交換レンズレビュー

フォクトレンダー SEPTON 40mm F2 Aspherical

いにしえの7枚構成を意識 MFレンズ初心者にも

コシナVoigtlander(フォクトレンダー)ブランドから、「SEPTON(セプトン) 40mm F2 Aspherical」が登場した。現状でソニーEマウント用が3月に、ニコンZマウント用が4月に発売される。35mmフルサイズのイメージサークルに対応し、価格はどちらも8万5,000円となる。

今回テストしたのはニコンZマウント版。こちらは全長わずか32mm、重さ205gとかなり小型にできているが、Eマウント版では全長30mmかつ重さ165gとさらにコンパクトなので驚かされる。

本製品(Zマウント版)はニコンとのライセンス契約の下で開発・製造されているので、電子接点による通信に対応したボディとの組み合わせによって、3軸でのボディ内手ブレ補正動作、フォーカスアシスト機能、Exifへの撮影情報記録などに対応し、純正レンズに近い利便性で運用できる。

製品名の由来

“セプトン”はラテン語の「7」を意味しており、レンズが7枚の構成であることをアピールしたもの。これは1950年代末から60年代にかけて発売されていたフォクトレンダーのレンズシャッター式一眼レフカメラ「ベッサマチック」と「ウルトラマチック」用に開発されたレンズ(SEPTON 50mmF2)に由来する。

当時は6枚構成のオーソドックスな製品が多く、7枚構成はハイクラスレンズの一部で見られる程度だったので、いわゆる「7枚玉」という名称にはカリスマ性があった、と筆者は考えている。というのも、レンズ枚数が増えれば同時に反射面も増えるので、コーティングが現在ほど発達していない時代では高性能の証明として十分なインパクトがあったと思われるからだ。

本レンズも名称通り7枚構成(6群7枚)となっているが、レンズ構成はオリジナルとは異なりオルソメターであることがアピールされている。

オルソメタータイプとは、対物側から見て『凸凹の接合レンズ+凸レンズを組み合わせた対称光学系の6枚構成レンズ』のことを指す。本レンズではこのオルソメターをベースに異常部分分散ガラスを1枚プラスし、さらに非球面レンズを用いることで、F2の明るさと小型化を両立しているという。

コシナのVoigtlanderブランドとしてセプトンを冠するのは初となり、既存のラインナップにはないシリーズとなる。今後、開放F2クラスの7枚玉シリーズが拡張される可能性も大いにあり、コシナファンとしては目が離せない。

外観

鏡筒はZfとの相性が良さそうなオールドニッコールを彷彿とさせる意匠が施され、マウント径の大きなZとの親和性を高めるためにEマウント版よりも太めの仕上げとされているところが面白い。

今回組み合わせたのはZ6III。Z6IIIとの外観上のマッチングも悪くないように見えるのは、この太さが効いていそうだ。筆者の感覚では、純正のNIKKOR Z 40mm f/2よりもワクワクする意匠だ。

付属のフードはアルミの削り出しによるもの。フジツボタイプの変型だが、フィルター径の変化はないのでレンズキャップはひとつで良い。フジツボ側にも反射防止のための溝が切ってあるなど芸が細かく、仕上げは上質。

また太めの鏡筒に対してレンズ前玉径はそれほど大きくないのだけれど、前玉周辺部にローレットが刻まれていて光学機器としての精緻さを感じさせ、特にフード装着状態ではなかなかの迫力だったので、外観写真ではその様子を捉えてみた。

フード装着状態での全長は、手計測でマウント基準面から約40mm。これにレンズキャップを装着しても50mm未満に収まっていた。ちなみに無限遠から至近端までの繰り出し量は約8mmだった。最長状態でも60mm弱なので、バッグへの収納性はかなり良い。

使用感

手にした印象は、そこそこ太いことが影響してか数値から想像するよりは小さくないけれど、手の大きな筆者にとって扱いやすさとサイズ感のバランスが良く感じられた。

こういった、いわゆるパンケーキレンズと呼ばれるレンズの中には、あまりにコンパクトなため、レンズが着脱しにくい製品もある。というのも、指でつまめる部分が少ないうえに回転する箇所もあるので、着脱時の保持にはコツが必要だからだ。

本レンズはフォーカスリングが広めな割には着脱時のストレスが少ないあたりに、この少し大きめサイズが効いているのだろう。

またフォーカスリングの操作トルクは、同じフォクトレンダーブランドのAPO-LANTHAR(アポランター)などと比べるとわずかに軽め。絞りリングの操作感はいつも通りコリコリとした感触が心地良い。

上述の前玉周辺のデザイン含め、使い勝手まで吟味された意匠と仕上げが素晴らしい。

作例

テスト開始直後は、ピクチャーコントロールを「スタンダード」にして撮っていたが、絞り開放から予想よりも解像感が高かったのですぐに「ニュートラル」に変更した。

NOKTON(ノクトン)シリーズなどよりも後ボケが騒がしい印象ではあるけれど、規則的なパターンや形状の分かりやすいモノを背景に写し込まなければ、個人的には後ボケの騒がしさはそれほど気にならないように思えた。一方、後ボケに対して前ボケは、キレイに柔らかく滲んでいて優しい印象を受ける。

ニコン Z6III/SEPTON 40mm F2 Aspherical/40mm/絞り優先AE(1/160秒、F2.0、+1.3EV)/ISO 720
ニコン Z6III/SEPTON 40mm F2 Aspherical/40mm/絞り優先AE(1/160秒、F2.0、±0.0EV)/ISO 140

色収差は驚くほど少なく、かなりイジワルをしなければフリンジなどが気になることは無かった。上述のシャープさと色収差の少なさで、オールドレンズのような気難しさに身構える必要はなさそうだ。

また、歪曲は大変に少ない。そうした特性からか、撮り進めるにつれ、いつもより人工物を多く撮っていた。

どんなシーンでも精緻に写し撮る最新世代のレンズも良いけれど、こういったレンズの特性から、撮りたい対象が自然と導かれるのを楽しむのも発見があって良いものだ。

ニコン Z6III/SEPTON 40mm F2 Aspherical/40mm/絞り優先AE(1/250秒、F3.5、−0.7EV)/ISO 100
ニコン Z6III/SEPTON 40mm F2 Aspherical/40mm/絞り優先AE(1/400秒、F3.5、+0.3EV)/ISO 100

周辺部は最新の高性能単焦点レンズと比べるとそれなりだが、急激に流れたように見える特性のものではなく、描写の乱れ方は自然。周辺光量落ちも含めて視線が自然と中心方向に導かれるように見え、ネガティブな印象は持たなかった。人間の周辺視野の甘さに近い感覚、といえば良いだろうか。

最新レンズのように四隅までパキッと写ることを期待すると残念な思いをするかもしれないけれど、こういった特徴はある意味では「オールドレンズ的な味わい」と受け取ることもできるのかも知れない。

個人的なワガママをいえば、もう少し控え目な光学性能でも良いくらいだ。

ニコン Z6III/SEPTON 40mm F2 Aspherical/40mm/絞り優先AE(1/250秒、F2.0、+0.3EV)/ISO 100

まとめ

全体的にはかなりの高性能。例えば開放絞りかつ至近端でも緩さはなく、光を選ばなくてもクリアに写るし、フリンジの心配もそうそうない。見た目から想像するよりもずっとモダンな特性を持っている。

しかも純正レンズと同様の使い心地でフォーカスアシスト機能が使え、フルサイズのZであればボディ内手ブレ補正も問題なく動作する快適性もある。

これならばZシリーズユーザーで初めてMFレンズを買う、という場合でも気難しさを感じさせず、MF撮影の醍醐味を楽しむことができそうだし、あわせて気軽に持ち歩けるサイズ感も評価したい。

ニコン Z6III/SEPTON 40mm F2 Aspherical/40mm/絞り優先AE(1/2,000秒、F2.0、±0.0EV)/ISO 100
ニコン Z6III/SEPTON 40mm F2 Aspherical/40mm/絞り優先AE(1/160秒、F2.0、−0.7EV)/ISO 280

1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープの写真に感銘を受け写真家を志す。日本大学芸術学部写真学科卒業後スタジオマンを経てデジタル一眼レフ等の開発に携わり、その後フリーランスに。黒白写真が好き。日本作例写真家協会(JSPA)会員。