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画像編集で39.7インチ5K「曲面型」21:9モニターを使ってみたら……

Thunderbolt 5対応の「LG 40U990A-W」レビュー

大きな段ボール箱が届く。箱を開けてみるとデカい。デスクに設置してみると、うん、でかい。そんな子供じみた感想を持ってしまうほど大きなモニター、LG 40U990A-Wを試用してみました。

もちろん、60インチや100インチなどこれより大きいディスプレイは存在しますが、そのアスペクト比から通常は上下方向にも大きく視線移動が大きくなってしまうので、PCなどの作業モニターとしてチョイスすることはあまりないものです。

ですが、横方向に長いモニターであれば、視線移動は水平方向だけでよく、また複数のアプリケーションを立ち上げた際にも、横方向配置で一気に視界の中に収められるため、使用感の良いものでした。

そもそも人間の視界はなんとなく見えてる範囲まで含めれば、上下125°、左右190°といわれ、水平方向にあるものは見やすいからだと思います。なんとなくでも見えていれば、次に切り替えたいアプリケーションに即座に移動できる、そうした感覚が使用感の良さにつながったのだと考えられます。同時に40U990A-Wは曲面形状であるため、視界に包まれる感覚も心地よく作業に没頭できるものでした。

まずは筆者の環境を……

筆者の普段の環境は27インチカラーマネージメントモニターをデュアルで使用していますが、40U990A-Wはその2枚分の横幅にも近く、かつ上下方向はやや大きいという感じです。

そもそも筆者はモニターについて、大きいことは正義と考えています。これまで何台ものモニターを使ってきましたが自分史のなかでだんだんと大きくなってきており、1度大きなモニターを使うともう2度と小さなモニターには戻れないと感じていたのです。

現在使っている27インチモニターの以前は、30インチモニターをデュアルで使っていたのですがカラーマネージメントモニターの製品ラインナップから30インチがなくなってしまったため、泣く泣く27インチにしたのでした。30インチと27インチはベゼルで比べるとひとまわり小さくなった程度の違いですが、使用感でみるとずいぶん小さくなってしまったなあ、と感じていたものです。

さて、話を40U990A-Wに戻すと先述のとおり、27インチデュアルよりも横幅は小さくなるものの、27インチデュアルよりも大きいモニターに感じました。やはり、分割された画面よりも1画面でアプリケーションや映像そのものを見渡せるメリットは大きいものだと実感した次第です。

設置とスタンド

まず使い勝手についてみていきましょう。大きなモニターゆえに設置に不安がありますよね。ですが、実際の作業はとても簡単なものでした。スタンドをデスクに置いたら、モニター本体をVESAマウントに引っ掛けるだけ。大きいとはいえ、縦方向は小さいので1人で簡単に設置できました。

このスタンドで感心したのは、スタンド底面がシンプルなアルミの板であったことです。厚さは3mmほどですが十分な重量があり、モニター本体とのマッチングが良いものでした。

また、薄いプレート状であるため、この上にキーボードを重ねたり、また他のUSBデバイスを設置できたりするので狭いデスクを有効活用することができました。ここに厚みがあったり、傾斜がついていたりすると物を置く場所として活用できないので大変助かりました。

インターフェイス・接続性

HDMIやDisplayPortなどを装備していますが、Thunderbolt 5に対応しているので、Thunderbolt製品、USB Type-C製品を幅広く接続できます。Thunderboltハブが内蔵されているとかなりお得感があります。

電源ケーブルを挿し、付属のThunderboltケーブルでPCと接続すれば給電も行えるのですぐに使うことができます。

背面の接続端子パネル

操作性

次にモニター底部に目を向けるとここにマルチコントロールボタンが設置されています。白色LEDが内蔵されており、モニタースタンドの方向を照らしてくれます。環境光が暗い場合、スタンドに置いた物を探すときなどに便利です。便利なだけではなく雰囲気もよく、いい演出ですね。

モニター底部に設置されたマルチコントロールボタン。LED照明が内蔵されているのは心憎い演出だ

このマルチコントロールボタンを左右に動かせば、LG 40U990A-Wに内蔵されたスピーカーの音量を調節できます。

前後に動かすとモニター輝度の調整。プッシュするとOSDを表示し、詳細メニューにアクセスできるようになっています。

左右に動かして音量調節
前後に動かして輝度調節

頻繁にアクセスする機能を簡単に調整できるのはとても好印象でした。ですが、どうせならリモコンもついていてほしかったなあ。というのは望みすぎでしょうか。

対応する色域

LG 40U990A-WではHDR、sRGB、DCI-P3に対応しています。これらはそれぞれ画像の規格で、プロユーザーにとって最も関心の高い部分です。

この点についてお話しするにあたって、筆者の考える前提をお話ししておきます。一般にはあまり明確に区別されていませんが、こうした映像表示装置はモニターあるいはディスプレイと呼ばれていますね。筆者はこの2つを違うものと捉えています。モニターはカラー(色)を正確に再現する装置、ディスプレイは映像を美しく見せる装置であると捉えています。

両者は同じようにも思えますが、プロユーザー、つまり業務として映像を扱う者にとって大きな違いがあります。映像として感知する画像データが現実のカラーを正しく反映しているかどうかはプロユーザーにとってとても大きな問題だからです。

たとえばカラーマネージメントモニターと言われるものと液晶テレビで同じ写真データを表示しても両者には大きな差が生まれます。一見してテレビの方が美しく綺麗な色合いとシャープさで表示されますが、それからするとカラーマネージメントモニターでの表示は地味な色合いに見えてしまいます。

しかし、カラーマネージメントモニターでは、撮影された現物、つまり被写体ですね。現物の色とモニターに表示される色を一致させることができます。また、一歩踏み込めばインクジェットプリントや雑誌のような印刷物とも色を一致させることができます。プロユーザーが画像規格やカラーマネージメントモニターに強い関心を寄せるのはこの点なのです。

LG 40U990A-Wはカラーマネージメントモニターと呼ばれる製品ではありません。しかしながら現在、カラーマネージメントモニターと言える製品はごく少なく、またモニターのキャリブレーションに使われる製品も一般向けには販売されていないのが現状です。

このことは市場における問題と捉えることもできますが、主な理由は液晶パネルの性能が飛躍的に向上した結果、良質なパネルであれば画像規格に沿った映像が表示できるようになり、特別に繊細な部分を求めなければモニターのキャリブレーションを必要としなくなったという点に収束すると思います。

事実LG 40U990A-Wでは、詳細設定から適切な設定を選ぶことでカラーチャートとカラーチャート画像の表示を一致させることができました。このことはプロユーザーの求めるカラーの正確さを十分に満たしていると結論できます。

カラー設定

LG 40U990A-Wでのカラー設定を見てみましょう。マルチコントロールボタンをプッシュすると設定項目を呼び出せます。

マルチコントロールボタンを2回プッシュするとクイック設定

最初に「クイック設定」が表示されますが、この中の「明るさ」と「色温度」を変更すれば、環境光に合わせたモニター調整が可能です。「明るさ」は0〜100まで1刻み。最大輝度は仕様から400cd/㎡ですが最小値は不明です。しかし、最小から最大までカラーが捩れることなく素直にモニター輝度だけが変化することを確認できました。

次に色温度ですが、0を中心にウォーム系8段階、クール系10段階の総計19段階のプリセットで構成されています。各プリセットでの色温度を明るさを変えて表にまとめましたので参照してください。

代表的なアプリで検証

最後にいくつかのアプリケーションでの使い勝手を見てみます。現在の画像入力装置のアスペクト比は静止画で2:3、動画で16:9が主ですね。

対して40U990A-Wのアスペクト比は21:9。画像を全画面表示しても左右が余ります。この点がアプリケーションの使い勝手にどう影響するのかはご自身で実際に使ってみなければわからないものと思います。それでも多少の参考になれば幸いです。

DaVinci Resolve

まずBlackmagic DesignのDaVinci Resolve。有名な動画編集アプリケーションですね。

その機能は多彩で優秀なものですが、ワークスペースにおいてウインドウの配置に自由度がないことが大きな不満になっています。デュアルモニターで使う場合は一方に編集ツールウインドウ、もう一方にプレビューを割り当てるのですが、シングルモニターの場合、プレビューとツールウインドウは固定されてしまうので、27インチクラスのモニターでもプレビュー表示が小さく編集結果の確認がしにくいという不満を抱えています。

よって40U990A-Wでもその心配があったのですが杞憂に終わりました。画像ウインドウ右は編集中のプレビュー画面、左は元データを表示するレファレンス画面ですが、このような使い方をすると編集前後が明確になり、大変使いやすいものになりました。40U990A-Wが横長のアスペクト比であるが故に、2つの画面を効率よく配置できるからですね。

Adobe Premiere Pro

続いて動画編集アプリケーションの雄、Adobe Premiere Proでの様子ですが、こちらは使う前から何の不安もなく、思っていた通りの使い勝手でした。

Adobe Premiere Proはワークスペースのウインドウ配置の自由度が高いのでよく使うウインドウを任意の位置に配置できます。プレビュー画像は16:9ですから当然左右に余裕がありますね。そこに、ツールを配置していくととても使い勝手の良いものでした。

Adobe Camera RAW

最後はRAW現像アプリケーション、Camera RAW Pluginです。Bridge画面からプラグインとして立ち上がるわけですが、選択カット以外もBridgeで参照しながら編集したいことがしばしばです。

横長であることを利用し、Camera RAW Pluginウインドウを左端に寄せ、画面右端にBridge画面を寄せています。これも筆者にとっては使い勝手の良い配置となりました。

そのほか、Photoshopなどいくつかのアプリケーションを同時に立ち上げていますが、そのウインドウをすこし見せておくことで、アプリケーションの切り替えが直感的にできます。まあ、これはシングルウインドウしかなかった古い時代のアプリケーション切り替えとも言えますが、キーボードコマンドやミッションコントロールでアプリケーションを切り替えるよりも、すこしばかり古いかもしれない、ウインドウを直接クリックするアプリケーションの切り替えが好きです。同じように思ってくださる方には横長画面の良さがより伝わるのではないかと思っています。

水平垂直を正確に出したい被写体を表示したとき、モニターの近くから見るとベゼルが糸巻き型に湾曲しているように見え、それに引きずられて画像境界も湾曲しているように見えてしまいます。直線主体で水平垂直を正確に出したい被写体の場合、ちょっと戸惑ってしまうんです。もっとも参照線を表示すればいいだけですし、しばらく使っていると自分の方が慣れてしまいます。都市風景などをメインに撮られる方は違和感を覚えるかも知れませんので参考までに。

まとめ

LG 40U990A-Wを試用してみて曲面型であるが故の包まれる没頭感を提供してくれるだけでなく、カラーを管理するモニターとしての十分な実力、横長であることの作業上のメリットを知ることができました。カラーマネージメントツールが希少となってしまった現在、プロユーザーにとっても曲面型モニターを使うべきなのかもしれない、と感じたのが筆者の正直な感想です。次に買うべきモニターはこれかも知れないと。

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。社員カメラマンを経て2010年にフリーランスとなる。主に風景・星景を撮影し、星空の撮影は中学校で天文部に入部した頃からのライフワーク。ニコンカレッジで、星景写真講座を担当。星空に興味ある方は「こちら」へ