新製品レビュー
新製品レビュー:パナソニックLUMIX CM1
LTE+1インチセンサー+F2.8レンズ…iPhone 6 Plusと比べてみた
三井公一(2015/1/30 08:00)
昨年ドイツで開催されたフォトキナ2014で姿を現したパナソニックLUMIX DMC-CM1(以下LUMIX CM1)。その日本国内販売がようやく決まった。3月12日から限定2,000台、実勢価格12万円前後でいよいよリリースされる。
LUMIX CM1とは、スマートフォンスタイルの高級コンパクトデジタルカメラで、パナソニックでは「コミュニケーションカメラ」と位置づけている。ルックスはまるでスマートフォンだが、大きなレンズ部が目を引く。
スペックや詳細は、現地速報の「緊急レポート!LTE内蔵デジカメ「LUMIX CM1」インプレッション フランスで発売日に購入 カメラとスマホの融合は何をもたらすのか」や「写真で見る パナソニックLUMIX CM1 Android端末に1型センサーを搭載 カメラとしての機能はいかに?」をご覧頂きたいと思うが、ここではiPhoneで作品撮りを行い、デジタルカメラで撮影もするフォトグラファーとしての視点で、このLUMIX CM1を考えてみたい。
こいつはあくまでも「カメラ」だ!
このLUMIX CM1の特長は大きく分けて2つある。
まずは1型という大きな撮像素子を搭載し、アナログカメラのような操作感を実現しているところ。
次に基本OSにAndroidを採用し、スマートフォンルックでLTEに対応したSIMロックフリー端末であること(もちろんさまざまなアプリケーションをインストールすることも可能)。
この2つの特長によって「1型撮像素子の高画質」を「いつでも持ち歩いて高速なLTE回線でシェア」することが可能になっている。
「なんだ、カメラ性能が高いスマホなのか」と思われがちだが、その素性は逆で「デジタルカメラにスマホ機能を搭載した」とみる方が的確である。その理由は「写真を撮る」という基本的なスタンスや操作感だ。
まずは独立したカメラ起動スイッチとシャッターボタンを備えるところが「カメラ」だと言えよう。シャッターボタン横にあるスライドスイッチを軽く引いてやるだけで、どんな状態でもカメラが瞬時に起動して撮影可能な状態になるのだ。LUMIX CM1が例え窮屈なポケットの中にあっても、手探りで確実にカメラを起動できる。スマートフォンではなかなかこうはいかない。
また物理的なシャッターボタンの存在もその理由のひとつだ(もちろんディスプレイ内に表示されるシャッターボタンも使うことができる)。
さらに撮影者の意図を確実に反映できる設定項目の存在だ。P、S、A、Mをはじめとしてインテリジェントオートやクリエイティブコントロールなどの露出モードの設定ができ、当然ながらホワイトバランスやISO感度、露出補正が設定できる。
しかもレンズ外周に設けられたコントロールリングで、アナログ時代のカメラのように「カチカチ」とできるのだ。これを回して絞り開放でボケ味を楽しむのも意のままである。
今までにカメラ機能を高らかに謳ったAndroidやWindows Phoneスマホも存在したが、ここまでストイックに「撮る」ということに振った端末はないのではないか。やはりLUMIX CM1はカメラスマホを越えた「カメラ」であり、高画質を撮影者の意図通りに撮影し、ダイレクトにその写真をシェアできる「新しいカメラ」だという印象を受けた。
iPhone 6 Plusと比べてみる
というわけでLUMIX CM1を使ってみた。毎日持ち歩いているiPhone 6 Plusとともにジーンズのポケットに入れて、ブラブラとあちこち撮り歩いたが、なかなか興味深かった。
コンセプトと利用シーンの違い
LUMIX CM1は撮影者の意図をきめ細かく設定可能なカメラである。インテリジェントオートに設定してカメラ任せで撮影することもできるが、被写体と対峙して自分なりの露出や色味で作品を仕上げるべきカメラだ。
一方、iPhoneは「!」と思った瞬間に感動や驚きをストレートにカメラ任せで記録するスタイル。これは両製品を併用すれば明らかに感じるコンセプトの違いである。
乱暴な分類をすると「反射的に撮影をするiPhone」と「思考してから撮影するLUMIX CM1」のような感じだろうか。もちろんクロスオーバーする部分もある。
利用シーンも同様で、iPhoneは日々の記録や食べ物、Instagramにアップするようなリアクション系が得意であるのに対し、LUMIX CM1は風景やスナップなどどちらかというとジックリ系に向いている。ただこれも両製品ともに使い手次第でなんとでもなる部分でもある。
LUMIX CM1、iPhone 6 Plus 画質の違い
両機ともフルオート、デフォルトセッティングでの撮影である。
LUMIX CM1は28mm相当F2.8、有効2,010万画素でアスペクト比3:2。
iPhone 6 Plusは29mm相当F2.2、800万画素でアスペクト比4:3であることを頭に入れて見て頂きたい。
順光
LUMIX CM1のディテールが見事だ。記憶色イメージ寄りのホワイトバランスのiPhoneに対して、的確なオートホワイトバランスである。レンガなどの解像感もしっかりしているが、iPhone 6 Plusもなかなかのものである。
高感度
iPhone 6 Plusは光学式手ブレ補正機能を搭載しているが、LUMIX CM1にはそれがない。
iPhoneは最高感度がISO500までしかあがらず、手ブレ補正機能アシストによるスローシャッターで高画質を求める仕様になっているが、LUMIX CM1はぐーんと感度が上がってISO3200になっている。それによって空のオリオン座まで写っているが、壁面のディテールは消失気味だ。
iPhone 6 Plusはノイズ感こそ多いが見た目に近い印象を受ける。
明暗差
このシーンではLUMIX CM1が見た目に近い描写を見せた。トーンや解像感、ノイズ感も上だ。1型撮像素子の懐の広さを感じる。
iPhone 6 Plusは記憶色イメージのような仕上がりなので、SNSでそのままシェアしても受けそうな画質である。
作品集
5群6枚 (非球面6面3枚)のLEICA DC ELMARITはヌケがいい。28mmという高級コンパクトデジタルカメラではお馴染みの画角も慣れているので使いやすく感じる。
LUMIX CM1の1型撮像素子はなかなかディテール豊富に感じる。大画面や等倍で鑑賞したときに、スマートフォンとの画質の差は明らかだ。
斜光を浴びる古ぼけたドアとノブの質感がとてもいい感じ。剥がれかけたペイントと、木のディテール感がしっかりとしている。
同じシーンをiPhone 6 Plusで撮ったがシャープネスがやや強めに感じた。
搭載されているクリエイティブコントロールで積極的にフィルターをかけてみるのも面白い。もちろん好みのアプリをインストールして写真を加工してみるのもLUMIX CM1の楽しみだろう。
LUMIX CM1は高感度に強いのも特長だ。スマートフォンでは諦めたり、画質面で撮影を躊躇していたシーンでも臆することなくシャッターを切れる。ただ手ブレ補正機能はないのでスローシャッター時には注意が必要だ。
「高画質」と「SIMロックフリー」がクローズアップされるが、薄型でいつでもどこにでも携行しやすいことも大きな特長だ。「いいシーンに出会ったときに手元にあるカメラが一番強い」ので、LUMIX CM1を手に入れたら常時携帯していいショットを撮影して欲しいものだ。
まとめ
LUMIX CM1は画質と操作面から見ても歴とした高級コンパクトデジタルカメラだ。最初に書いたように「デジタルカメラにスマホ機能を搭載した」ものである。
近頃の写真の楽しみ方はネットやSNSにアップするのが主流なので、ダイレクトに高画質の写真を投稿できるこのLUMIX CM1は注目を浴びるに違いない。SNSに投稿してもやはりこの画質は目を多いに引くからである。高画質の写真をダイレクトに高速でどこからでも投稿できるのはまさに麻薬である。Wi-Fi対応のデジタルカメラはコンパクトデジカメから一眼レフまで多く登場してきているが、ネットとの親和性という意味ではこの機種がナンバーワンであろう。
このLUMIX CM1をきっかけに、SIMスロットを持つカメラが続いて登場する可能性も多いにある。個人的にはライカブランド仕様でブラックペイントやアンスラサイト仕上げのものが出たら面白いと思っている(笑)。とにかくこの「新しいカメラ」にはぜひ触れてみて欲しい。