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【新製品レビュー】キヤノン「PowerShot G10」
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~広角28mmで魅力が増した高級コンパクト
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Reported by
北村智史
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PowerShotシリーズのハイエンドに位置付けられるGシリーズの最新モデル。2000年に初代のG1が登場して以来、2005年を除く毎秋にモデルチェンジを続けて、ついに8代目となった(G4がないのはキヤノンとしてはわりと自然だが、G8がないのはなぜだろう)。
画素数アップと同時にレンズの広角側が広くなったのが特徴と言える。大手量販店での実勢価格は6万円程度だ。
■ レンズが28mm相当にワイド化
同社のIXY DIGITALシリーズに代表されるスリム&スタイリッシュタイプのモデルの重さが150g前後であるのに対し、本機は実に350g。手に持つとずっしり重く感じられる。
これが一眼レフだと本機より30g重いオリンパスE-420(ボディのみの数字である)でもふわふわに軽いのだが、本機はコンパクト機だという意識が頭にあるせいか、よけいに重く感じるのだろう。
もっとも、初代のG1は420gもあったから、それに比べればかなり軽量化していると言えなくもない。が、先代のG9、先々代のG7は320gだったので、もうひと頑張り欲しかった気もする。
撮像素子は1/1.7型の有効1,470万画素CCD。同社のIXY DIGITAL 3000 IS、パナソニックLUMIX DMC-FX150と並んで、現行のコンパクト機ではトップクラスのスペックだ。とは言え、先代G9(有効1,210万画素)に比べて、画像の幅と高さが約1割ずつ広がっただけだったりする。
それよりも、レンズが広角側にシフトしたことのほうが注目だろう。光学ズーム倍率は6倍から5倍に下がったし、望遠の迫力もワンクラスダウンなのだが、広角端が35mm相当から28mm相当に広がったのは大きいと思う。もちろん、レンズシフト式の手ブレ補正(IS)も内蔵。補正効果はシャッター速度で約4段分に強化されているという。
ただし、開放F値はF2.8~4.5と平凡そのもの。先代、先々代のF2.8~4.8よりは望遠端だけ若干明るくなってはいるものの、G1やG2のF2~2.5(34~102mm相当)、G3からG6までのF2~3(35~140mm相当)の明るいレンズに比べると面白みはない。
また、液晶モニターも、先代、先々代に続いて固定式を採用。3型で46.1万ドットと、コンパクト機としてはスペックは高いほうだが、動かせないこと自体がいまいちと言わざるをえない。
Gシリーズのアイデンティティーのように言われていた大口径レンズと可動式液晶モニターの両方がなくなったままというのはうれしくない。2.5型にサイズダウンしてもいいから可動式に戻してもらえないものだろうか。
電源は容量1,050mAhのリチウムイオン充電池。CIPA基準で約400コマ、液晶モニターをオフにした状態であれば1,000コマの撮影が行なえる。記録メディアはSDHC/SDメモリーカードなど。最近では珍しく内蔵メモリーを持たず(キヤノンではごく普通だったりするが)、メモリーカードも付属していない。
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レンズは光学5倍ズームで手ブレ補正機能を内蔵。28mm相当にワイド化されている
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バッテリーは先代とはまた違うNB-7L。容量は1,050mAh。CIPA基準で400コマ撮れる
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記録メディアはSDメモリーカード系。MMCも使える。内蔵メモリーはないし、カードも付属していない
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■ 露出補正ダイヤルの位置に疑問
先代では上面右手側にモードダイヤル、左手側肩にISO(感度)ダイヤルという配置だったが、本機は右手側が2段重ねになっていて、上にモードダイヤル、下にISOダイヤルという配置になった。空いた左手側肩に露出補正ダイヤルが追加されている。
どのダイヤルも見た目はクラシカルでかっこいいし、アルミ削り出しらしい質感もいい。クリック感もほどほどでいじっていて楽しい。が、わざわざ左手側肩に露出補正ダイヤルを置く理由は謎である。
操作性を考えれば、露出補正ダイヤルのように使用頻度が高いことがわかりきっている部材は右手側に置くのが自然だろう。同社の一眼レフのEOSシリーズも、露出補正操作を受け持つサブ電子ダイヤルはカメラを構えたまま右手で操作できるようになっている。それがわざわざよりによって左手側肩である。MF一眼レフの時代に逆戻りでもしたかのようだ。
1枚撮って露出を変えてもう1枚、などというシチュエーションのときに、露出補正ダイヤルが左手側にあったりすると、すこぶるやりづらい。まじめな話、一等地になるモードダイヤルと露出補正ダイヤルを取り替えてもらえないかと思う。
その一方、ズームレバーはとても存在感が薄い。もちろん、ちゃんと便利な位置にあるし、操作性が悪いでもない。昔のカメラのシャッターボタン外周の指皿っぽく仕立てているあたりはうまい処理だと思う。
が、存在感ばりばりなダイヤルたちに比べて、普通サイズのズームレバーでは地味というか、貧相すぎやしないだろうか。たまにしか使わないものであれば地味にしていてくれてもいいが、へたをするとシャッターボタンよりも使用頻度は高いのではないかと思えるほどのズームレバーである。もうちょっとゴージャスなデザインを考えてあげてもよかったのではなかろうか。
筆者個人は、使用頻度の高い部材は大きく目立つようにしたほうがいいと考えているので、よく使うズームレバーをわざわざ目立たなくデザインしているのに違和感をおぼえた次第である。
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先代では左手側肩にあったISOダイヤルがモードダイヤルの位置に引っ越してきて、モードダイヤルは2階に引っ越したかっこう。いじるのが楽しい
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空いた左手側肩に新設された露出補正ダイヤル。ファンクションメニューを開かなくてもいいのはうれしいが、左手側だと操作性がいまいちよくない
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シャッターボタン外周のズームレバー。使い勝手は悪くはないが、小さくて見た目がさびしい
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最近は省略するのが当り前で、付いていてもしょぼくて覗く気にもなれないのが多かったりするが、本機の光学ファインダーは思いのほか見えがいい
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■ 凝りに凝った機能表示
表示のたぐいもいろいろと凝っている。電源スイッチにはグリーンの、モードダイヤル/ISOダイヤルと露出補正ダイヤルの指標の部分にはオレンジ色のランプ(LEDだろうけど)が仕込んであって、暗い場所でほんのり光っているのがなかなかに風情がいい。
液晶モニターの表示も面白い。モードダイヤル、ISOダイヤル、露出補正ダイヤルを回すと、画面にさまざまな表示があらわれる。専用のダイヤルがあるのに、と思われるかもしれないが、注意喚起の意味合いもあるだろうし、暗い場所でもきちんと確認できるのは安心感の面でもいい。
が、絞り値やシャッター速度の表示はそういうのとはちょっと違う。十字ボタン外周のコントローラーホイールを回すと、絞り値やシャッター速度が変えられるのだが、そのときには画面下部にバーグラフ表示があらわれる。絞り値もシャッター速度もすでに表示されているにもかかわらず、である。デジタル表示のすぐ上に、わざわざアナログ表示を付け加えているのである。
目盛が動いているのを見るのは楽しいし、こういうのが大好きな人にはたまらないのかもしれないが、筆者のような無粋者にとっては、興ざめ以外の何者でもない。無意味に重複していることも気にくわないが、表示要素が増えれば画面が見づらくなるだけで、被写体を見る邪魔をしないでくれと言いたくなるのである。
そういった、凝ったところが微妙にハズシている感があったりするのだが、便利で親切な部分もある。AFフレーム(測距点)をアクティブに設定するといわゆる“どこでもAF”になるのだが、そのときに「AFフレームを移動できます」と教えてくれるし、AFフレーム選択ボタンを押しつづければ中央に復帰することもわかる。
また、DISP.ボタンでフレームの大小が切り替えられるとか、人物の顔を検出できる状態であれば、MENUボタンで顔認識モードに切り替えられるとかもひと目でわかるように表示してくれている。
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モードダイヤルを回すと、こんな表示がどーんと出てくる
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感度を変えたときもこんな。これだけでかいと見落とす心配はまずない
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露出補正ダイヤルを回したときの表示。ここまで大きな表示が必要かどうかは別にして、暗くてダイヤルの文字が見えないなんてときにはありがたい
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十字ボタンの外周のリング状のがコントローラーホイール。これを回して絞り値とかを変えたりする
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マニュアル露出時にシャッター速度を変えているときの表示。デジタルで表示しているのに、わざわざすぐその上にアナログっぽい表示をしている
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AFフレームモードをアクティブにしておくと、測距点を自由に動かすことができる
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十字ボタン左上のボタンがAFフレーム選択ボタン。右の測光モードボタンはマニュアル露出時に絞り値とシャッター速度のどちらを操作するかを切り替えるときにも使う
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AFフレームモードがアクティブのときにこんな表示が出て教えてくれる。これがなかったら、動かせることに気づかないなんてこともある
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十字ボタンの下の2つのボタン。DISP.ボタンでフレームのサイズ、MENUで顔認識に切り替えができる
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AFフレーム選択ボタンを押しつづけると中央にリセットできる、というのがわかりやすい
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■ まとめ
映像エンジンが最新鋭のDIGIC 4に変わっているのも進化のポイント。EOS 50DやEOS 5D Mark IIにも搭載されているハイパワーエンジンのおかげで、サーボAFや暗部補正といった新しい機能も増えている。が、一番の売りは、以前から要望が多かったであろう、レンズの広角化だと思う。望遠を捨ててでも広角を28mm相当まで広げたのは、筆者個人はとてもうれしいし、このクラスのカメラを買おうと考えている人にはアピールするはずだ。
外観上の特徴でもあるノスタルジックな操作系は、こういうのが好きな人にはウケるだろうし、いじっていればそれだけで楽しかったりもする。露出補正ダイヤルの位置がちょっとなぁというところはあるが、いちいちメニューを開いて露出補正操作をするのに比べれば、ものすごく快適だ。
使っていて便利に感じたのはISOダイヤル。暗い場所での撮影での、感度を上げたり下げたりする操作が素早く行なえるのはいい。今までなら、ここはISO400で、とか決めて撮っていたのが、本機だとISO400で撮ったら「まあ、あとで選べばいいや」的にISO200とISO800も撮っておこうという気になる。
おかげでシャッター数が増えてしまうのが難点と言えなくもないが、そういうところも楽しいカメラだと思う。
●作例
- サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
■ 感度
感度の設定範囲はISO80からISO1600まで。シーンモードではISO3200相当もあるが、記録画素数は約200万画素になってしまう。
ISO400までは感度を上げてもノイズが気になるようなことはない。低感度で撮ったカットと比べると、画質が落ちているのはわかるが、単独で見ればISO400とは思えない。
ISO800になると、はっきりとノイズが見えてくるし、若干だが発色も悪くなるものの、A4サイズのプリントなら十分に高画質と言える。
さすがにISO1600になると、ノイズ低減処理によってディテールがつブレてくるのと発色が渋くなるが、それでもISO1600でこれなら文句なし。数年前の一眼レフと比べたら、本機のほうが上ではないかとさえ思える。
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ISO80
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / +0.3EV / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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ISO100
4,416×3,312 / 1/4秒 / F8 / +0.3EV / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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ISO200
4,416×3,312 / 1/8秒 / F8 / +0.3EV / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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ISO400
4,416×3,312 / 1/15秒 / F8 / +0.3EV / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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ISO800
4,416×3,312 / 1/30秒 / F8 / +0.3EV / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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ISO1600
4,416×3,312 / 1/60秒 / F8 / +0.3EV / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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■ マイカラー
さまざまな画づくりが楽しめるマイカラーはプリセットが10種類と自分で調整できるカスタムカラーがある。
もともとの発色が、コンパクト機としてはわりと落ち着いたものなので(筆者的には好みに合う)、シーンに合わせてくっきりカラーやポジフィルムカラーあたりを使い分けるのもいいだろう。
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切
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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くっきりカラー
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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すっきりカラー
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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セピア
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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白黒
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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ポジフィルムカラー
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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色白肌
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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褐色肌
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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あざやかブルー
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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あざやかグリーン
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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あざやかレッド
4,416×3,312 / 1/3秒 / F8 / ISO80 / WB:マニュアル / 6.1mm(28mm相当)
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■ 自由作例
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かりかりにシャープという感じではないが、水しぶきがきちんと解像していてすごい
4,416×3,312 / 1/640秒 / F4.5 / +1EV / ISO80 / WB:オート / 30.5mm(140mm相当)
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コンパクト機のISO800でこの画質は立派。数年前の一眼レフなら勝てそうなくらいだ
4,416×3,312 / 1/25秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO800 / WB:オート / 6.1mm(28mm相当)
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濡れた羽の質感はなかなかうまくは出てくれないものだが、もう少し頑張ってもらえないかという気もする
4,416×3,312 / 1/250秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 30.5mm(140mm相当)
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ブレを防ぐためにISO200にアップ。機種によってはこの感度でもザラツキが気になってしまうが、本機はまるっきり平気
4,416×3,312 / 1/13秒 / F4 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 21.5mm(99mm相当)
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流木の肌と石の肌の調子がいっしょくたな気がする。もう少しニュアンスが出て欲しいが、コンパクト機にそこまでは望みすぎか
4,416×3,312 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 21.5mm(99mm相当)
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季節外れのタンポポの綿毛。それほど寄ってはいないが、一応マクロ機能を使ってたりする。ボケはわりと素直できれい
4,416×3,312 / 1/200秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.1mm(28mm相当)
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マクロは広角端でレンズ前1cmまで。めいっぱい寄るとこんな感じ。前玉に触ってそうな気もしないではない
4,416×3,312 / 1/100秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.1mm(28mm相当)
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広角端はタル型の歪曲収差がけっこうあるので、水平線とかをフレーミングするとこんな感じ
4,416×3,312 / 1/200秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.1mm(28mm相当)
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水面に映る樹々の緑がきれいだったので撮ってみた
4,416×3,312 / 1/40秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 30.5mm(140mm相当)
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古い飛行機だからなのかもしれないが、エンジンだけ見てると農機具と大差ない気がしてしまう
4,416×3,312 / 1/60秒 / F4 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 18.1mm(83mm相当)
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こういう金属とかの硬質な被写体はかっちり描写してくれる
4,416×3,312 / 1/2000秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 30.5mm(140mm相当)
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■ URL
キヤノン
http://canon.jp/
製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/powershot/g10/
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北村智史 (きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。
ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/ |
2008/10/30 12:23
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