交換レンズレビュー
Nikon AF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VR
小型・軽量・安価で画質は良好 気軽に使える超広角ズームレンズ
2017年6月28日 07:00
ニコンのDXフォーマット用レンズに、気軽に使える待望の超広角ズームレンズAF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VRがラインナップされた。
これまでDXフォーマットの超広角ズームといえば、AF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G EDがファーストチョイスであったが、発売後8年経った今でも実勢価格は10万円近く、躊躇していたユーザーも多いかも知れない。それが今回、税込4万5,000円を切る値段で純正の超広角ズームが登場した。ニコンDXフォーマットユーザーでも、超広角の世界に気軽にチャレンジできる環境が整ったといえる。
本レンズの特徴は、35mm判換算で15-30mm相当の超広角~広角域をカバーし、約230gと非常に軽量なことだ。AF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G EDと比べても半分の重さしかないためスナップ撮影との相性も抜群。
軽く、廉価ながら非球面レンズを複数使用し収差を適切に軽減しており、手ブレ補正まで搭載しているのもポイント。今回はそんなお手軽超広角ズームAF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VRのレビューをお届けする。
発売日:2017年6月30日
希望小売価格:税別4万1,500円
マウント:ニコンF
最短撮影距離:0.22m
フィルター径:72mm
外形寸法:77×73mm
重量:約230g
デザインと操作性
好みの画角というのは人それぞれであるが、個人的には日常を意外性のある画角で捕らえられる超広角レンズは、スナップ撮影に欠かすことができないレンズの1つだと思っている。
超広角レンズは目の前の風景を広く切り取るだけではなく、広い画角から生じる圧倒的なパースペクティブ表現が魅力だ。本来の形をあえて歪ませることで、目の前の世界に躍動感やインパクトを与えられる力のあるレンズなのだ。
本レンズの特徴である軽さは、機動力が求められるスナップ撮影で特に重宝する。AF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G EDの約460gと比べるとたった半分の約230gしかなく、全長も14mm短い。
これなら常にバッグに入れておいても苦にならない重さ、サイズ感だろう。ズームにより鏡胴が繰り出し、広角端の10mmで最も全長が長くなる。
光学系は11群14枚の構成。EDレンズは使われていないものの、非球面レンズを3枚使用しており歪曲や周辺部の収差も適切に補正している。
コンパクトなのに手ブレ補正機構を搭載していることもポイントで、効果は約3.5段分。手持ちでのスローシャッター表現も楽しめるのが嬉しい。手ブレ補正のON/OFFスイッチはレンズ側にはなく本体のメニューから設定することになる。
光学性能では、EDレンズが使われ、2/3段ほど明るくズーム域も広いAF-S DX NIKKOR 10-24mm f/3.5-4.5G EDの方が上だが、重量が半分でお値段も半分近く、VRが搭載されているAF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VRのメリットも非常に大きい。
ズームリングやフォーカスリングの回し心地は、金属製レンズと比べれば味気ない感じがするのも確かだが、操作性自体は無駄な遊びもなく適度なトルクがあり良好だ。フォーカスリングがやや狭いと感じた。なお、距離目盛は搭載されていない。
軽量である理由の1つは銅鏡およびマウントがすべてプラスチックでできているからだが、外見から安っぽさは感じない作りになっている。マウントがプラスチックでできている事を心配する人がいるかも知れないが、同じクラスのキヤノンEF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STMのマウントもプラスチックでできており、200g台のレンズであれば全く心配はいらないだろう。
今回試用したD7500(約720g)との組み合わせでは装着していることを忘れるような軽さだった。より軽量なD5000系やD3000系との相性も良いと思われる。
AFは静粛性の高いステッピングモーターを採用しており滑らかに動作し、速度も遅いと感じることはなかった。フィルター径は72mmで、付属するフードは花形で深めの切り込みが入っており効果は高そうだ。
作品
広角端の10mmで、あおり気味に吊り橋を撮影した。高さのある被写体は低い位置からあおり気味に撮影するとこうしてパースペクティブを強調できる。広角端では開放でも全面で比較的良く解像しており、2/3段絞ったF5.6ではさらにシャープになる。画面端でも像が流れることなく優秀な写りだ。
望遠端の20mmでは開放のF5.6では全体にソフトな写りとなるが、1段絞ったF8では急激に解像感が回復し、別のレンズかと思うほどにパリッとする。望遠側でシャープな絵が欲しければF8程度まで絞って撮影するのが良いだろう。
望遠端20mmの絞り開放で、ギリギリまで寄って紫陽花を撮影した。本レンズの最短撮影距離はズーム全域0.22mでかなり寄れる。ギリギリまで寄るとフードに当たりそうになるほどだ。先ほど望遠端の開放はソフトになるといったが、このような被写体ならむしろ多少ソフトになった方が雰囲気が出てくる。20mm(35mm判換算30mm相当)はスマートフォンのカメラの画角にも近いため、はじめての超広角レンズでも望遠端なら使いやすいだろう。
今度は広角端で花を撮影してみた。手前の花がより大きくデフォルメされ、こちらに迫ってくるかのような超広角ならではの表現となった。1本のレンズで迫力のある10mmと落ち着いた20mmをすぐに使い分けられるのがスナップ撮影ではとても重宝する。
本レンズを使用して一番驚いたのが逆光での耐ゴースト性だ。通常広角レンズで太陽を直接撮ると、緑や紫の目立ったゴーストが出現しやすいが、本レンズではゴーストが出るシーンがほとんど無かった。このように太陽を直接入れるようなシーンでもフレアによるコントラストの低下はある程度見られるが、目障りなゴーストの出現がほとんど無かった(出ても小さい)。これなら積極的に太陽を入れた構図を作ることができそうだ。
約3.5段の手ブレ補正機構を利用して、手持ちのスローシャッターにも挑戦。立った状態でホールドし、0.6秒でクルマの光跡を撮影した。背景はしっかり止まっており、十分実用となるレベル。0.2~0.3秒ならほとんどのシーンで安心して手持ち撮影が可能だと感じた。三脚を使わなくても良いというのはとても快適だ。
超広角を生かすとこのような左右対称の世界も簡単に撮影できる。右側が本物、左側は看板(地図)への映り込みだ。映り込んでいる面にカメラをピッタリとくっつければキレイな左右対称の世界が切り取れる。
まとめ
本レンズはクラス的にはキットレンズと同じ入門向けレンズになるため、光学性能的には上位のレンズに見劣りする部分があるのは確かだが、1段程度絞ってしまえばかなり解像する十分なポテンシャルを持つレンズである。
また、上位のレンズに比べて圧倒的に軽くコンパクトで三脚を使うシーンがグッと減る手ブレ補正搭載であることは、スナップや旅行といった歩き回る撮影ではなによりのメリットだ。
価格も手ごろであり、このレンズから超広角の沼にどっぷりと浸かってみるのも良いだろう。