新製品レビュー
LUMIX TX3
「裏面照射型1インチCMOS×15倍ズーム」と多彩なフォトスタイル 日常から推し活まで楽しめる高倍率コンパクト
2026年5月28日 07:00
パナソニックから1型センサーを搭載した、高倍率ズームコンパクトの最新機種「LUMIX TX3」(以下、TX3)が発売された。
24-360mm相当をカバーする光学15倍ズームレンズ「LEICA DC VARIO-ELMAR」を搭載しながらも、厚さ45.2mm、質量約337gというコンパクトさを実現。前機種にあたる「TX2」からイメージセンサーが裏面照射型へ刷新されたことで高感度耐性が向上し、室内撮影や夜間撮影など幅広いシーンでさらに使いやすくなっている。
メーカーも「推し活をサポート」と謳っているが、遠くにいる“推し”を撮ったり、グッズを撮ったりする際に、スマートフォン以上の画質を手軽に手に入れられる機種として注目を集めている。今回は特に画質や撮影体験を重点的にレビューしてみた。
外観
TX2に搭載されていたEVFが廃止されて背面液晶モニターのみになった。しかもチルト式ではなく固定式。天面はフラットで、ソリッドで上品な印象になっている。ボディカラーはブラックとグラファイトシルバーの2種がラインアップ。TX2にあった赤いラインも廃止されモノトーンな印象が強まったのもポイントだ。かなり洗練されたように感じる。
操作感
電源を入れるとレンズが繰り出し、撮影スタンバイ状態になる。望遠端である360mm相当にするとさらにレンズは伸びる。当たり前のことだが、起動時にはポケットにインすることはできない。
メニューボタン類は右手側に集約しており、配置を覚えれば親指でスピーディーな操作が可能。スマホでのフリック入力などを難なくこなせる人であれば使いやすいはずだ。また親指をホールドするサムレストも付いているほかボディ前面もグリップがあるため、撮影時に持ちづらさを感じることはなかった。
天面にはズームレバー、モードダイヤル、後ダイヤル、電源スイッチなどが配置されているが、通常の撮影では物理ダイヤル・ボタンの数が足りないということもなかった。しかし、やはりEVFがないということで晴天屋外では構図が見えづらい場合もあり、個人的には搭載していてほしかったが、スマートフォンにプラスしてカメラを持ってもらいたい、というターゲットであれば正解か。そしてUSB Type-C充電に対応しており、長時間の外出でも給電しやすい。
検証:焦点距離画質比較
1インチ裏面照射型CMOSセンサー+ライカ製15倍ズームレンズの組み合わせは一般的なコンパクトデジカメからするとハイスペック。対抗馬はソニーRX100シリーズになるだろう。つまり画質はとても気になるはずで、まずは焦点距離ごとの描写比較をしてみた。
橋の上から川の中の水草を撮影したが、広角端や望遠端は使えない、などということは皆無で、あらゆる焦点距離でクリアかつ繊細な描写を得ることができた。
小型ゆえの手ブレはかなり心配であったし、手のひらサイズで360mm相当の望遠撮影をすること自体がレアな経験だったが、5軸ハイブリッド手ブレ補正が搭載されており望遠側でも安定。特に撮影時は好天の屋外というシチュエーションだったため画質劣化は目立ちづらいはずであるし、屋内など暗い場面ではまた違った印象を受けるかもしれないが、通常の使い方においてはクリアな描写を全域で味わえる。
どこからでも被写体を狙うことができるというのは凄まじい強み。いつもならば小さくしか撮れないから諦めてしまうようなシーンでも高画質で撮影することができる。
つまり、推し活においてはステージに立つ“推し”なども難なく撮れるということだ。また、スナップを楽しみたい人にとっても「切り取り型」の構図作りが楽しめるのでおすすめだ。
検証:F値
TX3の開放F値はF3.3(広角端)、F6.4(望遠端)となっている。1インチであっても被写体と背景との距離感を取ればボケも十分に楽しめる。
一方で仕組み的に最小絞りはF8となっており、絞り込んでのスローシャッター撮影などは行うことができない。ただしあまり絞り込んでも回折現象が発生してしまうのと、1インチセンサーならば十分に被写界深度は深いため最小絞りF8は特に問題にならないはず。
絞り値の選択肢が少ないため、常に「P」などカメラ任せで撮影をしてもいいかもしれない。そのような観点からも推し活目当てにカメラを持ちたい人に向く。
広角端3cmのマクロ撮影能力
TX3の最短撮影距離は広角端で3cmと、脅威のマクロ性能を誇る。一方で望遠端は1m。手ブレなども考慮すると、マクロ撮影をしたいときは広角端にしてグッと自分で近づくのが正解だ。
また、いくら被写界深度が深めの1インチセンサーとはいえ、マクロ撮影時はピント位置がとてもシビアになる。そこで活用したいのが「フォーカスセレクト」機能。超高速連写をしながらピント位置を手前から奥へ自動でスキャンしながら撮影し、あとから最も好みのピンと位置の写真を切り出すことができる。自動フォーカス変動の動画撮影という感覚。失敗したくないときに使ってみよう。
推し活においてはグッズの撮影などマクロ撮影の頻度は高いはず。そしてスマートフォンもマクロ撮影能力は高いが、1インチセンサーならではの描写力はさすがで、マクロを目当てに本機を手にしても損はないはずだ。
7種の「フォトスタイル」
せっかくカメラを単体で持つのならば、スマートフォンにはない高品質な写真画質を味わいたいところ。TX3はRAWでの記録もでき、後から編集ソフトで追い込んでいくこともできるが、JPEGでハイクオリティな画質を得たい場合は、LUMIXシリーズのベーシックな色設定である「フォトスタイル」を使いたい。
「スタンダード」「ヴィヴィッド」「ナチュラル」「モノクローム」「L.モノクローム」「風景」「人物」の7種を搭載している。
バランスを重視するならスタンダード。こだわりの濃密なモノクロが楽しめる「L.モノクローム」はLUMIXシリーズならではの表現であり、ぜひ積極的に使いたいところ。各モードの特徴はありつつも過度なフィルターではなく、写真として破綻しない範囲内での設定となっている。
以下、それぞれのモードで撮影をした作例を掲載する。
「スタンダード」。全ての基準となるLUMIXシリーズが考えるスタンダードな発色。
「ヴィヴィッド」。彩度とコントラストを高め、原色の表現にインパクトを作る。スナップのメリハリ作りにも向くと感じた。
「ナチュラル」。彩度とコントラストを抑え、グラデーションを重視した表現。カフェフォトなどがかわいくなるので、推し活などでも使えるシーンは多そう。
「モノクローム」。標準的なモノクロ表現。中庸なコントラストで素直な印象。
「L.モノクローム」。ハイライトからシャドウまでを豊かに使い、引き締まった黒が味わえる目玉モード。個人的にはヘビーユースしたい。
「風景」。空の青、木々や草花の生き生きとした鮮やかさを念頭にいれたモード。ヴィヴィッドにも近い感覚。
「人物」で撮影。肌色がなめらかに描写するモード。コントラストは低め、しかし血色の良さもある。
SNS映えの強い味方「クリエイティブコントロール」
「クリエイティブコントロール」は、液晶モニターで仕上がりをリアルタイムに確認しながら、映画のワンシーンや絵画のようなアート表現を手軽に楽しめる全22種類のデジタルフィルター機能。
ポップ、クロスプロセス、ラフモノクロームなど、「フォトスタイル」では得ることができない、個性の強い描写を楽しむことができる。アプリ加工的な仕上がりとなるが、SNSで目を引きやすい写真に。
おもしろいのは、通常このようなフィルター的なカラーモードは同時にRAWを記録することができないが、TX3はRAW同時記録ができるため後からノーマルに戻すこともできる。不可逆なモードではないのでとてもチョイスしやすい。ここではいくつかのモードで撮った作例を紹介する。
ポップ/レトロ/オールドデイズ/ハイキー/ローキー/セピア/モノクローム/ダイナミックモノクローム/ラフモノクローム/シルキーモノクローム/インプレッシブアート/ハイダイナミック/クロスプロセス/トイフォト/トイポップ/ブリーチバイパス/ジオラマ/ソフトフォーカス/ファンタジー/クロスフィルター/ワンポイントカラー/サンシャイン
「ポップ」。鮮やかさを追求したモード。嫌味のない濃密さのため常用することもできるという印象。
「トイポップ」。「ポップ」の鮮やかさに加えて周辺減光を加えるモード。フィルムのトイカメラで撮ったかのような仕上がり。
「クロスプロセス」。色転びを4パターンの中から選ぶことができる。夜景との相性も良い。
「クロスフィルター」。点光源を十時の光条にする。推し活のステージで使うと威力絶大の可能性も!
「シーンガイド」で最適設定を全自動化
モードダイヤルを「SCN」に合わせると「シーンガイド」モードになる。夜景、夕景、食べ物など、特定の撮影シーンでそれぞれ最適な設定を自動で調整。露出はもちろんのこと、ホワイトバランスや色味などトータルで設定してくれるため、うまく撮る自信がないというときに使いたい。
初心者であればあるほど、カメラはデフォルト設定のまま使いがちだが、全24種の搭載シーンにどんなモードがあるか、またその設定方法だけは頭に入れておき、撮影中閃いたときにぜひ使っていただきたい。
全モードを試すには至らなかったが、「料理をおいしそうに撮る」などは明らかに写真がトーンアップして美しい仕上がりになるなど使う価値ありと感じた。推し活ステージの写真には「スポーツをきれいに撮る」、推しそのものをしっかり撮るときには「人物をきれいに撮る」などを使っていきたい。
人物をきれいに撮る/人物の肌をきれいに撮る/逆光でふんわり撮る/背景をぼかして撮る/子どもを元気に撮る/風景をきれいに撮る/青空をさわやかに撮る/夕焼けを幻想的に撮る/夕焼けを印象的に撮る/水面をキラキラ撮る/夜景をきれいに撮る/夜空をクールに撮る/夜景を暖かく撮る/夜景をアーティスティックに撮る/イルミネーションをキラキラ撮る/夜景を手持ちで撮る/夜景をバックに人物をきれいに撮る/花をふんわり撮る/料理をおいしそうに撮る/スイーツをかわいく撮る/動くペットをきれいに撮る/スポーツをきれいに撮る/モノクロームで撮る/パノラマを撮る
「花をふんわり撮る」を適用。ソフトフィルターを使ったかのようなやわらかな描写になった。露出補正はカメラが自動でおこなったと思われる。
「料理をおいしそうに撮る」を適用。明るくフレッシュな雰囲気の写真に。レタッチ後のような見栄えになった。
まとめ
「推し活カメラ」として、スマートフォンの延長線上で気軽に持つのも良し、趣味の写真を充実させる高画質1インチセンサー機として楽しむのも良し。
割愛しているが、フラッシュを内蔵していることや、必要十分な連写性能もあり、1インチセンサー機を含むコンパクトデジカメの中ではかなり強力な選択肢になると感じた。個人的には、常にポケットに忍ばせる1台をどれにするか、という難問を抱え続けている写真ライフを送っているが、TX3のオールラウンダーぶり、そして硬派に使おうと思えばとことん硬派なスナップ機にも変貌する2面性にツボを突かれて、似た悩みを持つ人にとっても気になる存在になるはずだ。
ぜひ15倍ズームの快適な撮影体験と、LUMIXのバランスの良い色作り、裏面照射型1インチセンサーの画質を味わっていただきたい。











































