コラム

カメラの真価を封印していませんか?

今すぐCFexpressに乗り換えるべき理由

CFexpressを採用するミラーレスカメラが徐々に増えてきた今、あらためてCFexpressの必要性を紐解いてみたい。そうしたカメラを購入したみなさんが知りたいのは、「CFexpressは必要か、不要か」というシンプルな答えだ。それを見つけるために、いろいろな観点から検証していこうと思う。

CFexpressのメリットを享受できるのは誰なのか?

みなさんの中にある疑問は、「自分はCFexpressの恩恵を受けられるのか?」――結局はこれに尽きると思う。

CFexpressという規格を意識したほうがいいのは、次のタイプの人たちだ。

① 撮影後のデータ転送にイライラしたくない人
② 高速連写撮影をしたい人
③ 高精細な動画を撮りたい人
④ カメラの性能を楽しみたい人

多くの写真家にとって恩恵が大きいのは、①の「データ転送の速さ」だろう。

CFexpressはSDメモリーカードの約10倍もの理論速度をもっているので、たとえばSDメモリーカードで10秒かかっていたPCへの読み込みが、CFexpressならわずか1秒で終わることもある。

CFexpressはパソコン由来の大容量・高速転送規格。撮影した画像が超高速でパソコンへ取り込める。

「10秒くらい我慢すればいい」と思うかもしれない。でも、この“待たされない”という感覚が、作業全体の流れをグッとスムーズにしてくれる。

スピーディーに取り込めるから、編集作業にもすんなり入れるし、気分もノリも落ちない。

ちょっとしたことのようでいて、実はこの“快適さ”こそが、撮影後のモチベーションを左右する大きなポイントだったりする。

たとえ時間に追われていなくても、「処理を待つ」という行為そのものが、思っていた以上に心理的なストレスになっているのだろう。

②③④のメリットについては、もはやいうまでもないこと。このタイプの使い方をしているなら、SDメモリーカードを選ぶ理由はほとんどない

なぜなら──その続きは、次の章で検証していこう。

CFexpressとSDメモリーカードの転送速度(理論値)
規格名最大速度(理論値)インターフェース / プロトコル備考
CFexpress Type A(2.0)最大1,000MB/sPCIe 3.0 ×1 / NVMeSony αシリーズで採用
CFexpress Type A(4.0)最大2,000MB/sPCIe 4.0 ×1 / NVMe対応カメラは未登場(2.0互換)
CFexpress Type B(2.0)最大2,000MB/sPCIe 3.0 ×2 / NVMe多くのハイエンド機で採用中
CFexpress Type B(4.0)最大4,000MB/sPCIe 4.0 ×2 / NVMe対応カメラは未登場(2.0互換)
SD UHS-I104MB/sUHS-I(1レーン)一般的なSDメモリーカードの標準規格
SD UHS-II312MB/sUHS-II(2レーン)高速連写・4K動画向け
SD UHS-III624MB/sUHS-III(2レーン)対応機器は未登場
SD Express(PCIe 3.0×1)最大985MB/sPCIe 3.0 ×1 / NVMe対応カメラ未登場(UHS-I互換)
SD Express(PCIe 4.0×1)最大1,969MB/sPCIe 4.0 ×1 / NVMe規格上の存在(UHS-I互換)

カメラが本領を発揮するために──CFexpressがもたらす真の恩恵

カメラから見たCFexpress最大のポイントは、転送速度の速さ。

SDメモリーカードよりも大容量のデータが短時間で書き込めるため、高画質で高解像度の作品が撮れるようになる。

これは「動画撮影」だけでなく、写真(静止画)でもいえること。

CFexpressの圧倒的なスピードは、最速クラスのSDメモリーカードでも太刀打ちできない。

たとえば、1枚のRAW形式の写真が約50MB程度だとする。

この場合、一般的なSDメモリーカードでは1秒間に2枚しか撮影できない。対して、CFexpress Type B 2.0なら、1秒間に40枚の撮影が可能。

ただし、これは理論値の計算で、実行速度としては約10〜20%程度の低下が一般的に生じる可能性がある。また、カメラにはバッファと呼ばれる一時的な記録領域があるので、初速のレスポンスがよくなるなど、複雑な要素が関連する点にも留意したい。

ブラケティングでの撮影も連写の一種といえる。カメラ内の処理が重くなりやすいため、書き込み速度に余裕が必要になる。となると、SDメモリーカードではもたついたり待たされる場面が出てくる可能性が高い。

このちょっとした“ストレス”が撮影のテンポを乱し、気持ちの流れを止めてしまう。せっかくのひらめきや集中が途切れてしまえば、撮影そのものの楽しさも薄れてしまうだろう。

そして何より、シャッターを切りたいその瞬間に“書き込み待ち”が発生すれば、肝心の作品を撮ることすらできなくなる。

動画撮影となるとなおさらで、こちらはもっと深刻だ。

SDメモリーカードで撮れるのは4Kの圧縮形式程度で、将来を見越した作品としてはもの足りない画質といえる。

「10bit 4:2:2」や「Log」があるじゃないか、と思われるかもしれないが、所詮RAWデータには太刀打ちできない。動画のRAWは、写真のRAW対JPEG以上に優位性を誇っているし、将来的に「同種の映像」が必要になったとき、選ばれるのはRAW動画の画質だ。

したがって、動画で作品を作っているのならRAWで撮るべき。今の時点で最高のデータを残しておかなければ、その映像(画質)は時間とともに陳腐化してしまう。

そして、ここがとても大切なポイントなのだが、CFexpress対応のカメラは、CFexpressカードを前提に開発されているという事実がある。

つまり、SDメモリーカードを使うという選択は、カメラ本来の性能を十分に発揮できないことでもある。せっかくの高性能を活かしきれないのは、少しもったいない。

該当するカメラを使っている、または購入予定なら、“そのカメラを選ぶ意味”を考えてみる価値はあるかもしれない。

これまでの流れで、CFexpressを使う意味や意義は、ある程度伝わったのではないだろうか。

「CFexpressを使ってみたい」「CFexpress対応のカメラを手にしてみたい」――そんな気持ちが芽生えていたら、とても嬉しい。

引き続き、CFexpressという規格が、現在どのような立ち位置にあるのかを少し掘り下げてみよう。

SDメモリーカードとは違うCFexpressの選び方

CFexpressの本質はとてもシンプル。SDより圧倒的に速い! これに尽きる。

ハイスペックなデジタルカメラの性能は、すでにSDの速度を上回っており、場合によってはSDメモリーカードがボトルネックとなってしまうこともある。これが、カメラが抱える問題だ。

そして、それを解決するのがCFexpressの役目となる。

この関係を理解しておけば、CFexpressに移行するタイミングを逃さずに済むだろう。

ちなみに、CFexpressカードの転送速度はブランドやグレードによって多少の差が見られるものの、カメラが要求する速度を満たしていればよいので最重要な要素とは限らない。

それよりも、CFexpressカードは単体のスペックだけで評価するものではなく、カードリーダーや専用アプリなどと組み合わせて使う「システム」として導入する点を認識しておきたい。

これが、SDメモリーカード選びと大きく異なる点といえる。

たとえば、CFexpressの特徴のひとつに、「カメラとともに進化できる」という点がある。ファームウェアのアップデートによって性能が向上したり、新たに登場したカメラへの対応が追加されたりと、購入後も機能拡張が施せるシステムだ。

「カメラは頻繁に買い替えない」と考える人もいるかもしれないが、使っているカメラがアップデートされたとき、その内容に合わせてチューンアップするのもファームウェアの役目となる。

このように、ファームウェアアップデートの恩恵は決して小さくない。

また、メモリーカードは繰り返し使用することで性能が徐々に低下する可能性があるため、定期的なメンテナンスが欠かせない。

こうした作業を行うには、カードメーカーが提供する専用アプリと、それに対応した純正カードリーダーが求められる。したがって、異なるメーカーのカードを使い分けていると、その分だけ周辺ツールを揃える手間が生じるというわけだ。

この特性を生かすためにも、CFexpressカードは単体の性能だけで選ぶのではなく、周辺機器やサポート体制を含めて、信頼できるブランドを軸に検討することが大切。

目先の安さに惑わされず、長く安心して使えるかどうかを重視すること。それが、後悔しない選び方につながるはず。

メモリーカードとカードリーダーを同一ブランドで揃え、専用アプリで定期メンテナンス。これがCFexpressの基本的な運用スタイル

「Type」と「4.0」の話

話は前後するが、カメラ用のCFexpressは現在、4つのタイプがある。形状としては「Type A」と「Type B」、インターフェースでは「4.0」と「2.0」。

「Type A」は主にソニー、「Type B」は多くのメーカーが採用していて、中身は同じで形が異なると思えばよい。容量やレーン数など速度面に関わる違いもあるが、同じ規格ファミリーに属していうなる。

注意点は「Type A」と「Type B」は形状が異なるため、購入時に“絶対に間違えてはいけない”ということ。

左がCFexpress Type B、右がCFexpress Type A。中身は同じ規格でも、形状が異なるため互換性はない。

CFexpress 4.0と2.0の違いは、主に転送速度にある。「4.0」はより新しく、従来の「2.0」よりも大幅に高速だ。

現在の主流は「4.0」へと移行しつつあるが、2026年2月時点では、CFexpress 4.0に正式対応したカメラはまだ登場していない。とはいえ、「2.0」との下位互換があるため、現行のカメラでも問題なく使える。

将来を見越して性能を先取りするという意味でも「4.0」を選ぶ価値は大きい。

PCとのデータ転送においては、すでに「4.0」の恩恵を受けられる環境が整っている。そのため、撮影後のワークフローをスムーズに進めたいなら、「4.0」の優位性は見逃せないポイントだ。

ただし「4.0」でPCと高速転送を行うには、PC側のインターフェース性能も関係してくるため少し難解な話になってしまう。

関わるのはUSBの規格だが、これがなかなか厄介。3.1や3.2、Gen 2、Gen 2x2といった表記が入り乱れている。

さらにややこしいのが、速度の単位だ。CFexpressは「MB/s(メガバイト毎秒)」、USBは「Gbps(ギガビット毎秒)」を基準としており、そのままの数値では速度の比較ができない。

この違いを理解したうえで、最適な機材を選べと言われても、写真が好きなだけの人にとってはもはや試練に近いだろう。

そこで、PC環境をチェックするための表を用意してみた。CFexpressの性能を引き出すための速度比較だが、利便性を考えてSDメモリーカードもあわせて掲載しておこう。

おおまかな目安として、「USB 20Gbps」や「USB4」規格に対応したPCであれば、どのタイプのCFexpressでも快適に扱える。

とくに「4.0」の最大速度を活かしたい場合は、「USB 40Gbps」や「USB4 Gen 3x2」に対応しているかを確認しておきたい。

なお、Thunderboltを含めると話がさらに複雑になるため、今回の表では割愛。Thunderbolt 4に対応していればCFexpress Type B 4.0の性能を引き出せる、程度に覚えておけばよい。

USB名称と転送速度

メモリーカードの混迷と進化──CFexpressが導く統一の未来

その昔、デジタルカメラには、ものすごく使い勝手の悪い時期があった。

スマートメディアやメモリースティック、コンパクトフラッシュなど、メーカーごとに異なる記録方式が採用されていた時代だ。カメラを買い替えるたびに、記録メディアまで総入れ替えになるという負担も少なくなかった。

SDメモリーカードの登場によって、そうした混乱はひとまず収束。

しかし、そのSDも性能面で限界が見え始め、より高速なメモリーカードとしてCFastやXQDが登場し、再び分裂の兆しが見え始めたところで……。

業界共通の新たな規格として現れたのが、CFexpressだ。

この規格の登場によって、今後のカメラ用記録メディアはCFexpressへと一本化される道筋が見えてきた。

SDメモリーカードの発展形としてSD Expressも登場しており、こちらは従来のカメラでそのまま使えるというメリットがある。

しかしながら、速度面ではCFexpressに及ばず、既存のカメラで使用した場合はUHS-I相当の低速な転送しか得られないなど、一般ユーザーの目から見ても中途半端な規格という印象は拭えなかった。

形状の面でも放熱に不安が残り、仮にカメラに採用されたとしても、次の規格が登場するまでの“つなぎ”に過ぎない可能性が高い。

CFexpressの中身はPC用のSSDと同じ構造をもっており、それに伴って供給するブランドの顔ぶれが変わった点も、ユーザーにとってはひとつのメリットといえるかもしれない。

これまでPC向けストレージの開発で培われてきた技術が転用され、ハイスペックかつ信頼性の高い記録メディアが、短期間で市場に投入されている。

というより、後発の新興メーカーによる開発力と勢いがあまりに強く、ユーザーだけでなくカメラメーカーまでも巻き込みながら、市場を席巻しつつあるといってよいだろう。

もともとPC向けの技術をベースにしているため、「大容量で高速化が得意」という特性は、これからのデジタルカメラにとって理想的な規格といえる。

この特性はコスト面にも反映されつつあり、大容量化によって「容量単価」が抑えられ、SDメモリーカードを逆転しはじめていた。

現在はメモリー価格の高騰により、単純な価格比較が難しくなっているのが実情だ。

とはいえ、大容量であること自体が大きな利点であるのは間違いない。撮影中のメディア交換頻度が減れば、それだけトラブルのリスクも抑えられる。

さらに、小容量のカードを複数使い分ける手間や、紛失のリスクを考えるだけでも、CFexpressの大容量は明確なアドバンテージといえるだろう。

CFexpressは300GB以上が主流。1TBや2TBの超大容量モデルもあり、SDメモリーカード数枚分の撮影が可能。

こうして見ていくと、速度だけでなく運用面においても、CFexpressがもたらすメリットは決して小さくない。

あらゆる面で「カメラ(メーカー)やユーザー」が感じてきた不満や不便、制限を解きほぐしてくれる。それがCFexpressという規格だ。

カメラが対応しているならCFexpressを使うべき

CFexpressについて解説してきたが、触れなかった話題がある。それが、信頼性や性能を語るうえで欠かせない「SLC」「TLC」「pSLC」といったNAND(フラッシュメモリ)の種類。

かつてはSLCやpSLCが高性能の証とされていたが、TLCの性能と信頼性が向上したこと、そしてSLCが入手困難になっている点から、主流はTLCに移行しつつある。ごくまれに、超高性能タイプにpSLCが使われている、という状況だ。

これ以上踏み込むと難解になるし、ブランドによっては非公表の場合もあるため、筆者としては無理に覚える必要はないと考えている。

そこでここでは、各方式の特徴を把握できる程度の簡単な紹介にとどめたい。

フラッシュメモリの記録方式

少しだけ親しみやすくするなら、先頭の「S」「M」「T」「Q」は、「シングル」「マルチ」「トリプル」「クワッド」の頭文字で、1、2、3、4を示している。

そしてこの頭文字のとおり、「ひとつのセル(データの入れ物)に、いくつのデータを記録するか」という点がそれぞれの違いだ。

ひとつのセルに多くのデータを詰め込むほど、大容量化しやすくなる一方で、耐久性や速度は低下する傾向がある。

なお、「pSLC」は少し特殊で、TLCなどのセルをあえて“ひとつの入れ物”として扱うことで、容量を犠牲にしながらも耐久性を高めるという仕組みになっている。

これは完全に余談になるが、筆者がSLCやTLCなどに対して抱いているイメージは電車だ。

混雑してギュウギュウに詰め込むと遅延が生じて電車が遅れるし、疲れてしんどい。空いている時間帯ならスムーズで快適に移動できる。

つまり、データが1つのSLCは遅延もなく速くて快適(劣化しない)、データを詰め込むほど遅延して疲れる(劣化する)という感じ。

デジタル関連の規格はまじめに覚えようとするとキリがないので、これくらいゆるく認識しておく程度でかまわないと思う。

CFexpressについて長々と語ってきたけれど、結局のところ、

・カメラが対応しているなら使うべき
・処理待ちでイライラしたくないならなおさら使うべき

これが理にかなった理由だと思う。

対応カメラを使っているなら、作品のクオリティに直結するし後処理も快適になる。“買わない理由”を探して避ける意味はない。

とくに最新の「4.0」であれば、速度面で今後しばらくは安心して使えるだろう。

そもそも「4.0」対応カメラの登場は数年先ともいわれており、“先を見据えた規格”として、長く使える可能性が高い。

その将来性を支える鍵となるのが、「ファームウェアのアップデート」機能になる。この機能を確実に届けてくれるブランドとメモリーカードを選ぶことが、長く安心して使うための条件といえる。

そして、今まさにカメラ選びの最中なら、CFexpress対応機種を選択しておけば、長く使える1台になるはずだ。

機材協力:OWC、ProGrade Digital

桐生彩希