交換レンズレビュー
1840年に誕生したPetzvalレンズの味わいを広角レンズで!
Joseph Petzval 27 f/1.7 Focus-coupled Bokeh Control Art Lens
2026年4月18日 12:00
数々のユニークなフィルムカメラや個性的発色のフィルムを手掛けるロモグラフィーから、「Joseph Petzval 27 f/1.7 Focus-coupled Bokeh Control Art Lens」が発売された。
これまで4本がリリースされてきたPetzvalレンズシリーズで最も広角となる27mm。キヤノンRF、ニコンZ、ソニーEマウント用の3種を用意する。価格は6万9,800円。今回使用したのはキヤノンRF版のものでEOS R5にて使用した。
Petzvalレンズシリーズとは
1840年、ジョセフ・ペッツバールが設計した「世界初のポートレート用ハイスピードレンズ」を、オーストリアを拠点にワールドワイドに個性派カメラ/フィルムを提供しているロモグラフィーが復刻アップデートしたのがPetzvalレンズシリーズ。
元祖のグルグルボケを鮮烈に再現した85mm F2.2を皮切りに55mm F1.7、80.5mm F1.9、135mm F2.5、35mm F2など、さまざまな焦点距離でリリースされてきた。
本レンズはシリーズ最広角となる27mm F1.7。オールドレンズの世界では標準レンズより狭い画角において比較的クセの強い描写のレンズは見つけやすいが、広角レンズ+クセ描写は相当に選択肢が絞られる印象。そこにリーチするレンズになるのではないだろうか。
元祖は3群4枚または2群4枚構成で、ロモグラフィーの復刻シリーズも3群4枚構成でペッツバールならではの収差を再現していた。本レンズは広角レンズでありF1.7の明るさを実現するため4群5枚構成へと独自進化。最短撮影距離も0.27mと短くさまざまな撮影に対応する。
高級感あふれる外観と手触り
鏡胴はアルミニウム製でアルマイト処理が施されており高級感がある。レンズの先からフォーカスリング、ボケコントロールリング、絞りリングの3種のリングが備わっているが、どれも適度なトルクかつ滑らかな動きでMFを快適に行える。絞りリングは動画撮影に配慮したクリックレスとなっている。
レンズフードも金属製でバヨネット式。ロゴもプリントされていてる。フロントキャップはフードの上から装着する「かぶせ式」。こちらも金属製でロゴもプリントされており、フードとフロントキャップだけでも相当に豪華な印象を受ける。レンズ重量は発表されていないがおそらく600~700gほど。鏡胴には三脚座も付いている。
ハート型や星型などの「スペシャル絞りプレート」は、これまでのPetzvalレンズシリーズは鏡胴に差し込みスロットがあったが、本レンズは後玉の後ろに差し込む仕様になっている。レンズのマウント部にリングがあり、それを外してプレートを置き、再びリングを止めれば後玉の後ろにプレートが配置されるという仕組み。筆者はこれまでの仕様から必死に鏡胴のどこかにスロットがあるはずと探し回る羽目になった。ぜひ覚えておこう。
基本的な描写検証
まずもっとも気になる描写を、絞りとボケコントロールの違いで見てみた。
絞り開放では広角27mmであってもかなり豊かなボケ。Petzvalレンズシリーズの特徴であるグルグルボケも出ているが、これは光学の特徴からくるもので自然な印象を受ける。
絞り込んでいけばもちろんボケの量は減るものの周辺部の甘さは残る。隅々まで解像する描写は本レンズに望まれていないわけで個人的にはまったく問題にならない。ただ、中央部以外もそれなりに見せたい中景~遠景を撮るときには、F5.6程度以上にはしておいたほうがいいかなとは思う。
ボケコントロールは1~7の7段階で設定できる。1の場合は味付けのないレンズ由来のボケ味で、十分にグルグルグルボケが楽しめる。数字を大きくしていくにしたがって渦巻くような効果が強まっていき、7での撮影では周辺部が星景写真の星の流れのように見えるくらいになる。
これまでのPetzvalレンズシリーズと比べて広角のためあまり効果は見えづらいかもしれないが、意図したグルグル具合を調整できるのはうれしい。作例は1と7。かなりの差が現れている。
使用感
売価を考えると、かなり精緻な作り込み。素材感、手触り、剛性感の全てに満足がいく。先ほども触れた専用フードとフロントキャップなども手が込んでいる。リングが3つあるため、手が慣れないとフォーカシングをしているつもりがボケコントロールを回していたりすることはあるが、それは慣れれば問題ない。
スナップに持ち出すと、重量はあるために首からカメラ・レンズを下げていると少し疲れてくる。ただし、MFでボケ味を楽しむという性格のレンズのため、咄嗟のスナップや常に持ち歩くという使い方よりは、ポートレートや花などある程度の目的があるときに使うはずだ。利便性だけを考えれば小型軽量のAFレンズには叶わないが、ちょっとした持ち歩きの苦などなんとも思わないほどのルックスの良さ、使っていてのワクワク感は得がたいものがある。
作例
個人的に収差は大好き。しかし意図的なグルグルボケはさほど好まないので、今回の撮影もボケコントロールは1~3がメイン。絞りは開放こそ命というレンズなのでほぼほぼ開放を使った。
グルグルボケで名高いヘリオス-40-2 85mm F1.5なども愛用してきたこともあり、とにかく描写は好み。開放でのハイライトの滲みも美しく、キレイだな、写真を撮りたいな、と思った気持ちに寄り添った描写というのは、このくらい過剰に演出してくれるレンズかもしれない、と改めて感じた。
ちなみに、作例を撮っているタイミングで宣材写真の撮影を頼まれたのだが、某ハイエンド50mm単焦点レンズで撮ったものより、本レンズのものがいいと言われ、そういうものだよな、と感じた次第。作例は若干のホワイトバランス調整、明るさ調整のみしている。
まとめ
収差大好物、でも広角レンズで味わい深いものに出会ったことがないという人には大プッシュできるレンズ。開放では中央部のみまともに描写するため、割り切って被写体をど真ん中に収めるという清い使い方もできるし、ゴミゴミとした都会のスナップで使っても余計なところを写さないで済むという利点もある。
そして、日常のふとした瞬間を撮っても映画のワンシーンのような雰囲気を作ってくれる良い意味での甘さがある。加工・編集では届かない、レンズ由来の味わいは最高レベルだ。
滲みの美しさは特筆物。さまざまな物価が上昇しているいま、単焦点レンズでこの価格はリーズナブルに感じるはず。ぜひ本レンズでポエティック&ドラマチックな写真を楽しんでいただきたい。






















