新製品レビュー
キヤノンPowerShot G7 X Mark II(外観・機能編)
ブラッシュアップされた定番1型コンパクト
2016年6月9日 08:00
カメラを趣味としないひとがいざ写真を撮ろうと思い立ったとき、今や持ち出すのはスマートフォン。カメラが趣味のひとであっても、撮影目的によってはやはりスマートフォンを持ち出すことが多い。しかしながら、それに対抗すべくカメラメーカー各社は、スマートフォンでは及ばない部分、描写や機能に徹底してこだわったカメラ好きの琴線に大いに触れるコンパクトデジタルカメラをこの数年相次いで市場に投入している。
今回ピックアップする「PowerShot G7 X Mark II」もそのような1台。2014年10月に発売された「PowerShot G7 X」の後継で、1インチCMOSセンサーに光学4.2倍ズームの大口径レンズ、最新の映像エンジンやレンズ交換式カメラのEOSシリーズと共通する機能を多数搭載するなど、コンパクトデジタルカメラとして隙のないスペックとしている。本稿掲載時点での実勢価格は税込7万9,700円前後。
先代のサイズ感を継承
まずは外観を見てみよう。PowerShot G7 X Mark II(以下G7 X Mark II)は、先代モデルPowerShot G7 X(同G7 X)からサイズ的には大きく変わらない。具体的には先代モデルが103.0×60.4×40.4mm(横×高さ×奥行き)であるのに対し、G7 X Mark IIは105.5×60.9×42.2mm (同)。質量については304gに対し319g(いずれもバッテリー、メモリーカード含む)とする。いわゆる頃合いのよいサイズ感を継承していると述べてよい。
ただしボディの表面は、全体を金属の質感そのままとしていたG7 Xに対し、G7 X Mark IIはシボ革を模した樹脂が貼られ、さらにボディ前面にグリップを新たに備えているため、見た目の印象は若干異なる。カメラを持ったとき手に馴染みやすいのは言うまでもなくG7 X Mark IIのほうで、安定したホールディング感で撮影を楽しめる。
操作性は継承。チルト式モニターが下向きにも
操作部材のレイアウトに関しても、基本的には先代モデルと同じだ。露出補正ダイヤルの上に撮影モードダイヤルを置いた特徴的な2段重ねのダイヤルも継承する。この露出補正ダイヤルは直径が大きく操作しやすいこともメリットである。
これまでと異なるといえば、チルト式モニターの可動域だろう。G7 Xでは上方向のみに180度可動していたが、G7 X Mark IIではさらに新たに下方向にも45度可動。横位置でのハイアングル撮影も容易になった。なお、液晶モニターは先代モデルと同じく3型104万ドットのタッチパネル式としている。
レンズ付根にあるコントローラーリングもG7 Xより踏襲するが、新たにクリックの有無が選べるようになった。切り換えは同じくレンズ付根にある専用のレバーで行う。露出の設定やISO感度、ステップズームなどを割り当てたときはクリック有りで、マニュアルフォーカス時はクリック無しといった選択ができる。感覚的に大切な部分であり、コントローラーリングの操作感は格段に増したと述べてよい。
メニュー表示がEOSシリーズに準じたものとしたこともG7 X Mark IIの目新しい部分。同シリーズユーザーであればメニュー操作に違和感なく行えるはずだ。先代G7 Xはもともと操作感のよいカメラであったと記憶するが、今回のブラッシュアップにより完成度はさらに高まったといえる。
一般化してきた1型センサー
キーデバイスに目を移すと、イメージセンサーは前述のとおり1型CMOS。大きなボケは近接撮影時をのぞけば35mmフルサイズやAPS-Cサイズのようには期待できないけれど、それでもスマートフォンなどと比べればボケを表現に活かしやすく、効果も大きい。
さらに階調再現性や高感度特性なども当然ながら優位である。以前までコンパクトデジタルというと1/1.7型や1/2.3型のイメージセンサーがほとんどであったが、他メーカーの動向も鑑みた場合、この1型センサーが今後のスタンダードなる可能性は極めて高いだろう。実際、キヤノンのほかソニーも1型センサー搭載機に注力しているし、ニコンも1型コンパクトを発表している。G7 X Mark IIの搭載する1型センサーの有効画素数は約2,010万画素で、約2,020万画素であったG7 Xのものをベースに、ブラッシュアップが図られているという。
新映像エンジンと、ピクチャースタイルを初搭載
映像エンジンの進化も見逃せない。DIGIC 6から最新のDIGIC 7に代わったことで、階調再現性や高感度特性に加え、画像処理能力も向上しており、撮影コマ速は先代の6.5コマ/秒から8コマ/秒にアップしている。さらに手ブレ補正の制御などもこの映像エンジンが担っており、ジャイロセンサーによる光学式機構の制御は、イメージセンサーの画像情報を元にしたアルゴリズムも加味した「デュアルセンシングIS」としている。
ちなみに補正効果はシャッタースピード約4段分。搭載するレンズの開放絞りは先代と同じF1.8-2.8であるが、レンズの明るさとともに手ブレに対する備えは万全といったところである。さらに、絞り込んだときに解像感が低下する回折現象に対してもDIGIC 7では補正処理が可能で、風景などを絞り込んで撮影するユーザーにとっては要注目といえる。
EOSシリーズの仕上がり設定であるピクチャースタイルの採用も目新しい部分。EOSのそれと同様にコントラストや彩度(色の濃さ)などパラメーターの調整も可能で、仕上がりを自分好みにコントロールできる。いうまでもなくEOSシリーズのサブ機として使用した場合、仕上がりの傾向を揃えられるので、重宝すること請け合いだ。さらにRAWは14bit記録に対応。1インチセンサーの余裕ある階調再現性を余すことなく仕上がりに活かすことができる。
クラスに見合ったレンズ
搭載レンズは先代から変更がなかった。スペックとしては、35mm判換算で24mmから100mm相当の画角とし、開放F値はワイド端F1.8、テレ端F2.8。コンパクトデジタルカメラのズームレンズとしては明るい部類に入り、条件によっては大きなボケも得やすいはずだ。非球面レンズ3枚、UDレンズ1枚を用いているほか、同社伝統のスーパースペクトラコーティングも施され、さらに9枚羽根の虹彩絞りを搭載するなど、クラスに見合った内容としている。
また、最短撮影距離はワイド端で5cm、テレ端でも40cmを実現。“1型コンパクトは寄れない”と言われていた時期もあったが、もはやその心配は不要のようである。近接撮影時の描写については、次回の実写編を楽しみに待っていて欲しい。
願わくばライバルであるソニー「サイバーショットRX100 III/IV」のようにEVFを搭載して欲しく思えたが、そのような要望には同じ1型モデルの「PowerShot G5 X」があるので、好みで選択すべきなのだろう。
何はともあれ充実機能でさらに作画指向が強まったPowerShot G7 X Mark II。次回の新製品レビュー「実写編」に期待していただきたい。