新製品レビュー
OLYMPUS STYLUS XZ-10
充実機能も魅力の大口径ポケットカメラ
(2013/3/13 00:00)
オリンパス製のコンパクトデジタルカメラの上位モデルであるXZシリーズに、第3弾となる「STYLUS XZ-10」が新たに登場した。高品位なボディデザインに大口径で描写性能に定評のあるi.ZUIKO DIGITALレンズを搭載。撮像素子は有効1,200万画素の1/2.3型と小型である分、シリーズ内の上位機にあたる「STYLUS XZ-2」に比べるとずっとスリムで軽快。人気のアートフィルターや新機能のフォトストーリーなど高度な表現力も搭載し、より気軽に日常を楽しめるプレミアムコンパクトの誕生といった印象だ。
カラーバリエーションはブラック、ホワイト、ブラウンの3色。執筆時点での大手量販店での店頭価格は3万7,800円程度となっている。
ボディデザインと操作性
本機はSTYLUS XZ-2の下位機種という位置付けで、その分、大きさも価格も抑えられている。その差はどこにあるのかというと、何よりもまず撮像素子に小型の1/2.3型センサーが採用されていること(XZ-2は1/1.7型)、そして外付けEVFなどを使用するためのアクセサリーポートや交換可能なグリップなどの省略といったところによるだろう。
撮像素子は1/2.3型の裏面照射型CMOSイメージセンサー。有効画素数は1,200万画素で、静止画撮影時にはセンサーシフト式の手ブレ補正機構が働く(動画時は電子式手ブレ補正)。記録方式はコンパクトデジタルカメラながらもJPEGだけでなくRAWも可能で、JPEG+RAWの同時記録もできる。
本体のみの質量は221g。突起部を含まない大きさは、幅が102.4mm、高さが61.6mm、奥行きが34.3mm。片手にすっぽり収まるサイズであり、少し大き目のポケットならそのまま入れることもできる。細部まで質感にこだわった高品位なデザインという特徴はシリーズ共通であるが、コンパクトデジタルカメラとしてはやや大柄なSTYLUS XZ-2と比較すると、より気軽に接することができるのが嬉しいところ。また、レンズバリアーがあるので取り扱いに気を使う点が少ないのもポイントである。
搭載するレンズは同社の誇る高性能レンズのブランド「i.ZUIKO DIGITAL」。 35mm判換算で26-130mm相当の光学5倍ズームで、開放F値はワイド端でF1.8、テレ端にしてもF2.7というズームレンズらしからぬ驚異的な大口径である。レンズには独自のZERO(Zuiko Extra-low Reflection Optical)コーティングが施され、ゴーストやフレアーを軽減している。なお、後述するがこの描写性能の高い大口径レンズを搭載することは、撮像素子の小さなコンパクトデジタルカメラの画質に対して重要な意味をもっている。
レンズの基部にはXZシリーズ共通の特徴であるコントロールリングが備わっており、選択したそれぞれの撮影モードに応じて、絞り値やシャッタースピード、露出補正など多彩なパラメーターをリングを回すことで設定可能。操作上の利便性を非常に高めている。ただし、STYLUS XZ-2で初搭載となったクリックの有無を選べるハイブリッドコントロールリングは採用が見送られており、ここは残念なところだ。
上位機種のSTYLUS XZ-2との比較が多くなってしまい、まるで本機が劣っているかのような印象を与えてしまうかもしれないが決してそんなことはない。全17種類の機能を割り当てることのできるFnボタンを始めとするボタン類の多さ、コントロールダイヤルやモードダイヤル、タッチパネルの搭載など、1/2.3型センサーを搭載するコンパクトデジタルカメラとしてはレンズ交換可能なPENシリーズにも通じる破格の操作性を有していることに注目してもらいたい。概していえば小さく気楽で楽しいながらも、本格的な操作性を併せもった優れたコンパクトデジタルカメラだといえる。
i.ZUIKO DIGITALがもたらす高画質
“1/2.3型センサーのコンパクトデジタルカメラ”と聞いて画質に期待する人は少ないかもしれないが、本機から生み出される画は単純にスモールセンサーだからと侮ることのできない確かな高画質である。高画質である理由のひとつはi.ZUIKO DIGITALレンズの高い描写性能と、同社のレンズ交換式デジタルカメラ上位機「OM-D E-M5」にも搭載されている画像処理エンジン「TruePic Ⅵ」の連携した同社独自の「iHSテクノロジー」によるもの。1/2.3型のセンサーで有効1,200万画素となると画素ピッチが非常に狭いため、絞り開放から優れた性能の大口径レンズであることが高画質にとって有利となる。
また、本機はノイズ処理技術も優秀で、高感度時であっても大幅な低ノイズ化を実現している。とはいえ、やはりスモールセンサーの場合はISO100といった低感度であるほど高画質を得やすいのは確か。大口径であることは低いISO感度を維持しやすく、この点でも明るいレンズが搭載されていることは画質にとってよい結果を生んでいる。
逆に、画素ピッチが狭いことは、絞り込むことで起こる回折の影響を受けやすく、いずれのズーム域でも絞り値F8程度から像が鮮鋭性を失っていくことが実写で見て取れた。このため、絞りは開放から1~2段程度までに留める方が無難なようで、それでシャッター速度が追いつかないというなら、3段分の露出コントロールが可能な内蔵NDフィルターをONにして、明るいレンズの特性を活用するようにしたい。NDフィルターはメニューからも切替ができるが、Fnボタンに機能を割り当てておくと状況に応じてスムースに活用できて便利だ。
レンズ前1cmのスーパーマクロモード
近接撮影能力は通常モード時の広角端で10cm、望遠端で30cmであるが、スーパーマクロモードに設定するとレンズが広角端に固定となり、1cmまで寄れるようになる。小さなセンサーを搭載するコンパクトデジタルカメラならではの近接撮影能力で、マクロ撮影を身近に楽しめる。被写体に極端に近づく場合はカメラの影が画面内に入らないように気をつけるようにしよう。
超解像ズーム
35mm判換算130mm相当まで伸びる光学5倍ズームに加えて、超解像技術により画質劣化を抑えながら最大10倍までズームのできる超解像ズームが搭載されている。デジタル処理による画像の部分拡大であるが、通常の光学ズームの望遠端より被写体を大きく撮る必要があるといったシーンで有効な機能だろう。
アートフィルターとフォトストーリー
レンズ交換式のPENをはじめとする同社デジタルカメラで定評ある「アートフィルター」は本機にも搭載されており、手軽に楽しめるのが嬉しい。本機に搭載されるアートフィルターは、ポップアートやドラマチックトーンなど全11種類。これにソフトフォーカスやアートフレームといった「アートエフェクト」の効果を加えることができる。
アートフィルターは同梱のRAW現像ソフト「OLYMPUS Viewer 2」を使うと、撮影後のRAWデータに自由に効果を反映できるのが特徴。積極的に楽しんでもらいたい独自機能のひとつだ。
「フォトストーリー」は本機で初めて搭載された新機能だ。分割されたひとつの画面内に複数の視点で見た表現を並べることが可能で、あらかじめ用意されたスタンダード、スピード、ズームイン/アウト、ファンフレームの4種類からテーマを選んだ後、ひとつの画面内の分割数、黒フチやピンホールといった効果を選択することができる。
フォトストーリーの撮影ではひとつの画面内に複数のフレームがあるため一見すると煩雑に感じてしまうが、ほとんどの操作は液晶モニターをタッチするだけでよいので直感的かつ簡単だ。分割されたフレームの順序と撮影、あるいは撮影が気に入らなかった場合の撮り直しなどは全てタッチパネル上の操作で可能だ。
実際に使ってみて難しいと思ったのは、何をどう撮るかという撮影のプロセスを、ストーリー開始前にあらかじめ決めておかないと完了までたどりつけないということ。フォトストーリー撮影中は他のモードの撮影をすることはできないし、撮影中にスリープモードに入るとそこでフォトストーリーの撮影は解除されてしまうため、迷っている時間はあまりない。
寄ったり引いたりといった表現や連写による記録を1枚の写真にできることは面白いが、撮影するものや順序をあらかじめ決めて臨むのは、実は写真上級者の撮影手法である。その意味では撮影のプロセスを学ぶことのできる、意外に高度で、それでいてファニーな新機能なのだと感じた。
アクセサリー
特徴的なアクセサリーとして「ドレスアップシリコンジャケット」(CSCH-117)が用意されている。カラーはブラック、ラベンダー、ホワイトの3種類。着せ替えを楽しみながらカメラを傷から守るのに有効だ。また、凹凸のあるエレガントな透かし柄があり、これがグリップ性の向上に一役かっている。所有するカメラのカラーに合わせて、お洒落と機能性向上の両立を図ってみるのもいいだろう。