交換レンズレビュー

Speedmaster 85mm F1.2

リーズナブルかつ開放からシャープ

今回はα7で試用した。発売は5月28日。実勢価格は9万8,000円前後

中一光学のSpeedmasterシリーズに、シリーズ第2弾となる大口径中望遠レンズ、Speedmaster 85mm F1.2が登場した。

本年4月、中国で開催されたChina P&E 2015で発表された製品だ。第1弾のSpeedmaster 50mm F0.95は、ライカのノクティルックスと双璧をなすスペック、そしてリーズナブルな価格も相まって、大口径レンズファンの注目を集めた。本レンズも85mm F1.2という大口径ファン垂涎のスペックだけに、自ずと期待が高まってくる。

デザインと操作性

Speedmaster 85mm F1.2は6群9枚構成のMFレンズだ。EDレンズ2枚、高屈折低分散ガラスレンズ4枚を採用し、高画質化を図っている。

インナーフォーカスを採用した大口径ポートレートレンズ。重量は920g。焦点工房にて税込9万8,000円だ

35mmフルサイズのイメージサークルをカバーし、キヤノンEFマウント、ニコンFマウント、ソニーEマウントをラインアップする。

基本的に一眼レフ向けに設計されており、ここで取り上げるソニーEマウントの製品は、根元がかなり長めになっている。一眼レフ用レンズにミラーレス機用のマウントアダプターを足したようなスタイルだ。

フィルター径は77mm。開放F1.2は晴天だと露出オーバーになりがちだが、日陰ならNDフィルターなしで撮影できる
ここではソニーEマウントの製品をテストした。各種一眼レフ用マウントに対応する

絞り羽根は11枚で、円形絞りを採用している。絞りリングはクリック感のないタイプで、動きはやや重い。ピントリングの動きは滑らかで、開放でのシビアなピント合わせも快適だった。

レザートーン塗装を施した花型フードが付属する。レンズへの取り付けはバヨネット式だ

遠景の描写は?

開放F1.2という大口径タイプでありながら、滲みはよく抑えられ、開放からシャープさを感じさせる。開放の周辺描写は若干甘さを感じるが、像が流れるようなことはなく、周辺部に被写体を配してピント合わせすることも可能だ。

周辺光量落ちが多少あるものの、F2あたりでおおむね改善する。絞り込むにつれてシャープネスとコントラストが向上していくが、極端に硬調になることはない。絞りによる描写変化は比較的マイルドな方だろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

※共通設定:α7 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。(画面中央で合焦)
F1.2
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。(画面右下で合焦)
F1.2
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F16

ボケ味は?

ボケ味は、前ボケ後ボケともになだらかだ。円形絞りが功を奏しているのだろう。ただし、とろとろのボケということではなく、どこかプリミティブな情緒があり、条件によっては絵画的なボケ方となる。

Speedmaster 50mm F0.95も時折ワイルドなボケを魅せていたので、Speedmasterシリーズの個性のひとつとも言えそうだ。

絞り開放・最短撮影距離(約1m)で撮影。
絞り開放・距離数mで撮影。
絞りF2・距離数mで撮影。
絞りF2.8・距離数mで撮影。

逆光耐性は?

中望遠という画角を踏まえると良好な部類だろう。光源が写り込むとゴーストとフレアが出るものの、シャドウはそれなりに締まりがある。

本レンズは花型フードが付属しており、万全を期すのであればフードでしっかりとハレ切りしておこう。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。α7 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。α7 / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

作品

近接ではF2まで絞ってもこれだけボケる。発色も良好だが、華美にならないのでしっかりと階調が感じられる。

α7 / 1/160秒 / F2 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

開放近辺でうっすらと前後をボカす。大口径レンズはやはり中遠距離がおもしろい。

α7 / 1/4,000秒 / F1.4 / -1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

開放からコントラストは良好だ。シャドウがしっかりと締まり、メリハリのある絵が撮れる。

α7 / 1/640秒 / F1.2 / -1.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

木陰で人物を撮影してみた。やや黄色に偏っているが、ホワイトバランスの微調整で補正できるだろう。発色が抑えめで、肌の色が過剰にならないところが良い。

α7 / 1/640秒 / F1.4 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

中央の噴水に開放でピントを合わせた。NDフィルターを使わずに撮影している。大口径レンズは高速シャッターの切れるボディが重宝する。

α7 / 1/5,000秒 / F1.2 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

左端にピントを合わせて撮影した。開放でも周辺が流れず、隅々までシャープに写るレンズだ。

α7 / 1/1,250秒 / F1.2 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

ハイキーで前後のボケをチェックしてみると、階調をともない立体感のある描き方だ。発色はやや淡泊な印象だ。

α7 / 1/1,600秒 / F1.2 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

まとめ

メーカー純正の大口径中望遠レンズは、それ相応の出費を覚悟しなければならない。その点本製品はMFレンズということもあり、実売で10万円を切る購入しやすい価格を実現している。

開放F1.2の被写界深度は浅く、MFでのピント合わせは多少慣れを要する。しかし、ライブビューの拡大表示を活用すればけっして困難な操作ではない。大口径ポートレートレンズの大きなボケを、リーズナブルな価格で我が物にできるレンズだ。