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EZ F521 |
エグゼモードが10月に発売したコンパクトデジタルカメラ「EZ F521」が話題になっているようだ。昨今のコンパクトデジタルカメラでは珍しいクラシックなフォルムや、実売7,000円といった価格が受けているらしい。今回は実写画像とともに、EZ F521に迫ってみたい。
“ヤシカ”といえば、往年の銀塩レンジファインダーカメラ「エレクトロ35」などを思い浮かべる方も多いと思う。ヤシカは、1950年代に二眼レフカメラからスタートした国内老舗カメラメーカーで、1974年にはカールツァイスと提携しコンタックスブランドの一眼レフカメラを展開。その後1983年に京セラへの吸収合併に伴ってヤシカブランドは国内から姿を消していたが、京セラのカメラ事業撤退を受けてヤシカの商標権をJNC社が取得していた。エグゼモードではJNCと提携し、2008年10月にヤシカブランドコンパクトデジタルカメラを初めて発売。以来、低価格を武器にラインナップを拡充している。
これまでにエグゼモードが発売してきたヤシカのコンパクトデジタルカメラはモダンなデザインを採用しており、いずれも“今時のデジカメ”といった趣だった。ところが、今回のEZ F521は、シボ革巻き風グリップや大きめのレンズ鏡胴、またモードダイヤルなど見た瞬間にレトロさを感じる意匠となっている。このクラスにして、ストラップの2点吊りに対応するのも極めて珍しい。
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パッケージ | 箱の中身 |
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同梱品 | ゴム製の被せ式キャップが付属する |
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ハンドストラップも同梱 | ポーチまで付いてくる |
■意外に使いやすいクラシカルなフォルム
同社の従来機種と違うのは外観だけではない。エグゼモードはこれまで実売1万円を切る価格の機種であっても3倍程度の光学ズームを搭載してきたが、EZ F521は35mm判換算でほぼ標準レンズとなる42.53mm相当の単焦点レンズ(固定焦点)を採用した。鏡胴を回転させることでマクロモードと標準撮影モードの切り替えができるという“ギミック”付きだ。また、光学ファインダーの搭載も注目点だろう。
EZ F521は、社長の藤岡淳一氏が「ヤシカブランド取得以来、どうしても開発したいデジカメだった。長い時間を掛けたトイデジカメの集大成」(藤岡氏のブログより)と語るほど思い入れのあるカメラだ。藤岡氏によれば、デジタル一眼レフカメラの2台目といった需要も見込んでいるとのことだ。
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大きく金文字で「YASHICA」とある | 画素数は5Mピクセルだ |
ざっと本機のあらましを挙げると、撮像素子は1/2.5型有効504万画素CMOSセンサー、液晶モニターは2.4型、ISO感度はオート、記録メディアはSDHC/SDメモリーカード、内蔵メモリは32MB、640×480ピクセル(30fps)の動画記録機能といった具合だ。500万画素というのは少ない気もするが2,592×1944ピクセルあり、一般的な用途で困ることはないと思う。なお、画素補間で1,200万画素相当の出力をするモードもある。
本体サイズは110×48×66mm(幅×奥行き×高さ)。実物を手にしてみると写真で見て想像したよりずっと小柄に感じた。ボディの外装はフルプラスチックで、バッテリーと記録メディアを含めても約158g(実測)と軽量に感じる。グリップのシボ革風巻物はプラスチックを成形したもので、ラバーなどではないもののグリップの張り出しが大きいため、かなりしっかりと持つことができた。手に取ってみるとそれなりのチープ感もあるにはあるが、重厚な見た目とのギャップがまたおもしろい。
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上面にはモードダイヤルも装備 | 大きめの鏡胴は回転させることでマクロモードに切替えることができる。前玉はマゼンタ色のコートが施してある |
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マクロモード時は液晶モニターにアイコンが出るほか、背面のマクロランプがブルーに光って知らせる |
ボディ上面には電源ボタン、シャッターボタン、モードダイヤルの3つを装備。モードダイヤルは、静止画撮影モード、再生モード、動画撮影モードを切替えるためのものだ。3ポジションしかないために、シーンモードなどの選択などで迷う必要がないのはかえって便利かもしれない。
背面は、十字キーやズームボタンを配置している。ズームボタンにより、最大4倍のデジタルズームが可能になっている。液晶モニターはややドットの荒いタイプだが、このあたりは他社も含めて超低価格デジタルカメラに共通する部分だ。
基本的な撮影手順は、フレーミングをしてシャッターを押すだけと簡単だ。固定焦点レンズのため半押しの必要がない。このあたりは、普段一般的なデジタルカメラを使っているためか新鮮だ。シャッターボタンを押すと、極わずかのタイムラグの後にシャッターが切れる。
背面の十字ボタンで、ストロボの発光モード選択とセルフタイマーの設定がダイレクトにできる。ただし、撮影中によく使う露出補正は撮影メニューに入って設定しなければならないので、やや面倒ではあった。十字キーのうち、下ボタンには何も割り当てられていないので、ここに露出補正機能を持ってくると使いやすくなるだろう。とは言え、藤岡社長自身EZ F521をトイデジカメと呼んでいるとおり、細かい露出設定などは気にせず、目に付いたものをどんどん切り取っていくという使い方も良さそうだ。
光学ファインダーは背面左肩に付いており、覗いたときに鼻が液晶モニターに当たらないのがいい。ファインダー画面は流石に小さいが、ズーム機構が入っていないせいか思いのほかクリアに見えた。光学ファインダーを使用する際には、液晶モニターを消灯してバッテリーを節約できる。
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光学ファインダーも搭載している | こちらは接眼部から |
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コンパクトデジタルカメラとしては大きめのグリップもポイントだ。大変持ちやすい |
カメラ機能に特筆するような部分はないが、多彩なカラーモードを備えているのはおもしろそうだ。通常のカラーのほか、白黒、セピア、ネガ(反転)、赤、緑、青を撮影時に設定可能。また、撮影後には左記の6種類に加えて、2値化、夕暮れ、暖色、寒色、コントラストを適用できる。これらの効果は複数を重ねて適用することもでき、例えば寒色とコントラストを組み合わせるとクロスプロセス風の色になったりとおもしろい。
バッテリーは入手が容易な乾電池を採用しているが、単4×3本という珍しい構成だ。撮影可能枚数は、約190枚(アルカリ乾電池、CIPA準拠)としている。試用時は付属の新品アルカリ乾電池を使ったが、150枚ほど撮影して3段階のバッテリーインジケーターが1目盛減ったレベルだったので、単4型ということを考えるとバッテリーライフはかなり良いようだ。それにしても、乾電池を奇数本使用するというデジタルカメラは初めて使った。バッテリー本数は偶数で、できれば単3×2本で動作すればさらに良かったと思う。本機はニッケル水素充電池も使用可能だが、中には2本単位でしか充電できない充電器も少なくないからだ。
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撮影画面 | 再生画面 |
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静止画メニュー |
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設定メニュー |
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再生メニュー |
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カラー効果(撮影時と再生時に適用可能なもの) |
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カラー効果(再生時にのみ設定可能なもの) |
■トイカメラとしてみると“優秀”な写り
さて気になる画質はどうかというと、総じてユルイ印象だ。所詮7,000円のトイデジカメなのだから……と言ってしまえば身も蓋も無いが、一般的な今のデジタルカメラに比べてしまうとお世辞にも高画質とは言い難い。
ただ、普通に記念写真を撮ってLサイズ程度にプリントしたり、ブログなどWebに載せたりする分には全く問題のないレベルだと思う。そういった意味では、操作が単純なだけに、機械が苦手な方やご高齢の方が使うのもいいだろう。
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背面のボタンはコンパクトデジタルカメラに良く見られるタイプだ | ストラップ取付け部は三角環式だが、環が小さく一般的な一眼レフカメラ用ストラップは通せない。ただし、大きめの環に交換すれば問題はなさそうだ |
もう一つは、先に挙げたようにトイデジカメと割り切って、むしろこの“個性的”な写りを楽しむことだ。そもそも銀塩を含めてトイカメラは、変わった発色になったり、周辺光量が大きく落ちたり、ピントが合っていなかったりと、ある種の画質の悪さを楽しむものだ。EZ F521を片手に、気軽な撮影散歩などをしてみたい。それに、こうした超低価格デジタルカメラに見られる“ぐにゃり写真”も撮ることができる。ぐにゃり写真とは、撮影する瞬間にカメラを大きく動かすことで、景色が歪んで写る現象だ。現実にはあり得ないインパクトのある写真が簡単に撮れる。もちろん、普通に構えて撮れば被写体が歪むことはない。
■まとめ
以前、弊誌でレビューをお届けしたトイデジカメにビスタクエストの「VQ1015 Entry」がある。現在は4,000円ほどで販売されている機種だが、130万画素で液晶モニターも無いなど、一般的な撮影に使うのにはちょっと勇気のいる機種だった。それに比べると、EZ F521はトイデジカメと呼ぶには立派すぎる面がある(笑)。どちらかというと、画質や機能から見るに普通のコンパクトデジタルカメラに近い存在と言うことができそうだ。画像管理用ソフトの「photo Impression」と動画編集ができる「video Impression」(ともにアークソフト製)がきちんと付属するところも、トイカメラらしからぬ部分といえそう。
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大きめのレンズがクラシック感を更に引き立てている |
レンズの明るさはF3だが、コンパクトデジタルカメラにしては大口径に見えるレンズもなかなか格好いい。本体のデザインと併せて仲間内で話題になること請け合いだろう。価格が安いだけにデジタルカメラ入門として子どもなどへのプレゼントにもよいだろう。また、普段デジタル一眼レフカメラをメインに使っているユーザーも、こうしたカメラに触れると意外と新しい世界を発見できるかもしれない。
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USB端子。AV出力もここからできる | バッテリーは単4電池×3本と珍しい構成。記録メディアはSDHC/SDメモリーカード |
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バッテリーと記録メディアを含む重量。見た目より軽く感じる |
■実写サンプル
※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
●歪曲収差
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EZ F521 / 2,592×1,944 / 1/102秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / オート / WB:雲天 |
●カラーモード
共通設定:EZ F521 / 2,592×1,944 / 1/102秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート
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ノーマル |
【撮影時に適用】
【再生時に適用】
●ぐにゃり写真
共通設定:EZ F521 / 2,592×1,944 / 1/615秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート
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そのまま撮影すれば普通に写る | シャッターボタンを押したときにカメラを激しく振ると、被写体がぐにゃりとなる |
●マクロモード
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EZ F521 / 2,592×1,944 / 1/119秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート | EZ F521 / 2,592×1,944 / 1/410秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / オート / WB:オート |
●そのほか
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