超高画素のお作法
超高画素機におけるメモリーカード選び
新旧規格のメディアで驚きの差が!
(2015/10/7 15:11)
デジタルカメラの画素数は年々増加しており、最近では35mmフィルムサイズ相当ながら5,000万画素を超える撮像素子を搭載した製品も登場している。機動性の高いカメラでも細部まで余さず写し撮りたいというカメラマンとメーカーの執念が結実した感があるが、当然ながらそのデータ量は半端ではない。何しろRAW撮影時のデータは1ファイルで40~60MBほどになるのだ。容量の小さな記録メディアでは、それこそあっという間に容量を使い尽くしてしまうだろう。
また、データ量が大きくなれば、記録メディアへの記録時間も増すことになる。高画素機は大容量の内蔵メモリを搭載し、データバッファとして充ててはいるが、それでも連写撮影の際などバッファフルに至るシーンは間々あるものだ。この際にメモリーカードの記録速度が高速であれば、バッファフルからの復帰時間を短縮することに役立つし、そもそもバッファフルになり難い環境を整えることができる。
要は高画素化に伴うデータサイズの増大に対応するため、いかに効率よくデータを捌けるかを考える必要がある。これは以前からの傾向だったが、高画素機が続々と登場する中で、より顕著となったと言えるだろう。
それでは、どのようなメディアを選べば高画素機の運用に耐え得るのか?以下にメモリーカードの比較なども加えつつ紹介していくことにする。
CFはUDMA7を選ぶのがポイント
CFタイプのメディアでは次世代のCFastがあるが、現状ではまだ普及に至っておらず、また互換性も無いので、従来のCFから選択することになる。実際のところCFは進化が止まっているため、高速なメディアを求めるならばUDMA7対応を謳うメディアを選んでおけば間違いは無い。
UDMAとはパラレルATAが進化する過程において生み出された転送方式の1つである。そのUDMAも代を重ねており、最新の(そして最後の)規格がUDMA7(最大転送速度166.6MB/s)というわけだ。そして、CFはパラレルATAの規格に合わせて進化しており、CF Rev 6ではUDMA7モードを追加している。
ただ、UDMA7モードに対応していると言ってもこれはあくまでもバスの帯域であり、実際の速度はフラッシュメモリの設計で変わってくる。これを確認するには「○○倍速」という表記を確認すればよい。
下の例だと1,066倍速(または1067倍速)、800倍速といった表記となっている。1倍速が150KB/sなので、それぞれ160MB/s、120MB/sというわけだ。基本的に表記されている速度は読み取り速度であり、書き込み速度はやや落ちるので、連写を多用するような人は最も高速なメディアを選ぶのが無難だろう。
SDカードは「UHSスピードクラス」にも注目
SDの速度表記には「スピードクラス」と「最高速度」がある。最高速度は読んで字のごとく、そのカードが出せる最高の速度を表したものだ。CFと同様に「○○倍速」と謳うメーカーもあれば、そのままストレートに「○○MB/s」とするメーカーもある。
少々わかりにくいのがスピードクラスだが、これは「常に安定して出せる速度」を示している。いわばメーカが保証する最低速度であり、Class2(2MB/s)からClass10(10MB/s)が存在する。長時間の記録をおこなう動画撮影などでは、最高速度よりもむしろスピードクラスが重要なため、このような表記がなされているわけだ。カードには、「C」の中にクラスの数字が描かれたデザインになっている。
また、わりと新しい表記として「UHSスピードクラス」というものもある。UHSとはUltra High Speedの略称であり、高速転送用のインターフェースとして規格化されたものだ。
このモードを利用した場合に安定して出せる速度がUHSスピードクラスであり、Class 1(10MB/s)とClass 3(30MB/s)が存在する。カード上の表記は従来のスピードクラスと同様に「U」の中にクラスの数字を書いたデザインとなっている。
また、UHSモードにはUHS-I(最高速度は規格で異なり25~104MB/s)とUHS-II(312MB/s)が存在するが、これもカード上に「I」または「II」という表記がなされている。
注意すべきなのは、UHSモードはカード側だけでなく、ホスト(カメラやカードリーダーなど)も対応している必要があることだ。いくらUHS対応のカードを持っていてもホストが対応していなければ通常のSDカード並みのパフォーマンスしか出すことはできない。
ベンチマークでは大きな差が
それでは実際に高速カードと低速カードを使用したパフォーマンス比較をしていこう。今回はCFはサンディスク製、SDカードはレキサー製をサンプルに選んだ。
連写での書き込みテスト
まずは書き込み性能からだが、カメラにレンズキャップを付けた状態で30枚連写のRAW撮影をおこない、書き込みランプが消えてバッファが完全に開放されるまでの時間を計測している。無論、時間が短いほどデータの処理速度が速いことになり望ましい。
CFでの書き込み時間 | |
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高速CF | 約18秒1 |
低速CF | 約41秒2 |
SDでの書き込み時間 | |
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高速SD | 約21秒8 |
低速SD | 約1分47秒4 |
測定結果だが、SDではかなりの差が生じている。高速SDのスコアはまず優秀だが、低速SDでは2分近い時間を要してしまった。CFもSDほどではないが、やはり高速カードと低速カードで大きな開きが出た。この結果からも、メモリーカードが撮影に及ぼす影響の大きさがわかってもらえると思う。
カードリーダーでの読み込みテスト
次に読み取りテストだが、ここでは低速カードと高速カードにそれぞれ記録したデータをPCへ転送し、その時間を計測した。
転送にはメモリーカードメーカー純正のカードリーダを用い、転送するデータはEOS 5Ds Rで撮影したRAWデータ200ファイル(約8.92GB)を使用している。
CFからのコピー時間 | |
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高速CF | 約1分35秒6 |
低速CF | 約2分33秒3 |
SDからのコピー時間 | |
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高速SD | 約1分31秒7 |
低速SD | 約2分46秒7 |
計測結果だが、CFとSDでほぼ同等のスコアが得られた。どちらも高速カードが低速カードに1分近い差をつけている。なお、この結果はPCの環境によってかなりの差が生じることは認識しておいていただきたい。
なお、EOS 5D Mark III(有効約2,230万画素)の撮影データ200ファイルの容量は約4.24GBとEOS 5Ds Rの約半分。実際に高速CFでPCへの転送を試したところ、両機種ではほぼ2倍の時間差があった。高画素機ではこうした部分でも運用の違いが出てくることを確認しておきたい。
テストに使用したPCは普及帯のスペックだが、それでもこれだけの差は生じている。撮影枚数が多い人、ハイエンドクラスのPC環境を整えている人ならば、より高速カードの効能を堪能できるだろう。