交換レンズレビュー
SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art
ボケも美しい大口径標準ズームレンズ
2017年8月21日 07:00
広角域から中望遠域をカバーするF2.8通しの大口径標準ズームレンズは、メーカーの花形的存在ともいえるレンズだ。
今回取り上げるのは、シグマのArtシリーズになった24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art。2009年に発売された24-70mm F2.8 IF EX DG HSMの後継モデルにあたる。
前モデルにはなかった4段分の手ブレ補正機能が搭載されたほか、簡易防塵防滴仕様となり、僅かではあるが最短撮影距離と最大撮影倍率も改善された。
発売日:2017年7月7日
実勢価格:税込16万円前後
マウント:キヤノンEF、シグマSA、ニコンF
最短撮影距離:0.37m
フィルター径:82mm
外形寸法:約88×107.6mm
重量:約1,020g
大口径のメリット
標準ズームレンズは視覚に近い画角をカバーすることから、風景の撮影においては必要不可欠なレンズである。とはいえ、ポートレート撮影などとは違って絞り込むことの多い風景の撮影では、大きくて重い大口径ズームレンズを敬遠している人も多いのではないだろうか。
確かに、絞り込んでパンフォーカス気味に表現するのは風景の定番的な撮り方だが、シーンによってはボケを活かして花などを撮影したい時もある。また、明るいレンズはファインダーの隅々まで確認がしやすく、とりわけ朝夕の薄暗い時間帯にはとても重宝する。
ライバルは?
大口径タイプの標準ズームレンズはキヤノンでは「EF 24-70mm F2.8 L II USM」、ニコンでは「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」が発売されている。一方、レンズメーカーでは本レンズの他、タムロンの「SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(Model A032)」やトキナーの「AT-X 24-70mm F2.8 PRO FX」がある。
このうち、キヤノンとトキナーは手ブレ補正機能が搭載されておらず、ニコンとシグマは4段分の手ブレ補正機能を備えている。そしてこのクラス最大の手ブレ補正性能を持つのがタムロンで、その効果はシャッター速度に換算して5段分だ。
ニコン以外は比較的全長が抑えられた作りになっているが、ニコンだけは全長が154.5mmと望遠レンズ並みに長く、携行性や取り回しに少々難がある。また、純正のレンズは、サードパーティ製のレンズと比べて価格が高いということもウイークポイントの1つといえる。
外観
従来のArtシリーズのレンズと同じく、高級感が感じられるシンプルな外観だ。
全長は107.6mmとコンパクトに仕上げられているものの、重量は1,020gと重く、長時間手持ちで撮影するような場合には腕や手首への負担が大きくなるが、上位機種のカメラに装着した時のバランスは悪くない。
操作性
ズームリングとピントリングはともに少し硬めのトルク感があって、微妙なズーミングやピント合わせがしやすい。
また、レンズ側面にはフォーカススイッチと手ブレ補正の切り替えスイッチがある。手ブレ補正切り替えスイッチはフォーカススイッチよりも小さいが、それなりの大きさがあるので親指でもしっかりと操作できる。
AF
超音波駆動モーターHSMを採用しているだけあって、AFでのピント合わせは静かでスムーズだ。純正のレンズとほぼ同じ感覚で操作できて、狙った位置にしっかりとピントを合わせられる。
作品
5,000万画素オーバー機での撮影ではザラザラとした樹皮を質感豊かに、そして蜘蛛の巣の細い線もクッキリとシャープに再現してくれた。画面周辺部では若干の色滲みが発生している。
ギリギリまで被写体に接近すると、ヒマワリはこのような大きさで写せる。ピントを合わせた画面中央部の水滴はシャープに描写されていて、全体の色のヌケ具合も良好だ。
大口径レンズの魅力といえば、ボケを活かした写真が撮れることだ。絞りを開放にすると広角域でも背景は大きくボケるが、シーンによっては周辺光量落ちが目立つこともある。なお、周辺光量落ちは1段程度絞るとほぼ改善される。
望遠側で絞り値をF2.8に設定して撮影。ズームレンズであることを考えれば、なかなかのボケ味といえるだろう。
一般的には高画素機ほどブレが目立つため、手持ち撮影時はかなり速いシャッター速度が必要になる。ところが本レンズの場合、手ブレ補正機能をONにして54mm域で撮影すると、1/25秒でもブレずに写せた。手ブレ補正機能の効果は大きく、手持ち撮影の幅を広げてくれる。
まとめ
24-70mm F2.8 DG OS HSMは、高画素時代に相応しい解像力の高いレンズに仕上げられている。簡易防塵防滴仕様に加えて、レンズ前面には撥水・防汚コートも施され、雨天時や水しぶきがかかるような風景撮影の現場でも使うことができる。
一方で筆者の環境では画像周辺部で色滲みが発生していたのと、絞り開放時の周辺光量が不足していた点は少々残念に思える。
先述したようにこの焦点域はライバルとなるレンズがひしめき合っていて、ユーザとしてはどのレンズを選んだらいいのか、正直迷ってしまうのではないだろうか。
その中においてサードパーティ製のレンズは価格が安いものの、基本的にはカメラ側での光学補正ができないため、シーンによっては撮影後にRAW現像ソフトなどを使った調整が必要になることを覚えておこう。
また、本レンズを含め各メーカーの大口径標準ズームレンズのフィルター径はいずれも82mmとなっていて、風景を撮影するうえでは欠かせないPLフィルターやNDフィルターが高額になることも併せて頭に入れておきたい。
ともあれ、大口径標準ズームレンズならではの美しいボケ味を活かした表現はとても魅力的で、F4通しのズームレンズなどとは違った描写が味わえる。購入にあたっては自分がどのような場面でどのように使いたいのかを、しっかりとイメージして選ぶことが大切だ。