マニュアルレンズギャラリー

NOKTON 50mm F1.2 X-mount

絞り開放の“心地よい滲み”も美しい…Xシリーズカメラにぴったりの小型レンズ

デジタルカメラだからこそ使いたいマニュアルフォーカスの交換レンズ。自分の意思と努力と根性でピントを合わせる撮影行為には、不思議とAFにはない魅力があるものです。本連載で、描写性能はもちろん、プロダクトデザインなどなど、MFレンズならではの拘りを感じてもらえればと思います。

“ノクトン”らしい巧みな描写を楽しむ

2023年9月に発売された、コシナ・フォクトレンダーの富士フイルムXマウント用中望遠単焦点レンズです。焦点距離は50mmですが、APS-C用のため35mm判換算で76mm相当となります。

全群繰出しを採用していますが、全長49.0mm、重量290gと大変コンパクトな仕上がりになっているところは、同じく小型・軽量をモットーとするXシリーズのカメラと相性が良いところです。さすがXマウント専用設計と言ったところでしょう。

ゾナータイプの応用を謳っていますがレンズ構成は存外複雑で、もはや本来のタイプが分からないのはご愛敬。ただし、描写性能は間違いなく最新設計のそれで、現行のデジタルカメラとの組み合わせでも大変素晴らしく端正な写りを見せてくれるはずです。

ただし、絞り開放ではピントの芯を取り巻くような滲みが見られます。これをレンズ性能的な欠点とみなすか、レンズならではの個性とみなすかは人それぞれだと思いますが、MFレンズ好きならむしろ喜ばしく感じられるのではないでしょうか。こうしたところの巧みさが、“ノクトン”らしさだとも言えると思います。「絶対わざとだよな」と。

外観

作例

絞り開放ではピントの芯まわりに心地よい滲みが発生しますが、これが狙ったように美しいので嬉しくなります。ちなみに、1段ほど、完璧を求めるなら2段も絞れば解消されますので画質的な心配は必要ありません。

X-H2S/NOKTON 50mm F1.2/18mm(28mm相当)/絞り優先AE(1/340秒、F1.2)/ISO 160

主な仕様

  • 焦点距離:50mm(35mm判換算75mm相当)
  • 採取緒絞り:F16
  • 画角:32.5°
  • 最短撮影距離:0.39m
  • 外形寸法:φ63.9×49.0mm
  • 重量:290g
  • 絞りリング:装備(マニュアル絞り)
  • Exif情報:対応(対応ボディに限る)
  • パララックス補正:対応(X-Pro3)
  • ボディ内手ブレ補正:対応(対応ボディに限る)
  • 口径比:1:1.2
  • レンズ構成:8群9枚
  • 絞り羽根枚数:12枚
  • 最大撮影倍率:1:6.60
  • フィルターサイズ:φ58mm
  • レンズフード:専用ねじ込フード付属
  • 電子接点:あり
  • フォーカスチェック:対応
  • 撮影距離連動表示:対応
  • 直販価格:税込11万円
曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。