OLYMPUS PEN E-P3【第5回】

アートフィルターブラケットが強力なのだ

Reported by 北村智史


 OLYMPUS PEN E-P3に搭載されているアートフィルターは10種類。といっても、バリエーションもあれば、アートエフェクトもある。全部合わせると実に53種類の組み合わせ。以前、OLYMPUS PEN Lite E-PL2の新製品レビューのときにひととおり撮ったけれど、あのときはアートフィルターが6種類で、バリエーションとエフェクト合わせて22種類だった。それだけでも撮るのはそこそこ大変だったのに、E-P3はその2倍以上もある。

 ちなみに、もうすぐ発売のOLYMPUS OM-D E-M5なんて、新しいアートフィルター「リーニュクレール」が追加されているし、バリエーションも増えていたりする。合計78種類もあるらしい。

 とはいえ、オリンパスのカメラの記事を書いていて、アートフィルターを無視できるはずはなく、ずっと放置ってのも問題だしなぁとも思うわけで、だから今回はアートフィルター周りの機能のうち、アートフィルターブラケット機能を取り上げてみる。

 この機能は、E-P3の世代から追加されたもので、読んで字のごとく、複数のアートフィルターを1回のシャッターでまとめて撮れるというものだ。対象となっているのはアートフィルターだけでなく旧「仕上がり」も含めたピクチャーモード全部。それを一気に撮れる。自分で組み立てる「カスタム」も含めると最大で17種類を、である。

 さすがにそこまでやるのはお馬鹿にすぎるので、17種類のピクチャーモードのそれぞれについて、「撮る」「撮らない」を選べるようになっている。今回はアートフィルターだけでいいが、一応標準的な仕上がりの「Natural」を入れて11種類。筆者は基本的に3:2比率、RAW+JPEGのスーパーファインで撮っているので、全部で12個の画像ファイルが保存される。おおざっぱに、1億3,000万画素分である。

 これがどれくらいかというと、まず撮影可能コマ数の表示がお茶目なことになる(この場合、シャッターボタンを押せる回数と表現したほうが正しい)。普段使っているサンディスクの8GBの「Extreme Pro」SDHCメモリーカード(ちょっと前の45MB/secのモデル)だと、フォーマットしたばかりの状態で「65」と表示される。65回シャッターを切ったらカード容量がなくなりますよ、って意味である。

 オリンパスのカウンターはかなり少なめにサバを読むので(ニコンもだけど)、撮れるのはもっと多い。実写した結果は88回だったのだが、それにしたって2桁である。今どき。36枚撮りフィルム3本分より少ないのである。って、この表現使うのもずいぶん久しぶりだけどね。

アートフィルターブラケットの設定画面。ピクチャーモードの全種類についてオンオフが選べる。「カスタム」も入れると17コマをいっぺんに撮れる3:2比率で「Natural」+アートフィルター×10種類+RAW時の撮影可能コマ数。装填しているカードの容量は8GBなんですけどね

 そのうえ、書き込み待ちなんていう、これも久しく忘れていた現象を体験できたりもするから驚きである。普段、ノンレフレックス(ミラーレス)カメラではポストビュー(オリンパス用語では「撮影確認」)を切っている。ポストビューが出れば、代わりにライブビューが消えるわけで、一眼レフでいえばファインダー像が見えなくなってしまうのと同じで、被写体を見つづけたいときもあるのに強制的にそれを切られるのが不便というか気分が悪いからである。それに、撮影前の段階で仕上がりに近い画が見られることもあって、ポストビューで確認しなくても不安を感じないケースが増えてきたからでもある。

 で、気になる場合は再生ボタンを押してチェックする。そういう撮り方をするようになった。のだが、E-P3はバッファメモリーに溜まっているデータを全部書き込んでからでないと再生ができない。再生ボタンを押しても無視されてしまう。シャッターボタンを押してから、アクセスランプの点滅が消えるまでの時間を計ってみたところ、3:2比率の11種類+RAWでだいたい11秒ちょっと。その間、ぼうっと待たなくちゃいけないんである。

 もっとも、「ファンタジックフォーカス」で2秒、「ラフモノクローム」で3秒、「トイフォト」に8秒待たされていたE-620の時代にこの機能があったら、もっとおそろしいことになっていたに違いない。ちなみに、ポストビューをオンにしておくと、表示時間の設定とは無関係に、保存するピクチャーモードの映像を1種類ずつ順番にスライドショーのように表示してくれる(「スライドレックビュー機能」というらしい)。11秒もぼうっと待ってるより、ずっとマシな気分になれるのは間違いない。

 使ってみたら、予想と違うハマりっぷりを発見することがあって楽しかった。普段あまり使う気になれない「デイドリーム」や「ライトトーン」がいい効果を発揮するシーンが、思ってなかったところで見つかったりしたのがおもしろかった。ただ、個人的には、例えば「トイフォト」の「I」「II」「III」のどれがいいかで迷ったときとか、「ファンタジックフォーカス」に「ホワイトエッジ」を付けるかどうかで悩んだときに、対応できるようになっていたら、もっとよかったのに、と思うのだがどうだろう。

Naturalポップアートファンタジックフォーカス
デイドリームライトトーンラフモノクローム
トイフォトジオラマクロスプロセス
ジェントルセピアドラマチックトーン

オリジナルはシックな色合いなんだけど、ポップアートにすると一気にアメリカンな雰囲気になる。先入観持ちすぎかな。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F5.6 / 1/200秒 / 0.3EV / ISO200 / WB:オート / ポップアート / 9mmファンタジックフォーカスのソフト効果はほどほどで使いやすい。ソフトフィルター買わなくなった人増えただろうなぁと思う。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F2 / 1/3200秒 / -0.7EV / ISO200 / WB:晴天 / ファンタジックフォーカス / 45mm
ライトトーンほどじゃないけど、個人的に存在感がけっこう薄いデイドリーム。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F2.5 / 1/1250秒 / -0.7EV / ISO200 / WB:晴天 / デイドリーム+ホワイトエッジ / 45mmこの画だけ見ると、どのへんがアートフィルターなのよって聞きたくなるのがライトトーンの謎なところだ。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/250秒 / 0.7EV / ISO200 / WB:晴天 / ライトトーン / 45mm
わりと何を撮っても画になりやすいラフモノクロームは、ダイナミックレンジが狭くなるので、露出の当たり外れが多くなりやすい。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F5.6 / 1/60秒 / -0.3EV / ISO200 / WB:晴天 / ラフモノクローム / 45mmトイフォトは、堂々の日の丸構図がハマりやすい。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F2 / 1/1250秒 / 0.3EV / ISO200 / WB:晴天 / トイフォト / 45mm
いいかげん、縦位置にも対応して欲しいんだけど、いまだに横位置オンリーなのがジオラマの腹立たしいところ。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F4.5 / 1/320秒 / 0EV / ISO200 / WB:晴天 / ジオラマ / 45mmクロスプロセスは、仕上がりの予想がまったくできなくて、個人的には使いづらいと感じている。E-P3 / LUMIX G 20mm F1.7 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/1250秒 / 1.0EV / ISO200 / WB:晴天 / クロスプロセス+フレーム / 20mm
名前のとおり、仕上がりのインパクトが弱いジェントルセピア。ホワイトエッジとの相性がいい。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F2.8 / 1/80秒 / 1.0EV / ISO250 / WB:晴天 / ジェントルセピア+ホワイトエッジ / 45mmドラマチックトーンはやっぱりオリンパスが誇るべき傑作のひとつだと思う。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / F3.5 / 1/200秒 / -1EV / ISO200 / WB:晴天 / ドラマチックトーン+フレーム / 45mm





北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2012/3/27 00:00