ファーストインプレッション:Nikon 1 V2


「Nikon 1 V2」は、ニコンが「レンズ交換式アドバンストカメラ」と呼ぶ1インチセンサー搭載機「Nikon 1」シリーズの最新モデル。ニコンでは、2011年10月20日に発売された「Nikon 1 V1」の後継モデルではなく、上位モデルと位置づけている。



 確かにV1とV2のコンセプトの違いは、その外観からもうかがえる。V1が「新しい時代のレンズ交換式カメラ」を模索してできた製品なら、V2はそれに、これまでの一眼レフカメラのエッセンスを加えたものに思えたからだ。一概にどちらが良いとは決め兼ねられないが、既存のデジタル一眼レフカメラユーザーとしては、一般的にV2の方が好ましく感じると思う。



 例えば、V1になかったモードダイヤル。これはミラーレス機を「小型軽量の一眼レフカメラ」として使いたかった人には、待望の装備といえるだろう。モードダイヤルを起点とした操作は、以前からデジタル一眼レフカメラで慣れ親しんだものであり、使っていてしっくりくる。

 その上でラバーが巻かれたパームグリップを握り、EVFをのぞくと、まるで一眼レフカメラを使っているかのような感覚を覚える。グリップはしっかりと突き出た形状で、1 NIKKOR VR 10-100mm F4.5-5.6 PD-ZOOMのような大型のレンズをつけたときにも扱いやすかった。V1で緊張しながら行なっていた片手撮りが、(片手撮りの是非はともかく)レンズによってはいとも簡単にできるのも特筆したい。

 また、内蔵ストロボを搭載したことも、より既存のデジタル一眼レフカメラの近づいた証といえる。操作ボタン類の配置もデジタル一眼レフカメラに似たものとなったことや、コマンドダイヤルが付いたこともその一助となっている。


EVFのスペックはV1と共通。アイセンサー、視度補正つきの約144万ドット0.47型TFT液晶内蔵ストロボをポップアップさせたところ

マルチアクセサリーポートはV1と共通。GPSユニットGP-N100などを装着できるシャッターボタンと同軸に電源レバーを装備。V1は電源ボタンだった

バッテリーはV1のEN-EL15と違い、EN-EL21を採用。D800、D7000などと共用したかった人には残念な変更だ

有効画素数は1,425万。V1の1,015万から増加した。画像処理エンジンもEXPEED 3A」にアップグレード スマートフォンユーザーなら、ワイヤレスモバイルアダプター「WU-1b」が有益なオプションとなりそうだ

 フォーカルプレーンシャッターのシャッター音は小気味良い感じ。レスポンスも全体的に良く、とりわけ像面位相差AFはスパスパと合うのが気持ちがよい。コントラストAFとなる暗い屋内でも比較的高速で、ことAFに関して不満を覚えることはなかった。この辺も、デジタル一眼レフカメラの使用感に近い。

 なお「サイレントモード」にすると電子シャッターとなり、無音での撮影が可能になる。静かなカンファレンスなどで使用する場合などで役立つことだろう。


基本的な撮影画面メニュー画面。主なデザインはV1を踏襲する

モーションスナップショットも健在。テーマを4種類から選べる。これまでの静止画と動画の組み合わせではなく、ひとつのMOVファイルとして残せるようになった


新機能のベストモーメントキャプチャーは2種類から選ぶ。シャッターボタンを半押しすると40コマ分(約1.3秒間)がゆっくりとした動きで再生され、任意のタイミングで記録できる「スロービュー」と、シャッターの前後のバッファから、カメラがベストショットを選ぶ「スマートフォトセレクター」

 新レンズの「1 NIKKOR 18.5mm F1.8」は、明るい標準レンズという位置付け。最短撮影距離が20cmと短く、ボケにくい1インチセンサーとはいえ、それなりにボケを取り入れた作画が楽しめる。重量も70gと軽いため、今回の試用時にはほぼつけっぱなしだった。

 その他レンズ関連で強化されたのは、1 NIKKOR VR 10-30mm F3.5-5.6をつけたときの電源OFF動作。従来のV1やJ1では別途電源ボタンを押す必要があり、撮影までの手数が多かったが、V2ではレンズを収納するだけで電源がOFFになる。これはJ2も同様だ。

 一方、沈胴式ではない単焦点レンズの電源ON操作は、シャッターボタンと同軸に配置された電源レバーで行なう。V1では電源ボタンだったので、この当たりもニコンのデジタル一眼レフカメラに近い操作になったのはうれしい。


レンズ装着例。1 NIKKOR 10mm F2.8。右画像は電源ONの状態(以下同)

1 NIKKOR VR 10-30mm F3.5-5.6

1 NIKKOR 18.5mm F1.8

1 NIKKOR VR 30-110mm F3.8-5.6

1 NIKKOR VR 10-100mm F4.5-5.6 PD-ZOOM

マウントアダプターFT1を使用。レンズはAF-S DX NIKKOR 35mm F1.8 G同じくFT1を使用。AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR

 ボディやレンズの軽さもあって、右手でグリップをつかみながらブラブラ散歩するのはとても楽しい経験だった。荷物が少なく軽いのも開放的だ。それでいて、「小さなデジタル一眼レフカメラ」として扱える面白さを持つV2。ニコンのデジタル一眼レフカメラユーザーにとって、またとないミラーレス機だと思う。

 今回は短い試用期間でのインプレッションとなったが、より詳細な試用感や画質について、いつもの新製品レビューで後日、お伝えしたい。






(本誌:折本幸治)

2012/11/6 00:00