新製品レビュー
FUJIFILM X-T2(実写編)
進化したスピード性能と、定評の絵作り機能をチェック
2016年10月11日 13:15
富士フイルムのハイエンドモデル、X-T2。先代X-T1の外観デザインを受け継ぎながら、有効2,430万画素のX-Trans CMOS IIIとX-Processor Proを搭載。最短0.06秒のAF速度や、0.045秒のシャッタータイムラグ、14コマ/秒の高速連写(パワーブースター・グリップを装着してブーストモードの状態)など、大幅なレスポンスのアップを実現した。
また連写中にもファインダーのブラックアウト時間が短くなり、AFエリアの拡大やAF-Cモードも強化され、動体撮影にも強くなった。さらにフィルムシミュレーションモードに本格的なモノクロ写真が撮れるACROSモードや、Xシリーズ初の4K動画機能の搭載、SDカードダブルスロットなど、驚くほどスペックアップしている。
それでは、実際に使用した感触や画質はどうだろうか。ここでは、キットレンズのXF18-55mm F2.8-4 R LM OISと、XF50-140mm F2.8 R LM OIS WRの2本を使用した。
連写時のブラックアウト時間を短縮
動体は動物園でニホンザルとホッキョクグマを狙った。AFモードはAF-C。AFフレームはゾーンを選択。低速連写で5コマ/秒に設定し、動く動物を連写した。たしかにブラックアウト時間が短く、動物の動きをしっかり追える。ブラックアウト時間が長く、動体が追えないと言われていたX-T1のウィークポイントを見事に克服したのを感じた。
望遠+連写の作例
歩き回るホッキョクグマを、ブーストモードと5コマ/秒の連写で撮影。AF-Cでゾーンに設定。クマの顔にしっかりピントが合っている。さらにクマの毛並みがリアルに再現されている点にも注目。X-T2は動く被写体を高画質で撮影できる。
木の枝でできた橋を渡るニホンザル。X-T2をブーストモードにして、5コマ/秒で連写した1枚。EVFのブラックアウト時間が短くなり、サルの動きを確認しながら撮影できた。
なおX-T2はグリップの形状が変わり、ホールドしやすくなったのは前回お伝えした通り。とはいえ、大口径望遠ズームのXF50-140mm F2.8 R LM OIS WRでは、縦位置パワーブースター・グリップのVPB-XT2を装着した方がより安定して構えられた。またVPB-XT2を装着していると、ワンタッチでブーストモードに切り替えられるため、動体撮影にはとても使いやすかった。使用するレンズや被写体によって、自分に合ったシステム作りが楽しめる。
関連動画:AF連写撮影テスト
デジカメ Watch TVのコンテンツ「高速ミラーレスX-T2は一眼レフを超えるか?」から、AF連写撮影テストの箇所を紹介します。(編集部)
10月11日、私有地から無断で撮影した部分が含まれていたため、本ページにリンクしていたWatch Video制作の動画を削除いたしました。10月28日、許諾を得た上で撮り直した動画をWatch Videoで再掲載しましたので、本記事に再びリンクいたしました。無断での撮影に及んだことをお詫び申し上げます。(編集部)
定評ある絵作りを継承。モノクロの「ACROS」も
2,430万画素になったX-Trans CMOS IIIはとても高精細だ。細かい部分の解像力は申し分ない。すでに定評といえる富士フイルムの画質の高さを改めて実感した。
またお馴染みになったフィルムシミュレーションは、X-Pro2と同じ。特に注目はACROSで、本格的なモノクロの階調が手軽に楽しめる。カラーだけでなくモノクロでも、フィルムメーカーらしい味わいが堪能できるようになった。
そして、グレインエフェクトでフィルムのような仕上がりも得られる。強さは弱と強の2種類だが、強でも極端なザラザラにはならず、よく見ると粒状感がわかる。弱ではわずかに粒状が感じられる程度だ。1970年代に流行ったコンポラ写真によく見られる「アレ、ボケ、ブレ」の写真が好きな人には物足りないかもしれないが、品を感じる仕上がり。わずかにフィルムのような雰囲気を出したい人に適した仕様だ。
X-Trans CMOS IIIとフィルムシミュレーションに代表される富士フイルムの画作りは、JPEGに重点を置かれている。RAW現像はSILKYPIXベースのRAW FILE CONVERTERの他、Adobe LightroomやCamera Rawでもフィルムシミュレーションの設定が可能だが、カメラ内のJPEGとは異なる仕上がりだ。
どちらが良いとは一概には言えないが、富士フイルムは、リバーサルフィルムでは、撮影した時点ですべてが決まり、あとはフィルム現像するだけ、という考え方がデジタルにもある。そのため、撮影後にRAW現像時にパソコンで調整するのではなく、JPEGで撮ったものがそのまま完成、という作りなのだ。フィルムメーカーらしい考え方で、「とりあえず撮っておいて、RAW現像のときに調整しよう」と思わなくなるため、リバーサルフィルムで撮る時の勝負する感覚がある。
ちなみに、どうしてもRAWでJPEGと同じ仕上がりにしたい場合は、カメラ内RAW現像で可能だ。個人的には、RAWとJPEGの同時記録で、JPEGをメイン。予備としてRAWというのがX-T2に合っているように感じた。
高感度をチェック
さて富士フイルムのXシリーズは、以前からAPS-Cサイズとは思えないほど高感度に強いのが知られている。X-T2は、ISO感度設定の範囲こそISO100〜ISO51200(拡張含む)とX-T1と同じだが、常用の最高がISO6400からISO12800になった。実写した結果も、ISO3200は常用域。ISO6400も十分実用の範囲。
ISO12800は高感度らしい写りだが、拡大しなければ超高感度とは思えない画質だ。拡張のISO25600からは、さすがに粗さが目立ってくる。画素数が増えても高感度特性に優れているのは驚きだ。なおISO100はハイライトのレンジが狭くなる。X-T2は1/32,000秒までの電子シャッターを備えているので、ベース感度がISO200でも大口径レンズの絞り開放を活かしやすい。とはいえ、プロがよく使う大型ストロボでの撮影を考えると、ISO100も常用感度になると撮影の幅がより広がるだろう。
完成度を高めた1台
ホールディングやダイヤルの操作性をはじめ、EVF、撮像素子、画像処理エンジンなど、あらゆる部分が進化したX-T2。完成度の高さを実感したが、あえて注文するならば、背面モニターはタッチパネルを採用してほしい。3方向チルトの背面モニターは、縦位置でのローアングルやハイアングルでも撮影しやすいが、不安定な体勢のままフォーカスレバーを動かすのは意外と難しい。これがタッチパネルなら、ピントを合わせたい部分にタッチするだけなのでとても楽になる。またクイックメニューから設定する際も、タッチの方が素早く行えそうだ。
しかし気になったのはそれくらい。ダブルフラッグシップのもうひとつ、X-Pro2がレンジファインダーカメラライクなスタイルで街のスナップに向いているのに対し、X-T2はポートレートや乗り物、さらに風景からスタジオ撮影まで、オールマイティに使えるカメラに仕上がっている。
作品集
雲と光が印象的だったので、ACROSにして撮影。雲に立体感があり、建物はシルエットだが階調は残っている。JPEGレタッチなしで、これだけ本格的なモノクロ写真が撮れるのだ。さらにグレインエフェクトを「強」に設定し、フィルムライクな仕上がりにした。
池に浮いた蓮の葉と水滴、そして水面に映る雲を狙った。フォーカスレバーを装備したことで、測距点のコントロールが行いやすくなった。
鮮やかな赤い葉の植物を見つけてクローズアップ。レンズキットの組み合わせは小型軽量なので、街中で軽快に撮影できる。極端に色飽和しないよう、ASTIAに設定した。
住宅街に置かれている古いバイク。雨ざらしでボロボロだが、その雰囲気を強調するためにSEPIAで撮影。さらにグレインエフェクトを「弱」にして、ノスタルジックな雰囲気を強調した。
工事中の白い壁に道を歩く人の影が映る。その瞬間を狙った。レスポンスが向上したX-T2は、一瞬のチャンスも狙いやすくなった。
お店のディスプレイをガラス越しに撮影。重厚感を出すために、クラシッククロームに設定した。
三方式チルトの背面モニターを利用して、縦位置のローアングル撮影。ハンドルの先端を切らないようにフレーミングした。X-T1では難しい構図だ。
キットレンズのXF18-55mm F2.8-4 R LM OISは、コンパクトながら明るく、X-T2とのバランスも良好だ。ワイド側はF2.8なので、被写体に近づけばボケを活かした写真も撮れる。
夕暮れの空と雲に惹かれてX-T2を構えた。工事現場のクレーンのバランスを見ながらフレーミング。クレーンが実にシャープに撮れた。またVelviaに設定して空の色を強調している。
室内のミーアキャット。薄暗い場所なので、ISO3200に設定した。拡大すると背景の暗い部分にわずかに高感度らしさはあるものの、十分常用できる画質だ。さらにAFは迷うこともなく、合焦精度の高さも実感した。