【新製品レビュー】アドビ「Photoshop Elements 8」

~管理・編集機能をパワーアップした定番レタッチソフト
Reported by 飯塚直

Photoshop Elements 8

 今年も初・中級者向けの画像処理・管理ソフト「Photoshop Elements」の最新版が発売される時期となった。

 「Photoshop Elements」は、言わずと知れた「Photoshopシリーズ」の個人・ファミリー向け製品。わかりやすいインターフェース、そしてワンクリックで補正できるという手軽さが魅力のソフトとなっている。

 10月23日にリリースされる「Photoshop Elements 8」は、前バージョンの「Photoshop Elements 7」から約1年での更新となり、バージョンアップサイクルはいつもと変わらず。ただし、今回はWindows版だけでなく、Mac版のリリースも同時だ。Mac版の前バージョンは「Photoshop Elements 6」だったが、今回はWindows版と製品名を合わせて「Photoshop Elements 8 for Mac」となる。

 価格は、製品版が1万4,490円、乗換え・アップグレード版が1万290円。また対応OSはそれぞれ、Windows XP/Vista/7、Mac OS X 10.4.11~10.5.8/10.6となっている。

顔認識機能を搭載した「Elements Organizer」

 基本となるシステムインターフェースは前バージョンのPhotoshop Elements 7とほぼ変わらない。ただし、「写真整理モード」が「Elements Organizer」という名称に変更された。行なえる操作に基本的な変更はないが、解析機能が強化され、「手ブレ」、「暗い」、「明るい」などを自動でチェックし、写真の内容を識別する「自動解析」が新たに選べる。解析された情報は「スマートタグ」として写真データに付加され、タグ情報による管理がより細かく行なえる。

 また、解析機能として「人物認識」が加わった。取り込んだ写真から人物が検出・識別されると、個別に名前をタグ付けすることができるもので、写真ライブラリーに対して「顔認識」という操作を行なう。スマートタグや任意で付けるキーワードタグなどと同様に、タグ付けすることで効率よく必要な写真を選定・管理できるようになるわけだ。

起動すると表示される「スタートアップスクリーン」。左側の「整理」をクリックすると「Elements Organizer」が、「編集」をクリックすると「Photoshop Elements Editor」が起動する画像ファイルを読み込んだところ。ちなみにElements Organizerでは、読み込み可能な動画ファイルも一覧表示される
「人物認識」を行うには、Elements Organizerの画面で写真データを選択し、右側にある「人物認識を開始します」をクリック
解析中を示すシークバーが表示される解析が終了すると、読み込んだ写真データが一枚一枚表示される。人物(顔)として認識すると、顔の周りに認識枠を表示する
個別に名前を入力できるようになる人物として認識できなかった場合は、左下にある「見つからない人物を追加」をクリックして認識枠を追加できる
一度人物の認識を行えば、次の写真から名前を入力するのではなく、その人物であるかのチェックを行なうこととなる人物情報(人物の名前を登録して)はあるものの、人物(顔)が特定できない場合、複数の名前が提示される。なお、写真の腕時計が人物として認識されているが、これは認識枠の「×ボタン」を押すことで枠を削除することが可能だ
人物認識が終わると、登録した人物情報がタグ化される。認識された人が写った写真を抽出したい時に便利だろう
人物認識された情報を確認することもできる未確認となっている場合、間違った写真が入り込んでいることもあるので、一度人物認識を行なったらチェックするとよいだろう

 なお、一度顔にタグを付けると、次に同じ顔を検出した際に同じタグを付けるかどうかの確認メッセージが表示される。名前を入力する必要がないのは嬉しいのだが、人物が写っていない写真データをまとめて解析した場合、1枚1枚を関係ない写真として手動で処理しないといけないため、結構な手間になってしまう。たとえば2,000枚、3,000枚の写真データを一気に人物認識した場合、解析自体は高速に処理されたとしても、その1枚1枚を仕分けしなくてはならず、大変な目にあってしまうのでその点は注意しておきたい。

Elements Organizerの新機能として、写真データの自動解析が行えるようになった。基本的に写真データを取り込む際に行うのだが、後から追加した写真データの解析も可能。解析したい写真データを選択して「自動解析を実行」をクリックする写真データの解析が終了すると、品質などの情報を基にした「スマートタグ」が自動的に付加される

簡潔かつ視認性に優れたインターフェースを継承

 Elements Organizerでは新しく「解析機能」が強化されたが、管理ツールとしての使い勝手は「写真整理モード」のころと同じだ。「整理」、「補正」、「作成」、「配信」という4つのカテゴリーに分けられている。

 「整理」では、取り込んだ写真データをアルバムやタグ、そして解析などによって整理することができる。「Elements Organizer」のもっとも基本的なカテゴリーだ。「補正」とは、任意に選んだ写真データの補正処理ができるモードだ。「自動スマート補正」や「自動カラー補正」といったオートメーション化された補正モードを備え、ワンクリックで補正できる。補正内容の細かさは「Photoshop Elements Editor」にゆずるが、その簡便さから、デジタル写真の補正が苦手という人には嬉しい機能といえるだろう。

Elements Organizerの補正タブで実行できる補正処理は全自動。細かく調整したい場合は、「写真を編集」で「Photoshop Elements Editor」を呼び出せるフォトブックやスライドショーなどのアイコンが並ぶ作成タブ
配信タブでは、ファイル送信や保存といった処理が行なえる

 「作成」は、写真データを基にフォトブックやグリーティングカードなどを作成できるモード。「配信」では、データCD/DVDディスクの作成やオンラインアルバムへのアップロード、メールへの添付といったことができる。

 「できること」を明確にカテゴリ分けしてあることで、誰しもが迷わず作業できる。このこなれたインターフェースこそが“Elements”の魅力といえる。

インテリジェントな編集機能

 Photoshop Elements Editorに新機能として追加されたのは、2枚以上10枚以下の同一構図の写真を組み合わせて適正な露出の写真を作り出す合成機能の1つ「Photomerge Exposure」だ。

 たとえば夜間撮影において、「人物はキレイだが、背景が暗い写真」と「人物は暗いが、背景は明るい写真」という写真ができたとする。Photomerge Exposureは、この2つの写真から前景となる要素、背景となる要素を抜き出して合成し、人物と背景がともにキレイに写っている1枚の合成写真を作り出すことができる。

 Photomerge Exposureには、自動補正と手動補正の補正方法が用意されているが、基本的には自動補正を選べば良いだろう。手動で補正を行なう場合は、たとえば背景となる写真にゴミなどの不必要な情報が写り込んでしまった時など、必要ない情報を消したい場合に利用するぐらいだろうか。不要な情報を消すといっても、合成時に消したい箇所をなぞるだけなので特に難しい操作は必要ない。

Photomerge Exposure機能を使う場合、基本的には「自動」でOK。上手く合成できない場合や明らかに不要な情報が入り込んでいる写真データを使う場合には「マニュアル」を使うとよい「マニュアル」では、前景と背景を任意に選択し、前景から背景に合成したい部分をなぞる。ブラシのサイズを大きくしすぎると不必要な部分も合成されてしまうので、ケースバイケースでサイズを変更しよう

 このほかにも、「Photoshop CS4」で「コンテンツに応じて拡大・縮小」として搭載されていた機能が「再構成ツール」として採用された。この再構成ツールとは、写真内のコンテンツ(被写体など)を削ったり、歪めたりすることなくサイズを変更する機能。写真の内容を変えずに画像サイズを自由に変更した写真を作り出すことができるというわけだ。

新機能「再構成ツール」。写真を構成するコンテンツ(被写体など)を必要なコンテンツ、不必要なコンテンツに分けることで、画面サイズを変更しても必要なコンテンツの情報を維持することができる。この写真では、緑色でなぞられた情報が必要なコンテンツ、赤でなぞられた情報が不必要なコンテンツとなる画面サイズを変更したところ。無理矢理サイズを変更したのにも関わらず、必要としたコンテンツの情報は崩れていないことがわかる

 Photoshop Elements 8では、RAW現像プラグインツールである「Camera Raw」に対応しており、RAW撮影した写真データの現像も可能だ。上位ソフトであるPhotoshop CS4と比べ基本的な現像処理しか行なえないが、「ホワイトバランス」、「色調範囲」、「コントラスト」、「彩度」、「シャープ」などのカテゴリーで補正・調整が行なえる。Camera Rawは新機種への対応も早く、また多くの機種をサポートしている。

Photoshop Elements Editorは、細かい補正が行なえる「編集」、スライドバーを動かして簡単に調整が行なえる「クイック編集」、編集したい内容を選んで補正する「ガイド編集」という3つのモードが用意されている「クイック編集」では、編集前と編集後を分割表示できるだけでなく、サムネイル情報にも編集後の効果が表示されるようになった。複数枚の写真をまとめて処理している時などで、確認するには便利だろう
処理方法を指定しながら補正・調整を行なう「ガイド編集」。画像補整のやり方がわからないという初心者には便利な機能といえそうだRAW現像もプラグインのCamera RAWで行える。RAWデータであることを特に意識しなくても、Elements Organizer画面では、ほかのJPEGデータと同じように表示され、編集作業を行なう際にCamera Rawが起動する

はじめてのフォトレタッチにも最適

 Photoshop Elements 8は、写真データの編集・管理ソフトとしても使いやすく、RAW現像ツールとしても非常に優秀だ。

 「撮りためた写真データをどうにかしたい」、「失敗写真をできる限りキレイにしたい」と思っていながらも、苦手意識から画像処理・管理ソフトに手を出せない……。そんな人にこそオススメのソフトといえる。体験版がダウンロードできるので、まずは体験版で試してみるのも良いだろう。





飯塚直
(いいづか なお)パソコン誌&カメラ誌を中心に編集・執筆活動を行なうフリーランスエディター。DTP誌出身ということもあり、商業用途で使われる大判プリンタから家庭用のインクジェット複合機までの幅広いプリンタ群、スキャナ、デジタルカメラなどのイメージング機器を得意とする。

2009/10/21 14:57