キヤノンPowerShot G10【第4回】

夜景撮影に挑戦

Reported by 本誌:武石修


PowerShot G10

 “夜景撮影”というと、一眼レフカメラで、長時間露出した写真を思い浮かべるが、PowerShot G10も、長秒露出は15秒までとなっている。果たして、夜景でどれくらいの撮影ができるのか試してみた。今回は、ほかのカメラには無い、内蔵NDフィルターを使った写真も撮影してみた。

 一部の高級コンパクトデジタルカメラを除くと、コンパクトカメラの長秒露出はシーンモードの「夜景」を選ぶことで使用できる機種が多い。ただ、シーンモードだと、ホワイトバランス、ISO感度、絞り値などがオートになってしまい、本格的に撮影する向きにはちょっとつらいものがある。PowerShot G10にもシーンモード内に「夜景」があるが、やはり絞り値、ISO感度、ホワイトバランスなどがオートになってしまう。

 その点マニュアル露出機能を備えたカメラなら、三脚を使用して低感度でじっくり夜景を撮影することができる。今回は、PowerShot G10のマニュアルモードで撮影した。絞りとシャッター速度を自由に選べるし、ISO感度やホワイトバランスも任意に選択できる。

PowerShot G10は、最長15秒までの長秒露出ができる

 三脚に装着した場合は、誤作動を防ぐために手ブレ補正はOFFにしたほうが良いようだ。キヤノンではケーブルレリーズもオプションとして用意しているので、レリーズのタイミングが重要な被写体の場合は活用すると良い。今回は風景が対象だったので、2秒のセルフタイマーをケーブルレリーズ代わりに使った。

 絞りとシャッター速度の変更は、背面のコントローラーホイールで行なうため操作はしやすい。そのとき、液晶モニターにバーグラフが表示されるのが親切だ。今回試したところ、15秒の露出時間があれば、かなり光の軌跡を写した写真を撮ることができた。

 ところで、実際の夜景撮影でPowerShot G10の便利な機能が2つある。「マニュアルフォーカス」(MF)と「内蔵NDフィルター」だ。

MF時は、画面中央が拡大されるのでピントを合わせやすくなる手動で設定できるNDフィルターを内蔵。ONにすると3段分暗くなる

 以前に比べればAFは進化しているものの、今回の夜景撮影で特に低輝度の被写体ではAFが合わないことがしばしばあった。また、作例にあるような回転しているアトラクションなどはAFが合わない。その場合MFに切替えると上手く撮影できる。一眼レフカメラではMFで夜景を撮影することが多いが、コンパクトデジタルカメラでMFが使えるのが大きな強みになる。

 また、MFを利用すれば敢えてピントを外した写真を撮ることもできる。一眼レフカメラほど大きなボケにはならないが、やってみるとなかなか面白い。さらに、同じアングルでピントを外した写真とピントを合わせた写真を撮影しておき、後から画像処理ソフトなどで合成すると独特の雰囲気ある写真になる。MFが使えるカメラならではの表現で、銀塩カメラでは多重露光で行なっていた夜景撮影の常套テクニックだ。是非試してみて欲しい(本体内での多重露光機能があれば、手軽にできて良かったのだが……)。

 一方、PowerShot G10のNDフィルターは、デジタルカメラでは珍しく任意にON/OFFできるタイプを内蔵している。昼間、明るすぎる場所で絞りを開けたいといった場合に便利な機能だが、夜景撮影ではシャッター速度を長くしたい場合に使用すると良い。というのも、絞りがマニュアルで使用できるコンパクトデジタルカメラは、PowerShot G10も含めてF8までしか絞れない機種がほとんど。絞りすぎによる回折ボケに配慮しての仕様と思うが、まだ陽が完全に沈まない時間帯などは割と明るく、光の軌跡を写した写真を撮るにはシャッター速度が速すぎるためだ。PowerShot G10のNDフィルターはONにすると3段分暗くなる。例えば、シャッター速度2秒が適正露出だった場合、NDフィルターをONにすると15秒が適正露出となる。

 最後に、この連載ではまだ試していなかったパノラマ撮影を行なってみた。カメラのパノラマモードで複数枚を撮影しておき、カメラ同梱のソフト「PhotoStich」で合成する。パノラマモードは、基本的にオートでの撮影で、三脚を使用していても夜景だとどうしてもISO感度が上がってしまうのが難点だ。PhotoStichでは、3ステップほどで簡単にパノラマ合成ができる。今回はパン可能な自由雲台を使用していることもあり、比較的つなぎ目は目立たず良い感じに仕上がっている。

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 撮影はすべて三脚を使用しています。
3,312×4,416 / 15秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 6mm3,312×4,416 / 4秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 21.5mm
3,312×4,416 / 4秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 12mm4,416×3,312 / 8秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 6mm
4,416×3,312 / 4秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 12mm3,312×4,416 / 8秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 6mm
4,416×3,312 / 4秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:蛍光灯 / 15.7mm4,416×3,312 / 8秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 6mm
3,312×4,416 / 1秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 6mm4,416×3,312 / 4秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 30.5mm

・MFの活用例

敢えてピントを外すことで面白い写真が撮れる
4,416×3,312 / 8秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 30.5mm

 ピントが合った写真とピントを外した写真を合成した例。左と中央の写真を合成したところ、右の写真ができた。合成はPhotoshopのレイヤーを使用。ピントを外した写真の上にピントの合った写真を重ね、[通常]で不透明度を30%にしている。ソフトフィルターや画像処理ソフトのぼかし機能とはまた違った趣になる。

3,312×4,416 / 4秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 6mm3,312×4,416 / 4秒 / F8 / 0EV / ISO80 / マニュアル / WB:オート / 6mm左の2枚を合成した作例(3,312×4,416)

・パノラマ作例

PhotoStichでパノラマ合成したところ
できあがったパノラマ写真。感度がオートのためISO400になりややノイズがあるが、繋がりは良い(横2,000ピクセルにリサイズしています)




本誌:武石修

2009/6/11 00:00