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ハイエンドコンパクトデジカメを比較する(ハードウェア編)
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Reported by
小山 安博
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テストに利用したのはニコン「COOLPIX P6000」(中央手前)、パナソニック「LUMIX DMC-LX3」(右奥)、リコー「GX200」(中央奥)、キヤノン「PowerShot G10」(左)の4機種
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最近、「ハイエンドコンパクトデジタルカメラ」ともいうべきジャンルが復活している。一時期、まだデジタル一眼レフが下位モデルでも20万円以上していたころには複数のカメラが発売されていたが、デジタル一眼レフの価格が下がるとともに、「手軽なコンパクトデジカメ」、「高画質で撮影を楽しむデジタル一眼レフ」といったようなすみ分けができ、次第にその姿を消していった。
現在のデジタル一眼レフブームは、2003年発売の「EOS Kiss Digital」がその端緒になったのは間違いない。その後、すっかり姿を消したハイエンドコンパクトデジカメだったが、それが復活したのは、2005年に登場した「GR DIGITAL」がきっかけだろう。
フィルム時代の高級コンパクトカメラとして人気のあった「GR」がデジタルになり、単焦点の広角レンズ、ハイスペックなレンズ、ボディデザインへのこだわりなど、趣味性の高いデジカメだったが、これが見事にヒット。ハイエンドコンパクトデジカメ復活ののろしとなった。
最近では、複数のメーカーがハイエンドコンパクトデジカメをリリースしており、選択肢が一気に広がっている。
各カメラとも、それぞれ特徴があり、選択肢が広がった分、どれを選ぶべきか悩む人も多いだろう。ここでは、各ハイエンドコンパクトデジカメをじっくりとテストしてみた。購入の一助となれば幸いである。
なお、カメラ量販店におけるそれぞれの実勢価格は次の通り(12月2日調べ)。
- COOLPIX P6000:5万5,400円
- LUMIX DMC-LX3:5万2,700円
- GX200:5万9,100円(本体のみ)、7万円(VF KIT)
- PowerShot G10:5万3,200円
■ 本体の大きさ・重さ・ホールディング
ハイエンドコンパクトデジカメは、スペックとボディデザインに一定のこだわりがあるのが特徴だ。そのため、いわゆるカード型の薄型コンパクトデジカメに比べるとボディサイズは大型になる。
各モデルの本体サイズは下表の通り。
機種名 |
本体サイズ |
重量 |
COOLPIX P6000 |
約107×42×65.5mm |
約240g |
LUMIX DMC-LX3 |
約108.7×27.1×59.5mm |
約229g |
GX200 |
111.6×25×58mm |
約208g |
PowerShot G10 |
109.1×45.9×77.7mm |
約350g |
単純に重さだけでいうとPowerShot G10が一番重く、300gを超えている。持ってみると明らかにこの1台だけ重い。正面から見ると比較的縦幅のあるCOOLPIX P6000・PowerShot G10と横長のDMC-LX3・GX200では一概にサイズの比較は難しいが、容積で考えてもPowerShot G10が一番大型になる。逆にGX200は一番小型、といえる。
とはいえ、持ちやすさという観点も重要である。その観点からボディを見てみると、各モデルとも大なり小なりグリップを備えており、持ちやすさに配慮しているのが分かる。
各モデルの正面。グリップの大きさがそれぞれ違う。DMC-LX3(右上)はちょっと滑りやすいのが気にかかる |
個人的な感想になるが、グリップが一番大きく、もっとも持ちやすいのはGX200。GX200は本体も軽量で、気軽に持ち歩くカメラという印象だ。
グリップの大きさと質量でいえばCOOLPIX P6000も悪くない。軽量なので片手で構えても苦はなく、グリップがしっかり指にかかって構えやすい。
ボディの質量の割に重く感じるのはDMC-LX3。グリップも小さく、ボディ前面がつるっとした素材のため滑りやすい。ボディ左側が重く、片手で持つとややバランスが悪い印象だ。
逆に重さの割にバランスがいいのがPowerShot G10。グリップも大きく、「重さを感じない」とはいわないが、持ってみると重量バランスもよい。
基本的には両手で持って撮影することを推奨したいが、とっさに片手で撮影したい、というときには安定して気軽に構えられるGX200が良さそうな印象だった。
■ 操作性
操作系に関しては、操作ボタンの位置は各モデルで異なるものの、COOLPIX P6000を除いた3機種はほとんどのボタンが右側に配置されている。PowerShot G10は頻繁に使われそうな露出補正ダイヤルが左側にあるので、ほとんどの操作が右手だけで完結するのはGX200とDMC-LX3だ。
それぞれボタン配置に特徴がある。左右に分散しているのはCOOLPIX P6000(左上)。好みの問題だろうが、個人的には1カ所にまとまっていた方が使いやすく感じる。DMC-LX3(右上)とG200(左下)には光学ファインダーがないが、別売で外付けファインダーが用意されている |
各機種の細部を見ていこう。
●COOLPIX P6000
液晶左側にショートカットボタンとして動作する「Fn(ファンクションポップアップ)」ボタンやよく使う機能を1画面に集められる「マイメニュー」、再生ボタンが配置されているので、設定変更の多くの場面で両手での操作が必要になる。
本体上部にコマンドダイヤルがあり、ダイヤル操作で絞りを変更、露出補正ボタンを押すことでシャッタースピードや露出を変更できる。ダイヤルはFnボタンの設定変更にも利用する。Fnボタンを押しただけではすぐに設定画面が消えてしまうので、ボタンを押し続けた状態でダイヤルを回さなくてはならない。
よく使う撮影設定が画面の一部に表示されるといったたぐいのメニュー表示がCOOLPIX P6000にはなく、独立した画面で表示されるマイメニューを使う。あらかじめ登録しておく必要があるが、使いたい機能を登録しておける便利さはある。
十字キーには上にストロボ、右に露出補正、下にマクロ切り替え、左にセルフタイマーが割り当てられている。
COOLPIX P6000。本体上部にはモードダイヤル、ズームレバー一体型シャッターボタン、ダイヤル、電源ボタン。シンプルな円形の十字キーがあり、液晶左側に縦にボタンが4つ並ぶ |
●DMC-LX3
DMC-LX3は4機種の中で唯一ダイヤルを備えていない。操作のいくつかは、背面の小さなジョイスティックを使って行なう。ジョイスティック上下で絞りやシャッタースピードの変更、左で露出補正になり、上下で値を変更する。
ジョイスティックを押し込むと画面上部によく使われる撮影設定が表示され、スティックを上下左右して設定を変更する。スティックは小さいが、指の腹で押すようにすれば片手で構えていても変更しやすい。逆に親指の先で変更しようとすると、カメラが滑り落ちそうになってしまうので両手を使う必要があるだろう。
十字キーには、上に露出補正、右にストロボ、下にカスタマイズ可能なFn、右にセルフタイマーが割り当てられている。
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本体上部のFOCUSボタンが特徴的だが、それ以外はシンプル。スライド式の電源スイッチは相変わらず使いやすい
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背面はジョイスティックが特徴。撮影・再生の切り替えはスライドスイッチ
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クイックメニューは、よく使う撮影設定が上部に並ぶ。ジョイスティックを押し込むことで表示されるのだが、あまり反応が良くないのが気になった
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アスペクト比の切り替え、AF/マクロ/MFの切り替えはレンズ部にあるスイッチ
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●GX200
GX200の操作系は、シャッターボタン前部にアップダウンダイヤルがあり、これを回転させて絞り値の変更やカーソルの上下移動が可能。背面にはADJ.レバーがあり、これを左右に倒すことでマニュアル露出時にシャッタースピードの変更ができたり、カーソルの左右移動ができる。
よく使うISO感度やホワイトバランスの変更はADJ.レバーを押し込む。ダイヤルで設定変更、ADJ.レバーで項目の移動ができ、操作性はいい。露出補正はデフォルトでは十字キー右に割り当てられているが、ADJ.レバーを左右に倒すとダイレクトに変更できる、というような設定があっても良さそうだ。設定の多くは右手だけで完結できるのは好印象。
十字キーには左にストロボ、下にマクロ、左にカスタマイズ可能なFn2がそれぞれ割り当てられている。十字キー上は何も設定されていない。
一見するとGX200のボタンは、このクラスにしては最小限といった印象 |
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ただしADJ.レバーからは、5つの設定を呼び出せる
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●PowerShot G10
PowerShot G10は、背面の十字キー周囲にコントローラーホイールがあり、これを回転させることでシャッタースピードや絞りを変更できる。露出補正は本体左上の露出補正ダイヤルを回すだけ。個人的には手軽に使えていい。ホイールは滑らかに回転するが、片手持ちで操作するのは難しい。
よく使う機能は十字キー中央のFUNCボタンを押す。ホワイトバランスや画質、NDフィルターのオン・オフなどが選択できる。ISO感度、測光、AF方式はそれぞれボタンやダイヤルが割り当てられ、十字キーには上にMF、右にストロボ、下に連写、左にマクロが配置されているので、素早い設定が可能になっている。
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PowerShot G10は上部に配置されたダイヤルが特徴的。ISOダイヤルと露出補正ダイヤルはアナログ感たっぷりで個人的には好き。露出を変えて撮りたいときも手早い
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背面にはコントローラーホイール。山型になっていて、内部の十字キーとの干渉はあまりない
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FUNCキーを押すとおなじみの撮影メニューが表示される。とはいえ、露出補正やISO感度がダイヤルになっているので、よく使うのはホワイトバランスとNDフィルターくらいだろうか
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■ カスタマイズ性
ハイエンドコンデジを使うような人であれば、自分の気に入った使い方をするためのカスタマイズ性能が気になるだろう。4モデルとも、現在の設定を登録し、モードダイヤルだけで呼び出せる機能を搭載を搭載。GX200は3つ、それ以外は2つまでの設定を登録できる。
●COOLPIX P6000
COOLPIX P6000では、画質を一括変更する「ピクチャーコントロール」で、輪郭強調、コントラスト、彩度を設定できる。「カスタムピクチャーコントロール」として、自分で設定した設定を保存することも可能。
FUNCボタンには、ISO感度やホワイトバランスなどの設定を割り当てることができる。また、マイメニューにさまざまな機能を割り当て可能だ。
Fnボタンには任意の項目を1つ割り当てられる。ボタンを押しながらダイヤルを回すという動作で、ちょっと面倒くさい |
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よく使う撮影機能はマイメニューにまとめられる。1枚1枚じっくり設定するようなイメージ
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●DMC-LX3
カスタマイズ機能としては、主要なものとしては十字キー左の下のFnボタンに機能割り当てができる点と、ISO感度の上限を設定することができることに加え、フィルムを変更するかのように画質を変更できる「フィルムモード」を搭載。さらに自分でコントラストやシャープネス、彩度、ノイズリダクションを変更し、自分のマイフィルムとして登録できる。
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Fnへの割り当てはこの2つだけ
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●GX200
GX200では、右肩上のFn1、十字キー左にFn2の2ボタンに機能割り当てが可能。ADJ.レバーに登録する4つの項目もそれぞれカスタマイズ可能で、よく使う機能を自由に割り当てできる。
ISO AUTO-HI設定でどこまで増感するかの設定もできる。G/M/B/Aの4方向でホワイトバランスを微調整することもで可能だ。そのほか、独自の機能として電子水準器を内蔵している。
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ADJ.レバーの最初の4つは任意の設定を割り当て可能。Fnキーも使えば、基本的な設定は素早く変更できる。2つのFnボタンに設定を割り当てられる。ADJ.レバーに割り当てられる機能よりもマニアックな設定項目が並ぶ
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●PowerShot G10
PowerShot G10も、「マイメニュー」としてよく使う設定項目を1画面に割り当てるカスタマイズ機能を搭載。セルフタイマーとして人の顔を検出してから撮影する「顔セルフタイマー」を搭載し、さらに指定秒数ごとに指定枚数の写真を撮ることも可能。
「マイカラー」として、特定のカラーを強調したり、ポジフィルムのようなカラーにしたりできるほか、カスタムカラーとしてシャープネスや色の濃さを調整したり、RGB、肌色といった色を強調することもできる。
本体右上のショートカットボタンに、NDフィルターやホワイトバランス、暗部補正などを割り当てる機能も搭載する。
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液晶モニター左上のショートカットボタンにも任意の設定を割り当て可能。ファンクションメニューのように一覧性はないので、NDフィルターや暗部補正のオン・オフを割り当てると良さそう
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メニュー画面にはよく使う項目を配置できるマイメニューがある。メニュー画面から自由に設定可能
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■ そのほかの特徴
●COOLPIX P6000
COOLPIX P6000の大きな特徴が、GPSとLANという2つの機能。直接撮影にかかわる機能ではないが、撮影をより楽しく、便利にしてくれる機能だ。モードダイヤルにGPSが用意され、現在地の測位や時計合わせができる。設定によって、測位した位置を一定時間は保持して、再測位の時間を短縮することもできる。
位置情報を画像に埋め込むと、撮影した場所が手軽に確認でき、新たな写真体験を提供してくれるのだが、測位はかなりシビア。基本的には空が開けて屋外でないと測位できないと考えて良く、測位時間も長いので常時利用できるレベルではないが、1カ所に長くとどまっているときには使ってみると良さそうだ。
LANは、ニコンのほかの機種とは異なり有線だけだが、LANケーブルをつないでモードダイヤルを合わせて電源を入れると画像を有線LAN経由で同社のオンラインアルバムサイトにアップロードできる。ACアダプターに接続すると同時にアップロードすることも可能だ。
GPSは本体左側に内蔵している。検出速度は不満を感じるが、使える場所なら積極的に使いたい。利用するためにはモードダイヤルをGPSに合わせる。測位すると衛星の位置と位置情報が表示される |
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GPS用のメニュー画面
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●DMC-LX3
DMC-LX3は、画像比率を4:3、3:2、16:9の3種類から選択できる。単純に画像の上下を削っているのではないため、焦点距離が変わらないというのがメリットだ。光学ファインダーはないが、オプションで外付けファインダーも用意されている。720pのHD動画が撮影できる点もポイントだろう。
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オプションの外部ファインダーと本革ケース(下側のみ)を装着したDMC-LX3
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●GX200
GX200には光学ファインダーは内蔵しないが、外付けの液晶ビューファインダーが用意され、ファインダーの角度を変えてのぞき込むような撮影の仕方ができる。一般的な画像の縦横比率だけでなく、1:1という比率で撮影できるのも特徴だ。
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別売、またはVF KITモデルに同梱のEVFを装着
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EVFは上方にチルトできる
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●PowerShot G10
PowerShot G10は、NDフィルターを内蔵している点はほかのモデルにない機能で、スローシャッターを利用したより多彩な撮影が可能になる。
■ まとめ
4機種を見比べてみると、マニュアルでの露出制御、28mm以下の広角レンズ、多彩な設定項目と、それぞれハイエンドカメラとして充実した機能を備えているのが分かる。
広角撮影がしたくてマニアックな撮影がお好みならGX200がいい。24mmスタートの広角レンズ、前面のダイヤル、背面のADJ.レバーを使って素早い露出制御が可能なほか、機能がシンプルでデザインも通好み。
COOLPIX P6000はカメラスペック的には特別突出したものはないが、GPSとLANという独特の機能を抑えている点が特徴。ニコンはこうした独自機能の搭載に積極的で、ニコンユーザーやこうしたガジェットが好きなユーザーにはお勧め。
GX200と同じく24mmスタートの広角レンズを搭載しつつ、ズーム倍率を2.5倍に抑えてワイド端の開放F値でF2.0の明るさを実現したDMC-LX3もマニアック。おまかせiAや720pのHD動画といった撮影機能はファミリーユースでも便利。
PowerShot G10は、28mmスタートの5倍ズームレンズを搭載し、2つのダイヤルによるアナログ的な操作感が特徴。とんがった機能はないが、機能は豊富で安定した魅力がある。
どのモデルもそれぞれ特徴があって、簡単に選択することは難しい。逆に言えば、どのモデルも撮影を楽しめる機能が充実しているということだ。その意味では、自分の用途を考えて選択するといい。
次回は、ハイエンドコンデジの画質を中心に比較してみる。画質にはどれだけの差があるのかをチェックしてみよう(画質編を近日に掲載予定)。
■ URL
COOLPIX P6000
http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/p6000/
LUMIX DMC-LX3
http://panasonic.jp/dc/lx3/
GX200
http://www.ricoh.co.jp/dc/gx/gx200/
PowerShot G10
http://cweb.canon.jp/camera/powershot/g10/
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小山 安博 某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 |
2008/12/03 12:10
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