デジカメアイテム丼

撮った世界が青くなる?…ロモグラフィーの変わり種フィルム「LomoChrome Turquoise」を使ってみた

「LomoChrome Turquoise」のパッケージ。青みがかったキリンが印象的

ロモグラフィーのカラーネガフィルム「LomoChrome Turquoise」(以下、Turquoise)を試用する機会を得たので、実写画像を交えてご紹介する。

LomoChrome Turquoiseは、写真の色味を青とオレンジに変色できるという変わり種フィルムだ。「肌色は鮮やかなブルーに、そして昼間の青空はオレンジに変化」する描写が特徴となっている。3本セットで税込4,830円(直販価格)で販売されているほか、同フィルムを装填したレンズ付きフィルム「Simple Use Film Camera LomoChrome Turquoise」も展開している。

本題の前に……。フィルムは流行っている?

「若い人の間でフィルムカメラが流行っている」という話を聞いたことがある。それゆえに、入り口の近くにフィルムやフィルムカメラ、インスタントカメラの類を陳列しているカメラ屋もあるという。

その実態が気になった当サイトでは、週刊アンケート企画にて「最後にフィルムで撮ったのはいつ?」を読者に質問した。回答者の年齢層については指定していないが、以下のような結果が得られた。

最後にフィルムで撮ったのはいつ?
選択項目投票数
10年以上前456
5年~10年前111
1年~5年前141
1年以内441
フィルムで撮ったことがない21
その他32
合計1,202

一番多かった回答は「10年以上前」の456票(37.9%)。読者からのコメントでは、フィルム価格の高騰やデジタルカメラの利便性向上により、フィルムカメラの使用頻度が減っていったという旨の投稿が目立った。

次いで多かったのが、441票で「1年以内」という回答だった。最近もフィルムで撮っているという人が、実に全体の36.7%を占めた。コメントでは、子どもの節目のイベントでフィルムを使うという人や、デジタルでは得られないフィルム特有の表現が好みだという意見が見られた。

全体の4割に迫る数字を残したこの結果が、多いのか少ないのかは意見がわかれるところかもしれない。フィルムを取り巻く実態については、引き続き当サイトでも注目していく所存だ。

21mmレンズ搭載のフィルムカメラ「LomoApparat」

今回の撮影に際して、ロモジャパンから35mmフィルムカメラ「LomoApparat」をお借りした。

黒を基調とした「Black Edition」(税込1万2,800円)とイタリア製の本革を使った「Neubau Edition」(税込1万3,800円)、ロモ直営店が拠点を置く千代田区にちなんだ「Chiyoda Edition」(税込1万3,800円)の3モデルがある。

今回お借りしたのは、Black EditionとNeubau Editionだ。焦点距離21mmの広角レンズを搭載している。シャッター速度は1/100秒もしくはバルブ。最短撮影距離は50cm。絞りはF10固定。

Black Edition
Neubau Edition

カメラ本体は非常に“芸が細かい”仕様となっている。本体背面には、内蔵ストロボ用のカラーフィルターを収められる。カラーフィルターは、備え付けのスライダーに挟み込むようにして使用する。これがちょっとおしゃれ。

金属製のストラップはしなやかなつくりとなっており、手に馴染む感触が心地よかった。カメラ底面に備えたネジ穴には金属パーツを埋め込んで補強しているなど、細かい部分へのコダワリも垣間見える。

製品には、クローズアップレンズ、カレイドスコープ(万華鏡)レンズ、多重露光撮影用のLomo'Instant Splitzerが付属。収納用のケースもついている。

LomoChrome Turquoiseの実写画像

Turquoiseの描写の特徴を見るため、今回はオーソドックスなカラーネガフィルム「Color Negative 35mm ISO 400」(以下、Color Negative)との比較において、その写りの違いを確認してみた。

歩き疲れて小路に腰を下ろす1歳児は、Color Negative(左)で確認できる通り、赤い帽子と上着を着用している。Turquoise(右)では、それらが青く変化しているのがわかる。元がネイビーカラーのデニムのズボンは、ブラウンぽい色味になっている。


シルバーを基調とした電車の車両を撮影してみた。Color NegativeとTurquoiseで、シルバーの部分には色味の変化は見られないが、車体に入ったライン(緑色)は黄色っぽく変色しているようだ。青空がオレンジ色に替わることで、写真自体の雰囲気が大きく変わっている。


青空をバックに撮影した建物。外装のオレンジ色は青色に、空の青はオレンジ色に変化した。まるで異世界に迷い込んだかのような光景。


西日があたっているポールを撮影してみた。オレンジ色のポールが青色に変化するのはこれまでの撮影結果から見ても想定通り。道路に照らされたオレンジ色の西日も青く変化しており、全体的に寒々しい雰囲気となった。


看板に写し出された人物の肌色は、青く変化した。オレンジ色になった空と相まって、異様な雰囲気をまとった写真となった。Turquoiseの面白さがもっとも感じられるのは、人物を撮影するときかもしれない。通常では得られない独特の世界観を楽しめるだろう。

フィルム撮影、今後もやってみようか…。

今回、フィルムでの撮影は筆者にとっても大変久しぶりの出来事となった。昭和が終わろうとする頃に生まれた筆者にとって、かつて家族写真にフィルムカメラを使用していたのは自然なことであり、カメラを握る父と交代して幼き頃の筆者がシャッターを切るという経験もしたものだ。今でも実家には、今後処分に頭を悩ませるであろうアルバムの束が残されている。

筆者が本格的にカメラに興味を持ち、趣味としたのは2010年代も半ばのこと。無論、入り口はデジタルカメラだった。背面モニターを見てすぐに撮影結果を確認できるし、失敗したと思ったら何度でもやり直せる。エフェクトだって豊富に用意されており、そのタイミングでフィルムカメラを手にする理由は筆者にはなかっただろう。

Turquoiseの作例撮りに、LomoApparat(×2台)を持ち歩いて思ったことは、「36枚。少ないかなと思ったけどけっこう撮れるな」ということだった。

撮影枚数が限られているという気持ちが、被写体を取捨選択する意識を強めたこと。また、撮影結果をすぐに確認できないことが、「次に行こう」という切り替えを促し、結果的にいろんな写真が撮れたという感覚になったように思う。筆者の場合、デジタルカメラだと一つの被写体で必要以上に粘ってしまうことがあり、蓋を開けてみたら同じような写真ばかり残ってしまうということもあった。フィルム撮影には「潔さ」があり、それも楽しいものだと感じた。

以前、ロモジャパンのスタッフが、ロモグラフィーのフィルムカメラを「真面目に撮らないでいいカメラ」だと筆者に話してくれたことがある。フィルムカメラに対して勝手にハードルの高さを感じていた筆者は、その言葉のおかげで肩の力が抜けた。LomoApparatはその見た目が非常にかわいらしく、本体の軽さも相まり、手から提げて歩くこと自体に楽しみを覚えられるカメラだ。

そしてTurquoiseの撮影結果も実にユニークなもので、見慣れた近所の風景をまったく別世界にしてくれた。前述したように、人を交えた撮影でとくに面白さを発揮するように思う。パーティーシーンで使用すると、後日もう一度盛り上がるなんてことも出来るのではないだろうか。今回の件でいうと、もう少し自然風景の撮影も試してみたかったところ。

記憶が遠すぎて、フィルムの交換方法を確認するところから始まった今回の試用だったが、「写真を楽しむ」ということを改めて考えるきっかけになった。写真を撮ること、カメラを持つということ、そこにはいろんな意味が含まれている。Turquoiseでの撮影を通して、別のフィルムの描写にも関心を持った。フィルムにハマったかといえばまだそうではないが、もう少しフィルムカメラに触れてみようかなと思う。

本誌:宮本義朗