新製品レビュー
FUJIFILM X-T2(外観・機能編)
スタイルそのまま、強化された各部をチェック
2016年9月7日 07:00
富士フイルムのフラッグシップ機、「FUJIFILM X-T2」が登場した。これまでのX-T1の後継機だ。富士フイルムは、もうひとつのフラッグシップ機、X-Pro2も発売したばかり。X-T2とX-Pro2のダブルフラッグシップになり、Xシリーズが新たな世代に突入したのを感じる。
各部操作をブラッシュアップ
外観はX-T1を踏襲。一眼レフライクなデザインだ。パッと見ただけでは見分けがつかないほどよく似ている。しかしよく見ると、様々な進化がわかる。まずはダイヤルの高さ。X-T1ではシャッターダイヤルやISO感度ダイヤルを回すと、同軸の測光やドライブも一緒に回ってしまうことがあった。それを防ぐためにダイヤルを高くし、誤操作しづらくなった。
シャッターダイヤルとISO感度ダイヤルは、X-T1では中央のロック解除ボタンを押しながら回すのに対し、X-T2ではボタンを押し込むとロック、もう一度押すとロック解除のトグル式に変更された。不用意に回ってしまうのを防ぎたい人はロック、迅速に設定したい人はロック解除、など、使う人の好みに合わせられる。そしてX-T1では軍艦部にあった動画ボタンを廃止。動画はドライブダイヤルに搭載された。
デザインはX-T1とほぼ同じで、グリップの形状も同じに見えるが、手にすると明らかに指が掛かりやすく、ホールディング性が向上しているのを感じる。大きさはX-T1より全体的にわずかに大きくなり、重さも60g以上重くなっているものの、全くそれを感じさせない。X-T1では握りが浅いと感じていた人も、X-T2ならしっかり握り込めるだろう。X-T1と同様に、ミラーレス機らしい軽快感が楽しめる。
X-T1との外観比較はこちら:写真で見るFUJIFILM X-T2
画期的な3方向チルト対応モニター
ユニークなのが背面モニターだ。X-T1の背面モニターは上下チルト式。だがX-T2は、上下チルトに加え、右側(横位置時)にも開く3方向チルトを採用した。フリーアングル式のようにボディ横に背面モニターを開けることなく、横位置でも縦位置でもハイアングルやローアングル撮影が可能だ。フリーアングル式は便利なのはわかっていても、背面モニターとレンズの光軸が大きくズレるので使いにくい、と思っていた人も多いはず。3方向チルトは、それを見事に解消したといえる。
撮像素子は、X-Pro2と同じX-Trans CMOS IIIを採用。有効画素数もX-Pro2と同じ2,400万だ。そして画像処理エンジンも、X-Pro2と同じX-Processor Pro。X-Pro2で話題になった、フィルムシミュレーション「ACROS」を搭載している。グレイン・エフェクトとあわせて、フィルムライクなモノクロ写真が楽しめる。
ブーストモードにすると、0.06秒のAF速度や0.045秒のシャッタータイムラグ、約100フレーム/秒のEVFフレームレートなど、高速レスポンスを実現している。実際手にした印象でも、起動時間やAF速度の速さなどが伝わってきた。
そして236万ドットの有機ELを採用したEVFの視認性も高い。表示タイムラグは0.005秒なので、ほぼリアルタイム。動きのある被写体の瞬間も狙えるのだ。しかも高速フレームレートで滑らかに見えるため、通常の撮影でも快適。EVFもここまで見やすくなったのかと、改めて驚いた。
AF追従連写がパワーアップ
X-T2はAFも大きく進化した。測距点はX-T1の49点から91点(最大325点)。しかも画面中央の横50%、縦75%は位相差画素エリア。高速で高精度の測距を可能にしている。なおX-T1の位相差画素エリアは縦横40%だったので、いかに広がったかがわかる。しかもX-Pro2で好評という、ジョイスティックタイプのフォーカスレバーを装備。レバーの動きは重過ぎず軽過ぎず、適度な感触で、スムーズな測距点選択が行える。自動選択では、顔検出や瞳検出も可能だ。
富士フイルムによると、従来のX-T1には「画質は良いが、動く被写体に弱い」という声が多かったとか。フォーカスモードをAF-Cにしても被写体を追い切れず、連写するとブラックアウトの時間が長いため被写体を見失ってしまう。X-T2では、この弱点の克服に力を入れている。
そのひとつが「AF-Cカスタム設定」だ。5つのプリセットとカスタム登録の6つから選べる。それぞれ「被写体保持特性」「速度変化特性」「ゾーンエリア特性」の3つを調節。標準はSET1。障害物が横切るシーンに有効なのがSET2。被写体の動きの変化に強いのがSET3。急に被写体が現れるシーンに有効なのがSET4。前後左右に激しく動く被写体に向くSET5だ。
被写体保持特性とは、被写体が測距点をから外れても追従させるかどうか。速度変化特性は、その名の通り被写体の速度変化への追従性。ソーンエリア特性は、ゾーンエリア内での測距点の切り替え特性だ。SET6のカスタムは、それぞれ好みの設定にできる。
連写時のブラックアウト時間も大幅に短縮している。X-T1で約3コマ/秒の連写を行うと、被写体が見えている時間よりブラックアウトしている時間の方が長い。そのため動体を追うのは不可能に近かった。ところがX-T2では、それらの時間をほぼ逆転。被写体が見えている時間が長いため、動体を追いやすくなった。
縦位置グリップで連写性能アップ
さらに縦位置パワーブースター・グリップVPB-XT2を装着してブーストモードの設定で、ブラックアウト時間とシャッタータイムラグがさらに短くなり、より動体撮影に強くなる。また約5コマ/秒にすると、被写体が見えている時間がやや短くなるものの、十分実用的といえるレベルだ。かつてミラーレス機は動体撮影に不向きと言われていたが、X-T2を見ると、それも過去のものとなってきたのが実感できた。
ノーマルモードとの違いと差は、AF速度(0.08秒→0.06秒)、EVFフレームレート(60fps→100fps)、撮影間隔(0.19秒→0.17秒)、シャッタータイムラグ(50m秒→45m秒)、ブラックアウト時間(130m秒→114m秒)、高速連写(8コマ秒→11コマ/秒)だ。ただしVPB-XT2を装着しないボディ単体でも、十字ボタンの下を押すとブーストモードになり、AF速度とEVFフレームレートの高速化が可能になる。
VPB-T2はグリップ内にバッテリーが2個入れられる。ボディ本体にも1個入り、合計3個となるため、約1,000枚の撮影が可能だ。
他にもUHS-IIカードに対応したSDカードダブルスロットや、Xシリーズ初となる4K動画機能も搭載。見た目や基本操作はX-T1を踏襲していても、全く別物に進化している。次回「実写編」では、実際にX-T2で撮影した印象をお伝えする。