マニュアルレンズギャラリー

NOKTON 50mm F1 Aspherical

高品質なフォーカスリングの操作感触 高い解像感を誇る大口径レンズ

デジタルカメラだからこそ使いたいマニュアルフォーカスの交換レンズ。自分の意思と努力と根性でピントを合わせる撮影行為には、不思議とAFにはない魅力があるものです。本連載で、描写性能はもちろん、プロダクトデザインなどなど、MFレンズならではの拘りを感じてもらえればと思います。

クラシックだけど現代的な造り

2024年3月に発売された、コシナ・フォクトレンダーの標準単焦点レンズです。もはや説明は不要かと思いますが、大きな特長は絞りF1.0の超大口径レンズであるところ。レンズ名にある“Nokt-”はドイツ語で「夜の~」の意味。英語の“Night”と同語源とか。

そして、フォクトレンダーらしく、クラシックで品の良いデザインは大口径な本レンズでも健在。ピント合わせは非常にシビアになりますが、それに応えるだけの高品質なフォーカスリングの操作感触を持ち合わせています。絞り位置の指標(白いマーク)があるリングが、「絞りクリック切替え機構」を兼ねているのも現代的。いまどき需要の高い動画撮影にも便利な機構ですね。

大口径ながら画質はすこぶる上々で、非球面レンズを適宜採用することで画面周辺まで高い解像感を維持しており、色収差も実用的な範囲で良く抑えられています。ソニーカメラの「周辺光量補正」を適用してもなお周辺光量は低下しますが、MFレンズ好きであれば、むしろそれはご褒美だと受け止めることができるのではないでしょうか。

外観

作例

まだ花咲かぬアジサイの間に隠れるネコを撮らせてもらいました。わずかな距離で前後が強烈にボケる様はさすが夜のレンズを名乗るだけあります。MFでの絞り開放におけるピントの合わせやすさは、レンズそのものの高い描写性能がEVF内の表示にも反映されているからでしょう。

X-H2S/NOKTON 50mm F1 Aspherical/50mm/絞り優先AE(1/320秒、F1.0)/ISO 400

主な仕様

  • 焦点距離:50mm
  • 採取緒絞り:F16
  • 画角:48.0°
  • 最短撮影距離:0.45m
  • 外形寸法:φ79.3×69.3mm
  • 重量:590g
  • 絞りリング:装備(マニュアル絞り)
  • Exif情報:対応
  • ボディ内手ブレ補正:対応(対応ボディに限る)
  • 口径比:1:1
  • レンズ構成:7群9枚
  • 絞り羽根枚数:12枚
  • 最大撮影倍率:1:6.9
  • フィルターサイズ:φ67mm
  • レンズフード:専用ねじ込フード付属
  • 電子接点:あり
  • フォーカス拡大機能:対応
  • レンズ補正選択:可能
  • 希望小売価格:税込26万4,000円
曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。