324RC2 |
マンフロットのジョイスティック雲台「324RC2」(1万8,480円)は、その名の通り、操縦桿を彷彿とさせるルックスが特徴的な自由雲台の一種だ。
一般的な自由雲台と異なるのは、雲台を固定するのがノブやレバーによるフリクション調整ではなく、ハンドルという点。
ハンドルを強く握ると位置調整が可能になり、離すと固定される。勝手は一般的な自由雲台とほとんど同じだが、操作が片手で完結し、手を離すだけで固定されるので、調節するたびにノブを締めたり緩めたりする手間が省けるというわけだ。また、ノブの閉め忘れでカメラが重さのかかる方向に倒れてしまうという事も起きづらい。
ハンドルを握ると位置を調整できるようになる | ボール部分はステンレススチール製。内部は軽量化のため空洞状としている |
マンフロットでは従来からハンドルを握って操作するタイプの雲台をラインナップしており、今回紹介する324RC2は従来機種のリニューアルモデルという位置付け。このほか、上位モデルの「327RC2」(2万7,300円)も用意している。
ハンドル部分は金属ではなく、「Adapto」と呼ばれる軽量なテクノポリマー素材を使用している。金属ではないようだが、使用していてたわみを感じることはなかった。ボール部分はステンレススチール製。ハンドルを縦回転する際の固さを調整できるダイヤルを備える。耐荷重は3.5kg。上位モデルの327RC2では、ハンドルの素材にマグネシウム合金を採用している。耐荷重は5.5kg。
カメラ取り付け部にはクイックシューを採用。水準器も備える。シューの形状は、同じマンフロットの3ウェイ雲台「804RC2」などにも採用している長方形プレート。セーフティロックを備えるため、誤ってクイックシューのリリースレバーに触れても、クイックシューが外れないようにできる。
クイックシューの固定は、前方にシューを受ける凹みがあり、背面をリリースレバーで押さえる仕組み。側面には何もないので、クイックシューが微妙にずれて嵌まることがある。この場合はもう一度きちんと取り付け直せば、問題なく固定力が得られる。
「Adapto」という素材を用いている | リリースレバー横に水準器を備える |
セーフティロック | ハンドル裏に縦回転のフリクション調整ダイヤルを備える |
普段、筆者は3ウェイ雲台を使っている。3ウェイ雲台は3つの軸を微調整するので精度面では優れるものの、個別にハンドルを締めたり緩めたりといった操作がやや煩雑だ。
324RC2の優れている点は、素早く直感的にカメラ位置を調整できるところだ。ハンドルを握ってカメラを好きな位置に合わせたら手を離すだけでいいので、撮影に集中しやすく、シャッターチャンスをものにしやすい。モータースポーツや陸上競技などのように、被写体の来る位置はあらかじめわかっているが、状況により微調整が必要なときに威力を発揮しそうだ。
ところで、本機はクイックシューのリリースレバーを手前にするとハンドルが右に来ることから、右手での操作を想定していると想像できる。普通、レンズ交換式デジタルカメラのシャッターボタンはグリップ上部にあるので、別途リモートレリーズなどを使わない限り、ファインダーでピントを確認しつつ、被写体を追いながら撮るという用途には使えないことになる。
しかし、クイックシューの向きを逆にしてカメラへ取り付けることで、左側にハンドルを移動して使うことができる。リリースレバー横にある水準器は見えなくなるが、ハンドルを握り込むというアクションは変わらないので、実用上撮影にほぼ支障はきたさないと見ていいだろう。
水平状態 | 90度奥に倒したところ。ちなみにハンドル側(手前)には19度まで傾けられる |
カメラは前方と後方に各90度まで傾けられる |
ハンドルをカメラ背面向かって左側に持ってきたところ |
構造的なデメリットとして、カメラ位置を調整している間はずっとハンドルを握っていなければならないという点がある。実際に使用した感覚では、左手でレンズを支えていたとしても、機材が重くなればなるほど、操作時の右手の負担が大きくなる。微調整を繰り返した場合はなおさらだ。
スペック上の耐荷重は3.5kgだが、長時間使用する場合は、少し軽めの機材を用いることをおすすめしたい。
ジョイスティック雲台を使うメリットは、片手で素早くフレーミングして固定できるという点だろう。一般的な自由雲台では、片手でカメラを保持し、もう片方の手で固定用ノブを締めるという操作が必要だ。
フレーミングと固定を断続的に繰り返す使い方は自由雲台の得意とするところでもあるし、それを片手で素早く行なえるのが324RC2の強み。使いこなせばポートレートや風景などマルチに活躍できそうな一品だ。
2010/7/5 00:00