交換レンズレビュー
Speedmaster 85mm F1.2
リーズナブルかつ開放からシャープ
Reported by澤村徹(2015/6/3 07:00)
中一光学のSpeedmasterシリーズに、シリーズ第2弾となる大口径中望遠レンズ、Speedmaster 85mm F1.2が登場した。
本年4月、中国で開催されたChina P&E 2015で発表された製品だ。第1弾のSpeedmaster 50mm F0.95は、ライカのノクティルックスと双璧をなすスペック、そしてリーズナブルな価格も相まって、大口径レンズファンの注目を集めた。本レンズも85mm F1.2という大口径ファン垂涎のスペックだけに、自ずと期待が高まってくる。
デザインと操作性
Speedmaster 85mm F1.2は6群9枚構成のMFレンズだ。EDレンズ2枚、高屈折低分散ガラスレンズ4枚を採用し、高画質化を図っている。
35mmフルサイズのイメージサークルをカバーし、キヤノンEFマウント、ニコンFマウント、ソニーEマウントをラインアップする。
基本的に一眼レフ向けに設計されており、ここで取り上げるソニーEマウントの製品は、根元がかなり長めになっている。一眼レフ用レンズにミラーレス機用のマウントアダプターを足したようなスタイルだ。
絞り羽根は11枚で、円形絞りを採用している。絞りリングはクリック感のないタイプで、動きはやや重い。ピントリングの動きは滑らかで、開放でのシビアなピント合わせも快適だった。
遠景の描写は?
開放F1.2という大口径タイプでありながら、滲みはよく抑えられ、開放からシャープさを感じさせる。開放の周辺描写は若干甘さを感じるが、像が流れるようなことはなく、周辺部に被写体を配してピント合わせすることも可能だ。
周辺光量落ちが多少あるものの、F2あたりでおおむね改善する。絞り込むにつれてシャープネスとコントラストが向上していくが、極端に硬調になることはない。絞りによる描写変化は比較的マイルドな方だろう。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
※共通設定:α7 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm
ボケ味は?
ボケ味は、前ボケ後ボケともになだらかだ。円形絞りが功を奏しているのだろう。ただし、とろとろのボケということではなく、どこかプリミティブな情緒があり、条件によっては絵画的なボケ方となる。
Speedmaster 50mm F0.95も時折ワイルドなボケを魅せていたので、Speedmasterシリーズの個性のひとつとも言えそうだ。
逆光耐性は?
中望遠という画角を踏まえると良好な部類だろう。光源が写り込むとゴーストとフレアが出るものの、シャドウはそれなりに締まりがある。
本レンズは花型フードが付属しており、万全を期すのであればフードでしっかりとハレ切りしておこう。
作品
近接ではF2まで絞ってもこれだけボケる。発色も良好だが、華美にならないのでしっかりと階調が感じられる。
開放近辺でうっすらと前後をボカす。大口径レンズはやはり中遠距離がおもしろい。
開放からコントラストは良好だ。シャドウがしっかりと締まり、メリハリのある絵が撮れる。
木陰で人物を撮影してみた。やや黄色に偏っているが、ホワイトバランスの微調整で補正できるだろう。発色が抑えめで、肌の色が過剰にならないところが良い。
中央の噴水に開放でピントを合わせた。NDフィルターを使わずに撮影している。大口径レンズは高速シャッターの切れるボディが重宝する。
左端にピントを合わせて撮影した。開放でも周辺が流れず、隅々までシャープに写るレンズだ。
ハイキーで前後のボケをチェックしてみると、階調をともない立体感のある描き方だ。発色はやや淡泊な印象だ。
まとめ
メーカー純正の大口径中望遠レンズは、それ相応の出費を覚悟しなければならない。その点本製品はMFレンズということもあり、実売で10万円を切る購入しやすい価格を実現している。
開放F1.2の被写界深度は浅く、MFでのピント合わせは多少慣れを要する。しかし、ライブビューの拡大表示を活用すればけっして困難な操作ではない。大口径ポートレートレンズの大きなボケを、リーズナブルな価格で我が物にできるレンズだ。