オリンパス・ペンライトE-PL1sは、前機種の「オリンパス・ペンライトE-PL1」(2010年3月発売)からキットレンズとボディカラーを刷新したのが主な特徴だ。カメラの主なスペックはE-PL1をほぼ継承し、オリンパス製マイクロフォーサーズ機のローエンドを担っている。
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E-PL1s。発売は2010年12月 |
実勢価格は「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II」を同梱するレンズキットが5万4,700円前後、レンズキットに「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6」を加えたダブルズームキットが7万9,100円前後だ。
2011年1月にはペンライトシリーズの上位機種「オリンパス・ペンライトE-PL2」が発売になっており、E-PL1sと同じキットレンズを採用。E-PL2の実勢価格はレンズキットが7万7,500円前後、ダブルズームキットが9万2,400円前後だ。
E-PL1sに対するE-PL2の主なアドバンテージは、アートフィルターの機能拡充、3型液晶モニターの採用(E-PL1sは2.7型23万ドット)、背面ダイヤルの搭載、最高シャッター速度が1/4,000秒(E-PL1sは1/2,000秒)、Bluetoothで画像転送を行なえる「PENPAL」への対応などがある。
とはいえ、より手頃にマイクロフォーサーズカメラを手にしたい向きには、E-PL1sもしくはその前機種のE-PL1が選択肢に入るだろう。E-PL1からの最大の変更点は、冒頭でも述べた通りキットレンズの変更だ。
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E-PL1sの標準ズームレンズは「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II」 | 沈胴が従来の3段から2段になり、小さい力で扱えるようになった |
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新しい望遠ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6」を装着したところ。お借りしたレンズはシルバーだったが、ブラックボディにはブラックのキットレンズが付属する | E-PL1ダブルズームキットに付属していた望遠ズームレンズを装着したところ。フォーサーズ用の「ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6」を同梱のアダプター経由で使用する |
新しいキットレンズは、いずれもAFの高速化と静音化を謳う「MSC」(Movie&Still Compatible)機構を採用。静止画だけでなく、動画撮影にも最適化している。
今回は、新旧キットレンズの比較を中心にお届けする。以下に掲載するのは標準・望遠の新キットレンズと、筆者所有のE-PL1ダブルズームキットに付属していた従来レンズの実写サンプルだ。ボディはいずれもE-PL1sを使用した。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
■標準ズームレンズ比較サンプル
共通設定:E-PL1s / 4,032×3,024 / 0EV / ISO200 / 14mm
※左から新レンズ(M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II)、従来レンズ(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 L)の順に掲載
・広角端(28mm相当)最短距離
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F3.5 |
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F4 |
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F5.6 |
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F8 |
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F11 |
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F16 |
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F22 |
・望遠端(84mm相当)最短距離
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F5.6 |
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F8 |
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F11 |
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F16 |
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F22 |
・望遠端(84mm相当)中距離
共通設定:E-PL1s / 4,032×3,024 / 0EV / ISO200 / 42mm
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F5.6 |
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F8 |
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F11 |
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F16 |
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F22 |
■望遠ズームレンズの比較サンプル
※左から新レンズ(M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6)、従来レンズ(ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6)の順に掲載
・広角端(80mm相当)最短距離
共通設定:E-PL1s / 4,032×3,024 / 0EV / ISO200 / 40mm
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F4 |
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F5.6 |
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F8 |
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F11 |
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F16 |
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F22 |
・広角端(80mm相当)中距離
共通設定:E-PL1s / 4,032×3,024 / 0EV / ISO200 / 40mm
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F4 |
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F5.6 |
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F8 |
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F11 |
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F16 |
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F22 |
・望遠端(300mm相当)中距離
共通設定:E-PL1s / 4,032×3,024 / 0EV / ISO200 / 150mm
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F5.6 |
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F8 |
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F11 |
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F16 |
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F22 |
・望遠端(300mm相当)最短距離
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F5.6 |
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F8 |
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F11 |
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F16 |
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F22 |
いずれも望遠端の最短距離撮影において背景のボケに違いが出たが、そのほかの点で画質に大きな違いは見られなかった。
だが、撮影のレスポンスには確かな差があった。個人的には従来の標準ズームレンズを使っていてもAF速度に不満はなかったのだが、新レンズのスムーズな動作を味わっってしまうと従来レンズには多少の物足りなさを感じる。新レンズはインナーフォーカスのため前玉が音を立てて回転することもなく、シャッターボタンの半押しでスムーズに合焦する感覚が心地よい。
従来の望遠ズームレンズはそもそもフォーサーズ用で、マイクロフォーサーズのコントラストAFに最適化されていなかった。そのため、MSC機構を採用した新キットレンズのフォーカシングはまったくの別物といえるスムーズさだ。レンズ自体もよりスリムで軽量になっており、E-PL1のダブルズームキットを持っているユーザーにとっては最も羨ましいポイントだろう。
■高感度
E-PL1sの主な変更点として、もうひとつ挙げられるのが拡張感度だ。E-PL1の拡張感度はISO3200のみだったが、E-PL1sではISO6400も選択できるようになった。
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E-PL1sの拡張感度がISO6400も選択可能になった |
そこで、最高ISO感度の変化に伴って高感度域の画質にも変化があるのか、実写で検証してみた。
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ISO200、E-PL1s(参考) |
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E-PL1s、ISO1600 | E-PL1、ISO1600 |
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E-PL1s、ISO3200(拡張) | E-PL1、ISO3200(拡張) |
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E-PL1s、ISO6400(拡張) |
結果、ISO1600とISO3200では両機種の画質に大きな違いは見られなかった。E-PL1sで選択可能になったISO6400は、ノイズこそ増えるものの細部のディテールは失われておらず、思っていたより活用できるシーンは多そうだ。ソフトウェアでの対応なら、筆者の所有するE-PL1にもファームアップで追加してほしいと感じるほどだ。
以上のようにE-PL1sとE-PL1を比較した結果、キットレンズを含めたE-PL1sの進化ポイントはE-PL1ユーザーにとっても興味深いもので、手頃なマイクロフォーサーズカメラを検討するユーザーに対してはE-PL1との価格差を埋める訴求力を持っていると感じた。モデルチェンジの早いデジタルカメラ市場においてボディよりレンズの“旬”のほうが長いとすれば、現時点では最新のレンズを同梱するE-PL1sが手堅い選択と言えるだろう。