新製品レビュー
ニコンD7100
DXフォーマットの可能性を広げる最新上位モデル
(2013/3/21 00:00)
昨年以来、デジタル一眼レフのトレンドといえば“35mmフルサイズ”だろう。このフォーマットのことをFXフォーマットと呼ぶニコンも、D4、D800/D800E、D600と相次いでリリースしたことは記憶に新しい。また、これに合わせてAPS-Cからフルサイズに移行したユーザーも少なくなく、筆者の回りでも一人二人というレベルではなかったことから、いかにフルサイズが注目されたかが分かるものといえる。
しかしながら、デジタル一眼レフの主流フォーマットといえば、今もってAPS-Cサイズだ。それは行楽地や運動会などといったイベントに足を運ぶときっと実感するはずだろう。いくらフルサイズが以前にくらべ手に入れやすくなったといっても、価格の面などで一般的にはAPS-Cサイズが今もって主流であることに変わりはないのである。
今回試用した「D7100」も、そのAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載。同社でいうところのDXフォーマットを採用するカメラだ。現行ラインナップではDX機の最上位モデルにあたる。
発売は3月14日。本テキスト執筆時点の量販店価格は、ボディ単体が13万8,000円前後、「AF-S DX NIKKOR 18-105mm F3.5-5.6 G ED VR」のレンズキットが17万8,000円前後、「AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR」のレンズキットが20万8,000円前後、「AF-S DX NIKKOR 18-200mm F3.5-5.6 G ED VR II」のレンズキットが22万6,000円前後だ。
メーカーは否定しているとのことだが、D7100はスペックやボディシェイプを見ると明らかに「D7000」の後継モデルであるように感じられる。D7000といえば、視野率100%のペンタプリズムファインダーや最高1/8,000秒のシャッター機構、防塵防滴ボディ、SDダブルスロットなど、それまで上位モデルにしか与えられていなかった機能を惜しげもなく搭載したデジタル一眼レフである。
それは正にクラスを超えたという言葉がぴったりで、その人気は発売から3年経った現在でも続いていると感じる(現在もD7000の販売は継続中)。同じDXフォーマットで上位モデルであるD300Sの後継が今もって登場してきていないが、筆者の個人的な考えでは、このシリーズがその役目を担うと断言できるほどである。
D7100をD7000の後継と見ると、充実仕様はそのままに、主要デバイスのブラッシュアップが図られる。まず注目は有効2,410万画素のCMOSセンサーだ。画素数もさることながら、このセンサーのトピックは昨今のデジカメ界隈で人気のキーワードでもある「光学ローパスフィルターレス」としているところだろう。
そのメリットはこれまでにも語られているとおりで、レンズの持つ描写特性、ことに解像感を余すことなく引き出し、シャープネスの高い画像が得られるというこのだ。画像ソフトでシャープネスをかけるのと異なるのは、画像劣化のないことは当然だが、より自然な印象であることと立体感の高さだ。
もちろん被写体や撮影シーンによってはローパスフィルターで抑制していたモアレや偽色の発生といったトレードオフの可能性もあり、何が何でも光学ローパスフィルターレスが正義というわけでもないが、D7100では解像感を優先させたというわけだろう。ちなみにD800Eではローパスフィルターの効果を打ち消すフィルターを追加することで、通常モデルのD800より解像感を高めている。一方D7100は正真正銘のローパスフィルターである。
また、現行のデジタル一眼レフカメラのうち、APS-C機で光学ローパスフィルターレスとするのは、シグマ「SD1 Merrill」とペンタックス「K-5 IIs」がある。ベイヤータイプのイメージセンサーを積む後者は、ローパス有りのモデルも選べるのに対し、D7100は同種のセンサー構造でありながらローパスフィルターレスしか選べないのも興味深いところである。
画像処理エンジンにはD800/D800Eなどと同じく「EXPEED 3」を採用する。ISO感度はD7000から大幅に画素数が増えたにも関わらず常用の最高感度がISO6400、拡張ではISO25600相当と変更がない。コマ速についても同様で、最高6コマ/秒とD7000相当をキープした。画素数が増えたことによるデメリットのようなものは、EXPEED 3のお陰でまったくないといってよい。なお、これまでと同様14bitRAWでの記録を可能としているのも、画質を優先するユーザーにはうれしく感じられるところだ。
AFは強化され、マルチCAM3500DX AFセンサーモジュールを搭載する。これはD4、D800/D800Eと基本的な部分を同じとするAFセンサーだ。AFポイントは、これまでの39点から51点に強化されているほか、中央部15点はより精度の高いクロスタイプセンサーとする。AF初動の高速化により被写体への食い付きも向上したほか、−2EVの低輝度下での測距精度もアップしたとしている。
さらに中央1点のみとなるが、F8での測距にも対応。これは「AF-S NIKKOR 70-200mm F4 G ED VR」に「AF-SテレコンバーターTC-20E III」のような組み合わせでもAFが使えるようになり、可搬性に優れるレンズでより便利に望遠撮影を可能とする。前述した組み合わせで少し試してみたが、AFに迷いはなく、ストレスフリーで撮影が楽しめる。これまでAF撮影の難しかったレンズとテレコンバーターとの組み合わせなど、D7100ではDXフォーマットという機動性に優れるシステムの可能性のより広げたといえるだろう。
また目新しい機能としては、「DX1.3×クロップ」がある。これはDXフォーマットに対し、1.3倍の焦点距離とするクロップ機能だ。35mm判に換算した場合では約2倍の焦点距離に相当する。焦点距離倍数2倍といえばフォーサーズ/マイクロフォーサーズがあるが、向こうはアスペクト比が4:3であるのに対し、D7100はDXフォーマット同様3:2となる。この「DX1.3×クロップ」を選択すると、先ほどの51点のAFポイントが有効画面全域をカバーするようになるほか、コマ速も6コマ/秒から7コマ/秒へとアップする。気になる画素数も約1,540万画素が残るため、不足を感じるようなことはなさそうだ。大きく画面に引き寄せたい被写体や、スポーツ・野鳥などの動体撮影では便利な機能といえる。
液晶モニターはD4やD800/D800Eと同じ3.2型としながら、ドット数は輝度を高める白の画素を加えた123万ドットに向上。コントラストが高いうえに視野角も広く、撮影画像やメニュー設定などがたいへん見やすい。もちろん風景撮影のときなどライブビューでのピント位置も確認しやすく感じられる。
ところでニコンのミドルクラス以上のデジタル一眼レフというと液晶モニターカバーが付属することで馴染みがあった。しかし、D7100には付属しないばかりか、カメラには装着するための引っかけのようなものも省略されている。キズなどを防ぐには市販の保護フィルムを液晶モニターに貼ればよいだけの話だが、同社デジタル一眼レフのアイデンティティのように感じていた部分だけに、個人的にはちょっと残念に思える。
ボディはD7000よりも軽量な765g(バッテリー、メディアを含む)を達成。トップカバーおよび背面カバーにマグネシウム合金を採用。堅牢性とともにシーリングが施され防塵防滴構造とする。さらに耐久性といえばシャッター機構だが、15万回のレリーズテストをクリアする高精度、高耐久性のシャッターユニットを搭載。レリーズタイムラグは従来と同じ0.052秒を実現している。コンパクトに仕上がっているため一見ヤワな印象があるが、何気に硬派なカメラなのである。
使いやすく思えたのが、プリセットホワイトバランス時のスポットホワイトバランス機能だ。これはライブビュー撮影時に有効な機能で、被写体の任意の一部分をユーザーが選び、その部分を基準としたホワイトバランスを取得するもの。グレーカードの必要がなく、超望遠レンズを使用したときにも活用できる。ピクチャーコントロール機能の紹介作例で色エンピツを写したカットがあるが、光源を蛍光灯としていたため、スポットホワイトバランス機能を使い、白い紙の部分でホワイトバランスの調整を行なっている。小物や料理などの撮影では積極的に活用したい機能だ。
D7000から継承するコンパクトでホールディングしやすいボディも含め、D7100は同社DXフォーマットの上位モデルらしい実に魅力的なカメラである。もっとも、D7100の登場で一番戸惑うのは、D600などFXフォーマットへのステップアップを検討していたDXフォーマットユーザーかも知れない。D7100であれば新たにレンズを買い足さずとも新モデルをフルに楽しめるわけで、その葛藤で眠れない日々が続きそうに思える。