新製品レビュー
ソニーα77 II
「連写番長」再び!動体撮影向けにさらなる強化
Reported by 河田一規(2014/6/18 08:00)
2011年10月に登場した「α77」といえば、最高12コマ/秒の高速連写中でもAFとAEが連動する「連写番長」として知られているが、非常に見やすいEVFや、3軸チルト式液晶モニターによる使い勝手のよさ、作り込みのよいボディなど、連写以外の面でもなかなか秀逸なカメラになっていた。
今回試用させていただいたα77 IIはその後継機ということで、どのような進化を果たしたのか期待値はいやが上にも高まる。
ちなみにα77からの機能的な変更点をおさらいしておくと、
- AF測距点が19点から79点に
- 最大連続撮影可能枚数が18コマから60コマに
- 最高感度がISO16000からISO25600に
- 背面液晶モニターが92.1万ドットから122.8万ドットに
- GPSが省略された代わりにWi-Fi機能を搭載
などである。
ボディのデザイン変更は最小限
ボディデザインはほとんどα77と同じだが、細部をよく見ると異なる部分もある。
例えば、アクセサリーシューは今までの独自タイプ(オートロックアクセサリーシュー)から汎用型アクセサリーシュー+独自接点付きのマルチインターフェースシューに変更されている。
これは最近の同社製品に共通した仕様変更だが、従来の独自タイプシュー対応ストロボも別売のアクセサリー(シューアダプターADP-MAA)を併用することで取り付けることができる。
こうしたインターフェース部の仕様変更は以前から同社製品を使い続けてきたユーザーにとってはあまりありがたくないことかもしれないが、やはりアクセサリーシューは業界規格の汎用タイプに準拠している方が長い目で見ると何かと便利なことが多い。この機に全ラインナップで仕様変更に踏み切ったソニーの判断は正解だろう。
この他の外見的な変更点としては、α77ではロック無しだったモードダイヤルにロック機能が付いたことや、ボディ正面に記された機種名の「α」がオレンジ色からシルバーになったこと、ボディ上面にあるステレオマイク部がシルバーからガンメタぽい色に変更されていること、背面ボタン類形状の小変更などなど。
総じて外見的な変更点は最小限に抑えられている。
使いやすい操作系だが気になる点も
メニュー操作や測距点選択で操作の要となるのが、背面にあるマルチセレクター。α77でも採用されていたが、あらためて操作してみると、指を方向けるだけで上下左右へ動かせるので、いちいち指を置き換える必要のある一般的な4方向ボタンと比べて操作しやすい。
ただ、このマルチセレクターの動きにはややデリケートな部分も感じられた。例えばDレンジオプティマイザーのモード変更時などに、マルチセレクターを傾けてもカーソルが動かず、あれっと思ってもう一回動かすと一気に2コマくらいカーソルが動いてしまって、望みのポジションを行きすぎてしまうことが何度かあった。試用機だけの問題かもしれないが、やや気になるところだ。
もう一つ気になったのが露出補正などの操作に対する反応が遅いこと。これはα77のときにも生じていたことだが、露出補正値を変化させながら何コマか続けて撮影する際などに、あまり手早く電子ダイヤルで露出補正値を変えてしまうと表示が追いつかず、1~2テンポ遅れて表示が変わるという事象だ。
高速性をウリにしたカメラだけに、こうした部分の操作性のもたつきはちょっと残念である。
屋外での視認性が上がった液晶モニター
ボディにビルトインされているEVFは235.9万ドットの有機EL。α77から変わっていないようだが、ファインダーとしての性能は申し分ない。
有機ELならではのコントラストの高い表示なので、被写体状況を瞬間的に判断しやすく、解像感も充分。サイズ制約の大きい外付けEVFとは異なり、贅沢な接眼光学系と組み合わされているおかげで、とにかく秀逸な見え方である。
一方、液晶モニターはサイズこそα77と同じ3型だが、ドット数が約92.1万ドットから約122.8万ドットへ向上。RGBにW(白)を加えたRGBW配列のカラーフィルターを採用したことで、ピーカンな屋外での視認性が大幅に向上した。
RGBW配列カラーフィルター液晶=WhiteMagic.はすでにソニーの別の機種にも採用されているが、どれだけ明るい場所でもクッキリと見える視認性の高さは、他社の液晶パネルとは一線を画す素晴らしさがある。
格段に使いやすくなったAF関係
AF機能はα77と同じく撮像素子とは別体の専用AFセンサーによる位相差AFのみ。α99にはある像面位相差AFは搭載されていない。
前述したとおり、測距点数は19点から79点へと激増しているが、何よりも朗報なのは測距点数アップに伴って測距エリアが大幅に拡大したことだ。
これまでの位相差AF機は一眼レフを含め、測距点数がいくら増えてもほとんどが中央に集中している機種ばかりだったが、α77 IIは測距点が画面の相当端の方まで置かれており、動体撮影時はもちろん、静止した被写体を写す際の使いやすさが向上している。しかも、全79点のうち15点はクロス測距であり、なおかつ中央測距点はF2.8の光束にも対応する。
こうしたハードウエアの充実に伴い、それを制御するソフト面も当然手が入れられ、被写体をロックオンして追従するときの感度設定や、フォーカス優先/レリーズ優先に加えてバランス優先が追加されるなど、AF関係のメニューも一気に充実した。
動体撮影を目的にα77 IIの購入を考えている人も多いかと思われるが、こうしたAF関連の機能を撮影状況に合わせて細かく設定するできるようになったメリットは大きい。
連写速度はキープながら撮影可能枚数は大幅増量
α77の最大の特長といっても過言ではない12コマ/秒という怒濤の連写速度は、α77 IIでもしっかり継承された。
今やもっとコマ速の多いミラーレス機もあるので、12コマ/秒というスペックを聞いてもあまりインパクトを感じないかもしれないが、撮像素子による電子シャッターではなく、ちゃんとメカシャッターによる露光制御(=ローリング現象が起きない)で、なおかつAFとAEが連動するということまで含めれば、やはりこの12コマ/秒というスペックは尋常ではない。
そんな12コマ/秒連写だが、α77では最大18コマまでしか連写できなかったため、シャッターを押し始めるタイミングを誤ると、肝心な場面で連写が完了してしまいシャッターが降りないという事象がままあった。これではせっかくの12コマ/秒という高速な連写機能を活かすのは難しい。
そこで、α77 IIでは最大連写可能枚数を60コマまでアップ。60÷12=5ということで、約5秒間は連写が持続できるように改良されたのだ。
シャッターを切り出すタイミングを疎かにすることはできないものの、1秒ちょっとで弾が尽きてしまうα77に比べれば、動体撮影のハードルが大いに下がったことは間違いない。
下の作例は、実際に12コマ/秒で連写してみた結果だ。
被写体との相対速度が速くなる後半はさすがにAF追従が完璧には追いついていないが、このあたりはAF設定をもっと研究すればどうにかなりそうに思う。
高感度画質は若干向上
α77 IIに搭載されている撮像素子はAPS-Cサイズの有効約2,430万画素CMOSで、スペック的にはα77と同じだが、資料によると完全に新開発された別モノのようだ。
組み合わされる画像処理エンジンもα7/α7Rと同じBIONZ Xになり、両者の相互作用によってα77比で約20%ほど感度性能が向上、それによって最高感度はα77のISO16000からISO25600へとアップしている。
α77から画素数キープということで、プロセスルールの上がった新センサーであれば高感度もそれなりに期待できる。
実際に感度を変えながら撮影してみたところ、劇的とはいえないが、確かに高感度画質は向上しているようだ。カラーノイズを抑える代わりに輝度ノイズはある程度許容するという考え方はα77と同様だが、ノイズリダクションによるディテール損失の弊害はα77よりも少なくなっている印象で、このあたりは演算速度が速くなったBIONZ Xの採用が効いているのだろう。
ちなみにα77のノイズリダクションは「弱」「標準」「強」の3段階だったが、α77 IIでは「切」「弱」「標準」という選択肢に変更している。また、マルチショットノイズリダクションも搭載されており、この場合は最高感度はISO51200までアップする仕様だ。
まとめ:連写機能に磨きをかけた万能機
α77からの連写機能やAF機能の向上は目を見張るものがあり、その動体撮影能力の高さは数あるAPS-C機の中でも随一だろう。トランスルーセントミラー構造を採用しているので、大きさや重さの点ではミラーレス機に比べると不利だが、連写シーンで組み合わされる確率が高い望遠レンズとのホールディング的な相性はむしろ良好と考えることもできる。
α77でも感じられた設定操作に対する反応の悪さが改善されていないのは残念だけど、それ以外の点はいずれも改良されており、真摯に正常進化させたモデルという印象だ。α77を使った時にも感じた「撮る気にさせてくれる」「使いたくなる」オーラも引き続き充分で、なかなか魅力に溢れたミドルクラス機だ。