新製品レビュー
LUMIX G9 PRO(実写編)
写真表現に注力した新ハイエンド機 その実力は?
2018年1月23日 07:00
これまでパナソニックLUMIXシリーズのハイエンド機といえばLUMIX GH5だった。スチル写真も動画機能もプロスペックを備えているカメラだが、どうしても動画の印象が強い。そこでスチル写真に特化したハイエンド機も誕生させた。それがLUMIX G9 PROだ。
なお動画機能と高感度特性に特化したLUMIX GH5Sも発表されたので、LUMIXはなんとトリプルハイエンドだ。またLUMIX G8までのLUMIX Gシリーズは、エントリー~ミドルクラスだったが、G9 PROでハイエンドに格上げされた。
画素数や画像処理エンジンはGH5を踏襲しているが、ダイナミックレンジが広がり、より静止画に向いた仕上がりだ。さらにAFは、世界最速となる約0.04秒を実現している。また連写は、メカシャッターは最高約9コマ/秒、電子シャッターではAF/AE追従で約20コマ/秒、AF/AE固定なら約60コマ/秒が可能。LUMIXお馴染みの4Kフォトや6Kフォトも搭載しているので、目的に応じた連写機能が選択できる。
さらにボディ上面には、LUMIXシリーズ初のステータスLCDを装備。設定状態がひと目で確認でき、スチルカメラらしさが強調されたデザインなのもG9 PROの特徴だ。
新製品レビュー:LUMIX G9 PRO(外観・機能編) ~静止画性能を追求 もう1つのフラッグシップモデルの進化とは?
作品
広がったダイナミックレンジは、前ハイエンド機のLUMIX GH4と比較すると、ハイライト側が25%も拡大されたとのこと。この写真でも白い像は白飛びせず、確実に階調が再現されている。また画面左側のシャドー部もつぶれず、ダイナミックレンジの広さを実感した。
クラシックカーをクローズアップ。レンズはテレ側60mmで絞り開放にして背景をぼかした。黒い車体の階調は申し分なく、背景も明暗差はあるが、自然な仕上がりだ。ここでも広いダイナミックレンジを感じる。
画面四隅でも細かい枝を解像している。ライカDGレンズの描写性能もあるが、G9 PROの解像力の高さがわかる。光学ローパスフィルターレスや、1画素ごとに画像処理をコントロールして最適な解像感が得られる、インテリジェントディテール処理の効果もあるだろう。またモアレも見られず、良好な画質だ。
樽の木や金属をよく解像している。特に金属のサビの部分は、リアリティが伝わってくる。最近のハイエンドクラス機は、ついAFの速さや連写速度に注目しがちだが、被写体の質感を重視した撮影にも向いているカメラだ。
世界最速0.04秒のAFと、空間認識技術、DFDテクノロジーを活かし、水浴びから飛び立つ鳥を狙った。カスタムマルチAFを選択し、ジョイスティックで鳥にフォーカスエリアを合わせる。AF追従感度やAFエリア切換感度、被写体の動きの各パラメーターは標準のまま。メカシャッターでの高速連写の約9コマ/秒で撮影したうちの1枚だ。
AF追従は1度被写体をとらえると追い続けてくれるが、飛んでいる鳥をアップで狙おうとすると、最初のフォーカスで迷うことがあったのが気になった。これはレンズのAF性能もありそうだ。
使用したのは、普及クラスの望遠ズーム、LUMIX G VARIO 100-300mm / F4.0-5.6 II / POWER O.I.S.。これがライカブランドのLEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.や、LEICA DG ELMARIT 200mm / F2.8 / POWER O.I.S.を使用したら、もっと快適だったかもしれない。
とはいえ、杭や手すりなどに止まっている鳥は、アップでも十分な速度で合焦する。しかも像面位相差AFは搭載せずにこれだけのAF速度を実現しているのは驚きだ。
LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.のワイド側で、低空で飛ぶ鳥を狙った。225点のマルチAFとAF-Cに設定。高速連写モードで撮影した。逆光だがAFは迷わず、飛んでくる鳥をとらえることができた。高速AFと高速連写の組み合わせにより、これまで難しかった動体の撮影が楽に行えるようになった。
G9 PROで撮影していて、印象的だったのがシャッターボタンのレリーズの浅さだ。これまでのLUMIX Gシリーズは、シャッターボタンの半押しからレリーズまでやや押し込む感覚があったが、G9 PROは半押しからわずかに押しただけでシャッターが切れる。
一瞬を狙うスチル写真にこだわった仕様なのがうかがえる部分だ。撮りたい瞬間にダイレクトに反応できるので、スポーツや動物などの動体を撮りやすい。ただ誤ってシャッターボタンに触れてしまい、意図せずシャッターを切ってしまうことが度々あった。
また風景やテーブルフォトなど、じっくり撮影する人は深い方が好みという人もいるだろう。サービスセンターでレリーズの深さを調節するサービスができると嬉しい。
高速AFや高速連写だけでなく、G9 PROはボディ単体で6.5段分の手ブレ補正効果を持つのも特徴だ。またレンズ側の手ブレ補正機能と合わせたDual I.S.2にも対応し、望遠撮影でも高い効果が得られる。
カメラをしっかりホールドし、静かにシャッターボタンを押せば、1秒を超えるスローシャッターでも三脚なしでブレずに撮れる。この写真は、なんと2.5秒。もちろん三脚は使っていない。三脚が使用できない場所でも、車の光跡などを活かした夜景が手持ちで撮れる。
G9 PROの高感度は、ISO3200までは常用できるレベル。ISO6400もよほど拡大しなければ実用の範囲内だ。ISO12800からは、高感度らしさを感じる写りになる。ここでは夜に歩く人の足を適度にブラすため、1/80秒が得られるISO6400に設定した。拡大するとベンチの細かいディテール再現は厳しいが、A4サイズのプリントなら余裕で耐える画質だ。
G9 PROはGH5やGX8などと同様に、フリーアングル液晶モニターを採用している。角度を変えるときはモニターを横に出すため、レンズ光軸からずれて撮影しづらいなどという人もいるが、縦位置でもローアングルやハイアングルが撮りやすい。
地面スレスレから公園の遊具を狙うと、子供向けなのに堂々した雰囲気の写真になった。タッチパネルの反応も速く、スマホと同じ感覚で操作できる。
Live MOSセンサーは2,033万画素だが、ハイレゾモードにすると撮像素子をシフトしながら8回撮影し、それを合成することで約8,000万画素が得られる。より高画質を求める商品撮影や建築、インテリアの撮影に便利だ。
屋外の風景でも使えるが、できるだけ風がない条件がおすすめ。約8,000万画素は、拡大すると肉眼を超えた解像感だ。ただし絞りはF8まで。スローシャッターは1秒まで。感度はISO1600まで、などの制限がある。
しかし、いくら被写界深度が深いマイクロフォーサーズでも、近接撮影では十分な深度は得にくい。できればF11以上にも絞れて、1秒より遅いシャッター速度で撮影できると嬉しい。合成に加えてノイズリダクションなどが入ると、処理が難しくなるのかもしれないが、今後に期待したい。
スチル写真を意識したG9 PROだが、動画機能も省略されずに搭載している。記録時間に制限があり、4:2:2 10bitに対応していないなど、LUMIX GH5ほどのスペックではないが、4K60pで撮影できるのはパナソニックらしい。動きの速いシーンでも滑らかに再現できる。
しかも強力な手ブレ補正効果で、手持ちで4K60pの画質が活かせるのもG9 PROの特徴だ。あくまで写真がメインだが、時には動画も綺麗に撮影したい、という人に向いている。
まとめ
静止画の基本スペックはGH5を踏襲しているものの、高速AFや高速連写が強化され、瞬間をとらえるという写真ならではの表現を追求しているのを実感した。
またステータスLCDやジョイスティック、大型アイカップも、スチル写真に向いた作りだ。
0.83倍の広い視野を誇るEVFも特筆すべき点。しかも風景やポートレートなど、構図にこだわりたい撮影では0.83倍、眼鏡をかけている人は0.77倍、動体を狙う撮影では全体を確認しやすい0.7倍など目的に応じて倍率の変更ができるのもポイントだ。
ダイナミックレンジの広い画質も魅力で、ライカDGレンズと組み合わせて撮影したくなる。
さらにマイクロフォーサーズはシステムのコンパクト化ができるので、スナップやポートレートはもちろん、モータースポーツで広いサーキットを歩きながら撮影したり、野山を歩いて茂みの中のモチーフを狙ったり、機動力を活かした撮影に最適だ。手ブレ補正効果も驚くほど高く、幅広い撮影シーンに対応できる。