製品レビュー
ソニーサイバーショットRX100 IV(外観・機能編)
積層型CMOSで表現の可能性を広げたポケットカメラ
Reported by藤井智弘(2015/8/19 12:00)
1.0型CMOSセンサーを搭載しながら、上着のポケットに入るほど小さい、ソニーサイバーショットRX100シリーズに、4機種目となるRX100 IV(DSC-RX100M4)が登場した。
外観はRX100 IIIを踏襲。よく見ないと見分けられないほど似ている。レンズもツァイスVario-Sonnar T*で、24-70mm相当F1.8-2.8なのも同じだ。撮像素子ももちろん1.0型。有効画素数も約2,010万画素でRX100 IIIと変わらない。
積層型センサーのメリットとは
RX100 IIとRX100 IIIが裏面照射型CMOSセンサーを採用していたのに対し、RX100 IVは世界初のメモリー一体積層型CMOSセンサーを搭載している。
積層型CMOSセンサーは、高速信号処理回路を画素領域と別の層に配置することで、信号処理の速度の大幅なアップに成功した。さらにCMOSセンサーの裏面にDRAMチップを搭載。大容量データが一時保管でき、出力信号が滞らない。おかげで従来の1.0型裏面照射型CMOSセンサーと比べ、5倍以上のデータ読み出しの高速化を実現している。
では、積層型CMOSセンサーで読み出しの高速化ができると、どんなメリットがあるのだろうか。ひとつは連写だ。RX100 IVは最高約16コマ/秒の高速連写を可能としている。そして、最高1/32,000秒の高速シャッターだ。従来のRX100シリーズはメカシャッターのみで、その最高速は1/2,000秒。RX100 IVは電子シャッターも搭載し、これまで不可能だった高速写真が撮れる。
しかも1/32,000秒の世界はそれだけではない。快晴の屋外でも、F1.8の絞り開放が使えるのだ。内蔵NDフィルターと併用することで、あえてハイライトを強調し、しかも絞り開放の浅い被写界深度という、独特な写真が表現できるのだ。
歪みにくい電子シャッター?
さて電子シャッターといえば、速い動きを撮ると被写体が歪んでしまう、ローリングシャッター現象がウィークポイントだった。走る電車をスマホで撮ってみたら、車体が歪んでしまったという経験がある人もいるだろう。
これはCCDセンサーのように全画素を一度に読み出さないCMOSセンサーで、かつメカシャッターを使わないときに見られる特性で、CMOSセンサーの画素領域を上から下までスキャンする間に被写体が動いてしまっているために起こる。
しかしRX100 IVのアンチディストーションシャッターは、積層型CMOSセンサーの高速読み出しにより、被写体の歪みを抑えた写真が撮れる。電車はもちろん、野球のバットやゴルフスイングの写真にも威力を発揮するだろう。
迫力のスーパースロー動画も
積層型CMOSセンサーは、動画でも新たな世界を提供してくれる。そのひとつが4K動画記録だ。ポケットに入る小さいカメラで、画素加算のない全画素読み出しによる4K動画が得られる。なお4K記録時は、高画質優先の100Mbpsと、サイズが軽い60Mbpsに対応している。これまで特殊だと思われていた4K動画撮影がグンと身近になった。しかも4Kテレビも普及してきているので、気軽に高解像度の動画が楽しめそうだ。フォーマットはXAVC Sに対応。フルHDではAVCHDにも対応している。
そしてもうひとつ、最大960fps(40倍)のハイフレームレート(スーパースローモーション)撮影が可能になった。記録フォーマットは24p、30p、60pから選択。960fpsで24pを選ぶと、40倍のスローモーションになる。これはいったいどれくらいの遅さかというと、2秒間のシーンが80秒に引き伸ばされるということ。ほんの一瞬の出来事も、じっくりその動きを観察できる。例えば風船が割れる瞬間やラケットにボールが当たった瞬間、グラスに注がれる水の動きなど、肉眼では見えない世界が見えてくる。
スーパースローの撮影には2種類の方法がある。「スタートトリガー」と「エンドトリガー」だ。スタートトリガーは、MOVIE(動画)ボタンを押すと録画が開始スタートする。エンドトリガーは、MOVIEボタンを押すと、そこからさかのぼった2秒間が記録される。被写体の動きに合わせながら録画するときはスタートトリガーが便利。しかし鳥や昆虫がはばたく瞬間など、予期しない動きを録画する場合は、エンドトリガーが有効だ。
後日公開の実写編では、静止画とともに4K動画やスーパースローモーション動画の作例も掲載する。
変わらぬデザイン。便利に使えるコントロールリング
デザインはRX100 IIIとほぼ同じなので、手にした感触もほとんど変わらない。小型のわりにはずっしりした重さを感じるものの、かえって高級機らしさがある。またレンズの付け根にはRXシリーズお馴染みのコントロールリングを持ち、絞り値やズームなどの機能が割り当てられる。筆者は絞り値の設定を割り当てて使用した。
左手の指でリングを回転させて絞り値を設定するのは、昔ながらのマニュアル機のようで楽しい。ただクリックがないため、いちいち画面表示を見て設定値の確認をする必要がある。動画撮影のときはクリックなしの方が操作音が入らず使いやすいので、クリックあり、なしが設定できると、より使い勝手が向上するように感じた。
見やすさアップの内蔵EVF
ファインダーも、RX100 IIIと同様のポップアップ式EVFを装備。これだけ小さなボディにEVFを搭載しているのは、やはり驚きだ。ポップアップしたら、アイピースを手前に引き出す操作も同じ。だがRX100 IIIが約144万ドットの「OLED Tru-Finder」なのに対し、RX100 IVは約235万ドットの「XGA OLED Tru-Finder」を搭載した。しかもツァイスT*コーティングだ。実際に覗くと、実に高精細でクリアだ。
コンパクトデジタルカメラのEVFというと、オマケ程度のイメージが強い。しかしRX100 IVのEVFは本格仕様。これなら積極的に使いたい。日中の屋外で快適な撮影をしたい場合や、スローシャッターでカメラを安定させたい場合などでとても頼りになる。
なお電源オフ時にEVFをポップアップすると電源がオンになり、EVFを収納すると電源オフになるが、RX100 IVではEVF収納時に電源がオフにならない設定も可能になった。
RX100 IVはRX100 IIIの基本機能を踏襲しながら、積層型CMOSセンサーの採用により、表現の可能性を大きく広げたモデルに仕上がっている。次回の「実写編」では、実際に撮影したときの印象や、気になる積層型CMOSセンサーの画質についてなどをお届けする。