【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-LX5

~定評ある「プレミアムコンパクト」が正常進化
Reported by 大浦タケシ

 プレミアムコンパクトとして人気を博したパナソニックLUMIX DMC-LX3の後継モデルである。ISO12800の撮影を可能にするイメージセンサーや大口径ズームレンズを採用するほか、新たにEVFも使えるようなった。

 執筆時における大手量販店での実勢価格は5万9,800円前後となる。


望遠端が90mm相当に拡大

 ボディシェイプは先代のLUMIX DMC-LX3を継承するもので、変わったところは少ない。グリップのボディ下部側の膨らみが広がったのと、EVF用の外部コネクターが備わったため、アクセサリーシューが一段高くなった程度だ。どちらといえばコンパクトモデルとして大柄ともいえるボディであるが、その分ホールディングはしやすい。仕上がりは同社のコンパクトモデルのフラッグシップに相応しい高級感あるものである。

 ボタンレイアウトにはいくつかの変更が行なわれている。まず、カメラ上部にあった「FOCUSボタン」が背面部の十字キーに移動、代わりに「動画ボタン」が備わる。背面部ではスライドタイプであった「撮影/再生スイッチ」が、プッシュタイプの「再生ボタン」へ変更となった。動画ボタンは一眼レフカメラも含め現在の多くの動画撮機能付きのデジタルカメラに倣ったもの。再生ボタンは撮影した画像の再生中でも、シャッターボタンを半押しすればそのまま撮影が即スタンバイでき、スライドタイプよりも格段に使い勝手はよくなった。

 LUMIX DMC-LX3の特徴的な部分でもあった「ジョイスティック」は廃止され、代わりにLUMIX DMC-G2/GF1などに採用される「後ダイヤル」を新たに採用。使い方も同様で、P/A/Sなどの撮影モードであれば、後ダイヤルをプッシュすることで露出設定(Pモードではプログラムシフト)/露出補正に切り替えることができる。ジョイスティックよりもシンプルで使いやすく、他と同様こちらも操作性は向上した。

 ズーム倍率のアップも今回のリニューアルの注目すべきところのひとつ。広角端24mm相当に変更はないものの、望遠端は60mm相当(ズーム倍率2.5倍)から90mm相当(同3.8倍)となる。LUMIX DMC-LX3ではもう少し被写体を大きく写せたらと思うようなことが多かっただけに、今回のズーム倍率のアップはたいへんありがたい。開放値については、広角端ではF2と変更はないものの望遠端はF3.3と半段程度暗くなっている。ズーム倍率とともに内蔵する光学式手ブレ補正機能も「MEGA O.I.S.」から「POWER O.I.S.」へと進化。これまで補正していた小さく断続的な揺れのほか、大きく比較的ゆっくりとした揺れにも対応するようになった。

LUMIX DMC-LX3同様、ポップアップタイプのストロボを内蔵する。発光距離は広角端:0.807.2m、望遠端:0.304.4m(いずれもISOオート時)レンズ上部のアスペクト切替スイッチには新たに1:1が備わった。ただし、他の4:3、3:2、16:9のように同じ画角で撮影できるマルチアスペクトではなく、切り出しとなる
LUMIX DMC-LX3より踏襲されるフォーカスモード切替スイッチ。鏡筒側面に備わるため操作しやすい。アスペクト切替スイッチも含め、もう少し動きが固いと不用意に動かずよいように思えるパナソニックのデジタルカメラの伝統的にのっとり、電源のON/OFFスイッチにスライド式を採用する。古めかしく感じることもあるが、視認性はたいへんよい。新たに動画ボタンが備わっている
レンズはDC VARIO-SUMMICRON 5.1019.2mm F2-3.3 ASPH.を搭載。35mm判換算で24-90mm相当の画角が得られるレンズキャップの意匠が変更され、ちょっとだけ高級感あるものとなった。紛失が恐い
ジョイスティックが廃止された代わりに後ダイヤルを採用。直感的な設定が可能で、P/A/Sなどの撮影モードの際、後ダイヤルをプッシュすると露出設定(Pモードではプログラムシフト)と露出補正に切り替えられるバッテリーは3.6V・1,250mAhのDMW-BCJ13を使用。使用メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード

 AFには「プリAF」機能を採用する。これはシャッターボタンの半押しの有無に関わらず、常時ファインダー内の被写体にピントを合わせるものだ。これまでのようにシャッターボタンの半押しで初めてAFが作動しピント合わせを開始するよりも、既におおまかなピントは合っているので、合焦まで時間はかからない。位相差方式よりも測距スピードの遅いコントラスト方式のために考え出されたもので、使い慣れるとこれまでのAFでは勝手が悪く感じられるほどだ。ただし、この機能はバッテリーの消耗に影響するので、残量が心もとないときなどは切っておくのも手だ。なお、LUMIX DMC-LX3では3.7V・1150mAhのDMW-BCC12だったバッテリーは、LUMIX DMC-LX5では3.6V・1250mAhのDMW-BCJ13に変更になっている。

 イメージセンサーは有効1,010万画素1/1.63型CCDとLUMIX DMC-LX3から変更はない。コンパクトモデルでは1200万画素ないし1400万画素が一般的だが、敢えて画素数を抑えることでノイズレベルと階調再現性の向上が引き続き図られる。もちろん1000万画素でも、コンパクトモデルで要求される解像度としてはまったく不足を感じるようなことはない。個人的にはむしろ十分に感じる。さらに本モデルでは、センサー回路の見直しが行なわれるとともに、オンチップマイクロレンズの最適化で集光効率がアップ。新画像処理エンジン「ヴィーナスエンジンFHD」の採用により最高ISO12800を実現する。ノイズについては、さすがにISO1600あたりから際立ってくるし、ISO12800はお世辞にもキレイな画像だとはいいがたいが、従来からすればよく抑えているといってよい。なお、ISO4000以上では最大記録画素数は300万画素となる。

最高感度はISO12800を達成する。ただし、ISO4000以上の設定では最大記録画素数は300万画素となる(画像は1EVステップでの感度設定時の表示)シャッターボタンの半押しの有無に関係なく、常時ファインダー内の被写体にピントを合わせるプリAF機能を搭載。これによりコントラスト方式ながら、合焦までの時間は大幅に短縮された
ステップズームを設定すると表示画面に焦点距離が表示される。どのくらいの画角で撮影しているかが把握でき便利だDMC-LX3にも搭載されていたものだが、異なるアスペクト比の画像を一度に撮影できるのがアスペクトブラケットだ。LUMIX DMC-LX5では4:3/3:2/16:9のほかに1:1も撮れる
動画機能には、パソコンでの加工などにも適したMotion JPEGのほか、ハイビジョンテレビでの視聴に適し、効率のよい画像記録のできるAVCHD Liteを搭載するマイクロフォーサーズモデルも含め、パナソニックの多くのデジタルカメラでは、ノイズリダクションは仕上がり機能であるフィルムモードのなかに設定メニューが入っている。ちょっと紛らわしく思えるところだ

外付けEVFやAVCHD Liteに対応

 今回のリニューアルのトピックといえば、EVF用のコネクターを備えたことだろう。これは同社のマクロフォーサーズモデルLUMIX DMC-GF1に備えているものと同一規格のコネクターで、使用するEVFも同じライブビューファインダーDMW-LVF1を使用する。本モデルには光学ファインダーDMW-VF1もオプションとして用意されているが、こちらは残念ながらズームには連動せず、また撮影情報等も表示されないので、DMW-LVF1のほうが遥かに実用的といえる。明るい屋外での撮影やピントの状態を正確に把握したいとき、IAズームを使った望遠撮影時など出番は多そうだ。コンパクトモデルのアクセサリーとしては高価(実勢価格は1万9,800円前後)だが、このカメラと深く付き合いたいユーザーは是非とも購入すべきだろう。

新たに備わったライブビューファインダーDMW-LVF1用のコネクター。同社のマイクロフォーサーズモデルLUMIX DMC-GFのものと同一左がライブビューファインダーDMW-LVF1。約20.2万ドット相当。チルト機構付き
ライブビューファインダーDMW-LVF1を装着した DMC-LX5。スタイリッシュか否かは別にして、カメラの使い勝手は一挙に向上する

 パナソニックの得意とする「超解像技術」ともに、それを応用した「iAズーム」も合わせて搭載される。通常、デジタルズームを使うと画質は劣化し精細感が失われるが、超解像技術でそれを補うというもの。光学ズームの望遠端から最大1.3倍まで、焦点距離にして90mmから120mm相当までの間のデジタルズーム域で効果を発揮する。iAズームと通常のデジタルズームでの比較作例を掲載するので、見てもらえば分かるかと思うが、たしかに精細感がアップしている。シャープネスをかけても同様な結果は得られるが、エッジのみならず滑らかな部分にまで効果が及んでしまい、どことなく不自然な感じになることが多い。しかし、iAズームではそのような印象はなく、あくまでも自然な感じだ。
 
 これまでデジタルズームというと、撮影後トリミングで済んでしまうこともあって、あまり積極的に使う気にはならなかったし、このようなレビュー記事でもピックアップすることはほとんどなかったが、この結果なら使ってみようかなという気になる。現段階では光学ズームの望遠端から1.3倍までの焦点距離で少々物足りないところもあるが、将来的には倍率をさらに伸ばしてほしく感じる。

 動画機能はMotion JPEGのほかに新たにAVCHD Liteに対応。ハイビジョンでの記録を可能とするほか、ドルビーデジタルクリエイターの採用で、音質もクリアだ。前述の動画ボタンの搭載で、静止画撮影中でも素早く動画撮影を楽しめる。フルハイビジョン対応、ステレオマイク内蔵ならば、なおよかったところだ。

隙を感じさせない仕上がり

 LUMIX DMC-LX5は、パナソニックのコンパクトモデルの頂点に立つカメラらしく、隙を感じさせない仕上がりだ。後ダイヤルやズーム倍率のアップしたレンズ、EVF用コネクターなどの採用で使い勝手は先代のLUMIX DMC-LX3を大きく凌ぐ。何より、普段デジタル一眼レフの扱いに馴れたユーザーにも十分訴求できるほどの性能、機能を持つ。実に魅力的なカメラだ。

 だが、購入を考えた場合、問題になるのがやはり6万円近い価格だろう。ミラーレスモデルとよい勝負で、どちらを選ぶか躊躇ってしまいそうである。しかし、このLXシリーズに限っていえば、モデルチェンジのサイクルもコンパクトモデルとしては比較的長く、その内容も含め決して高い買い物ではないように思える。すでに店頭に並んでいるので、興味ある向きはぜひ手に取ってみることをオススメしたい。

実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・感度

ISO80
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/6秒 / F8 / +0.3EV / WB:晴天 / 5.1mm
ISO100
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/8秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 5.1mm
ISO200
DMC-LX5 / 約3.9MB / 3,648×2,736 / 1/15秒 / F8 / +0.3EV / WB:晴天 / 5.1mm
ISO400
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/30秒 / F8 / +0.3EV / WB:晴天 / 5.1mm
ISO800
DMC-LX5 / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F8 / +0.3EV / WB:晴天 / 5.1mm
ISO1600
DMC-LX5 / 約1.2MB / 3,648×2,736 / 1/125秒 / F8 / +0.3EV / WB:晴天 / 5.1mm
ISO3200
DMC-LX5 / 約1.2MB / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F8 / +0.3EV / WB:晴天 / 5.1mm
ISO6400
DMC-LX5 / 約861K / 2,048×1,536 / 1/500秒 / F8 / +0.3EV / WB:晴天 / 5.1mm
ISO12800
DMC-LX5 / 約911K / 2,048×1,536 / 1/1,000秒 / F8 / +0.3EV / WB:晴天 / 5.1mm

・iAズーム

iAズーム:オフ
DMC-LX5 / 約3.5MB / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F4 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 19.2mm
iAズーム:オン
DMC-LX5 / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F4 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 19.2mm

・歪曲収差

広角端
DMC-LX5 / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F2 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
望遠端
DMC-LX5 / 約3.5MB / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F3.3 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 19.2mm

・フィルムモード

スタンダード
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
ダイナミック
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
ネイチャー
DMC-LX5 / 約3.9MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
スムーズ
DMC-LX5 / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
バイブラント
DMC-LX5 / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
ノスタルジック
DMC-LX5 / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
B&W(スタンダード)
DMC-LX5 / 約3.2MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
B&W(ダイナミック)
DMC-LX5 / 約3.3MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
B&W(スムーズ)
DMC-LX5 / 約3.3MB / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm

・マイカラー

マイカラーオフ
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
ポップ
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/640秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
レトロ
DMC-LX5 / 約3.2MB / 3,648×2,736 / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
ピュア
DMC-LX5 / 約3.9MB / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F3.2 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
シック
DMC-LX5 / 約4.0MB / 3,648×2,736 / 1/1,000秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
モノクローム
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
ハイダイナミック
DMC-LX5 / 約4.0MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F6.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 5.1mm
ダイナミックアート
DMC-LX5 / 約4.1MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F6.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 5.1mm
B&W
DMC-LX5 / 約3.5MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F6.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 5.1mm
シルエット
DMC-LX5 / 約4.0MB / 3,648×2,736 / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mm
ピンホール
DMC-LX5 / 約2.9MB / 3,648×2,736 / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 5.1mm
サンドブラスト
DMC-LX5 / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/4,000秒 / F8 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 5.1mm

・その他

DMC-LX5 / 約3.6MB / 2,736×3,648 / 1/320秒 / F3.2 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 17.1mmDMC-LX5 / 約3.5MB / 2,736×3,648 / 1/200秒 / F7.1 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 10.7mm
DMC-LX5 / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F2 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 5.1mmDMC-LX5 / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F4 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 5.5mm
DMC-LX5 / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F2 / -1EV / ISO125 / WB:オート / 5.1mmDMC-LX5 / 約3.9MB / 2,736×3,648 / 1/60秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO400 / WB:オート / 5.1mm
DMC-LX5 / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 19.2mmDMC-LX5 / 約3.9MB / 2,736×3,648 / 1/400秒 / F4 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 19.2mm
DMC-LX5 / 約3.9MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 6.4mm





大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2010/9/13 00:00