ミニレポート

こいつは断じてK-3のマイナーチェンジなどではない!

(PENTAX K-3 II)

K-3 IIにHD DA 20-40mm Limitedをつけて購入。世にいうミイラ盗りの何とやらです(謎)

実のところ、K-3 IIの噂を最初に聞いた時、私はそれをインターネット特有のデマかなにかだろうと思った。そのまま、ほとんど注目もしないうちに公式発表され、狐につままれたような感じを覚えた。

既にご存知の方のほうが多いはずだが、K-3 IIのハードウェアの大きな変更は2つだ。1つは年末発売を予定するフルフレームデジタル一眼レフカメラと同時に発表された「リアル・レゾリューション・システム」を製品として搭載したこと。もう1つは、内蔵ストロボを廃止し、代わりにGPSシステムが内蔵されたことだ。

それ以外のほとんどの部分はK-3と共通に見えるので、「K-3 IIはK-3にリアル・レゾリューション・システムを積んだだけのマイナーチェンジモデル」という辛口の下馬評も飛んでいた。かくいう私も、リアル・レゾリューション・システムはおそらく年末のフルフレームに搭載されるだろうと期待して、K-3 IIの購入は見送ろうかと考えていた。

しかし、このタイミングでリアル・レゾリューション・システムを積んでくるということは、製品化してユーザーからのフィードバックを吸収することで、より実践的な完成度を高めようという狙いもあるのだろう。

ならば、実際に使い込んでこれを評価し、「使ってみたらこうだったよ」ということを伝えて行くのも、永年PENTAXを使って来た自分の務めかもしれない。そう考えて(半ば無理矢理に)K-3 IIを手元に置くことにした。

筆者注:記事公開時は、年末予定のフルフレームデジタル一眼レフカメラにリアル・レゾリューション・システムが搭載されるものという認識の元に執筆いたしましたが、リコーイメージングより「フルサイズ機にリアル・レゾリューション・システムを搭載する旨を公式に述べたことはない」という趣旨の指摘があり、それに沿う形で表現を改めました。

この機会にレンズも新調することにし、かなり悩んだ末にHD DA 20-40mm F2.8-4ED Limited DC WRをチョイスした。HD PENTAX-DA 16-85mm F3.5-5.6 ED DC WRも検討したが、リアル・レゾリューション・システムを核としたK-3 IIの性能を活かすには、周辺部まで整った解像力を見せるこのレンズの方が相応しいと考えたのが選択の理由だ。

数回にわたる集中連載のような形で、このカメラのことについて寄稿させていただくことになった。今回は手始めに、外観やスペックに現れるK-3との違いを見てみようと思う。

実際に手にして初めて気がつくような、細かな改良点もいくつかある。例えば、

  • モードダイヤルのレターの仕様変更
  • コントロールパネルの要素変更
  • 若干の軽量化

の3つを挙げてみよう。

視認性の高いモードダイヤル

モードダイヤルの表示は、エングレーブされた文字にオフホワイトのペイントを埋めた仕様に変更されている。K-3 IIの白文字は、K-3の銀文字よりも広い角度からの光を拾うので、暗い場所でも見やすくなり、背面液晶表示がOFFでも撮影モードが一目でわかる。

左がK-3 IIで、右がK-3。全面に光が回った状況ではK-3の仕様でも充分にダイヤルの文字を判読できるが、部屋を暗くして、遠くに点光源があるだけの状況で見るとK-3のダイヤルがほとんど見えないのに対して、K-3 IIのモードダイヤルの表示ははっきりと視認できる

K-5以後のPENTAXはシャッター音の静かさに定評があり、おそらく、ステージ撮影に携わるプロカメラマンからの要望があったのではないか。

特に狭いライブハウスで撮る時は、背面液晶を一番暗くしてもまだ周囲からみて目障りになるので背面液晶をOFFにして撮影することが多い。しかし、初期設定では、背面液晶表示をオフにしてもモードダイヤルを操作すると背面液晶が点灯するようになっている。この表示をキャンセルするには、メニュー1のタブから「操作ガイドを表示する」のチェックを外す。

ガイド表示に関する設定は、詳細設定メニューの「タブ1」→「画面表示」の下にある
「ガイド表示」がデフォルトではオンになっているが、このチェックを外すと液晶の完全なブラックアウトができる。
筆者注:モードダイヤル操作に伴う液晶表示の点灯について、記事公開当初K-3以来の欠点として述べておりましたが、リコーイメージングより「メニュー1の『ガイドを表示する』のチェックを外してやれば、背面液晶へのガイド表示を解除できる」という旨をご指摘をいただき、試してみると確かにその通りでした。誤りをお詫びいたします。
コントロールパネルの変更

コントロールパネルにリアル・レゾリューション・システムのON/OFFが加えられた。その関係で倍率色収差補正パネルが無くなった他、いくつかのパネルの位置が変更になっている。回折補正と倍率色収差補正については、メニューから呼び出して設定することになった。

K-3(上)でローパスセレクターが加わった頃から既に限界が見えていたが、K-3 II(下)でついに色収差補正がパネルからオンオフできないようになった

これに関してはコントロールパネルの項目が溢れるようになったのであれば、パネルに出す項目をユーザーが選べるようになると良いと思う。例えばAFモードや測距点選択はここから行なう必要はないし、欲しいのにここから操作できないメニュー項目もあるので。

GPS付きカメラシステムとしての軽量化

K-3 IIはボディ単体ではK-3よりも15g軽い。これは軽量化を意図したわけではなく、ストロボ用のコンデンサが不要になった結果だろう。

単体ではわずか15gの違いだが、これをGPS付きのカメラシステムとして比較すると、K-3+O-GPS1よりもK-3 IIの方が75g軽く、本体重量の一割ほどにあたる差になる。O-GPS1用の単4電池の予備や充電器が不要になり、充電や補給の手間もなくなることを考慮すれば、GPS機能を使いたいユーザーの目には大きな改善と映るはずだ。

ペンタカバーに仕込まれたGPSの作動を示すインジケーターLEDには指向性がつけられているようで、側面や斜め後方からは明るく見えるが、被写体の側からはほとんど目立たない。こんな細かいところにも配慮が行き届いているのがPENTAXらしさだ

K-3など他のPENTAXとの高い互換性

ペンタカバー以外のボディ形状にはまったく変更がなく、多くのアクセサリーはK-3用を流用できる。代わり映えしないと思われるかもしれないが古くからのユーザーには嬉しいところだ。

バッテリーグリップD-BG5はK-3と共用できる。もちろんバッテリーもK-3と同じD-LI90Pであり、K-7/K-5系に付属していたD-LI90も問題なく使える。

バッテリーグリップD-BG5とバッテリーD-LI90P

専用タイプのアルカスイススタイルのLプレートも、K-3用が流用できる。手元にはKIRKのK-7用があるが、これはK-3にも使える形状なので、K-3 IIにも問題なく流用できた。Really Right StuffにはK-3用が用意されており、これが使えるはずだ。

アルカスイススタイルのLプレートもK-3と共用可能(KIRK BL-K7)

余談かもしれないが、リアル・レゾリューション・システムを使う場合、三脚にカメラを強固に固定する必要がある。一般の雲台はカメラと雲台の間にゴムなどを挟む構造のため、ピクセルレベルのブレが避けられない。この問題の解決には、アルカスイスクランプ仕様の雲台と、これらのLプレートの組み合わせが効果的だ。これについてはまたの機会に取り上げたいと思う。

まとめ

デジタルカメラのモデルチェンジは、やれ画素数アップだ、コマ速アップだというように、強化されたスペックが列挙されるのが普通だ。そういう基準で見ると確かにK-3からK-3 IIへのモデルチェンジは地味なものに見える。

しかし、画素数についてはK-3で既にAPS-Cの限界と言われる2,400万画素に達しており、大幅な向上はむずかしい。コマ速度にしても、8.3コマ/秒というスペックは撮像素子の読み出し速度から来る限界であり、PENTAXが求める画質に適した素子がこれならば変えようがない。ということは、わかりやすい数字に表れるスペックには既に向上の余地はなかったのだ。

一方で、AFアルゴリズムの改良によるAF速度・動体AF精度の向上や、流し撮り対応のSRといった、K-3で未だ完成していなかった部分については確実に改良されている。その上でさらにリアル・レゾリューション・システムの搭載もあり、カメラとしての能力は格段に向上した。

まだ日は浅いけれども、スナップから精密描写まで1台で撮りきれるシステムカメラとして申し分ないという感触がある

確かにフルモデルチェンジではないが、果たしてこれは、マイナーチェンジと言われるなければならないほど些細な変更だろうか。私は実感として、これはむしろビックチェンジと言うべきだなと感じている。

K-3 IIが手元に来てから日は浅いが、いろいろとテストを重ねている。次回から具体的な作例をお見せしつつ、少しずつ、私なりの評価・使い方の工夫などを書いて行きたいと考えている。とりあえず、次回はリアル・レゾリューション・システムについての考察を予定しています。乞うご期待!

大高隆

1964年東京生まれ。美大をでた後、メディアアート/サブカル系から、果ては堅い背広のおじさんまで広くカバーする職業写真屋となる。最近は、1000年存続した村の力の源を研究する「千年村」運動に随行写真家として加わり、動画などもこなす。日本生活学会、日本荒れ地学会正会員

http://dannnao.net/