新製品レビュー

キヤノンPowerShot G7 X Mark II(外観・機能編)

ブラッシュアップされた定番1型コンパクト

カメラを趣味としないひとがいざ写真を撮ろうと思い立ったとき、今や持ち出すのはスマートフォン。カメラが趣味のひとであっても、撮影目的によってはやはりスマートフォンを持ち出すことが多い。しかしながら、それに対抗すべくカメラメーカー各社は、スマートフォンでは及ばない部分、描写や機能に徹底してこだわったカメラ好きの琴線に大いに触れるコンパクトデジタルカメラをこの数年相次いで市場に投入している。

今回ピックアップする「PowerShot G7 X Mark II」もそのような1台。2014年10月に発売された「PowerShot G7 X」の後継で、1インチCMOSセンサーに光学4.2倍ズームの大口径レンズ、最新の映像エンジンやレンズ交換式カメラのEOSシリーズと共通する機能を多数搭載するなど、コンパクトデジタルカメラとして隙のないスペックとしている。本稿掲載時点での実勢価格は税込7万9,700円前後。

先代のサイズ感を継承

まずは外観を見てみよう。PowerShot G7 X Mark II(以下G7 X Mark II)は、先代モデルPowerShot G7 X(同G7 X)からサイズ的には大きく変わらない。具体的には先代モデルが103.0×60.4×40.4mm(横×高さ×奥行き)であるのに対し、G7 X Mark IIは105.5×60.9×42.2mm (同)。質量については304gに対し319g(いずれもバッテリー、メモリーカード含む)とする。いわゆる頃合いのよいサイズ感を継承していると述べてよい。

ただしボディの表面は、全体を金属の質感そのままとしていたG7 Xに対し、G7 X Mark IIはシボ革を模した樹脂が貼られ、さらにボディ前面にグリップを新たに備えているため、見た目の印象は若干異なる。カメラを持ったとき手に馴染みやすいのは言うまでもなくG7 X Mark IIのほうで、安定したホールディング感で撮影を楽しめる。

新たに備わったグリップ。控え目な形状ながら、格段にホールディングしやすくなった。シボ革風の樹脂をまとったのも新しい部分。
正面から先代G7 X(左)と見くらべたときの違いは、グリップおよびシボ革風ラバーの有無など。サイズ的な違いはほとんどない。

操作性は継承。チルト式モニターが下向きにも

操作部材のレイアウトに関しても、基本的には先代モデルと同じだ。露出補正ダイヤルの上に撮影モードダイヤルを置いた特徴的な2段重ねのダイヤルも継承する。この露出補正ダイヤルは直径が大きく操作しやすいこともメリットである。

これまでと異なるといえば、チルト式モニターの可動域だろう。G7 Xでは上方向のみに180度可動していたが、G7 X Mark IIではさらに新たに下方向にも45度可動。横位置でのハイアングル撮影も容易になった。なお、液晶モニターは先代モデルと同じく3型104万ドットのタッチパネル式としている。

露出補正ダイヤルの上に撮影モードダイヤルを備える。露出補正ダイヤルは大きううえに適度なクリック感もあり右手親指で操作しやすい。
液晶モニターは、G7 X(左上)の場合上方向のみに180度可動するが、G7 X Mark IIではさらに下方向にも45度可動する。

レンズ付根にあるコントローラーリングもG7 Xより踏襲するが、新たにクリックの有無が選べるようになった。切り換えは同じくレンズ付根にある専用のレバーで行う。露出の設定やISO感度、ステップズームなどを割り当てたときはクリック有りで、マニュアルフォーカス時はクリック無しといった選択ができる。感覚的に大切な部分であり、コントローラーリングの操作感は格段に増したと述べてよい。

レンズ付根にあるコントローラーリングは、新たにクリックの有無が選べるようになった。写真中央下にある突起のようなものは、その切り換えレバー。
コントロールリングの機能割り当て画面。ISO感度、フォーカス、ステップズームなどの機能を割り当てることができる。クリックの有無も機能に合わせてセットしたい。
コントロールリングにステップズームの機能を割り当てたときの撮影時画面。画面下部に35mm判換算時の焦点距離が表示される。

メニュー表示がEOSシリーズに準じたものとしたこともG7 X Mark IIの目新しい部分。同シリーズユーザーであればメニュー操作に違和感なく行えるはずだ。先代G7 Xはもともと操作感のよいカメラであったと記憶するが、今回のブラッシュアップにより完成度はさらに高まったといえる。

カメラ背面の操作部材は従来から大きな変更は無い。安定の操作感といってよいだろう。

一般化してきた1型センサー

キーデバイスに目を移すと、イメージセンサーは前述のとおり1型CMOS。大きなボケは近接撮影時をのぞけば35mmフルサイズやAPS-Cサイズのようには期待できないけれど、それでもスマートフォンなどと比べればボケを表現に活かしやすく、効果も大きい。

さらに階調再現性や高感度特性なども当然ながら優位である。以前までコンパクトデジタルというと1/1.7型や1/2.3型のイメージセンサーがほとんどであったが、他メーカーの動向も鑑みた場合、この1型センサーが今後のスタンダードなる可能性は極めて高いだろう。実際、キヤノンのほかソニーも1型センサー搭載機に注力しているし、ニコンも1型コンパクトを発表している。G7 X Mark IIの搭載する1型センサーの有効画素数は約2,010万画素で、約2,020万画素であったG7 Xのものをベースに、ブラッシュアップが図られているという。

ベース感度はISO125、最高感度はISO12800。1インチCMOSの採用で、高感度域でも十分実用的。
ISOオートの際の感度の上がり方は、早め/標準/遅めから選べる。シンプルで分かりやすい設定方法。
EOSシリーズではお馴染みの高輝度側・階調優先を搭載。ハイライト側のデイテールを少しでも保持したとき効果的な機能だ。

新映像エンジンと、ピクチャースタイルを初搭載

映像エンジンの進化も見逃せない。DIGIC 6から最新のDIGIC 7に代わったことで、階調再現性や高感度特性に加え、画像処理能力も向上しており、撮影コマ速は先代の6.5コマ/秒から8コマ/秒にアップしている。さらに手ブレ補正の制御などもこの映像エンジンが担っており、ジャイロセンサーによる光学式機構の制御は、イメージセンサーの画像情報を元にしたアルゴリズムも加味した「デュアルセンシングIS」としている。

ちなみに補正効果はシャッタースピード約4段分。搭載するレンズの開放絞りは先代と同じF1.8-2.8であるが、レンズの明るさとともに手ブレに対する備えは万全といったところである。さらに、絞り込んだときに解像感が低下する回折現象に対してもDIGIC 7では補正処理が可能で、風景などを絞り込んで撮影するユーザーにとっては要注目といえる。

光学系は先代G7 Xから変更はない。35mm判換算で24mmから100mm相当の画角が得られる。手ブレ補正ISの補正段数は約4段と強力。
絞りを開いて撮影したいときや、長時間撮影では効果的なNDフィルターを内蔵する。通常の使用ではオートに設定しておいて問題になることはないだろう。

EOSシリーズの仕上がり設定であるピクチャースタイルの採用も目新しい部分。EOSのそれと同様にコントラストや彩度(色の濃さ)などパラメーターの調整も可能で、仕上がりを自分好みにコントロールできる。いうまでもなくEOSシリーズのサブ機として使用した場合、仕上がりの傾向を揃えられるので、重宝すること請け合いだ。さらにRAWは14bit記録に対応。1インチセンサーの余裕ある階調再現性を余すことなく仕上がりに活かすことができる。

クラスに見合ったレンズ

搭載レンズは先代から変更がなかった。スペックとしては、35mm判換算で24mmから100mm相当の画角とし、開放F値はワイド端F1.8、テレ端F2.8。コンパクトデジタルカメラのズームレンズとしては明るい部類に入り、条件によっては大きなボケも得やすいはずだ。非球面レンズ3枚、UDレンズ1枚を用いているほか、同社伝統のスーパースペクトラコーティングも施され、さらに9枚羽根の虹彩絞りを搭載するなど、クラスに見合った内容としている。

レンズはG7 X(左)を継承。35mm判換算で24mmから100mm相当とし、開放値はワイド端F1.8、テレ端F2.8。
レンズの繰り出しの様子。左より電源OFF→ワイド端→テレ端。ちなみに起動時間は約1.2秒。

また、最短撮影距離はワイド端で5cm、テレ端でも40cmを実現。“1型コンパクトは寄れない”と言われていた時期もあったが、もはやその心配は不要のようである。近接撮影時の描写については、次回の実写編を楽しみに待っていて欲しい。

願わくばライバルであるソニー「サイバーショットRX100 III/IV」のようにEVFを搭載して欲しく思えたが、そのような要望には同じ1型モデルの「PowerShot G5 X」があるので、好みで選択すべきなのだろう。

何はともあれ充実機能でさらに作画指向が強まったPowerShot G7 X Mark II。次回の新製品レビュー「実写編」に期待していただきたい。

ライブビューの表示。左より情報表示なし→情報表示1→情報表示2(グリッドライン/水準器/ヒストグラム表示)。
ブラケット機能には、マニュアルフォーカス時にピント位置を変えて連続撮影を行うフォーカスBKT機能も搭載。
内蔵ストロボを搭載。ガイドナンバーは不明だが、調光範囲はワイド端0.5m〜7m、テレ端0.4m〜4mとする。
バッテリーはリチウムイオン充電池NB-13Lを使用。フル充電からの撮影可能枚数は265枚(CIPA準拠/液晶モニター表示時)
バッテリーチャージャー CB-2LHが付属。チャージャーが付属するのはキヤノンらしいところ。USB充電にも対応する。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。