超高画素のお作法

“超高画素”撮影の基本をおさらい

そのトレンドと基礎知識を再チェック

現在のデジタルカメラのトレンドのひとつに、3,000万画素を超える超高画素モデルの存在があるだろう。有効3,600万画素のニコンD800/D800Eにはじまり、ソニーα7R、ニコンD810という顔ぶれだったが、さらにこの夏、有効5,060万画素のキヤノンEOS 5Ds/EOS 5Ds Rや、有効4,240万画素のソニーα7R IIが相次いで発売され、活況を呈している。いずれも高解像度を活かした圧倒的な解像感を誇る。

こうした超高画素モデルのポテンシャルを余すことなく描写に活かすには、いくつかの使いこなしポイントを意識したいのも事実。すでにそれを実感しながら撮影を楽しんでいるユーザーも少なくないだろうが、使用する交換レンズの性能や、撮り方によるちょっとしたブレ、ピンぼけがこれまで以上に描写に影響してしまうからだ。

参考:超高画素のポテンシャル

まず、超高画素機の代表格といえる「キヤノンEOS 5Ds」と、そのベースであるオールマイティモデル「EOS 5D Mark III」で撮影した画像を見比べて見よう(クリックでオリジナル画像を表示)。

以下の比較は青枠を中心とした拡大です
EOS 5Ds(等倍切り出し)
クリックで拡大します
EOS 5D Mark III(等倍切り出し)
クリックで拡大します
参考:EOS 5Ds(EOS 5D Mark IIIに合わせて縮小)

2,230万画素のEOS 5D Mark IIIに比べて、5,060万画素のEOS 5Dsで撮影した画像の緻密な描写は圧倒的。しかし、そのぶんレンズの描写特性や、ブレ、ピントなどの撮り方がよりシビアに反映されやすい。

この連載では、こうした超高画素機を使いこなすためのヒントとして、改めて“お作法”的な撮り方の基本を確認してみたいと思う。愛機が超高画素ではないというユーザーも、画素数に関わらずヒントとなる部分があるかと思うので、一読してみていただきたい。

レンズの選び方と使い方

ニコンD800E(2012年発売。後継機D810が発売済み)+AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR

まず大切なのは交換レンズ選びだろう。35mmのデジタル一眼レフで最初のオーバー3,000万画素機であるニコンD800/D800Eが登場した際には、より解像感を追求して光学ローパスフィルターの効果をキャンセルしたD800Eに向け、テクニカルガイドに“推奨レンズ”の一覧が掲載された。

その全てがニコンの高級レンズの証ともいえる「ナノクリスタルコート」の施されたニッコールレンズであったが、交換レンズの描写特性が特に見えやすい超高画素機の場合、このように上位クラスの交換レンズを選ぶのが望ましい。もちろん自分のこだわりの1本やお気入りの1本があれば枠にとらわれる必要はないが、描写特性のアラのようなものがより顕著に現れてくることは覚悟してほしい。

キヤノンであれば、こちらも高級レンズとして有名な「Lレンズ」、ソニーであれば「Gレンズ」もしくは「カールツァイスZAレンズ」が目安になる。また、レンズメーカーの交換レンズを選ぶ場合も、上位クラスのものが合うだろう。レンズの世代でいえば、よりデジタルカメラの特性に最適化された最新のもの、つまり現行モデルがよいことはいうまでもない。

キヤノンEOS 5Ds R+EF24-70mm F2.8L II USM
ソニーα7R II+Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

ちなみに筆者のよく知るカメラメーカーのレンズ開発者は、高画素機のことを「優秀なレンズ試験機であり、交換レンズの設計は手が抜けない」と以前話してくれたことがあったが、さらに解像度の増した超高画素機の登場によって、今後ますます交換レンズの描写特性は向上していくように思われる。

また、レンズのメンテナンスも意識しておきたい。基本的なことではあるが、レンズ前玉の汚れは注意しておきたいところ。特に皮脂など油系の汚れは描写に影響する可能性が高いので、付着した場合はなるべく早めに清掃するようにしたい。もし自力での清掃を苦手とする場合は、メーカーのサービスステーションに相談するのも手だ。

レンズの汚れにも注意。特にワイドレンズの場合、絞り込んだ際に描写に影響することも少なくない。レンズの清掃に慣れていなければ、メーカーのサービスステーションやカメラ修理店などに相談してみるとよいだろう

周辺環境の整備も

得られる描写とは直接関係のない部分ではあるが、超高画素機ではメモリーカードの性能やパソコンの環境も大切だ。

メモリーカードは、転送が速く大容量なハイエンドのものを選ぶのがよいだろう。撮影後の書き込み待ちで次のシャッターが切れなかったり、パソコンへの転送に長く時間がかかるようではユーザーのストレスも増すからだ。もちろん容量自体も大きなものでないと、あっという間にメモリーカードがいっぱいになってしまう。

パソコンに関しても、高速処理が当たり前となった現代では、メモリーカード同様に作業時の快適性に直結するものである。RAW現像やレタッチ処理などを行なうにあたり、こちらもパワーが低いものだとこれまで以上に時間を要することが少なくない。快適環境で作品制作に集中できるよう。なるべく新しいパソコンが好ましいといえるだろう。

(編集部)高画素機に合うPC選びに関しては、「5,000万画素時代のPC構成を考える」をご覧ください(撮影:礒村浩一)

記録画素数が増えたぶん、撮影データを保存・管理するストレージも、大容量のものが必要になってくることはいうまでもない。こちらも転送速度を考えるとUSB3.0のインターフェースを持つものがよい。

また、カメラの性能をフルに味わう点で言えば、さらにディスプレイも大事だ。せっかく撮影した高解像度の画像を閲覧・編集するのであれば、正しい色を見られるディスプレイを使用しないともったいない。

このように超高画素機を手にして写真ライフをフルに楽しむなら、パソコン環境も含めたアップデートも大事になってくることを肝に銘じておきたい。

実は何かと物入りな超高画素機。しかしながら、得られる画像はこれまでにない緻密なものであり、それまで見えなかったものが見えてくるほどである。確実なピント合わせやブレない撮り方、そして周辺アクセサリーの整備を通じて、そのポテンシャルを引き出していきたい。

大浦タケシ