新製品レビュー

FUJIFILM X-T2(外観・機能編)

スタイルそのまま、強化された各部をチェック

富士フイルムのフラッグシップ機、「FUJIFILM X-T2」が登場した。これまでのX-T1の後継機だ。富士フイルムは、もうひとつのフラッグシップ機、X-Pro2も発売したばかり。X-T2とX-Pro2のダブルフラッグシップになり、Xシリーズが新たな世代に突入したのを感じる。

各部操作をブラッシュアップ

外観はX-T1を踏襲。一眼レフライクなデザインだ。パッと見ただけでは見分けがつかないほどよく似ている。しかしよく見ると、様々な進化がわかる。まずはダイヤルの高さ。X-T1ではシャッターダイヤルやISO感度ダイヤルを回すと、同軸の測光やドライブも一緒に回ってしまうことがあった。それを防ぐためにダイヤルを高くし、誤操作しづらくなった。

シャッターは、X-T1は1/4,000秒(メカシャッター)までだったが、X-T2は1/8,000秒になった。また露出補正は、ダイヤル上では±3EV。しかし「C」にすると、コマンドダイヤルで±5EVまで可能になる。
X-T1では、常用ISO感度の最高はISO6400。だがX-T2は常用でISO12800になった。拡張はISO100とISO25600、ISO51200。またドライブの左端に動画機能が設置された。

シャッターダイヤルとISO感度ダイヤルは、X-T1では中央のロック解除ボタンを押しながら回すのに対し、X-T2ではボタンを押し込むとロック、もう一度押すとロック解除のトグル式に変更された。不用意に回ってしまうのを防ぎたい人はロック、迅速に設定したい人はロック解除、など、使う人の好みに合わせられる。そしてX-T1では軍艦部にあった動画ボタンを廃止。動画はドライブダイヤルに搭載された。

ダイヤル中央のロックボタンを押し込むとロック。もう一度押してボタンを上げるとロック解除になる。ロック解除状態では、ボタンの下が白い。これはISO感度ダイヤルも同じ。使い勝手は良好だが、ボタンを押しながらダイヤルを回すX-T1と併用すると戸惑うかもしれない。

デザインはX-T1とほぼ同じで、グリップの形状も同じに見えるが、手にすると明らかに指が掛かりやすく、ホールディング性が向上しているのを感じる。大きさはX-T1より全体的にわずかに大きくなり、重さも60g以上重くなっているものの、全くそれを感じさせない。X-T1では握りが浅いと感じていた人も、X-T2ならしっかり握り込めるだろう。X-T1と同様に、ミラーレス機らしい軽快感が楽しめる。

X-T1との外観比較はこちら:写真で見るFUJIFILM X-T2

シャッターはメカニカルと電子式を選べる。メカニカルの最高速は1/8,000秒だが、電子式は1/32,000秒だ。明るい場所で大口径レンズの絞り開放が活かせる。

画期的な3方向チルト対応モニター

ユニークなのが背面モニターだ。X-T1の背面モニターは上下チルト式。だがX-T2は、上下チルトに加え、右側(横位置時)にも開く3方向チルトを採用した。フリーアングル式のようにボディ横に背面モニターを開けることなく、横位置でも縦位置でもハイアングルやローアングル撮影が可能だ。フリーアングル式は便利なのはわかっていても、背面モニターとレンズの光軸が大きくズレるので使いにくい、と思っていた人も多いはず。3方向チルトは、それを見事に解消したといえる。

画期的な3方向チルト式モニター。タッチパネル式ではない。向かって右側にも開く。

撮像素子は、X-Pro2と同じX-Trans CMOS IIIを採用。有効画素数もX-Pro2と同じ2,400万だ。そして画像処理エンジンも、X-Pro2と同じX-Processor Pro。X-Pro2で話題になった、フィルムシミュレーション「ACROS」を搭載している。グレイン・エフェクトとあわせて、フィルムライクなモノクロ写真が楽しめる。

フィルムシミュレーションにACROSが追加された。被写体の質感を活かしたモノクロ写真が撮れる。
従来のモノクロモードと同様に、ACROSでもイエロー、レッド、グリーンのフィルター効果が選択できる。
フィルムのような粒状感が出せるグレイン・エフェクト。弱と強の2種類が選べる。ACROSだけでなく、すべてのフィルムシミュレーションに使用可能だ。

ブーストモードにすると、0.06秒のAF速度や0.045秒のシャッタータイムラグ、約100フレーム/秒のEVFフレームレートなど、高速レスポンスを実現している。実際手にした印象でも、起動時間やAF速度の速さなどが伝わってきた。

そして236万ドットの有機ELを採用したEVFの視認性も高い。表示タイムラグは0.005秒なので、ほぼリアルタイム。動きのある被写体の瞬間も狙えるのだ。しかも高速フレームレートで滑らかに見えるため、通常の撮影でも快適。EVFもここまで見やすくなったのかと、改めて驚いた。

AF追従連写がパワーアップ

X-T2はAFも大きく進化した。測距点はX-T1の49点から91点(最大325点)。しかも画面中央の横50%、縦75%は位相差画素エリア。高速で高精度の測距を可能にしている。なおX-T1の位相差画素エリアは縦横40%だったので、いかに広がったかがわかる。しかもX-Pro2で好評という、ジョイスティックタイプのフォーカスレバーを装備。レバーの動きは重過ぎず軽過ぎず、適度な感触で、スムーズな測距点選択が行える。自動選択では、顔検出や瞳検出も可能だ。

X-Pro2と同様に、新設されたフォーカスレバー。スピーディーな測距点選択が可能だ。また十字ボタンもX-T1より押しやすくなった。それぞれ機能が割り当てられていて、デフォルトは上がAFモード、右がホワイトバランス、左がフィルムシミュレーション、下がブーストモード。カスタマイズも可能だ。

富士フイルムによると、従来のX-T1には「画質は良いが、動く被写体に弱い」という声が多かったとか。フォーカスモードをAF-Cにしても被写体を追い切れず、連写するとブラックアウトの時間が長いため被写体を見失ってしまう。X-T2では、この弱点の克服に力を入れている。

そのひとつが「AF-Cカスタム設定」だ。5つのプリセットとカスタム登録の6つから選べる。それぞれ「被写体保持特性」「速度変化特性」「ゾーンエリア特性」の3つを調節。標準はSET1。障害物が横切るシーンに有効なのがSET2。被写体の動きの変化に強いのがSET3。急に被写体が現れるシーンに有効なのがSET4。前後左右に激しく動く被写体に向くSET5だ。

X-T2で初採用されたAF-Cカスタム設定。SET1は最も汎用性の高い設定。被写体保持特性は2、速度変化特性は0、ゾーンエリア特性はオート。
SET2は動物や鉄道など、障害物があるときやフレームアウトしやすい被写体に有効。被写体保持特性は3、速度変化特性は0、ゾーンエリアは中央。
SET3は急に速度が変わる被写体に向く。モータースポーツやバスケットボールなどに使いたい。被写体保持特性は2、速度変化特性は2、ゾーンエリア特性はオート。
SET4は突然現れる被写体に有効。スキーや野鳥の撮影に適している。被写体保持特性は0、速度変化特性は1、ゾーンエリア特性は手前。
SET5はテニスやサッカーなど、前後左右に激しく動く被写体に向いている。被写体保持特性は3、速度変化特性は2、ゾーンエリア特性はオート。
自分が撮る被写体に合わせた好みの設定をSET6に登録できる。

被写体保持特性とは、被写体が測距点をから外れても追従させるかどうか。速度変化特性は、その名の通り被写体の速度変化への追従性。ソーンエリア特性は、ゾーンエリア内での測距点の切り替え特性だ。SET6のカスタムは、それぞれ好みの設定にできる。

被写体保持特性は、障害物等が横切っても被写体に追従させるか、または横切った側にピントを合わせるか、の設定を行う。
速度変化特性は、被写体の動きの変化に追従させるかどうか。一定の速度で動く被写体なら等速、ランダムに変わるなら変速側に設定する。
ゾーンエリア特性は、手前側か中央側か、優先させるゾーンエリアを設定できる。ただしゾーンAF選択時に有効。

連写時のブラックアウト時間も大幅に短縮している。X-T1で約3コマ/秒の連写を行うと、被写体が見えている時間よりブラックアウトしている時間の方が長い。そのため動体を追うのは不可能に近かった。ところがX-T2では、それらの時間をほぼ逆転。被写体が見えている時間が長いため、動体を追いやすくなった。

AFモードは、シングル、ソーン、ワイド/トラッキングの3種類。X-T1から測距点が増えて、位相差エリアも広がり、より強力なAFに仕上がっている。
中央周辺の大きな四角が位相差エリア。コマンドダイヤルでAFフレームの大きさも変えられる。
測距点はデフォルトでは91点だが、325点に増やすこともできる。

縦位置グリップで連写性能アップ

さらに縦位置パワーブースター・グリップVPB-XT2を装着してブーストモードの設定で、ブラックアウト時間とシャッタータイムラグがさらに短くなり、より動体撮影に強くなる。また約5コマ/秒にすると、被写体が見えている時間がやや短くなるものの、十分実用的といえるレベルだ。かつてミラーレス機は動体撮影に不向きと言われていたが、X-T2を見ると、それも過去のものとなってきたのが実感できた。

縦位置パワーブースター・グリップVPB-XT2を装着。グリップが大きくなり、手が大きい人でもしっかり握れる。縦位置撮影だけでなく、望遠レンズや大口径レンズなど、重量級レンズとのバランスも良好だ。
ブーストモードに切り替えると、背面モニターにもブーストモードの表示が現れる。また「BOOST」のマークも表示される。

ノーマルモードとの違いと差は、AF速度(0.08秒→0.06秒)、EVFフレームレート(60fps→100fps)、撮影間隔(0.19秒→0.17秒)、シャッタータイムラグ(50m秒→45m秒)、ブラックアウト時間(130m秒→114m秒)、高速連写(8コマ秒→11コマ/秒)だ。ただしVPB-XT2を装着しないボディ単体でも、十字ボタンの下を押すとブーストモードになり、AF速度とEVFフレームレートの高速化が可能になる。

VPB-T2はグリップ内にバッテリーが2個入れられる。ボディ本体にも1個入り、合計3個となるため、約1,000枚の撮影が可能だ。

本体と同じNP-W126Sを2個入れられる。付属のACアダプターAC-9VSで、2個のバッテリーを同時に充電することができる。
縦位置シャッターボタン側に、ファンクションボタンやクイックメニューボタン、フロントコマンドダイヤルを装備。好みの設定にすぐ変更できる。
背面にもAE-L、AF-Lボタン、リアコマンドダイヤル、フォーカスレバーを持つ。
通常のノーマルモードからブーストモードに切り替えると、連写のコマ速アップやレリーズタイムラグの短縮など、レスポンスがさらに向上する。

他にもUHS-IIカードに対応したSDカードダブルスロットや、Xシリーズ初となる4K動画機能も搭載。見た目や基本操作はX-T1を踏襲していても、全く別物に進化している。次回「実写編」では、実際にX-T2で撮影した印象をお伝えする。

SDカードダブルスロットになった。しかも、どちらのスロットもUHS-IIの高速転送に対応している。RAWとJPEGを振り分けたり、長時間の4K動画を撮影したり、フラッグシップ機らしいプロ仕様だ。
ついにXシリーズにも4K・30pの動画撮影機能が搭載された。しかも動画撮影にもフィルムシミュレーションが設定できる。
上からマイク端子、マイクロUSB端子、HDMIマイクロ端子(Type-D)、リモートレリーズ端子。USBケーブルを接続してバッテリー充電することも可能だ。
バッテリーはNP-W126S。X-T1やX-Pro2のNP-W126と互換性はあるが、「S」は4K動画撮影時の熱対策が行われている。
フラッシュは内蔵しないが、クリップオンフラッシュEF-X8を同梱。ガイドナンバー11相当(ISO200時)で、TTL自動調光が可能だ。
X-T1と同様に、ボディ前面にはシンクロターミナルを装備。大型ストロボやモノブロックストロボを使うプロにはありがたい。
X-Pro2と同じく、シャッターボタンにはレリーズソケットが装備された。昔ながらのケーブルレリーズが使用できる。また好みのソフトレリーズボタンを装着しても楽しい。

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になり、カメラ専門誌を中心に活動。2016年9月より、デザインオフィス株式会社AQUAに所属。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。